か ならず読んでください

任侠からヤクザへ

From NINKYO as hero to YAKUZA as orgalized criminals, a Cultural history of Japanese mafia

講師:池田光穂

ノート:2005年に「仁義なき戦い」4部作の脚本家・笠原和夫(1927-2002)の取材ノート『笠原和夫「仁義なき戦い」調査・取材録集成』(太田出版)が出版されて、この昭和の時代におけるこの希有な脚本家の取材にかける執念に、この書物を紐解く者は舌を巻くだろう。 従って、深作監督の映画を観て感動し、グーグルなどで検索し、このページに到達した人には、まず、上掲の書物を一読されることをつよくお勧めしたい。 (2012年1月5日追記)

●『仁義なき戦い』(飯干晃一原作/深作欣二監督)

・極道

 「極道に生まれるものではなく、なるもの」——シモーヌ・ド・ボーヴォワール『第 二の性』参照

 「狙われるものよりも狙うものが強い」

・擬制的親族

 兄弟盃

 親子の盃を交わす

 親子の成立における「見届け役」「媒酌人」(←婚姻・縁組みに不可欠の要素)

親子の解消はできない

裏切り者(若杉宏)が対立する組の「客分」となる

 宏の裏切りが、最終的に「親殺し」を意味するので、ひろの(美能幸三のモデル/菅原文太)が山守を殺す

 叔父貴・兄貴

 杯の破壊=親子関係の解消

 指詰め/わびを入れた組長が「手厚く葬ってつかわさい」

敵対

 山守組と土井組 別の権力構造との接触

 やくざと市会議員

オルターナティヴな選択「これからの極道は銭が勝負じゃ」 新開一派の分派行動(ヒロポンの売買をめぐって)

 山守の新開一派/市会議員・金丸が土井組の再興にと分派行動を進める

 金丸が土井組の残党を新開らとひきあわせる

坂井「てっちゃん」(松方)が山守を恫喝して、破門状を出させる

新開、山方を殺害

さかいグループと新開一派の抗争

新開の殺害による、さかいの勝利

さかいの、山守からの分派行動

ひろの・しょうぞうの釈放[=1952年・講和条約の恩赦で] 山守の強制的な引退(さかいの陰謀)

さかいの独立 山守の反撃(競艇場の相談)

 殺害予定者の情報の提供

●『仁義なき戦い・代理戦争』

S35年以降(山口組の進出にともなう抗争を描く)

広能昌三(美能幸三)

 山守(=山村組)

広能が造船所のスクラップの

えだ・しょういち(村岡組幹部):出所

うちもと[=打越]の(相原との)兄弟盃

相原(=安原)

神和会(=本多会) 村岡(=岡/)   博多事件の説明p.52

表題:『仁義なき戦い』の背景

現代ヤクザの研究 『仁義なき戦い』<死闘編><決戦編>を中心にして


【文献】

飯干晃一『仁義なき戦い<死闘編>:美能幸三の手記より』角川文庫、1980年

《梗概》

戦後の混乱‥‥呉の残された軍需物資をめぐる収奪

◆抗争の歴史

・岡組(博徒・岡敏夫)と村上組(テキ屋・村上三次)

・S27〜28 岡組70/村上組90(死者11人:死亡率6.875)

・岡組の勝利(すなわち縄張りを広げること)

当時[海生・土岡・西尾・山村・小原](合従連衡)

 山村組(山村辰雄:呉)の成長→山村辰雄と岡敏夫の兄弟盃

・S37.5 岡敏夫引退

(幹部や子分を山村に預ける[打越会・打越信夫が自他ともに期待していた])/岡組の解散[均衡が破綻]

◆系列化のはじまり

   打越信夫(山口組の舎弟分となり代理戦争の原因となる第一歩になる)

・S38打越会と山村組[岡組の縄張りに参入していた]の抗争

     山村組幹部・美能幸三の破門のち打越会に加入

打越会幹部・山口英弘は山村組に加担

・打越会に山口組の応援/そのことが山村組、神戸の本多会の傘下にはいる

そのことが、山口組/本多会の「代理戦争」と呼ばれる

《ヤクザ世界のサブカルチャー》

【資金源】

・賭場[とば]、パチンコ・バー・キャバレーの用心棒代、売春、競輪・競馬のノミ屋[私的な掛け行為の胴元となること]。現在では覚醒剤を はじめとする薬物の不正売買や民事介入暴力による収入が主要なものとなる。

【ヤクザ組織の拡大パターン】

・一家が拡大する=子分がふえる[子分への支出が増える]=つき合いの増大=義理カケ[儀礼としての消費]の増大=支出の増加

・収入の拡大=他者の縄張りに入り、勢力範囲を拡大する。

・収入の拡大が、戦力の拡大を招くことになり、さらに増大する支出を補うために、収入を拡大する必要にかられる。[ポジティブ・ フィードバックがかかる]

・「ヤクザの世界は、利害得失のうえに面子がからみついている。このからみ合いは、事態をややこしいものにする」p.231

【勢力の均衡】

・擬制的血縁関係

・兄弟盃を交わすことは、均衡を生み出す基本的パターンである。

・遠交近攻策‥‥「さし当たっての衝突のおそれのない王国とは相互援助の条約を結び、当面の仮想敵国を牽制するのである」(飯干,1980 上:15)

・親分同士が、五分五分の兄弟盃を交わす[→攻撃の意志のないことをあらわす儀礼]。

・親分同士だけではなく舎弟同士、若者同士で盃を交わす[組織内部にわたる均衡儀礼をとりかわす]。

・しかし、均衡はすぐに破られる[理由?:多重の盃の交換による錯綜化/遠交近攻というパターン/あるいは、ヤクザ組織が内在化するネガ ティヴ・フィードバックのパターンをとるからか]。

【兄弟杯】

・五分の兄弟分、四分六の兄弟分、七三の兄弟分に分けられる。

・五分ではお互いに「兄弟」と呼び合う、四分六では六分が「兄貴」とよばれ、四分は「兄弟」とよばれる。七三では、三分は「お前」と呼び捨 てにされ、七分は「兄さん」とよばれる。[p.70-71]

・兄弟杯は組織内では相互を紐帯を強化するという機能があるが、他の組同士の場合は個人的な関係によるが、そこには利害得失の考えが及んで いることが多い。

・兄弟杯を交わすには、兄弟になる人物のほかに見届け人がいるが、これはヤクザ世界に公開されている。[その兄弟杯の儀礼に参加[参列]す ることは、その兄弟を認めることになる。したがって、それを好ましくない、あるいは政治的な配慮から関わりたくないとするヤクザは、それに参列しないこと もある→上:pp.233-234]

・兄弟を解消すること上:pp.215-216

【攻撃】

・鉄砲玉‥‥「ヤクザが他の組織のなかに放り込む挑発のタネのことである」飯干1980上:15 ・攻撃のパターンは、特定の相手をテロるものと、不特定の幹部をテロるものがある。攻撃の目的は、犠牲者のとどめを刺すことであり、戦果が出た時点で、攻 撃隊は散開する。[事例:菅重雄の殺害:上pp.33-34]

・攻撃の長期的な目的は、敵の勢力を弱め、その経済的基盤を手中に入れることである。しかし、[ヤクザ社会で長年培われたエートスであろう か?]攻撃が相互にエスカレートし、相互のせん滅戦に展開することもある。

・戦闘の終結は、「手打」をもっておこなわれる。[手打の機能は、戦争を不用意に拡大させないこと。そのことによって日常の[暴力の行使に 基づいた]経済活動を再開させることである/戦闘期間の経済活動もつづいている/戦費の調達・テロルへの恐怖・若者の供給・等、戦闘そのものは、手打の時 点での優劣でたいへん異なる]

《人類学的解釈》

【組織の紐帯と分離】

 ・擬制的親族関係

  親分/子分関係と「破門状」

   組の構成員相互の紐帯強化の機能としての「兄弟盃」

【アイデンティティーと身体性】

 ・刺青と指詰め

  男性性の強調として

堅気の身体[性]からの「切断」

【組織暴力と戦争】

 ・組織統合と暴力(「戦争」)

 ・暴力の機能論

《文献》

  • 美能幸三『極道ひとり旅 : 続・仁義なき戦い』サンケイ新聞社出版局、1973年
  • 笠原和夫『笠原和夫「仁義なき戦い」調査・取材録集成』太田出版)、2005年
  • 飯干晃一『仁義なき戦い<死闘編>』角川文庫,1980年
  • 飯干晃一『仁義なき戦い<決戦編>』角川文庫,1980年
  • カレル・ウォルフレン『日本/権力構造の謎』(上)pp.191-202,早川書房,1990年
  • ディビッド・E・カプラン と アレック・デュプロ『ヤクザ』(松井道男訳)第三書館,1991年
  • 宝月誠『暴力の社会学』世界思想社,1980年
  • 松江八束 建設業暴力追放対策協議会暴力団ミニ講座』 (2003年1月7日)

  • 表題:仁義なき戦いの構図


    【美能幸三のライフヒストリー】 大正15年7月生まれ

    【組の構成員】

    《岡組》広島

    組長:岡敏夫[すぐに引退]/戦後博徒として急成長

    幹部:網野光三郎

       山上光治

    《打越会》広島/←神戸山口組

    組長:打越信夫

    《村上組》

    組長:村上三次/テキ屋として成長

    幹部:村上正明

       菅重雄[S22.2.18殺害/←山本光治]

    《山村組》呉/←神戸本多会

    組長:山村辰雄

    幹部:美能幸三

    【前史/岡組の成長・戦闘パターン】p.32-

    岡組と村上組の抗争(第一次抗争事件)

    【展開】  

    広島の岡組の解散と、その跡目を継いだ呉の山村組の広島への進出し、打越会と抗争する。

    【年表】

  • 昭和21年11月18日 村上正明が岡敏夫・岡組組長を急襲するが、失敗。
  • ******************************

    ******************************

    ・山上光治の事例

    S14広島第一小・高等科卒業。奉天造兵廠。S18帰郷。傷害致死で少年刑懲役2年服役。

    表題:暴力団に関する基本的な理解

    暴力団に関する基本的な理解

    資料:カレル・ウォルフレン『日本/権力構造の謎』(上)pp.191-202、年、早川書房

    ・全国で約十万人構成される非合法社会がある。

    ・警察推定で年間一兆五千億円の[不法行為による]収益をあげている。すくなくともこれは少なく見積った額で、その倍はあるといわれる。(警察 の推定そのものも、負債の回収、倒産の「整理」などは抜け落ちている)

    ・擬制的血縁関係の重要さ/とくにその象徴的次元

    ・ヤクザと極右(全国で八百以上の団体十万人を越える会員/1/5が活動的)

    ・児玉誉士夫[すでに死亡],笹川良一

    ・戦後、マルクス主義者たちの暴力的活動に対する牽制として、警察と企業はヤクザを利用してきた。

    ・1960年以降、警察(ウォルフレンによると一部)はヤクザ追放運動を助長する役割を果たしてきた。

    ・警察は、ヤクザ全体を取り締まる[頂上作戦]ことには消極的で、むしろ均衡を破り市民に巻添え的な犠牲者が出るようなヤクザの犯罪を取り締ま る傾向がつよい。

    ・ヤクザ側の論理として、差別を受けている反社会的な若者を受け入れ、彼らに雇用の機会を提供しているという主張がある。

    ・山口組の[機関誌]綱領(→月刊『山口組時報』)には五箇条のスローガンが掲げてある。すなわち、「侠道精神に則り国家・社会の興隆に貢献す る」ために「(1)内を固むるに和親合一を最も尊ぶ、(2)外は接するに愛念を持し、信義を重んず、(3)長幼の序を弁え礼に終始す、(4)世に処するに 己の節を守り譏を招かず、(5)先人の経験を聞き人格の向上をはかる」p.197

    ・1970年代以降、ビジネスマンタイプの恐喝ヤクザが登場する。それは、総会屋[1982年商法改正]と地上げ屋である。

    ・山口組/一和会抗争1984.7〜1987.2

    ●サイドストーリー:兵隊やくざ

    ある意味反戦映画

    ■リンク

  • ビデオ/DVD de 人類学▶︎ヤクザと臓器移植日本政府が定義する「反社会的勢力」について︎︎▶リネージ と クラン︎▶文化研究・カルスタ・ポップ人類学︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎
  • 戦争の文化人類学的研究▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎
  • ■文献

    ■その他の情報

    Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099