ローカル・ノレッジという隠喩の分析
The concept of Geertz's "local knowledge" does not mean "localized knowledge" nor "Indigenous one"
解説:池田光穂
クリフォード・ギアツのいうローカル・ノレッジとは、決して単純に、局所的な知とか、文化 相対主義的な意味での土着の知を直接示しているものではない。(→ローカル・ノレッジ)
むしろ、ローカルな知を参照点として、その知的想像力を駆使する民族誌や法の理解(=抽象化され た知的システムや、一般化と個別理解のせめぎ合いが見られる知的法廷における知の操作技法をめぐる議論)のあり方と、その知的源泉としての〈事実知〉や 〈具体知〉のダイナミズムについて、考えようとしているのである。つまり、場 所に関わるわざ(crafts of place)について考えようとしているのである。
〜である〈対〉〜であるべき、〜が起きた〈対〉〜は適法か、をめぐる文化相対的な構成について、 事例をもって説明。
「結局のところ、われわれはローカル・ノレッジ以上のものを必要としているといってよい。われわ れはローカル・ノレッジの多様性をその相互参照性に変える、つまり一方が暗くするのを他方が照らす方法を必要としているのだ( We need a way of turning its varieties into commentaries one upon another, the one lighting what the other darkens)」(訳、p.338, original text, p.233)。
法および民族誌は、ともに場所に関する技(crafts
of place)であるが、両者は同時に大きく隔たるものでもある。
「法とはローカル・ノレッジであって、場所と無関係な原則ではないということ、そして法は社会生 活を構成するものでその反映ではない、あるいはただたんに反映ではないこと、といった二つの命題ひとまとめにすると、法の比較研究はいったいなにから構成 されるべきかについてのありきたりでない考え方にたどりつく。その考え方とは文化の翻訳である」(1991年邦訳版、366頁)。
◎法の多元性
「法の多元性とは一時的な常軌逸脱ではなく、原題という光景にとっての中心的な特徴であると する確信、自己理解と他者理解は、それらがほかの文化領域と同じく、法において内的に関連するという議論——すべてはある特定の産物であり、ものごとの多 様性に眼を向ける傾きが生み出す所産である」(386頁)。
リンク
文献
ローカル・ノレッジ : 解釈人類学論集 / クリフォード・ギアーツ [著] ; 梶 原景昭 [ほか] 訳<ローカル・ノレッジ : カイシャク ジンルイガク ロンシュ ウ>. -- (BA42956538) 東京 : 岩波書店, 1999.9( Local knowledge : further essays in interpretive anthropology / by Cli fford Geertz. -- (BA48307491) New York : Basic Books, c1983)
「ヘルムスは(その美しさを長々と記述することによってわれわれを儀礼に引きつけると同時に、その恐ろしさを述べたてることでわれわれをそ こから追い立てたのちに)女性の抑圧に対して抗議することによって、これを帝国主義的擁護論にすり変えてしまう。西洋が東洋を征服し変形させるための信任 状を手に入れるのは、こうした邪悪な——邪悪だが、素晴らしい——習慣の根絶という大義名分においてである」ギアツ『ローカルノレッジ』p.76