【はじめて読む方へ】アービング・ゴッフマン（ゴフマンとも表記：Erving Goffman, 1922-1982）は、カナダ生まれのアメリカの社会学者です。我々の日常の振る舞いの中に社会性を発見する『日常生活における自己提示』（邦訳：行為と演技）、精神病院において社会性を維持する人たちへの描写『アサイラム（収容所）』、他者に対する顕示的／隠匿的な負い目の社会的操作の問題を取り扱った『スティグマ』など、１９５０年代から７０年代にかけて一世を風靡しました。以下では、彼の著作を含んだ年譜を記していますが、その中でも特にアサイラムの著作に関連する事象・時期に焦点が当てられています。

1922　カナダ生まれ（６月１１ 日）。ウクライナ出身の ユダヤ人移民の子供として。

1926　フォン・ノイマン（John von Neumann, 1903-1957）、戦略ゲームに関する理論的論文を発表（２年後に出版）。 マッチペニー・ゲーム（２枚のコインを投げて同じ側だったら片方のプレイヤー、異なる場合はもう一方のプレイヤーが勝利する）において、同等の思考をもつ 相手に勝利することは、自分の意向を明らかにしないことのみばかりでなく、相手の意向を推量しないことであることを指摘する。

1935　ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』

1940　パーソンズとシュッツの間 で往復書簡が交わされ ていた。

1944　モルゲンシュテルンとノイマン『ゲーム理論と経済行動』原稿完成。この 出版の 意義は、経済的意思決定における人間の心理学的側面が定量化し説明可能とする道を切り開いたことである。

1945　トロント大学卒業し、シカ ゴ大学大学院に入学。 仕事と職業に関するEverett Hughesの授業の中ではじめて「全体的施設（total institution）」に ついて聞く。

1949　シカゴ大学修士号（修士論 文：ソープオペラ・ラ ジオ番組の聴取者の反応について の研究）

1949　12月〜1951年5月 （約18か月）シェット ランド諸島Unst島に滞在し、フィールドワーク：農業技術に興味をもつアメリカ人として振 る舞う。［→彼が自分の調査の中で自己提示の問題を実践していたことがわかる］［"His mentor, W. Lloyd Warner"[Smith 2006:13]］。

1951年5月　パリに移動、学位論 文を仕上げる（パ リ＝マリノフスキー におけるカナリア諸島に相当？：池田光穂のいうゴ フマンのフレンチ・コネクション）

1952　アンジェリカ・スカイ ［Angegelica Choate, [Smith 2006:8]］と結婚（1952-3 University of Chicago, Division of Social Sciences, Assistant）［当時23歳のAngelica Choateとシカゴで結婚（翌1953年息子トム 出産）: "Coolin the mark out: Some aspects of adaptation to failure," Phychiatry 15:451-63.］

1952　ガーフィンケル（Harold Garfinkel, 1917-2011）学位論文『他者の知覚（"The Perception of the Other: A Study in Social Order"）』（ハー バード）

1950年代　NIMH、精神病 研究と精神病患者の増 大を抑制する研究に多額の援助

1953　シカゴ大学学位（12 月）、指導教官ロイド・ ウォーナー、エヴァレット・ヒューズ［学位請求論文（Communication and Conduct in an Island Community.）申請に成功（ロイド・ウォーナー、エヴァレット・ヒュ ーズの審査）／The Presentation of Self in Everyday Lifeのドラフ ト作成に着手、学位取得後、シカゴでエドワード・シルズのリサーチ・ アシスタントになる。］

【証言】

"I settled down in the community as an American college student interested in gaining experience in the economics of island farming. Within these limits I tried to play unexceptional and acceptable role in community life. My real aim was to be an observant prticipant, rather than a participating observer.(1953a:2＝ゴッフマンの博士論文)［引用は Smith 2006:24］。

1953-54　National Institute of Mental Health, Bethesda, Md．

1954　ベセスダ、ワシントン Ｄ.Ｃ.精神病院研究に着 手(visiting scientist, 1954-57; University of California, Berkeley,)

1954　ガーフィンケル、秋学期よ りＵＣＬＡで教鞭につ く

1955-6　セント・エリザベス病 院［エズラ・パウンドEzra Weston Loomis Pound 1945-1958年に入院］

1955　ポール・ラザスフェルドとモリス・ローゼンバーグ共著編『社会調査の言 語：社 会調査 方法論読本』出版（→関連リンク）

1956　Presentation, Edinburgh Social Sciences Research Center, Monograph No.2(The Presentation of Self in Everyday Life (monograph), University of Edinburgh Social Sciences Research Centre, 1956, revised and expanded edition, Anchor Books, 1959.)

1956　Garfinkel, Conditions of successful degradation ceremonies.

1956.10　Group Processに関する会議（プリンストン大・ジョサイア・メイシー二世財団）出席、最初の精神病院研究発表

1950年代後半？　アンジェリ カ夫人精神の変調（躁 鬱）

1958　University of California, Berkeley, Assistant Professor(~59)

1958　William Caudill, The Psychiatric Hospital as a Small Community. Canbridge: Harverd University Press（Caudillの博士論文？）

1958-60　Clifford Geertz, カリフォルニア大学バークレー校助教授（assistant professor)

1958 Harvey Sacks(1935-1970), バークレーでシェグロフ、サドナウ、Ｒ．ターナーらとゴフマン理論に関する研究会を開始する。

1959　 Presentation..., Dobleday edition (Associate professor, UCB, 1959-62)

1961　Asylums（Anchor edtion）[Asylums: Essays on the Social Situation of Mental Patients and Other Inmates, Anchor Books, 1961, Doubleday (New York City), 1990], Encounter (Bobbs-Merrill)[Encounters: Two Studies in the Sociology of Interaction, Bobbs-Merrill, 1961.]

［「（私の）関心の中心は自己の 構造について社会学 的解釈を展開すること」『アサイラム』p.v.）］

1962　Professor of sociology, UCB, 1962-68

1962　カッコーの巣の上で（ケン・キージー）

1963　Stiguma (Prentice-Hall)[Stigma: Notes on the Management of Spoiled Identity, Prentice-Hall, 1963.], Behavior in Public Places (The Free Press)[Behavior in Public Places: Notes on the Social Organization of Gatherings, Free Press of Glencoe, 1963.] ()

1963 Sacks, Sociological Description.（サックスは翌年までロス自殺防止センターで研究スタッフとしてかかわる→「会話データの利用法」）

1964　アンジェリカ夫人、自 殺

1964　秋、バークレーでフリースピー チ運動はじまる（→Remembering Erving Goffman,  interview with Dean MacCannell）

1966　サックス、学位論文 The search for help : no one to turn to（UCバークレー）

1966-7　ハーバード国際問題研究所（Ｈ・キッシンジャーがいた）でサバティカル休暇

1967　Interaction Ritual: Essays on Face-to-Face Behavior, Doubleday, 1967.

この年の暮れに H. Garfinkel, Studies in Ethnomethodology が出版される。

1968　ペンシルバニア大学ベン ジャミン・フランクリン記念講座教授(〜1982)

1969　Strategic Interacion (Penn. Univ.Press)[Strategic Interaction, University of Pennsylvania Press, 1969.]［サバティカル時代の研究成果］

Robert Strange McNamara（1916-2009）

1971　Relations in Public: Micro-Studies of the Public Order, Basic Books, 1971.

1974　Frame Analysis: Essays on the Organization of Experience, Harper, 1974.

1975　サックス交通事故で死亡

1977-78　 Guggenheim fellowship

1979　Gender Advertisements, Harper, 1979.

1981　Forms of Talk, University of Pennsylvania Press, 1981.

1981-82　アメリカ社会学会会 長

1982　フィラデルフィアで死去 （１１月１９日）20日 という主張もある（死因は胃がん）

1997 The Goffman Reader, edited and with preface and introduction by Charles Lemert and Ann Branaman, Blackwell (Cambrigde, MA), 1997.

2006 Erving Goffman.(key sociologists series). by Greg Smith. London: Routledge.

※この年表は、アサイラムの著作に関連する事象・時期におもにその焦点が当てられています。文献リストも御参照ください。

■サイト外リンク（外れている場合もあります）

• Erving Goffman, by B. Diane Blackwood
  

■　関連ページ

• ゴフマンのフレンチコネクション
• Virtual Goffman
• ゴフマン（ゴッフ マン）文献リスト
• ゴッフマン著作の検討
• 自己との会話、あ るいは言説の調理［学］入門
  




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