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民俗病因論

Folk Etiology, Causality of Illness

民俗病因論(みんぞく・びょういん・ろん)とは、非 近代医療の専門家やふつうの人びと(folk)が考える、病気の原因についての理論である。この理論は、必ずしも科学的に「正しいか否か」という観点で判 断されるべきでなく、「人びとがそのように指摘」する実態のことをいう。

民俗病因論が、近代医療のがもつような病理学のよう に体系的なものなのか非体系的なもの——近代医学にも「症候群」のように非体系的な説明も多い——かに関わらず、事例を通して、医療人類学者は、それを我 々にわかりやすいように「記述」することができる。また、西洋社会も含めて、多くの民俗病因論には、病気の定義の範疇が、不幸をも含む広く災いの概念を包 摂し、また、それが治癒される時にも、狭義の治療を含む、癒しや秩序の回復などのテーマが多くみられる。

ロバート・マーフィーが説明する、ムンドゥルクの人 たちの病気の説明に耳を傾けてみよう!

「ムンドゥルク族をはじめ多くの南米インディアン社 会においては、健康に対する最も重大な脅威は社会秩序の混乱からやって来るのだが、特に、社会的に孤立し悪意に満ちている個人——ムンドゥルクのいう「誰 に対しても怒っている者」——の行動に起因する、と信じられている。病気のほとんどは、ムンドゥルクによれば、悪い呪術師(シャーマン)たちが「カウシ」 という名の霊力をもっ物体を製造し、それが人々の体中に入ることによって起こる。そこでよいシャーマンが呼ばれてマッサージや吸引法で「カウシ」を除去 し、その上で薬草を処方して損傷を癒そうとする。村に多くの病人が出た場合には一番すぐれたシャシャーマンが出て、災いをもたらした邪術師(ソーサラー) が誰かを名指ししなければならない。名指しされたものは結局処刑される。罪の宣告、そして処刑はコミュニティ全体の集団行動として行なわれる。こうしてコ ミュニティに社会秩序と健康が回復されるわけだ。/邪術師と彼があやつる邪術(マジック)というのはひとつの比喰であり寓話である。いかに病いというもの が人間の想像力に対して支配力をもっているか、そして逆に想像力がいかに病いを使って秩序という問題を象徴的に表現するか、これらのことをこの寓話は教え ている」(マーフィー 1992:46-47)。

ハイチにおける下痢性疾患の民俗病因論の事例は、近代医療の公衆衛生プロジェクトにとっても、計画を人びとの 認知構造に適合させるためにも、重要であることを示している。

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