社会は退歩する
Rückschritte der Gesellschaft
解説:池田光穂
ヴァルター・ベンヤミンの「歴史の概念について」を読んでいたら、この言葉「社会の退歩 (regression of society / Rückschritte der Gesellschaft)」が飛び込んできました(テーゼのXI)。
中央アメリカのパレンケやティカル、あるいはコパンの古代マヤの遺跡を歩いて いた時にいつも「文明はいつか滅びるものだ」と感じてました。
その後の、グアテマラの内戦に関する人々の記憶や、原爆や環境汚染の被害の苦痛の問 題を考える機会がふえ、授業や講演で話すようになりまし た。
そのような語りの聴衆からうけた質問とやりとりは次のようなものでした。
——人間の歴史がこのような苦しみに満ちていることに驚きです。人間の相互からの不信と 憎しみはなくらないものなのでしょうか?
「人間の相互不信や憎しみは、人間が生きる限りなくなりません」。
——えっ? そうなれば人間の未来は希望なしなのですか?
「そうとも言えません。憎しみは普遍的で永く長く続くものですが、同時に、希望や赦し、あるいは癒しというものもなくなることはありま せん。人間の歴史が終わっても、地球は残りつづけるでしょう」。
このように思った瞬間、我々は儚い希望に自分の未来を仮託することができ、生きるための力が湧いてくるのです。
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