印刷文献の引用方法
コンピュータのワードプロセッサーが普及して、大量の印刷情報すなわち文献を引用することは、学 術生産のみならず、ビジネスの現場においても当たり前になりました。
文献の表記法の確立は、今日の学術生産において重要な課題になっています。
それだからこそ、文献を的確に表記して、引用の根拠を示すことは学生や研究者のみならず、一般市 民にとっても重要な義務課題になりつつあります。
このページは、池田光穂が作った学術論文 執筆要項からの部分引用です。全体像を知りたい方は、下記のオリジナル・ページ(ないしは リンクする部分)にアクセスして確認しておいてください。
印刷文献の引用の基本的なやり方だけを知りたい方は、このページだけで充分です。
オンライン文献については、こちらで引用 方法を述べてあります。
◆ 学術論文執筆要項 ◆ オンライン文献の引用方法
なおこのページで主張している内容は、比較的社会的合意を得やすいフォームに従っていますが、あ くまでも推奨で参照できうる範囲のことしか記していません。また、より簡便で正確な方法がある可能性があります。
他人の著作から、ことわりなしで抜き書きすることはできません (→その根拠:剽窃について)。文中に引用する際には、引用符などを使って、正確に引用しま す。
本文中および注の文中に下記のようにいれてください。
[著者名□刊行年:ページ数]。
□(←四角のスペース)に関する説明:上記の事例では、欧 文名と発行年の間には半角スペースの空きがあります。また二番目の日本語表記名と発行年の間には全角スペースの明きがあります。
例)「……」と論じた[Geertz 1973:5-6]。
例)「……」と論じた[ギアツ 1995:126-7]。
【よくある誤りと留意点】
文末に[括弧]が入る時は、[括弧]を閉じてから文章を止めるための丸(。)をつけま す。文章を止めてから[ギアツ 1995:126-7]を入れるのではありません。これは日本 語の論文における独特の方法です。英文では、(丸括弧)の前や“ダブルクオーテーショ ン”で閉じる前にピリオド(.)がつけられます。
オンライン文献の引用についてはこちらでリンクした先に記しています。
同一文献から何度も引用する場合も、Ibid、op cit. 上掲書などとせずに、上記方式の表記をくりかえしてください。(→略記法はこちらです)
もし仮に、引用している文章や用語がおかしいけれども、引用に値すると判断した時には(マ マ)――英文の場合は(sic)――を挿入して、引用した文章をそのまま正確に引用したことを表示します。
例)「聖徳太子の高血圧の病体(ママ)メカニズムからそういえる」と書いている[黒山 1963:251]。
※この正しい表記は「病態」ですが、原典の著者の黒山さん(架空)がそう書いているので、そ のまま引用した証拠として、引用者は「自分は間違っていないよ」ことを(ママ)――ないしは半角で(ママ)――という表現で宣言するのです。
ただし、明らかに誤りで、そのまま引用したくない時に、次のような表記法が可能になります。
例)「聖徳太子の高血圧の病態メカニズムからそういえる」と書いている[黒山 1963:251;ただし病態は正しい表記に変えた]。
このやり方は、引用にする典拠文献が、ひどい訳文や翻訳で引用したくない時に、原文を参照で きる時に限り、次のような表記法により、こだわりなく引用することができます。
例)[ギアーツ 1985:45-6, ただし訳文は一部変えた]
孫引きはあまりおすすめできませんが、どうしても必要である場合は次のようにして、孫引きし たことを正直に白状します(フェアープレーの精神!)。
例)[Brantley 1981:256, ただし引用は慶田 2002:15]
この表記が意味することは、「オリジナルの文章は、ブラントレーの1981年の著作の 256ページにあるが、実際には、慶田の2002年の論文(ないしは著作)の15ページから引用しました」と正直に典拠を白状していることです。ここで注 意しなければならないことは、文献リストには、慶田の論文のみならず、ブラントレーの著作[Brantley 1981]を載せておかねばならないということです。もちろん将来的にはオリジナルの文献をチェックすることが必要です。
欧文の本や雑誌『 』で、欧文で書かれた論文名を「 」で引用するケースがありますが、これ は滑稽です。欧文の書名・雑誌名の引用のスタイルに従い、ダブルクオーテーションやイタリック、ないしはクオーテーションマークで文中に挿入するほうが、 より自然に見えます。
例)
【誤】『Interpretation of Cultures』
【正】"Interpretation of Cultures" ないしは Interpretation of Cultures
短い文章は引用符である「 」で引用します。
高校までの国語教育での因襲的作法では、シンプルなカギ括弧(「」)の中身にさらにカギ括弧 がある場合は、二重カギ括弧で表記しますが、学術論文では、そのような作法は採用しません。引用文にカギ括弧がある場合は、その括弧の型式を尊重し、その まま括弧をつづけます。その理由は、最初と最後のカギ括弧はあくまでも、引用する宣言であり、その括弧に囲まれた文章は、正確に引用する学問上の要請があ るからです。
例)
【誤】「『クレイジー』な国日本を理解しよう」という副題のついた黒川[2002]の著作 は……。
【正】「「クレイジー」な国日本を理解しよう」という副題のついた黒川[2002]の著作 は……。
引用する文章が数行におよぶ場合や、3つ以上のセンテンスがあ る場合は段落を下げて引用したほうがよい場合があります。
文中で省略する時には……(てんてん)を使って省略することができます。ただし、前にある条 件節を省略した場合など、引用文を……(てんてん)で始めるケースもありますが、この表記は好ましくありません。前に省略されていようがいまいが、引用文 はストレートに始まっているからです。この場合は、引用者が引用文全体のコンテキスト(文脈)を類推して、オリジナルの著者から公平な観点から引用すべき です。……を使えばよいという判断ではなく、必要かつ最小限の引用を心がけましょう。
段落下げ方法による引用文を表記する場合、文全体に括弧(「 」)を付けるか、否かは引用者 の好みで自由です。しかし、もしある書記法を採用したら全文がそのような原則で書き続けねばなりません。また引用文全体を文字のポイントを小さくする方法 もありますが、あくまでも本文で引用しているために、文字のポイント数やフォントは変えないほうがよいでしょう。
表記法)
本文_____________________
_______________________
]……一行分あけます
ここに引用文が入る__________
________[ギアーツ 1987a:6]。
]……一行分あけます
本文_____________________
例)
そこでギア ーツはこれまでの文化の定義を離れ、文化理論において最も強く影響を受けたマックス・ウェーバーを援用して新し い文化概念を打ち出した。文化を研究することがその文化の定義如何によって異なることは必然であり、人類学者は 文化が何であるかを明らかにしておくことが必須となってくる。次の一節は、ギアーツがウェーバーを援用して述べ た文化の定義である。
私が採用する文化の概念…は本質的に記号論的なものである。私はマックス・ウェーバーと 共に、人間は自分自身が はりめぐらした意味の網の目の中にかかっている動物であると私は考え、文化をこの網として捉える[ギアーツ 1987a:6]。
ギアーツは文化を「意味の網の目」という。この「意味」(主にmeaning、もしくは significanceかimport)につい ては「文化体系としての宗教」において詳しく述べられおり、正確には「象徴」(symbol)によって運ばれる「意 味」である。したがって文化とは、象徴によって運ばれる意味の集合体ということになる。
※この文章の実例は、山添[Online, yama03.html]よりとりました。
【引用文献】
山添響子「クリフォード・ギアツ研究」(第3章)
http://le081.let.kumamoto-u.ac.jp/htmlfold/yama03.html (2004年1月7日)
※この表記法は「オンライン文献 の引用法」に準拠しました。現在のサイトは廃止されましたので、リンクしません。あしからずご了解ください。
なお、文献リストの表記の仕方は次にリンクするページを参照してください。