か ならず読んでください

記号の世界

The world of signs

ソシュールさん

池田光穂

記号とは、なにかを指し示すことをとおして意味を発生させるもののことである。

言語や言語に類する人間の実践作用によって生まれる意味の体系について調べるソシュール派の学問を「記号学=セミオロジー(semiology)」という。言語学は、記号学の研究の重要な領域のひ とつである(→チャールズ・サンダー・パースの記号過程=セミオーシスの研究は、記号論=セミオティクス)。

記号があるところには(フェルディナンド・ド・ソシュールFerdinand de Saussure, 1857-1913]という言語学者によると)、記号作 用部=意味するもの(シニフィアン, significant(Eng), signifian)と、記号意味部=意味されるもの(シニフィエ, signified(Eng.), signifie')、の2つの要素がみつかる。

日本語で「犬(いぬ)」という「意味するもの」があるが、これを聞いた日本語を理解する人 は、「ワンワン吠えたり、尻尾をふったり、よだれをたらしたりする動物」のことを理解する。この後者が「意味される」ものである。

英語ではDog(スペイン語ではperro, perra [前者は雄犬])であることを現在では誰もが知っていることであるが、犬と呼んだり、dogと呼んだりすることは、その固有の言語の規則であって、犬とい う名詞に「意味されるもの」を結びつける必然性というものはない。

これは、当たり前のように思えるが、それは我々がソシュールらが構築した常識の世界を生きて いるからで、言語のもつ規約性(人は言語による約束に従うことを通して意味を交換することができること)を指摘した重要な発見であると言われている。

Ferdinand de Saussure, 1857-1913, Course in Genaral Lingustics, p.12, 1959

一般言語学講義について

「一 般言語学講義(フランス語: Cours de linguistique générale)は、フェルディナン・ド・ソシュールが1906年から1911年にかけて行った講義の内容を、シャルル・バイイとアルベール・セシュエ が編集し出版された本である。ソシュールの死後1916年に出版され、20世紀前半にヨーロッパ、アメリカで栄えた構造主義言語学の起こりと一般にみなさ れている。 ソシュールは特に比較言語学に興味を持っていたが、一般言語学講義ではより一般的に適用できる構造主義理論を発達させている。ソシュール自身の手稿を含ん だ原稿が1996年に見つかり、Writings in General Linguisticsとして出版されている。」

●ソシュール年譜(日本語ウィキペディアによる)

1857 スイスのジュネーブの名門家に生まれる

n.d.  幼くもドイツ語、英語、ラテン語、ギリシア語を習得

1871 「ギリシア語、ラテン語、ドイツ語の単語を少数の語根に集約するための試論」

1872 コレージュ・ル・クルトル入学

1873 ギムナジウム入学

1875 ジュネーブ大学入学、化学と物理学を勉強

1876 パリ言語学会(Société de linguistique de Paris)に入会

1878 7月に、ソシュールはライプツィヒを離れベルリン大学に移った。

1879 再びライプツィヒ大学に戻る

1880 2月に、学位論文「サンスクリットにおける絶対属格の用法について」[注釈 8]を提出(博士号)。10月からパリの高等研究院の学生

1881 10月にはブレアルにその才能を認められて、「ゴート語および古代高地ドイツ語」の講師

1887-1888 ギリシア語とラテン語の比較文法を教える

1889 リトアニア語を講義。1年間の休暇を取り、故郷ジュネーブへと戻る

1891 10月にジュネーブ大学の比較言語学特任教授

1892 マリー・フェッシュと結婚。長男のジャック出生。

1894 次男のレーモン出生。ジュネーブ大学で第10回東洋語学者会議が開催され、ソシュールは事務局長

1906 ジュネーブ大学で言語学の教授であったヴェルトハイマーが退官すると、ソシュールは一般言語学の講義をおこなう。

1907以降 サンスクリットと印欧諸語について講義、有名な一般言語学についての講義は晩年の1907年、1908-1909年、1910- 1911年の3回しかない

1912 夏には、健康を害して療養

1913 2月22日に死去した。55歳没。


リンク

文献

その他の情報

"1. Sign, Signified, Signifier Some people regard language, when reduced to its elements, as a naming-process only—a list of words, each corresponding to the thing that it names. For example : This conception is open to criticism at several points. It assumes that ready-made ideas exist before words (on this point, see below, p. 111) ; it does not tell us whether a name is vocal or psychological in nature (arbor, for instance, can be considered from either viewpoint) ; finally, it lets us assume that the linking of a name and a thing is a very simple operation—an assumption that is anything but true. But this rather naive approach can bring us near the truth by showing us that the linguistic unit is a double entity, one formed by the associating of two terms." Saussure, COURSE IN GENERAL LINGUISTICS, p.65.


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