民族誌とエスノグラフィティ
Ethnography, Ethno-Graphy, and EthnoGraffito (pl. ethnograffiti)
By David Diaz Martinez(?) from the FaceBook, "Banksy" fun site.
今日ハ民族誌ニツイテ書ク。
■ 民族誌の辞書的定義
民族誌(みんぞくし, ethnography[英])とは、ある民族(ethnos, ethnic group)——ここでは一時的ないしは恒常的な集団をなす人たちと便宜的に定義する——についての記述(グラフィー, -graphy)である。ある集団についての記述は、その人たちと直接接触しないかぎり十分に実現することができないので、この記述をなすためには、その 人たちと接触したり、一緒に生活時間をともにしたりする記録や記憶を中心とする経験——これをフィールドワークという——が不可欠である。
■ 広義の民族誌、狭義の民族誌
なおこれに類したルポルタージュやノンフィクションと呼ばれるもこの定義にあてはまるこ とになる(広義の民族誌)。しかしながら情報の正確さや信頼性を担保するために、方法論や資料(データ)の解釈などが含めた学術的な記録を、狭義の民族誌 =エスノグラフィと理解し、ある程度の線引きをしておくことも必要になる。
つまり、民族誌はなんらかのフィールドワークをもとにした、ある人々(集団)についての 学術的な記録のこと、というのが民族誌についてのより正確な定義になる。
■ エスノグラフィト・エスノグラフィティ(ethno- graffiti, etno-graffito の複数形)
引用である→「落合一泰(1987)は自らの著書にエスノグラフィティ(ethno- graffiti, etno-graffito の複数形)つまり、民族誌的書き付け、ないしは落書きというタイトルを附したが、もし狭義の民族誌に求められる学術的な正確さより、着想のゆらぎをその著 作に込めようとしているのであれば、このネーミングは、民族誌のあり方を反省したり、脱構築するための契機になるかもしれない」(はてなキーワード「民族誌」)。
■ 民族誌読解に関わる、ある審問
誰かのある民族誌を読解するにあたり、一般におこなわれているのと逆のやり方、つまり、 この民族誌ををある歴史の帰結あるいは民族誌が書かれた当時の時代の[人類学の]様式の表象としてではなく、未来への発展を約束しているものとしてとらえ ると、それはどのように読まれるべきなのだろうか?
■ オートエスノグラフィー(auto-ethnography)分析
「オートエスノグラフィとは、
自叙伝や闘病記のように、自分自身が参与したことを、自分自身の語りを通して表現した(広義の)民族誌的メディ
アのことである。この概念は、文化人類学的分析にとって機能的な定義である。したがって、この資料は、異なった研究者にとっては、異なった資料体になるこ
と
は明らかである。つまり、犯罪学者にとっては、犯罪分析の資料、心理学者にとっては、本人のアイデンティティや行動特性を理解する資料となる。オートエス
ノグラフィーの分析が、人類学にとって比較的難解であるのは次のようなことからである。つまり、自己と他者との峻別や、この他者
表象をめぐるさまざまな学問的理解という、一般の(狭義の)民族誌的メディアにかかわる資料体そのものの理解が複雑な上に、さらに、自己表象の問題という
新たな分析視角加わるからである」(→出典「オートエスノグラフィー分析」)
■ 民族誌を、既存のマニュアルに従って書く必要はあるか?
質問:民族誌を、既存のマニュ アルに従って書く必要はあるか?
僕のこたえ:ないと思う。みんなが創意工夫にもとづいて自由なスタイルを試みたまえ! エス
ノグラフィーの一番大切なところは、それを書くために協力してくれた、あらゆる人に対して、君の観察、思考と分析、そして、君の思いが、どのような形でも
いいので、伝わることを保証する回路をかならずひとつ設けること。これにつきると思う。(→「研究倫理入門」)
● エスノグラフィーに関する書物
(1) ギアーツ『文化の解釈』1973年/「厚い記述」(thick description)/The interpretation of cultures : selected essays / by Clifford Geertz, New York : Basic Books , c1973
(2) Writing culture : the poetics and politics of ethnography / edited by James Clifford and George E. Marcus, 25th anniversary ed. / with a foreword by Kim Fortun. - Berkeley, Calif. : University of California Press , [2010], c1986.
(3) フィールドワークの物語 : エスノグラフィーの文章作法 / ジョン・ヴァン=マーネン著 ; 森川渉訳、東京 : 現代書館、1999年/Tales of the field : on writing ethnography / John van Maanen. Chicago : University of Chicago Press, 1988.
・3つのエスノグラフィーのパターン「文化表現の3つの形式またはジャンルとしての、(1)現実主義的物語、(2)告白的物語、(3)印象主義的物語 」という叙述法。
(4) The ethnographic imagination : textual constructions of reality / Paul Atkinson, Abingdon, Oxon : Routledge , 2011.
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クレジット:「民族誌とエスノグラフィティ:民族誌読解に関わる、ある審問」 Ethnography, Ethno-Graphy, and EthnoGraffito (pl. ethnograffiti), Mitzub'ixi Quq Chi'j, 2016
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