日本におけるアイヌ先住民と人権
Japanese Indigenous
people and "non-Indigenous" people: An Assingment for Scholar and
Students
解説:池田光穂
「人種問題」を考える時には、しばしば当事者と周囲の人たちの「人種意識」が焦点化され課題になります。「人種意識」が歪んだ形で表出するの が、マジョリティによるマイノリティへの迫害つまり「人種差別」です。次の以下の文章を読んで【課題】について考えてください。
このページの名称も、当初は「日本における先住民問題」としました。しかし、もし、日本国政府が、日本国内における他の国民と先住民とが対等で
平等な「法における平等」と「先住民の集団的自己決定権」を日本における憲法に抵触しない限り認められていたら「先住民問題」など(論理的に考えて)存在
しなくなるはずです。そのため、ページの名称を「日本における先住民[問題]」としました(2019年2月27日)。
■1930年代
バチェラー八重子『若きウタリに』1931)
「カントオッタ アイヌカラカンチ ありといふ うちなほしてよ 痛めるウタリを」——バチェラー八重子(カントオッタ=天上の神の國に、 アイヌカラカンチ=人間をつくる鍛冶の神)
「ウタシパノ ウコイキプウタリ レンカプアニ アイヌピリカプ モシリアエケシケ」※——バチェラー八重子(※〈ウタリ〉=同胞;〈ウタ シパノ〉=お互 いに;〈ウコイキプウタリ〉=相争う人々;〈レンカプアニ〉=〜のために;〈アイヌピリカプ〉=人々の善良なる者;〈モシリ〉=國・國土;〈アエケシケ〉 =〜に尽く)《互いに争う人のために 善良なる人々が國土の上に後を絶つか!》
■1942年(ただし想起しながら語ったのは1975年)
「私は、小学校六年間のうちで、楽しかったという想い出は、母に手を引かれて入学したその日のことしかこの胸にのこっていません。私は、 アッ、アイヌなんだな、と気づいたのは三年生の春でした。運動会の練習の時、みんなで丸く輪になって手をつなぎます。この時から私の差別の苦労が始まるの です。私が手をつなぐと両側のシャモの生徒が手を出したがらないのです。シャモということは、これは和人ということです。私がサッと手をつなぐと、アイヌ なんかと手をつなぎたくない、と自分の手をふくのです。それを見た私は、アッ、私はアイヌなんだなあ、と思ったとたん、ベッタリ座りこんでしまいました。
先生は、『お前はどうして稽古をしない』と言う、が早いか往復ピンタです。『先生、◎◎ちゃん、アイヌと手をつな、ぎたくないと言うんで す』と泣きながら大声ぶと、先生は二ヤニヤしながら、『バカヤロー、ちゃんと踊れ!』と痛いゲンコツです。私は死んでしまいたい、と先生の膝にしがみつき ました。先生は、『うるさい!』とほうり落すようにはねとばして、『コラ、ちゃんとできないか』とまたゲンコです。私は本当に目の先、が真暗になったので す。やがて体操の練習が始まりました。泣きくずれながらも、私は体操をしなければなリません。今度は、校長先生が『メノコ歩きのように横に手をふるな』と 教壇の上で子を横に振って見せるのです。生徒は全員大笑いです。私は、その時鉄砲で撃ってやりたいと思ったのです。メノコという言葉は、アイヌ語では女と いう意味に使われていますが、残念ながら、和人の人方(ママ)は差別をする時に使っています。これが私にとって最初の差別であり、和人と社会一般に対する 不信感をいだいた最初のきっかけでもあリます」 (城野口百合子/井上編 1981:ただし引用は榎森 2007:9-10)
■1970年代
アイヌというただそれだけに恋破れ木彫りの熊に生きるを記す——江口カナメ 短歌集『アウタリ』より
■1981年
「私は、この作文の中でみんなに言いたいと思います。『みんなは、人権というものがほんとうにわかっているのだろうか?』ということです。 人権とは、人間が生まれながらにもっている生命・自由・平等の権利ということなのだそうです。しかし、この我が芽室中学には人権がないのです。人びとの平 等がなく、とても差別が多いのです。多すぎるのです。その差別のせいで『仲間はずれ』も多く、私もその中の一人で、私のおじいちゃんは、アイヌ語ペラペラ の『アイヌ』だったのです、が、今私は、みんなにアイヌ、アイヌと言われています。そう言われるだけなら、まだいいと思ってはいますが、アイヌ人だからど うだとうだと言われるのが、私はたまらなくいやです。例をいえば、私のために、芽中の三年生、がかえ歌を二曲つくったりしています。……で『アーイヌ、 アーイヌ、なーぜなーぜアッイッヌツ、いーぬにかまれてアーイーヌ……』とかがあります。私、が三年生の前を通ると、五・六人、がこの歌を大声で歌うので す。……前、芽高の学校祭へいった時、ぜんぜんしらない人たちに、うしろゆびをざされて、『ほら、あの人アイヌよ』といわれたこともあるし、西小へいって 『かえれ、アイヌ』とぜんぜんしらない男子四・五人に石をぶつけられたとともある。芽小にいたころ、一年か二年の子、が私にぶつかって『きつもちわるー い、アイヌにぶつかっちゃったー』とあやまりもせず逃げていったり、ある男の子が女の子を泣かしていたので、ちゅういすると、『アイヌのくせにいばるな』 と言われたことがあります。まだまだ、ぜんぶの例をあげれば、この原稿用紙が百枚あってもたりないかもしれません」(竹内公久枝/井上編 1981:ただし引用は榎森 2007:9-10)。
井上司編著『教育のなかのアイヌ民族:その現状と教育実践』あゆみ出版、1981年.
■2001年
「一九九八年六月、東京都町田市でアイヌプリ(伝統的なアイヌのやりかた)の結婚式が挙げられました。新郎の城幸司さんと新婦の宇佐志穂さ んは七歳から東京に住んでいますが、ふたりともアイヌ民族の誇りのもとに育ちました。関東一円からは多くのアイヌ民族と和人(いわゆる日本人)が祝福に駆 けつけました。式はカムイノミ(神の祈り)で始まりました。結婚するふたりは、カムイ(神)の前でアマムイベ(アマムは穀類のこと、イベは食べを山盛りに して交互に食べ、残さず食べきりました。これによって夫婦として認められるのです。さらにカムイノミをして式は終わりました。アイヌプリの式の後には、ウ エディングドレス姿で指輪の交換も行なわれました。伝統的な式と今風の式、どちらも仲間たちによる手づくりの温かい式でした。お祝のウポポ(歌)とリムセ (踊り)がまり、出席者は喜びを共有しました。そして、仲間たちが前日から用意したアイヌ料理が振舞われました。東京で行なわれた初めてのアイヌプリの結 婚式は、新郎新婦だけでなく出席した多くのアイヌの人々にとっても「希望の式」になったに違いありません」(宇井 2009:7)。
宇井眞貴紀子『アイヌときどき日本人』(増補改訂版)社会評論社、2009年
【課題】
マジョリティの人たちがマイノリティに対して「人種差別」をする行為や感情のなかに、日本国家の先住民統治の〈歴史性〉が刻印されているだ ろうか。歴史的に異なる上の三人の先住民の経験と彼らが作成したそれぞれの文章のなかにある、共通点と相違点を手がかりにして、彼らの人種意識はどのよう に構成されているのか考察してください。
【来週の授業までの予習】
授業は、アイヌと近代国家との関係について簡単に紹介します。予習には上の作文を読んでいただき、必要なメモをとってくる以上の、特段の準 備の必要はありません。
ただし、ここで使われている用語法などについて関心ある方は、各自調べてきてください。
●平成三十一年法律第十六号 アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律
こ こに到達するための2つの重要な先行する法律
2. アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律 (平成九年五月十四日法律第五十二号)
平 成三十一年法律第十六号 アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detai
平成三十一年法律第十六号 アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律 目次 第一章 総則(第一条―第六条) 第二章 基本方針等(第七条・第八条) 第三章 民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置(第九条) 第四章 アイヌ施策推進地域計画の認定等(第十条―第十四条) 第五章 認定アイヌ施策推進地域計画に基づく事業に対する特別の措置(第十五条―第十九条) 第六章 指定法人(第二十条―第三十一条) 第七章 アイヌ政策推進本部(第三十二条―第四十一条) 第八章 雑則(第四十二条―第四十五条) 附則 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるアイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統 等」という。)が置かれている状況並びに近年における先住民族をめぐる国際情勢に鑑み、アイヌ施策の推進に関し、基本理念、国等の責務、政府による基本方 針の策定、民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置、市町村(特別区を含む。以下同じ。)によるアイヌ施策推進地域計画の作成及びその内閣総理大臣に よる認定、当該認定を受けたアイヌ施策推進地域計画に基づく事業に対する特別の措置、アイヌ政策推進本部の設置等について定めることにより、アイヌの人々 が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現を図り、もって全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生 する社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「アイヌ文化」とは、アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた生活様式、音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産及びこれらから 発展した文化的所産をいう。 2 この法律において「アイヌ施策」とは、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)並び にアイヌの人々が民族としての誇りを持って生活するためのアイヌ文化の振興等に資する環境の整備に関する施策をいう。 3 この法律において「民族共生象徴空間構成施設」とは、民族共生象徴空間(アイヌ文化の振興等の拠点として国土交通省令・文部科学省令で定める場所に整 備される国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第三条第二項に規定する行政財産をいう。)を構成する施設(その敷地を含む。)であって、国土交通省 令・文部科学省令で定めるものをいう。 (基本理念) 第三条 アイヌ施策の推進は、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重されるよう、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統等並びに我が国を含む国際社 会において重要な課題である多様な民族の共生及び多様な文化の発展についての国民の理解を深めることを旨として、行われなければならない。 2 アイヌ施策の推進は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができるよう、アイヌの人々の自発的意思の尊重に配慮しつつ、行われなけれ ばならない。 3 アイヌ施策の推進は、国、地方公共団体その他の関係する者の相互の密接な連携を図りつつ、アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活しているこ とを踏まえて全国的な視点に立って行われなければならない。 第四条 何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。 (国及び地方公共団体の責務) 第五条 国及び地方公共団体は、前二条に定める基本理念にのっとり、アイヌ施策を策定し、及び実施する責務を有する。 2 国及び地方公共団体は、アイヌ文化を継承する者の育成について適切な措置を講ずるよう努めなければならない。 3 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動その他の活動を通じて、アイヌに関し、国民の理解を深めるよう努めなければならない。 4 国は、アイヌ文化の振興等に資する調査研究を推進するよう努めるとともに、地方公共団体が実施するアイヌ施策を推進するために必要な助言その他の措置 を講ずるよう努めなければならない。 (国民の努力) 第六条 国民は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現に寄与するよう努めるものとする。 第二章 基本方針等 (基本方針) 第七条 政府は、アイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。 一 アイヌ施策の意義及び目標に関する事項 二 政府が実施すべきアイヌ施策に関する基本的な方針 三 民族共生象徴空間構成施設の管理に関する基本的な事項 四 第十条第一項に規定するアイヌ施策推進地域計画の同条第九項の認定に関する基本的な事項 五 前各号に掲げるもののほか、アイヌ施策の推進のために必要な事項 3 内閣総理大臣は、アイヌ政策推進本部が作成した基本方針の案について閣議の決定を求めなければならない。 4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。 5 政府は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更しなければならない。 6 第三項及び第四項の規定は、基本方針の変更について準用する。 (都道府県方針) 第八条 都道府県知事は、基本方針に基づき、当該都道府県の区域内におけるアイヌ施策を推進するための方針(以下この条及び第十条において「都道府県方 針」という。)を定めるよう努めるものとする。 2 都道府県方針には、おおむね次に掲げる事項を定めるものとする。 一 アイヌ施策の目標に関する事項 二 当該都道府県が実施すべきアイヌ施策に関する方針 三 前二号に掲げるもののほか、アイヌ施策の推進のために必要な事項 3 都道府県知事は、都道府県方針に他の地方公共団体と関係がある事項を定めようとするときは、当該事項について、あらかじめ、当該他の地方公共団体の長 の意見を聴かなければならない。 4 都道府県知事は、都道府県方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、関係市町村長に通知しなければならない。 5 前二項の規定は、都道府県方針の変更について準用する。 第三章 民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置 第九条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、第二十条第一項の規定による指定をしたときは、民族共生象徴空間構成施設の管理を当該指定を受けた者(次項にお いて「指定法人」という。)に委託するものとする。 2 前項の規定により管理の委託を受けた指定法人は、当該委託を受けて行う民族共生象徴空間構成施設の管理に要する費用に充てるために、民族共生象徴空間 構成施設につき入場料その他の料金(第二十二条第二項において「入場料等」という。)を徴収することができる。 3 前項に定めるもののほか、第一項の規定による委託について必要な事項は、政令で定める。 第四章 アイヌ施策推進地域計画の認定等 (アイヌ施策推進地域計画の認定) 第十条 市町村は、単独で又は共同して、基本方針に基づき(当該市町村を包括する都道府県の知事が都道府県方針を定めているときは、基本方針に基づくとと もに、当該都道府県方針を勘案して)、内閣府令で定めるところにより、当該市町村の区域内におけるアイヌ施策を推進するための計画(以下「アイヌ施策推進 地域計画」という。)を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができる。 2 アイヌ施策推進地域計画には、次に掲げる事項を記載するものとする。 一 アイヌ施策推進地域計画の目標 二 アイヌ施策の推進に必要な次に掲げる事業に関する事項 イ アイヌ文化の保存又は継承に資する事業 ロ アイヌの伝統等に関する理解の促進に資する事業 ハ 観光の振興その他の産業の振興に資する事業 ニ 地域内若しくは地域間の交流又は国際交流の促進に資する事業 ホ その他内閣府令で定める事業 三 計画期間 四 その他内閣府令で定める事項 3 市町村は、アイヌ施策推進地域計画を作成しようとするときは、これに記載しようとする前項第二号に規定する事業を実施する者の意見を聴かなければなら ない。 4 第二項第二号(ニを除く。)に規定する事業に関する事項には、アイヌにおいて継承されてきた儀式の実施その他のアイヌ文化の振興等に利用するための林 産物を国有林野(国有林野の管理経営に関する法律(昭和二十六年法律第二百四十六号)第二条第一項に規定する国有林野をいう。第十六条第一項において同 じ。)において採取する事業に関する事項を記載することができる。 5 前項に定めるもののほか、第二項第二号(ニを除く。)に規定する事業に関する事項には、アイヌにおいて継承されてきた儀式若しくは漁法(以下この項に おいて「儀式等」という。)の保存若しくは継承又は儀式等に関する知識の普及及び啓発に利用するためのさけを内水面(漁業法(昭和二十四年法律第二百六十 七号)第八条第三項に規定する内水面をいう。)において採捕する事業(以下この条及び第十七条において「内水面さけ採捕事業」という。)に関する事項を記 載することができる。この場合においては、内水面さけ採捕事業ごとに、当該内水面さけ採捕事業を実施する区域を記載するものとする。 6 前二項に定めるもののほか、第二項第二号(ハに係る部分に限る。)に規定する事業に関する事項には、当該市町村における地域の名称又はその略称を含む 商標の使用をし、又は使用をすると見込まれる商品又は役務の需要の開拓を行う事業(以下この項及び第十八条において「商品等需要開拓事業」という。)に関 する事項を記載することができる。この場合においては、商品等需要開拓事業ごとに、当該商品等需要開拓事業の目標及び実施期間を記載するものとする。 7 第二項第二号イからホまでのいずれかの事業を実施しようとする者は、市町村に対して、アイヌ施策推進地域計画を作成することを提案することができる。 この場合においては、基本方針に即して、当該提案に係るアイヌ施策推進地域計画の素案を作成して、これを提示しなければならない。 8 前項の規定による提案を受けた市町村は、当該提案に基づきアイヌ施策推進地域計画を作成するか否かについて、遅滞なく、当該提案をした者に通知しなけ ればならない。この場合において、アイヌ施策推進地域計画を作成しないこととするときは、その理由を明らかにしなければならない。 9 内閣総理大臣は、第一項の規定による認定の申請があった場合において、アイヌ施策推進地域計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定を するものとする。 一 基本方針に適合するものであること。 二 当該アイヌ施策推進地域計画の実施が当該地域におけるアイヌ施策の推進に相当程度寄与するものであると認められること。 三 円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。 10 内閣総理大臣は、前項の認定を行うに際し必要と認めるときは、アイヌ政策推進本部に対し、意見を求めることができる。 11 内閣総理大臣は、第九項の認定をしようとするときは、その旨を当該認定に係るアイヌ施策推進地域計画を作成した市町村を包括する都道府県の知事に通 知しなければならない。この場合において、当該都道府県の知事が都道府県方針を定めているときは、同項の認定に関し、内閣総理大臣に対し、意見を述べるこ とができる。 12 内閣総理大臣は、アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項(第四項から第六項までのいずれかに規定する事項をいう。以下同じ。)が記載されている 場合において、第九項の認定をしようとするときは、当該特定事業関係事項について、当該特定事業関係事項に係る国の関係行政機関の長(以下単に「国の関係 行政機関の長」という。)の同意を得なければならない。 13 内閣総理大臣は、アイヌ施策推進地域計画に内水面さけ採捕事業に関する事項が記載されている場合において、第九項の認定をしようとするときは、当該 アイヌ施策推進地域計画を作成した市町村(市町村が共同して作成したときは、当該内水面さけ採捕事業を実施する区域を含む市町村に限る。)を包括する都道 府県の知事の意見を聴かなければならない。 14 内閣総理大臣は、第九項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。 (認定を受けたアイヌ施策推進地域計画の変更) 第十一条 市町村は、前条第九項の認定を受けたアイヌ施策推進地域計画の変更(内閣府令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、内閣総理大臣 の認定を受けなければならない。 2 前条第三項から第十四項までの規定は、同条第九項の認定を受けたアイヌ施策推進地域計画の変更について準用する。 (報告の徴収) 第十二条 内閣総理大臣は、第十条第九項の認定(前条第一項の変更の認定を含む。)を受けた市町村(以下「認定市町村」という。)に対し、第十条第九項の 認定を受けたアイヌ施策推進地域計画(前条第一項の変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定アイヌ施策推進地域計画」という。)の実施の 状況について報告を求めることができる。 2 国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合には、認定市町村に対し、当該特定事業関係事項の実施の 状況について報告を求めることができる。 (措置の要求) 第十三条 内閣総理大臣は、認定アイヌ施策推進地域計画の適正な実施のため必要があると認めるときは、認定市町村に対し、当該認定アイヌ施策推進地域計画 の実施に関し必要な措置を講ずることを求めることができる。 2 国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合において、当該特定事業関係事項の適正な実施のため必要 があると認めるときは、認定市町村に対し、当該特定事業関係事項の実施に関し必要な措置を講ずることを求めることができる。 (認定の取消し) 第十四条 内閣総理大臣は、認定アイヌ施策推進地域計画が第十条第九項各号のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、その認定を取り消すことができ る。この場合において、当該認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されているときは、内閣総理大臣は、あらかじめ、国の関係行政機関の長に その旨を通知しなければならない。 2 前項の規定による通知を受けた国の関係行政機関の長は、同項の規定による認定の取消しに関し、内閣総理大臣に意見を述べることができる。 3 前項に規定する場合のほか、国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合には、第一項の規定による認 定の取消しに関し、内閣総理大臣に意見を述べることができる。 4 第十条第十四項の規定は、第一項の規定による認定の取消しについて準用する。 第五章 認定アイヌ施策推進地域計画に基づく事業に対する特別の措置 (交付金の交付等) 第十五条 国は、認定市町村に対し、認定アイヌ施策推進地域計画に基づく事業(第十条第二項第二号に規定するものに限る。)の実施に要する経費に充てるた め、内閣府令で定めるところにより、予算の範囲内で、交付金を交付することができる。 2 前項の交付金を充てて行う事業に要する費用については、他の法令の規定に基づく国の負担若しくは補助又は交付金の交付は、当該規定にかかわらず、行わ ないものとする。 3 前二項に定めるもののほか、第一項の交付金の交付に関し必要な事項は、内閣府令で定める。 (国有林野における共用林野の設定) 第十六条 農林水産大臣は、国有林野の経営と認定市町村(第十条第四項に規定する事項を記載した認定アイヌ施策推進地域計画を作成した市町村に限る。以下 この項において同じ。)の住民の利用とを調整することが土地利用の高度化を図るため必要であると認めるときは、契約により、当該認定市町村の住民又は当該 認定市町村内の一定の区域に住所を有する者に対し、これらの者が同条第四項の規定により記載された事項に係る国有林野をアイヌにおいて継承されてきた儀式 の実施その他のアイヌ文化の振興等に利用するための林産物の採取に共同して使用する権利を取得させることができる。 2 前項の契約は、国有林野の管理経営に関する法律第十八条第三項に規定する共用林野契約とみなして、同法第五章(同条第一項及び第二項を除く。)の規定 を適用する。この場合において、同条第三項本文中「第一項」とあるのは「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平 成三十一年法律第十六号)第十六条第一項」と、「市町村」とあるのは「認定市町村(同法第十二条第一項に規定する認定市町村をいう。以下同じ。)」と、同 項ただし書並びに同法第十九条第五号、第二十二条第一項及び第二十四条中「市町村」とあるのは「認定市町村」と、同法第十八条第四項中「第一項」とあり、 及び同法第二十一条の二中「第十八条」とあるのは「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律第十六条第一項」とする。 (漁業法及び水産資源保護法による許可についての配慮) 第十七条 農林水産大臣又は都道府県知事は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された内水面さけ採捕事業の実施のため漁業法第六十五条第一項若しくは第二 項又は水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)第四条第一項若しくは第二項の規定に基づく農林水産省令又は都道府県の規則の規定による許可が必要 とされる場合において、当該許可を求められたときは、当該内水面さけ採捕事業が円滑に実施されるよう適切な配慮をするものとする。 (商標法の特例) 第十八条 認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業については、当該商品等需要開拓事業の実施期間(次項及び第三項において単に「実施 期間」という。)内に限り、次項から第六項までの規定を適用する。 2 特許庁長官は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業に係る商品又は役務に係る地域団体商標の商標登録(商標法(昭和三十四年法 律第百二十七号)第七条の二第一項に規定する地域団体商標の商標登録をいう。以下この項及び次項において同じ。)について、同法第四十条第一項若しくは第 二項又は第四十一条の二第一項若しくは第七項の登録料を納付すべき者が当該商品又は役務に係る商品等需要開拓事業の実施主体であるときは、政令で定めると ころにより、当該登録料(実施期間内に地域団体商標の商標登録を受ける場合のもの又は実施期間内に地域団体商標の商標登録に係る商標権の存続期間の更新登 録の申請をする場合のものに限る。)を軽減し、又は免除することができる。この場合において、同法第十八条第二項並びに第二十三条第一項及び第二項の規定 の適用については、これらの規定中「納付があつたとき」とあるのは、「納付又はその納付の免除があつたとき」とする。 3 特許庁長官は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業に係る商品又は役務に係る地域団体商標の商標登録について、当該地域団体商 標の商標登録を受けようとする者が当該商品又は役務に係る商品等需要開拓事業の実施主体であるときは、政令で定めるところにより、商標法第七十六条第二項 の規定により納付すべき商標登録出願の手数料(実施期間内に商標登録出願をする場合のものに限る。)を軽減し、又は免除することができる。 4 商標法第四十条第一項若しくは第二項又は第四十一条の二第一項若しくは第七項の登録料は、商標権が第二項の規定による登録料の軽減又は免除(以下この 項において「減免」という。)を受ける者を含む者の共有に係る場合であって持分の定めがあるときは、同法第四十条第一項若しくは第二項又は第四十一条の二 第一項若しくは第七項の規定にかかわらず、各共有者ごとにこれらに規定する登録料の金額(減免を受ける者にあっては、その減免後の金額)にその持分の割合 を乗じて得た額を合算して得た額とし、その額を納付しなければならない。 5 商標登録出願により生じた権利が第三項の規定による商標登録出願の手数料の軽減又は免除(以下この項において「減免」という。)を受ける者を含む者の 共有に係る場合であって持分の定めがあるときは、これらの者が自己の商標登録出願により生じた権利について商標法第七十六条第二項の規定により納付すべき 商標登録出願の手数料は、同項の規定にかかわらず、各共有者ごとに同項に規定する商標登録出願の手数料の金額(減免を受ける者にあっては、その減免後の金 額)にその持分の割合を乗じて得た額を合算して得た額とし、その額を納付しなければならない。 6 前二項の規定により算定した登録料又は手数料の金額に十円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てるものとする。 (地方債についての配慮) 第十九条 認定市町村が認定アイヌ施策推進地域計画に基づいて行う事業に要する経費に充てるため起こす地方債については、国は、当該認定市町村の財政状況 が許す限り起債ができるよう、及び資金事情が許す限り財政融資資金をもって引き受けるよう特別の配慮をするものとする。 第六章 指定法人 (指定等) 第二十条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に 行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。 2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の申請をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の規定による指定をしてはならない。 一 この法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者であること。 二 第三十条第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者であること。 三 その役員のうちに、次のいずれかに該当する者があること。 イ 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過し ない者 ロ 第二十七条第二項の規定による命令により解任され、その解任の日から二年を経過しない者 3 国土交通大臣及び文部科学大臣は、第一項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称、住所及び事務所の所 在地を公示しなければならない。 4 指定法人は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣及び文部科学大臣に届け出なければならな い。 5 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。 (業務) 第二十一条 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。 一 第九条第一項の規定による委託を受けて民族共生象徴空間構成施設の管理を行うこと。 二 アイヌ文化を継承する者の育成その他のアイヌ文化の振興に関する業務を行うこと。 三 アイヌの伝統等に関する広報活動その他のアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発を行うこと。 四 アイヌ文化の振興等に資する調査研究を行うこと。 五 アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発又はアイヌ文化の振興等に資する調査研究を行う者に対して、助言、助成その他の援助を行 うこと。 六 前各号に掲げるもののほか、アイヌ文化の振興等を図るために必要な業務を行うこと。 (民族共生象徴空間構成施設管理業務規程) 第二十二条 指定法人は、前条第一号に掲げる業務(以下「民族共生象徴空間構成施設管理業務」という。)に関する規程(以下「民族共生象徴空間構成施設管 理業務規程」という。)を定め、国土交通大臣及び文部科学大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。 2 民族共生象徴空間構成施設管理業務規程には、民族共生象徴空間構成施設管理業務の実施の方法、民族共生象徴空間構成施設の入場料等その他の国土交通省 令・文部科学省令で定める事項を定めておかなければならない。 3 国土交通大臣及び文部科学大臣は、第一項の認可をした民族共生象徴空間構成施設管理業務規程が民族共生象徴空間構成施設管理業務の適正かつ確実な実施 上不適当となったと認めるときは、指定法人に対し、これを変更すべきことを命ずることができる。 (事業計画等) 第二十三条 指定法人は、毎事業年度、事業計画書及び収支予算書を作成し、当該事業年度の開始前に(第二十条第一項の規定による指定を受けた日の属する事 業年度にあっては、その指定を受けた後遅滞なく)、国土交通大臣及び文部科学大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とす る。 2 指定法人は、毎事業年度、事業報告書及び収支決算書を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に国土交通大臣及び文部科学大臣に提出しなければならな い。 (区分経理) 第二十四条 指定法人は、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、民族共生象徴空間構成施設管理業務に関する経理と民族共生象徴空間構成施設管 理業務以外の業務に関する経理とを区分して整理しなければならない。 (国派遣職員に係る特例) 第二十五条 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百六条の二第三項に規定する退職手当通算法人には、指定法人を含むものとする。 2 国派遣職員(国家公務員法第二条に規定する一般職に属する職員が、任命権者又はその委任を受けた者の要請に応じ、指定法人の職員(常時勤務に服するこ とを要しない者を除き、第二十一条に規定する業務に従事する者に限る。以下この項において同じ。)となるため退職し、引き続いて当該指定法人の職員とな り、引き続き当該指定法人の職員として在職している場合における当該指定法人の職員をいう。次項において同じ。)は、国家公務員退職手当法(昭和二十八年 法律第百八十二号)第七条の二及び第二十条第三項の規定の適用については、同法第七条の二第一項に規定する公庫等職員とみなす。 3 指定法人又は国派遣職員は、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第百二十四条の二の規定の適用については、それぞれ同条第一項に規 定する公庫等又は公庫等職員とみなす。 (職員の派遣等についての配慮) 第二十六条 前条に規定するもののほか、国は、指定法人が行う第二十一条に規定する業務の適正かつ確実な遂行を図るため必要があると認めるときは、職員の 派遣その他の適当と認める人的援助について必要な配慮を加えるよう努めるものとする。 (役員の選任及び解任) 第二十七条 指定法人の第二十一条に規定する業務に従事する役員の選任及び解任は、国土交通大臣及び文部科学大臣の認可を受けなければ、その効力を生じな い。 2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人の第二十一条に規定する業務に従事する役員が、この法律若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づ く処分若しくは民族共生象徴空間構成施設管理業務規程に違反する行為をしたとき、同条に規定する業務に関し著しく不適当な行為をしたとき、又はその在任に より指定法人が第二十条第二項第三号に該当することとなるときは、指定法人に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。 (報告の徴収及び立入検査) 第二十八条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、指定法 人の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。 2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。 3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。 (監督命令) 第二十九条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、指定法人に対し、第二十一条に規定する業務に関し監督上 必要な命令をすることができる。 (指定の取消し等) 第三十条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、第二十条第一項の規定による指定を取り消すことができる。 一 この法律又はこの法律に基づく命令に違反したとき。 二 第二十一条に規定する業務を適正かつ確実に実施することができないおそれがある者となったとき。 三 第二十二条第一項の規定により認可を受けた民族共生象徴空間構成施設管理業務規程によらないで民族共生象徴空間構成施設管理業務を行ったとき。 四 第二十二条第三項、第二十七条第二項又は前条の規定による命令に違反したとき。 五 不当に民族共生象徴空間構成施設管理業務を実施しなかったとき。 2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。 (指定を取り消した場合における経過措置) 第三十一条 前条第一項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消した場合において、国土交通大臣及び文部科学大臣がその取消し後に新たに指定 法人を指定したときは、取消しに係る指定法人の民族共生象徴空間構成施設管理業務に係る財産は、新たに指定を受けた指定法人に帰属する。 2 前項に定めるもののほか、前条第一項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消した場合における民族共生象徴空間構成施設管理業務に係る財 産の管理その他所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、合理的に必要と判断される範囲内において、政令で定めることができる。 第七章 アイヌ政策推進本部 (設置) 第三十二条 アイヌ施策を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に、アイヌ政策推進本部(以下「本部」という。)を置く。 (所掌事務) 第三十三条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。 一 基本方針の案の作成に関すること。 二 基本方針の実施を推進すること。 三 前二号に掲げるもののほか、アイヌ施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。 (組織) 第三十四条 本部は、アイヌ政策推進本部長、アイヌ政策推進副本部長及びアイヌ政策推進本部員をもって組織する。 (アイヌ政策推進本部長) 第三十五条 本部の長は、アイヌ政策推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣官房長官をもって充てる。 2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。 (アイヌ政策推進副本部長) 第三十六条 本部に、アイヌ政策推進副本部長(次項及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。 2 副本部長は、本部長の職務を助ける。 (アイヌ政策推進本部員) 第三十七条 本部に、アイヌ政策推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。 2 本部員は、次に掲げる者(第一号から第八号までに掲げる者にあっては、副本部長に充てられたものを除く。)をもって充てる。 一 法務大臣 二 外務大臣 三 文部科学大臣 四 厚生労働大臣 五 農林水産大臣 六 経済産業大臣 七 国土交通大臣 八 環境大臣 九 前各号に掲げる者のほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、本部の所掌事務を遂行するために特に必要があると認める者として内閣総理大臣 が指定する者 (資料の提出その他の協力) 第三十八条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年 法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定 する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であっ て、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第九号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明そ の他必要な協力を求めることができる。 2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。 (事務) 第三十九条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。 (主任の大臣) 第四十条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。 (政令への委任) 第四十一条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。 第八章 雑則 (権限の委任) 第四十二条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を北海道開発局長に委任することができる。 2 第十六条の規定による農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を森林管理局長に委任することができる。 3 前項の規定により森林管理局長に委任された権限は、農林水産省令で定めるところにより、森林管理署長に委任することができる。 (命令への委任) 第四十三条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、命令で定める。 (罰則) 第四十四条 第二十八条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の 規定による質問に対して陳述せず、若しくは虚偽の陳述をした者は、三十万円以下の罰金に処する。 2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、 その法人又は人に対して同項の刑を科する。 第四十五条 第二十九条の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の過料に処する。 附 則 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第四条及び第八条の規定は、公布の日か ら施行する。 (アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律の廃止) 第二条 アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(平成九年法律第五十二号)は、廃止する。 (アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律の廃止に伴う経過措置) 第三条 前条の規定の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 (準備行為) 第四条 第二十条第一項の規定による指定を受けようとする者は、この法律の施行前においても、その申請を行うことができる。 (政令への委任) 第八条 附則第三条及び第四条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。 (検討) 第九条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて 所要の措置を講ずるものとする。 アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律案に対する附帯決議 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。 一 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の趣旨を踏まえ、並びに過去の国会決議及び本法に基づき、アイヌ施策を推進するに当たって は、我が国が 近代化する過程において多くのアイヌの人々が苦難を受けたという歴史的事実を厳粛に受け止め、アイヌの人々の自主性を尊重し、その意向が十分反映されるよ う努めること。 二 アイヌ文化の振興等に資する環境の整備に関する施策の推進に当たっては、アイヌの人々の実態等の把握に努めるとともに、国、地方公 共団体等の連携の強化を図ること。 三 アイヌの人々に対する差別を根絶し、アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と共生社会の実現を図るため、アイヌに関する教育の充実 に向けた取組を推進すること。 四 アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と我が国の多様な生活文化の発展を図るため、アイヌの人々の生活支援及び教育支援に資する事 業や、存続の 危機にあるアイヌ語の復興に向けた取組、アイヌ文化の振興等の充実に今後とも一層努めるとともに、アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活してい ることを踏まえて、北海道外に居住するアイヌの人々を対象とする施策の充実に努めること。 五 本法に基づく措置、とりわけ交付金制度については、本法の目的に沿ってアイヌ施策を適正かつ効率的に推進するため、制度の適切な運 用を図ること。 六 本法において特例措置が設けられる認定アイヌ施策推進地域計画に係る地域団体商標の取得を契機に、アイヌ文化のブランド化の確立な ど産業振興を図るために、交付金制度の活用や国等からのノウハウの提供等により、アイヌの人々の自立を最大限支援すること。 七 内水面におけるさけの採捕や国有林野における林産物の採取といった本法の特例措置に関し、アイヌにおいて継承されてきた儀式の保存 又は継承等を事業の目的とする趣旨に鑑み、関係機関と緊密な連携の下、アイヌの人々の視点に立ち、制度の円滑な運用に努めること。 八 民族共生象徴空間への来場により国内外におけるアイヌの伝統等に関する理解の促進が一層図られるよう、広報活動やアクセスの改善等 を図ること。また、民族共生象徴空間に関し、適切な運営が図られるよう指定法人に対する指導監督に努めること。 ■アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律案に対する附帯決議(第198回国会閣法第24号)政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。 一 「先住民族の権利に関 する国際連合宣言」の趣旨を踏まえ、並びに過去の国会決議及び本法に基づき、アイヌ施策を推進するに当たっては、我が国が近代化す る過程において多くのアイヌの人々が苦難を受けたという歴史的事実を厳粛に受け止め、アイヌの人々の自主性を尊重し、その意向が十分反映されるよう努める こと。 二 アイヌ文化の振興等に資する環境の整備に関する施策の推進に当たっては、アイヌの人々の実態等の把握に努めるとともに、国、地方公共団体等の連携の強 化を図ること。 三 アイヌの人々に対する差別を根絶し、アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と共生社会の実現を図るため、アイヌに関する教育の充実に向けた取組を推進 すること。 四 アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と我が国の多様な生活文化の発展を図るため、アイヌの人々の生活支援及び教育支援に資する事業や、存続の危機に あるアイヌ語の復興に向けた取組、アイヌ文化の振興等の充実に今後とも一層努めるとともに、アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活していること を踏まえて、北海道外に居住するアイヌの人々を対象とする施策の充実に努めること。 五 本法に基づく措置、とりわけ交付金制度については、本法の目的に沿ってアイヌ施策を適正かつ効率的に推進するため、制度の適切な運用を図ること。 六 本法において特例措置が設けられる認定アイヌ施策推進地域計画に係る地域団体商標の取得を契機に、アイヌ文化のブランド化の確立など産業振興を図るた めに、交付金制度の活用や国等からのノウハウの提供等により、アイヌの人々の自立を最大限支援すること。 七 内水面におけるさけの採捕や国有林野における林産物の採取といった本法の特例措置に関し、アイヌにおいて継承されてきた儀式の保存又は継承等を事業の 目的とする趣旨に鑑み、関係機関と緊密な連携の下、アイヌの人々の視点に立ち、制度の円滑な運用に努めること。 八 民族共生象徴空間への来場により国内外におけるアイヌの伝統等に関する理解の促進が一層図られるよう、広報活動やアクセスの改善等を図ること。また、 民族共生象徴空間に関し、適切な運営が図られるよう指定法人に対する指導監督に努めること。 |
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沖縄のの現在でも、琉球の民 (people)から、沖縄の近代国家への帰属の歴 史や、かつての本土社会(=ヤマト)からの過酷な差別というものがしばしば想起されます。琉球の民が、仮にいまここで「沖縄は本土の民(=ヤマトン チュー)にとっての基地の島でもリゾートでもない、人が住まう土地である」とクレームをつけた時に、私たちが深く同情ないしは共感してしまうのは、琉球の 民も我々も同じ同胞(=日本人)であることを他ならぬ私たちが信じている証だからです。鳩山首相(当時)が、かりゆしウェアに身を包んでも、そのことに違 和感を感じないのは、かりゆしが、琉球の民にとっての「真の民族衣装」ではないからかもしれません。このような発想をなぜ私が思いつくのかというと、ここ で仮に、琉球の民をアイヌ民族(以下、アイヌ)と対比した時に、日本の近代国家成立前後から、類似の境遇を辿ってきたにもかかわらず、日本人がアイヌに対 してもつ「人種意識」には、さまざまな差異があるからです。
初出の際のクレジット:日本におけ る先住民問題[課題と資料] 2010年5月17日(月)19時40分〜[グローバル共生社会論(2010年)]
1. 北海道旧土人保護法(法律第27号)Act of the protection for former-indigenous people in Hokkaido and Act of provinding land for former-indigenous people of Asahikawa.
北海道旧土人保護法 公 布:明治32年3月1日 法律第27号
第一条 第二条 第三条 第四条 第五条 第六条 第七条 第八条 第九条 第十条 第十一条 第十二条 第十三条 昭和四十三年の同法改正法 第一条 第二条 ・ 第二条の二 第三条 第四条乃至第六条 第七条 第八条 第九条 第十条 ・ ・ 第十一条 附則 第十三条 出典:http://homepage3.nifty.com/naga-humanrights/shiryo1/old- ainu.htm (2010年5月10日) ___________________ 旭川市旧土人保護地処分法(昭和9年法律第9号) 第一条 北海道庁長官ハ旧土人保護ノ目的ヲ以テ旭川市ニ貸付シタル同市所在ノ土地ヲ内務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ経テ特別ノ縁故アル 旧土人ニ 単独 所有財産又ハ共有財産トシテ無償下付スルコトヲ得 第二条 北海道旧土人保護法第二条第一項ノ規定ハ前条ノ規定ニ依リ下付シタル土地ニ付之ヲ準用ス 第三条 第一条ノ規定ニ依ル土地所有権ノ取得ニ関シテハ登録税ヲ課セズ又地方税ヲ課スルコトヲ得ズ 附 則 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム 出典:http://www.geocities.jp/nakanolib/hou/hs09-9.htm |
アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律 最終改正:平成一八年六月二日法律第五〇号 (目的) 第一条 この法律は、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況にかんがみ、アイヌ文化 の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)を図るための施策を推進することにより、アイ ヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「アイヌ文化」とは、アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産及びこれらから発展した文化的所 産をいう。 (国及び地方公共団体の責務) 第三条
国は、アイヌ文化を継承する者の育成、アイヌの伝統等に関する広報活動の充実、アイヌ文化の振興等に資する調査研究の推進その他アイヌ文化の振興等を図
るための施策を推進するよう努めるとともに、地方公共団体が実施するアイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる
よう努めなければならない。 (施策における配慮) 第四条 国及び地方公共団体は、アイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては、アイヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りを尊重するよう配慮 するものとする。 (基本方針) 第五条
国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 (基本計画) 第六条 その区域内の社会的条件に照らしてアイヌ文化の振興等を図るための施策を総合的に実施することが相当であると認められる政令で定める都道府県(以下「関 係都道府県」という。)は、基本方針に即して、関係都道府県におけるアイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を 定めるものとする。 2 基本計画においては、次に掲げる事項について定めるものとする。 (指定等) 第七条
国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うこと
ができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。 (業務) 第八条 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。 (事業計画等) 第九条
指定法人は、毎事業年度、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、国土交通大臣及び文部科学大臣に提出し
なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。 (報告の徴収及び立入検査) 第十条
国土交通大臣及び文部科学大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、指定法人の事務所
に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。 (改善命令) 第十一条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人の第八条に規定する業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、指定法人に対し、その改善に必要な措置 を講ずべきことを命ずることができる。 (指定の取消し等) 第十二条
国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人が前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。 (罰則) 第十三条
第十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問
に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者は、二十万円以下の罰金に処する。 附 則 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 (北海道旧土人保護法等の廃止) 第二条 次に掲げる法律は、廃止する。 (北海道旧土人保護法の廃止に伴う経過措置) 第三条
北海道知事は、この法律の施行の際現に前条の規定による廃止前の北海道旧土人保護法(次項において「旧保護法」という。)第十条第一項の規定により管理
する北海道旧土人共有財産(以下「共有財産」という。)が、次項から第四項までの規定の定めるところにより共有者に返還され、又は第五項の規定により指定
法人若しくは北海道に帰属するまでの間、これを管理するものとする。 附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。 附 則 (平成一八年六月二日法律第五〇号) 抄 (施行期日) 1 この法律は、一般社団・財団法人法の施行の日から施行する。 (調整規定) 2
犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成十八年法律第 号)の施行の日が施行日後となる場
合には、施行日から同法の施行の日の前日までの間における組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。次項におい
て「組織的犯罪処罰法」という。)別表第六十二号の規定の適用については、同号中「中間法人法(平成十三年法律第四十九号)第百五十七条(理事等の特別背
任)の罪」とあるのは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第三百三十四条(理事等の特別背任)の罪」とする。 |
アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関す
る法律 目次 第一章 総則(第一条―第六条) 第二章 基本方針等(第七条・第八条) 第三章 民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置(第九条) 第四章 アイヌ施策推進地域計画の認定等(第十条―第十四条) 第五章 認定アイヌ施策推進地域計画に基づく事業に対する特別の措置(第十五条―第十九条) 第六章 指定法人(第二十条―第三十一条) 第七章 アイヌ政策推進本部(第三十二条―第四十一条) 第八章 雑則(第四十二条―第四十五条) 附則 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるアイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統 等」という。)が置かれている状況並びに近年における先住民族をめぐる国際情勢に鑑み、アイヌ施策の推進に関し、基本理念、国等の責務、政府による基本方 針の策定、民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置、市町村(特別区を含む。以下同じ。)によるアイヌ施策推進地域計画の作成及びその内閣総理大臣に よる認定、当該認定を受けたアイヌ施策推進地域計画に基づく事業に対する特別の措置、アイヌ政策推進本部の設置等について定めることにより、アイヌの人々 が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現を図り、もって全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生 する社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「アイヌ文化」とは、アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた生活様式、音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産及びこれらから 発展した文化的所産をいう。 2 この法律において「アイヌ施策」とは、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)並び にアイヌの人々が民族としての誇りを持って生活するためのアイヌ文化の振興等に資する環境の整備に関する施策をいう。 3 この法律において「民族共生象徴空間構成施設」とは、民族共生象徴空間(アイヌ文化の振興等の拠点として国土交通省令・文部科学省令で定める場所に整 備される国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第三条第二項に規定する行政財産をいう。)を構成する施設(その敷地を含む。)であって、国土交通省 令・文部科学省令で定めるものをいう。 (基本理念) 第三条 アイヌ施策の推進は、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重されるよう、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統等並びに我が国を含む国際社 会において重要な課題である多様な民族の共生及び多様な文化の発展についての国民の理解を深めることを旨として、行われなければならない。 2 アイヌ施策の推進は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができるよう、アイヌの人々の自発的意思の尊重に配慮しつつ、行われなけれ ばならない。 3 アイヌ施策の推進は、国、地方公共団体その他の関係する者の相互の密接な連携を図りつつ、アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活しているこ とを踏まえて全国的な視点に立って行われなければならない。 第四条 何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。 (国及び地方公共団体の責務) 第五条 国及び地方公共団体は、前二条に定める基本理念にのっとり、アイヌ施策を策定し、及び実施する責務を有する。 2 国及び地方公共団体は、アイヌ文化を継承する者の育成について適切な措置を講ずるよう努めなければならない。 3 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動その他の活動を通じて、アイヌに関し、国民の理解を深めるよう努めなければならない。 4 国は、アイヌ文化の振興等に資する調査研究を推進するよう努めるとともに、地方公共団体が実施するアイヌ施策を推進するために必要な助言その他の措置 を講ずるよう努めなければならない。 (国民の努力) 第六条 国民は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現に寄与するよう努めるものとする。 第二章 基本方針等 (基本方針) 第七条 政府は、アイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。 一 アイヌ施策の意義及び目標に関する事項 二 政府が実施すべきアイヌ施策に関する基本的な方針 三 民族共生象徴空間構成施設の管理に関する基本的な事項 四 第十条第一項に規定するアイヌ施策推進地域計画の同条第九項の認定に関する基本的な事項 五 前各号に掲げるもののほか、アイヌ施策の推進のために必要な事項 3 内閣総理大臣は、アイヌ政策推進本部が作成した基本方針の案について閣議の決定を求めなければならない。 4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。 5 政府は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更しなければならない。 6 第三項及び第四項の規定は、基本方針の変更について準用する。 (都道府県方針) 第八条 都道府県知事は、基本方針に基づき、当該都道府県の区域内におけるアイヌ施策を推進するための方針(以下この条及び第十条において「都道府県方 針」という。)を定めるよう努めるものとする。 2 都道府県方針には、おおむね次に掲げる事項を定めるものとする。 一 アイヌ施策の目標に関する事項 二 当該都道府県が実施すべきアイヌ施策に関する方針 三 前二号に掲げるもののほか、アイヌ施策の推進のために必要な事項 3 都道府県知事は、都道府県方針に他の地方公共団体と関係がある事項を定めようとするときは、当該事項について、あらかじめ、当該他の地方公共団体の長 の意見を聴かなければならない。 4 都道府県知事は、都道府県方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、関係市町村長に通知しなければならない。 5 前二項の規定は、都道府県方針の変更について準用する。 第三章 民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置 第九条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、第二十条第一項の規定による指定をしたときは、民族共生象徴空間構成施設の管理を当該指定を受けた者(次項にお いて「指定法人」という。)に委託するものとする。 2 前項の規定により管理の委託を受けた指定法人は、当該委託を受けて行う民族共生象徴空間構成施設の管理に要する費用に充てるために、民族共生象徴空間 構成施設につき入場料その他の料金(第二十二条第二項において「入場料等」という。)を徴収することができる。 3 前項に定めるもののほか、第一項の規定による委託について必要な事項は、政令で定める。 第四章 アイヌ施策推進地域計画の認定等 (アイヌ施策推進地域計画の認定) 第十条 市町村は、単独で又は共同して、基本方針に基づき(当該市町村を包括する都道府県の知事が都道府県方針を定めているときは、基本方針に基づくとと もに、当該都道府県方針を勘案して)、内閣府令で定めるところにより、当該市町村の区域内におけるアイヌ施策を推進するための計画(以下「アイヌ施策推進 地域計画」という。)を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができる。 2 アイヌ施策推進地域計画には、次に掲げる事項を記載するものとする。 一 アイヌ施策推進地域計画の目標 二 アイヌ施策の推進に必要な次に掲げる事業に関する事項 イ アイヌ文化の保存又は継承に資する事業 ロ アイヌの伝統等に関する理解の促進に資する事業 ハ 観光の振興その他の産業の振興に資する事業 ニ 地域内若しくは地域間の交流又は国際交流の促進に資する事業 ホ その他内閣府令で定める事業 三 計画期間 四 その他内閣府令で定める事項 3 市町村は、アイヌ施策推進地域計画を作成しようとするときは、これに記載しようとする前項第二号に規定する事業を実施する者の意見を聴かなければなら ない。 4 第二項第二号(ニを除く。)に規定する事業に関する事項には、アイヌにおいて継承されてきた儀式の実施その他のアイヌ文化の振興等に利用するための林 産物を国有林野(国有林野の管理経営に関する法律(昭和二十六年法律第二百四十六号)第二条第一項に規定する国有林野をいう。第十六条第一項において同 じ。)において採取する事業に関する事項を記載することができる。 5 前項に定めるもののほか、第二項第二号(ニを除く。)に規定する事業に関する事項には、アイヌにおいて継承されてきた儀式若しくは漁法(以下この項に おいて「儀式等」という。)の保存若しくは継承又は儀式等に関する知識の普及及び啓発に利用するためのさけを内水面(漁業法(昭和二十四年法律第二百六十 七号)第八条第三項に規定する内水面をいう。)において採捕する事業(以下この条及び第十七条において「内水面さけ採捕事業」という。)に関する事項を記 載することができる。この場合においては、内水面さけ採捕事業ごとに、当該内水面さけ採捕事業を実施する区域を記載するものとする。 6 前二項に定めるもののほか、第二項第二号(ハに係る部分に限る。)に規定する事業に関する事項には、当該市町村における地域の名称又はその略称を含む 商標の使用をし、又は使用をすると見込まれる商品又は役務の需要の開拓を行う事業(以下この項及び第十八条において「商品等需要開拓事業」という。)に関 する事項を記載することができる。この場合においては、商品等需要開拓事業ごとに、当該商品等需要開拓事業の目標及び実施期間を記載するものとする。 7 第二項第二号イからホまでのいずれかの事業を実施しようとする者は、市町村に対して、アイヌ施策推進地域計画を作成することを提案することができる。 この場合においては、基本方針に即して、当該提案に係るアイヌ施策推進地域計画の素案を作成して、これを提示しなければならない。 8 前項の規定による提案を受けた市町村は、当該提案に基づきアイヌ施策推進地域計画を作成するか否かについて、遅滞なく、当該提案をした者に通知しなけ ればならない。この場合において、アイヌ施策推進地域計画を作成しないこととするときは、その理由を明らかにしなければならない。 9 内閣総理大臣は、第一項の規定による認定の申請があった場合において、アイヌ施策推進地域計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定を するものとする。 一 基本方針に適合するものであること。 二 当該アイヌ施策推進地域計画の実施が当該地域におけるアイヌ施策の推進に相当程度寄与するものであると認められること。 三 円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。 10 内閣総理大臣は、前項の認定を行うに際し必要と認めるときは、アイヌ政策推進本部に対し、意見を求めることができる。 11 内閣総理大臣は、第九項の認定をしようとするときは、その旨を当該認定に係るアイヌ施策推進地域計画を作成した市町村を包括する都道府県の知事に通 知しなければならない。この場合において、当該都道府県の知事が都道府県方針を定めているときは、同項の認定に関し、内閣総理大臣に対し、意見を述べるこ とができる。 12 内閣総理大臣は、アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項(第四項から第六項までのいずれかに規定する事項をいう。以下同じ。)が記載されている 場合において、第九項の認定をしようとするときは、当該特定事業関係事項について、当該特定事業関係事項に係る国の関係行政機関の長(以下単に「国の関係 行政機関の長」という。)の同意を得なければならない。 13 内閣総理大臣は、アイヌ施策推進地域計画に内水面さけ採捕事業に関する事項が記載されている場合において、第九項の認定をしようとするときは、当該 アイヌ施策推進地域計画を作成した市町村(市町村が共同して作成したときは、当該内水面さけ採捕事業を実施する区域を含む市町村に限る。)を包括する都道 府県の知事の意見を聴かなければならない。 14 内閣総理大臣は、第九項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。 (認定を受けたアイヌ施策推進地域計画の変更) 第十一条 市町村は、前条第九項の認定を受けたアイヌ施策推進地域計画の変更(内閣府令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、内閣総理大臣 の認定を受けなければならない。 2 前条第三項から第十四項までの規定は、同条第九項の認定を受けたアイヌ施策推進地域計画の変更について準用する。 (報告の徴収) 第十二条 内閣総理大臣は、第十条第九項の認定(前条第一項の変更の認定を含む。)を受けた市町村(以下「認定市町村」という。)に対し、第十条第九項の 認定を受けたアイヌ施策推進地域計画(前条第一項の変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定アイヌ施策推進地域計画」という。)の実施の 状況について報告を求めることができる。 2 国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合には、認定市町村に対し、当該特定事業関係事項の実施の 状況について報告を求めることができる。 (措置の要求) 第十三条 内閣総理大臣は、認定アイヌ施策推進地域計画の適正な実施のため必要があると認めるときは、認定市町村に対し、当該認定アイヌ施策推進地域計画 の実施に関し必要な措置を講ずることを求めることができる。 2 国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合において、当該特定事業関係事項の適正な実施のため必要 があると認めるときは、認定市町村に対し、当該特定事業関係事項の実施に関し必要な措置を講ずることを求めることができる。 (認定の取消し) 第十四条 内閣総理大臣は、認定アイヌ施策推進地域計画が第十条第九項各号のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、その認定を取り消すことができ る。この場合において、当該認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されているときは、内閣総理大臣は、あらかじめ、国の関係行政機関の長に その旨を通知しなければならない。 2 前項の規定による通知を受けた国の関係行政機関の長は、同項の規定による認定の取消しに関し、内閣総理大臣に意見を述べることができる。 3 前項に規定する場合のほか、国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合には、第一項の規定による認 定の取消しに関し、内閣総理大臣に意見を述べることができる。 4 第十条第十四項の規定は、第一項の規定による認定の取消しについて準用する。 第五章 認定アイヌ施策推進地域計画に基づく事業に対する特別の措置 (交付金の交付等) 第十五条 国は、認定市町村に対し、認定アイヌ施策推進地域計画に基づく事業(第十条第二項第二号に規定するものに限る。)の実施に要する経費に充てるた め、内閣府令で定めるところにより、予算の範囲内で、交付金を交付することができる。 2 前項の交付金を充てて行う事業に要する費用については、他の法令の規定に基づく国の負担若しくは補助又は交付金の交付は、当該規定にかかわらず、行わ ないものとする。 3 前二項に定めるもののほか、第一項の交付金の交付に関し必要な事項は、内閣府令で定める。 (国有林野における共用林野の設定) 第十六条 農林水産大臣は、国有林野の経営と認定市町村(第十条第四項に規定する事項を記載した認定アイヌ施策推進地域計画を作成した市町村に限る。以下 この項において同じ。)の住民の利用とを調整することが土地利用の高度化を図るため必要であると認めるときは、契約により、当該認定市町村の住民又は当該 認定市町村内の一定の区域に住所を有する者に対し、これらの者が同条第四項の規定により記載された事項に係る国有林野をアイヌにおいて継承されてきた儀式 の実施その他のアイヌ文化の振興等に利用するための林産物の採取に共同して使用する権利を取得させることができる。 2 前項の契約は、国有林野の管理経営に関する法律第十八条第三項に規定する共用林野契約とみなして、同法第五章(同条第一項及び第二項を除く。)の規定 を適用する。この場合において、同条第三項本文中「第一項」とあるのは「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平 成三十一年法律第十六号)第十六条第一項」と、「市町村」とあるのは「認定市町村(同法第十二条第一項に規定する認定市町村をいう。以下同じ。)」と、同 項ただし書並びに同法第十九条第五号、第二十二条第一項及び第二十四条中「市町村」とあるのは「認定市町村」と、同法第十八条第四項中「第一項」とあり、 及び同法第二十一条の二中「第十八条」とあるのは「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律第十六条第一項」とする。 (漁業法及び水産資源保護法による許可についての配慮) 第十七条 農林水産大臣又は都道府県知事は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された内水面さけ採捕事業の実施のため漁業法第六十五条第一項若しくは第二 項又は水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)第四条第一項若しくは第二項の規定に基づく農林水産省令又は都道府県の規則の規定による許可が必要 とされる場合において、当該許可を求められたときは、当該内水面さけ採捕事業が円滑に実施されるよう適切な配慮をするものとする。 (商標法の特例) 第十八条 認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業については、当該商品等需要開拓事業の実施期間(次項及び第三項において単に「実施 期間」という。)内に限り、次項から第六項までの規定を適用する。 2 特許庁長官は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業に係る商品又は役務に係る地域団体商標の商標登録(商標法(昭和三十四年法 律第百二十七号)第七条の二第一項に規定する地域団体商標の商標登録をいう。以下この項及び次項において同じ。)について、同法第四十条第一項若しくは第 二項又は第四十一条の二第一項若しくは第七項の登録料を納付すべき者が当該商品又は役務に係る商品等需要開拓事業の実施主体であるときは、政令で定めると ころにより、当該登録料(実施期間内に地域団体商標の商標登録を受ける場合のもの又は実施期間内に地域団体商標の商標登録に係る商標権の存続期間の更新登 録の申請をする場合のものに限る。)を軽減し、又は免除することができる。この場合において、同法第十八条第二項並びに第二十三条第一項及び第二項の規定 の適用については、これらの規定中「納付があつたとき」とあるのは、「納付又はその納付の免除があつたとき」とする。 3 特許庁長官は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業に係る商品又は役務に係る地域団体商標の商標登録について、当該地域団体商 標の商標登録を受けようとする者が当該商品又は役務に係る商品等需要開拓事業の実施主体であるときは、政令で定めるところにより、商標法第七十六条第二項 の規定により納付すべき商標登録出願の手数料(実施期間内に商標登録出願をする場合のものに限る。)を軽減し、又は免除することができる。 4 商標法第四十条第一項若しくは第二項又は第四十一条の二第一項若しくは第七項の登録料は、商標権が第二項の規定による登録料の軽減又は免除(以下この 項において「減免」という。)を受ける者を含む者の共有に係る場合であって持分の定めがあるときは、同法第四十条第一項若しくは第二項又は第四十一条の二 第一項若しくは第七項の規定にかかわらず、各共有者ごとにこれらに規定する登録料の金額(減免を受ける者にあっては、その減免後の金額)にその持分の割合 を乗じて得た額を合算して得た額とし、その額を納付しなければならない。 5 商標登録出願により生じた権利が第三項の規定による商標登録出願の手数料の軽減又は免除(以下この項において「減免」という。)を受ける者を含む者の 共有に係る場合であって持分の定めがあるときは、これらの者が自己の商標登録出願により生じた権利について商標法第七十六条第二項の規定により納付すべき 商標登録出願の手数料は、同項の規定にかかわらず、各共有者ごとに同項に規定する商標登録出願の手数料の金額(減免を受ける者にあっては、その減免後の金 額)にその持分の割合を乗じて得た額を合算して得た額とし、その額を納付しなければならない。 6 前二項の規定により算定した登録料又は手数料の金額に十円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てるものとする。 (地方債についての配慮) 第十九条 認定市町村が認定アイヌ施策推進地域計画に基づいて行う事業に要する経費に充てるため起こす地方債については、国は、当該認定市町村の財政状況 が許す限り起債ができるよう、及び資金事情が許す限り財政融資資金をもって引き受けるよう特別の配慮をするものとする。 第六章 指定法人 (指定等) 第二十条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に 行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。 2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の申請をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の規定による指定をしてはならない。 一 この法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者であること。 二 第三十条第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者であること。 三 その役員のうちに、次のいずれかに該当する者があること。 イ 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過し ない者 ロ 第二十七条第二項の規定による命令により解任され、その解任の日から二年を経過しない者 3 国土交通大臣及び文部科学大臣は、第一項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称、住所及び事務所の所 在地を公示しなければならない。 4 指定法人は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣及び文部科学大臣に届け出なければならな い。 5 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。 (業務) 第二十一条 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。 一 第九条第一項の規定による委託を受けて民族共生象徴空間構成施設の管理を行うこと。 二 アイヌ文化を継承する者の育成その他のアイヌ文化の振興に関する業務を行うこと。 三 アイヌの伝統等に関する広報活動その他のアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発を行うこと。 四 アイヌ文化の振興等に資する調査研究を行うこと。 五 アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発又はアイヌ文化の振興等に資する調査研究を行う者に対して、助言、助成その他の援助を行 うこと。 六 前各号に掲げるもののほか、アイヌ文化の振興等を図るために必要な業務を行うこと。 (民族共生象徴空間構成施設管理業務規程) 第二十二条 指定法人は、前条第一号に掲げる業務(以下「民族共生象徴空間構成施設管理業務」という。)に関する規程(以下「民族共生象徴空間構成施設管 理業務規程」という。)を定め、国土交通大臣及び文部科学大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。 2 民族共生象徴空間構成施設管理業務規程には、民族共生象徴空間構成施設管理業務の実施の方法、民族共生象徴空間構成施設の入場料等その他の国土交通省 令・文部科学省令で定める事項を定めておかなければならない。 3 国土交通大臣及び文部科学大臣は、第一項の認可をした民族共生象徴空間構成施設管理業務規程が民族共生象徴空間構成施設管理業務の適正かつ確実な実施 上不適当となったと認めるときは、指定法人に対し、これを変更すべきことを命ずることができる。 (事業計画等) 第二十三条 指定法人は、毎事業年度、事業計画書及び収支予算書を作成し、当該事業年度の開始前に(第二十条第一項の規定による指定を受けた日の属する事 業年度にあっては、その指定を受けた後遅滞なく)、国土交通大臣及び文部科学大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とす る。 2 指定法人は、毎事業年度、事業報告書及び収支決算書を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に国土交通大臣及び文部科学大臣に提出しなければならな い。 (区分経理) 第二十四条 指定法人は、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、民族共生象徴空間構成施設管理業務に関する経理と民族共生象徴空間構成施設管 理業務以外の業務に関する経理とを区分して整理しなければならない。 (国派遣職員に係る特例) 第二十五条 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百六条の二第三項に規定する退職手当通算法人には、指定法人を含むものとする。 2 国派遣職員(国家公務員法第二条に規定する一般職に属する職員が、任命権者又はその委任を受けた者の要請に応じ、指定法人の職員(常時勤務に服するこ とを要しない者を除き、第二十一条に規定する業務に従事する者に限る。以下この項において同じ。)となるため退職し、引き続いて当該指定法人の職員とな り、引き続き当該指定法人の職員として在職している場合における当該指定法人の職員をいう。次項において同じ。)は、国家公務員退職手当法(昭和二十八年 法律第百八十二号)第七条の二及び第二十条第三項の規定の適用については、同法第七条の二第一項に規定する公庫等職員とみなす。 3 指定法人又は国派遣職員は、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第百二十四条の二の規定の適用については、それぞれ同条第一項に規 定する公庫等又は公庫等職員とみなす。 (職員の派遣等についての配慮) 第二十六条 前条に規定するもののほか、国は、指定法人が行う第二十一条に規定する業務の適正かつ確実な遂行を図るため必要があると認めるときは、職員の 派遣その他の適当と認める人的援助について必要な配慮を加えるよう努めるものとする。 (役員の選任及び解任) 第二十七条 指定法人の第二十一条に規定する業務に従事する役員の選任及び解任は、国土交通大臣及び文部科学大臣の認可を受けなければ、その効力を生じな い。 2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人の第二十一条に規定する業務に従事する役員が、この法律若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づ く処分若しくは民族共生象徴空間構成施設管理業務規程に違反する行為をしたとき、同条に規定する業務に関し著しく不適当な行為をしたとき、又はその在任に より指定法人が第二十条第二項第三号に該当することとなるときは、指定法人に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。 (報告の徴収及び立入検査) 第二十八条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、指定法 人の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。 2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。 3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。 (監督命令) 第二十九条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、指定法人に対し、第二十一条に規定する業務に関し監督上 必要な命令をすることができる。 (指定の取消し等) 第三十条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、第二十条第一項の規定による指定を取り消すことができる。 一 この法律又はこの法律に基づく命令に違反したとき。 二 第二十一条に規定する業務を適正かつ確実に実施することができないおそれがある者となったとき。 三 第二十二条第一項の規定により認可を受けた民族共生象徴空間構成施設管理業務規程によらないで民族共生象徴空間構成施設管理業務を行ったとき。 四 第二十二条第三項、第二十七条第二項又は前条の規定による命令に違反したとき。 五 不当に民族共生象徴空間構成施設管理業務を実施しなかったとき。 2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。 (指定を取り消した場合における経過措置) 第三十一条 前条第一項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消した場合において、国土交通大臣及び文部科学大臣がその取消し後に新たに指定 法人を指定したときは、取消しに係る指定法人の民族共生象徴空間構成施設管理業務に係る財産は、新たに指定を受けた指定法人に帰属する。 2 前項に定めるもののほか、前条第一項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消した場合における民族共生象徴空間構成施設管理業務に係る財 産の管理その他所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、合理的に必要と判断される範囲内において、政令で定めることができる。 第七章 アイヌ政策推進本部 (設置) 第三十二条 アイヌ施策を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に、アイヌ政策推進本部(以下「本部」という。)を置く。 (所掌事務) 第三十三条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。 一 基本方針の案の作成に関すること。 二 基本方針の実施を推進すること。 三 前二号に掲げるもののほか、アイヌ施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。 (組織) 第三十四条 本部は、アイヌ政策推進本部長、アイヌ政策推進副本部長及びアイヌ政策推進本部員をもって組織する。 (アイヌ政策推進本部長) 第三十五条 本部の長は、アイヌ政策推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣官房長官をもって充てる。 2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。 (アイヌ政策推進副本部長) 第三十六条 本部に、アイヌ政策推進副本部長(次項及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。 2 副本部長は、本部長の職務を助ける。 (アイヌ政策推進本部員) 第三十七条 本部に、アイヌ政策推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。 2 本部員は、次に掲げる者(第一号から第八号までに掲げる者にあっては、副本部長に充てられたものを除く。)をもって充てる。 一 法務大臣 二 外務大臣 三 文部科学大臣 四 厚生労働大臣 五 農林水産大臣 六 経済産業大臣 七 国土交通大臣 八 環境大臣 九 前各号に掲げる者のほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、本部の所掌事務を遂行するために特に必要があると認める者として内閣総理大臣 が指定する者 (資料の提出その他の協力) 第三十八条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年 法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定 する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であっ て、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第九号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明そ の他必要な協力を求めることができる。 2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。 (事務) 第三十九条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。 (主任の大臣) 第四十条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。 (政令への委任) 第四十一条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。 第八章 雑則 (権限の委任) 第四十二条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を北海道開発局長に委任することができる。 2 第十六条の規定による農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を森林管理局長に委任することができる。 3 前項の規定により森林管理局長に委任された権限は、農林水産省令で定めるところにより、森林管理署長に委任することができる。 (命令への委任) 第四十三条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、命令で定める。 (罰則) 第四十四条 第二十八条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の 規定による質問に対して陳述せず、若しくは虚偽の陳述をした者は、三十万円以下の罰金に処する。 2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、 その法人又は人に対して同項の刑を科する。 第四十五条 第二十九条の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の過料に処する。 附 則 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第四条及び第八条の規定は、公布の日か ら施行する。 (アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律の廃止) 第二条 アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(平成九年法律第五十二号)は、廃止する。 (アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律の廃止に伴う経過措置) 第三条 前条の規定の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 (準備行為) 第四条 第二十条第一項の規定による指定を受けようとする者は、この法律の施行前においても、その申請を行うことができる。 (政令への委任) 第八条 附則第三条及び第四条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。 (検討) 第九条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて 所要の措置を講ずるものとする。 ■アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律案に対する附帯決議(第198回国会閣法第24号) 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。 一 「先住民族の権利に関 する国際連合宣言」の趣旨を踏まえ、並びに過去の国会決議及び本法に基づき、アイヌ施策を推進するに当たっては、我が国が近代化す る過程において多くのアイヌの人々が苦難を受けたという歴史的事実を厳粛に受け止め、アイヌの人々の自主性を尊重し、その意向が十分反映されるよう努める こと。 二 アイヌ文化の振興等に資する環境の整備に関する施策の推進に当たっては、アイヌの人々の実態等の把握に努めるとともに、国、地方公共団体等の連携の強 化を図ること。 三 アイヌの人々に対する差別を根絶し、アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と共生社会の実現を図るため、アイヌに関する教育の充実に向けた取組を推進 すること。 四 アイヌの人々の民族としての誇りの尊重と我が国の多様な生活文化の発展を図るため、アイヌの人々の生活支援及び教育支援に資する事業や、存続の危機に あるアイヌ語の復興に向けた取組、アイヌ文化の振興等の充実に今後とも一層努めるとともに、アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活していること を踏まえて、北海道外に居住するアイヌの人々を対象とする施策の充実に努めること。 五 本法に基づく措置、とりわけ交付金制度については、本法の目的に沿ってアイヌ施策を適正かつ効率的に推進するため、制度の適切な運用を図ること。 六 本法において特例措置が設けられる認定アイヌ施策推進地域計画に係る地域団体商標の取得を契機に、アイヌ文化のブランド化の確立など産業振興を図るた めに、交付金制度の活用や国等からのノウハウの提供等により、アイヌの人々の自立を最大限支援すること。 七 内水面におけるさけの採捕や国有林野における林産物の採取といった本法の特例措置に関し、アイヌにおいて継承されてきた儀式の保存又は継承等を事業の 目的とする趣旨に鑑み、関係機関と緊密な連携の下、アイヌの人々の視点に立ち、制度の円滑な運用に努めること。 八 民族共生象徴空間への来場により国内外におけるアイヌの伝統等に関する理解の促進が一層図られるよう、広報活動やアクセスの改善等を図ること。また、 民族共生象徴空間に関し、適切な運営が図られるよう指定法人に対する指導監督に努めること。 |
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