はじめによんでください

仮説推論(アブダクション)はどうして重要か?

Why do we use the abductive inference?

池田光穂

推論を、前提条件、結論、規則という観点 から規定すると、

A:雨が降るという現象

B:土が湿っている現象

さて、A→B を説明する方法には、少なくとも次の3つの方法がある。すなわち、(i) 演繹(deduction)、(ii)帰納(induction)、(iii)仮説推論=アブダクション (abduction)である。

(i)演繹 (deduction):Aの帰結としてBを導くことを可能にする。「雨がふると、土が湿る。雨が降っている。その土は 湿ってる」A:雨と いう現象、B:土が湿っている状態

(ii)帰納 (induction):AがBを必然的にともなうとき、Bのいくつかの事例からAを推論することを可能にする。「これ まで、雨がふると、 土が湿ってきた。雨が降ると土は湿る」

(iii)仮説推論=アブダク ション(abduction):Bについての説明としてAを推論することを可能にする。「土が湿ってい る。雨がふると、土が 湿る。つまり雨が降ったに違いない」。

演繹は、前提条件が正しければ結論は真で あることを示す。帰納はいくつかの後件(B)を観察した結果として前件(A)を蓋然的に推論する。それ に対して仮説推論(アブダクション)は、前提条件(A)が、その帰結(B)から推論されることを可能にする。つまりアブダクションは、前提条件を観察して いなくても、それが起こったことを容認する。これを、後件肯定(Affirming the consequent)という。

後件肯定は次のように命題化できる。

「もしPならば、Qである。Qである。し たがってPである」

これは、P=Qの場合のみ可能で、P以外 でもQを導くものがあれば、QからPを導くことには限界がある。したがって、後件肯定は、論理的には形 式的誤謬である。ラテン語では、post hoc ergo propter hoc (事後的におこったことを、前の現象がおこったことが前提となりおこったと解釈すること[の誤り])ともいう。

したがって、仮説推論=アブダクションは、すべて正しいことを導く論法で はなく、もっとも適切な説明を、事後的に観察された事実から推論する方 法である。

ガリレオ・ガリレイGalileo Galilei, 1564-1642)は、「物体の落下速度は質量と比例関係にある」という説明に対して、詳細な実験から、物体の落下速度は質 量に比例してい ないことを証明した。これは帰納に基づく証明である。このことから、質量とは無関係に落下速度は「一定」ではないかと考えた。これは仮説推論=アブダク ションである。その後、フックやニュートンによる万有引力の法則や運動法則が定式化された。その後は、これを前提にさまざまな推論(金星での落下速度の計 算)を試みることは演繹的な方法である。

アブダクションにもとづき、かつての帰納 的な証明を、定式化し、演繹方法を定着させることができるという点で、アブダクションは、科学的推論に はなくてはならないものになっている。

【チャールズ・サンダー・パースのアブダ クション】 (CP 5.189)

【ベイズの定理】

【余談】

アブダクションとは、ベイズ確率を確立す る個々の(均質な)手続きのような気が、私はします。ベイズ確率にくらべると、アブダクションはより緩 やかな時系列のなかでの時にアドホックな比較的長めのプロセスで、いわゆるアハ経験なども包摂されるかもしれません。アハ経験の後に、それが後件肯定とし てきちんと当人に(既存の合理的な判断材料を使って)説明できれば、それはアブダクションというのであり、ベイズの確率ような(確率分布のような)根拠を ベースに強く主張するようなものではないみたいです。

リンク

文献

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

Maya_Abeja

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