はじめによんでください

人類学者と研究対象者の4つのタイプ

Four types of Anthropologist from colonial to post-colonical periods

池田光穂

現在、アイヌ民族の有志——北大開示文書研究会等——が、北海道大学ならびに全国の大 学・研究機関に、日本の先住民アイヌの人骨の「返還」を求めている。その訴えの根拠はさまざまな理由から示されている。具体的には、......

    1)さまざまな歴史的経緯から、アイヌは研究対象として扱われることがあっても、人 格・人権をもった対象として扱われてこなかった。その例は、戦前から続く人骨の「収集」であり、自然人類学者や考古学者による、伝統的埋葬地からの「盗 掘」であり、「人種標本」としての写真の撮影、さらには「民族の起源」研究のための血液やDNAサンプルの採集である。それらの多くは、アイヌ民族の研究 がもたらす情報としてもまた研究資料を「提供してきた」貢献としての福利の還元ですらない——アイヌ民族に対する研究という名の搾取。

    2)上記の研究にかかわる自然科学的な研究のほかに、社会調査や民族学調査において も、その実態の調査に関する報告書が書かれたとしても、アイヌ民族が直面するさまざまな文化的あるいは政治経済的「窮状」に、人間的な共感をもつ和人研究 者はいても、その成果をもとに、アイヌと共に、国や地方自治体あるいは、研究を実施する大学・研究機関に対して、適切な措置を講じるように、調査結果とと もに訴えることは少数の例をとおしてなく、理念的なものに留まっていた。

    3)アイヌの祖先に対する崇敬に関する伝統的な観念と、和人や外国人によるさまざま な宗教の受容により、祖先の遺骨や遺体に対しては、多様な思いがある。また、日本政府はアイヌ民族を先住民として認めている事実がある。それらのことに鑑 みて、個人が特定化された遺骨に関しては、遺族や祭祀継承者のもとに返還請求があれば速やかに返却すべきである。また、地域のアイヌ民族集団として、その 祭祀あるいは葬礼に関して集合的な崇敬の念をもって、研究材料から「解放」され、同胞として敬意をもって遺骨が処遇されることは、アイヌ民族としての集団 的な先住民権が国連宣言等(UNDRIP, 2007)でも認めるところである。

以下の、3つの文献(またはそのエッセンス)を読んで、上記の問題がどのように訴えられ ているのか、読解の上で、みんなで考察してみよう。

(1)アイヌ民族からの請求により北海道大学がまとめた遺骨の収集や保存状況について書 かれた文献:北海道大学『北海道大学医学部アイヌ人骨収蔵経緯に関する調査報告書』北海道大学、183pp., 2013年(→9.8MB pdf

(2)北大開示文書研究会に与る、市川守弘ら弁護士らによる、内閣総理大臣安倍晋三らに 宛てた「人権救済申立書」:出典は北大開示文書研究会編『アイヌの遺骨はコタンの土へ』緑風出版、2016年, Pp.276-295. pdf パスワード付: Ainu_jinken_kyusai_2015.pdf

(3)葛 野辰次郎エカシ(2010-2001)が遺した、大自然の尊さと人間の悪との仲裁の口頭伝承(あるいは唱え歌)「シオイナ・ネワ・ハヲツルン・オ ルスペ(抜粋)」:出典は北大開示文書研究会編『アイヌの遺骨はコタンの土へ』緑風出版、2016年, Pp.59-88. pdf パスワード付:Kuzuno_Ekashi_Sioina.pdf::

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

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