コミュニケーション理論
Shannon and Weaver's model for human communication
〈池田光穂・担当分〉
コミュニケーション (communication)の語源は、ラテン語のコミュニス(communis)すなわち共通したもの、 あるいは共有物(common コモン)と言われている。これは、コミュニケーションの本質を理解する上で重要な概念であるので、よく覚えておこう[→コミュニケーションの定義]。
コミュニケーションの日本語への翻訳は多 様で辞書をみても、伝達、報道、文通、伝染(cf. communicable disease)、連絡、情報、通信、交通(コミューター)などがあり、何かが伝えられていることを指し示している。しかし、これは伝えられることを通し て、「何かが〈共有〉される」というある事態の結果、ないしはその進行のプロセスのことを意味していると理解したほうがよく、英語も日本語も、そのような 意味が主たるものである。[→コミュニケーションスタディーズ総論]
したがってコミュニケーションの理想的な 翻訳は「伝達共有過程」ないしは「伝達の共有」というのが、もっとも語義に叶ったものになる。日本人が このようなややこしい過程を表現する適切な訳語がなかったためにしばしば外来語のコミュニケーションという用語をあてるのは無理もないし、[国立国語研究 所は文句を言うかもしれないが]そのような外来語化全く適切であると言える。
このような〈情報の共有性〉の確保につい て、もっとも簡潔で合理的なモデルを与えたのが、クロード・シャノンとワレン・ウィーバー(1949) であった。
情報が正しく伝わったり、伝わらなかった (言い換えると、情報が共有されたり、共有されなかったり)するには、情報の発信者と受け手が、別々の 存在であるということが、このモデルの前提になる。それらの間で情報がやりとりされ、最終的に〈共有〉されるわけである。シャノンは情報を数学的にとら え、電気通信的なモデルで表現した。それによると情報源は確率過程として理解され、エントロピー関数により情報量を定義した。
シャノンとウィーバーの理論の要衝は情報 をいかに迅速かつ正確に伝えることを実現する数学モデルにあった。しかし、人間を含む生物一般や、生物 の体内のシステムにおいても、このような機能プロセスはよく観察されるために、コミュニケーション一般のもっともシンプルで合理的なものとして利用するこ とができる。
それは情報源(下図で「情報発信者」と表 記)は、伝えたいメッセージを選択し、それを信号に変え、コミュニケーションチャンネル(コミュニケー ション媒体で、音波、電線、電波、インターネットのケーブルなど)を通して、受信体(「受信者」と表記)に送られる。この伝達過程で、情報はさまざまな妨 害をうけ、正確に伝えられないことがある。それをこのモデルはノイズと定義する。受信者は受け取った信号を再びメッセージに解読して、情報発信者の発した メッセージを解読している。情報発信者のメッセージと受信者による解読内容が合致した(共有された)時、コミュニケーションが成立したというのである。
Shannon and Weaver, 1949, p.7 に近い作図
池田による改作図面
コミュニケーションの数学的理論 : 情報理論の基礎 / C.E.シャノン, W.ヴィ ーヴァー著 ; 長谷川淳, 井上光洋訳. -- 3版. -- 明治図書出版, 1977(The mathematical theory of communication / by Claude E. Shannon and Wa rren Weaver. -- University of Illinois Press, 1949)
C・ギアツ「厚い記述——文化の解釈学的理論をめざして」『文化の解釈学 I』(吉田禎吾ほか訳)岩波書店、1987年 (Geertz, Clifford.,1973, Thick description: Toward an interpretive theory of culture, in "The Interpretation of Culture", New York: Basic Books.,pp.3-30.)
■コミュニケーション理解のための情報理 論
■
情報理論とは、情報の定量化、保存、伝達に関する数学的研究である。1920年代にハリー・ナイキストとラルフ・ハートリーが、1940年代にクロード・
シャノンがこの分野を確立した。応用数学におけるこの分野は、確率論、統計学、コンピュータサイエンス、統計力学、情報工学、電気工学の交差点に位置す
る。
■
情報理論における重要な尺度はエントロピーである。エントロピーとは、確率変数の値やランダムプロセスの結果に含まれる不確定性の量を定量化したものであ
る。例えば、公平なコインフリップ(2つの可能性が等しい)の結果を特定することは、サイコロの目(6つの可能性が等しい)の結果を特定することよりも少
ない情報(より低いエントロピー、より少ない不確実性)を提供します。情報理論における他の重要な尺度には、相互情報量、チャンネル容量、誤差指数、相対
エントロピーなどがある。情報理論の重要な下位分野には、情報源符号化、アルゴリズム複雑性理論、アルゴリズム情報理論、情報理論的セキュリティなどがあ
る。
■
情報理論の基本的なトピックの応用には、ソース符号化/データ圧縮(ZIPファイルなど)、チャネル符号化/エラー検出・訂正(DSLなど)などがある。
その影響は、深宇宙へのボイジャー・ミッションの成功、コンパクト・ディスクの発明、携帯電話の実現可能性、インターネットの発展に極めて重要であった。
この理論はまた、統計的推論、暗号学、神経生物学、知覚、言語学、分子コードの進化と機能(バイオインフォマティクス)、熱物理学、分子動力学、量子コン
ピューティング、ブラックホール、情報検索、情報収集、盗作検出、パターン認識、異常検出、さらには芸術の創造など、他の分野にも応用されている。
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情報理論は、情報の伝達、処理、抽出、利用を研究する。抽象的には、情報は不確実性の解消と考えることができる。ノイズの多いチャネル上での情報通信の場
合、この抽象的概念は1948年にクロード・シャノンによって「通信の数学的理論」と題された論文で公式化された。この論文では、情報は可能なメッセージ
の集合として考えられ、目標はノイズの多いチャネル上でこれらのメッセージを送信し、チャネルノイズにもかかわらず、受信者が低いエラー確率でメッセージ
を再構成することである。シャノンの主要な結果であるノイズ・チャネル符号化定理は、多くのチャネルが使用される限界において、漸近的に達成可能な情報率
は、単にメッセージが送信されるチャネルの統計量に依存するチャネル容量に等しいことを示した。
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符号理論とは、ノイズの多いチャネル上でのデータ通信の効率を高め、誤り率をチャネル容量近くまで低減するための、符号と呼ばれる明示的な方法を見つける
ことに関係している。これらの符号は、データ圧縮(ソース符号化)と誤り訂正(チャネル符号化)技術に大別できる。後者の場合、シャノンの研究が可能であ
ることを証明した方法を見つけるのに何年もかかった。
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情報理論符号の第3のクラスは、暗号アルゴリズム(符号と暗号の両方)である。符号理論や情報理論からの概念、方法、結果は、単位禁止などの暗号や暗号解
読に広く使われている。
https://en.wikipedia.org/wiki/Information_theory
情
報論より
■アレシボ・メッセージ(The Arecibo message)
「メッセージは1679個のビットから成り、解読者が信号の2進数列を2次元の四角形に並べ替えることを意図して作られている。/この 1679という数は23と73という二つの素数の積であり、1679ビットを余りなく四角形に並べ替えようとすると、23 × 73 または 73 × 23 の2通りにしかできないことから選ばれた。このメッセージは、23行73列に並べ替えても意味のある図形にはならないが、73行23列に並べ替えると右図 のように意味を持った図形となる。宇宙からの電磁波を受信して解析しようとする技術と知能があればこの解読方法に気づくと仮定」- アレシボ・メッセージ(The Arecibo message)
This is the message with color added to highlight its separate
parts. The actual binary transmission carried no color information.
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