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ゲノム編集と遺伝情 報

Genome editing

池田光穂

ゲノム編集とは人為的なDNA切断システムを使って遺伝子を改変する技術である。ゲノムとは、DNAのすべての遺伝情報のことをさします(ゲノム編集は「ゲノミクス」という学問の応用だと考えればよい)。

上掲の図は、山本卓「ゲノム編集の歴史と 基礎」The Chemical Times, n.d., より。

遺伝情報(Wikiより)

「遺伝情報(いでんじょうほう)は、遺伝現象によって親から子に伝わる情報。DNAの塩基配列情報だけではなくその修飾や、母性mRNA・蛋白質なども含む。いわゆる遺伝子は遺伝情報の担体 (遺伝因子)のひとつである。現在では遺伝子がその生物もしくは病原のほとんどの遺伝情報を担っていると考えられている。プリオン、ウイロイドなども遺伝子ではない遺伝因子の分かり易い例としてあげられるであろう。 /一般的にはゲノムDNAに書き込まれた塩基配列の情報のことと同義的に使われることが多い。様々な生物種の全ての核酸塩基配列を解読する、ゲノムプロジェクトが進行している。核酸塩基配列の調査は法医学でも用いられる ようになってきている。バイオテクノロジーの発達により遺伝子診断などが可能になってきた現在では、個人の遺伝情報の公開や漏洩(ろうえい)などによる倫 理的な問題も指摘されている。」

DNAとは

DNAとは、デオキシリボ核酸(デオキシリボかくさん、英: deoxyribonucleic acid)のアクロニムで、地球上の多くの生物において遺伝情報の継承と発現を担う高分子生体物質のことです。DNA はデオキシリボース(五炭糖)とリン酸、塩基 から構成される核酸である。塩基はプリン塩基であるアデニン(A)とグアニン(G)、ピリミジン塩基であるシトシン(C)とチミン(T)の4種類がある [2]。2-デオキシリボースの1'位に塩基が結合したものをデオキシヌクレオシド、このヌクレオシドのデオキシリボースの5'位にリン酸が結合したもの をデオキシヌクレオチドと呼ぶ。

ゲノムプロジェクト(Genome project)とは、DNAシークエンシングによって生 物のゲノムの全塩基配列を解読し、タンパク質コード領域やその他のゲノム領域のアノテーションをつけることを目的としたプロジェクト。当初はヒトをはじ め、マウスや線虫などのモデル生物が主な対象であったが、多くの生物種に対象は拡大している。各国の公的研究機関がチームを組んでプロジェクトを進行させ るケースが多いが、イネや小麦などの主要農産物については企業による解読もなされた。塩基配列情報は重要なものではあるが、それだけでは生物の理解には不 十分であり、遺伝子領域や制御領域の認識、それらの役割の解明などを進めていくことが望まれる。これらの研究をポストゲノムと総称する。(→ゲノミクス Genomics ︎▶︎︎ゲノムプロジェクト▶︎︎ グライコミクス Glycomics ▶ヒトゲノム計画▶ プロテオミクス Proteomics ▶構造ゲノミクス▶ バイオインフォマティクス▶ システム生物学)

ゲノムアッセンブリング:ゲノムアッセンブリングとは、大 量の短いDNA断片の配列を決定し、元となった染色体のDNA配列を構築しようとする過程である。配列アセンブリングなどとも呼ばれる。ショットガン・ シークエンシング法によるプロジェクトでは、サンプルから得られたDNAは断片化されている。これら一つ一つの断片はリードと呼ばれ、シーケンサーにより 配列決定される。得られたリードは、バイオインフォマティクス的なアルゴリズムによりオーバーラップする部分を探索しつなぎ合わせていく。ゲノムアッセン ブリングは非常に困難な技術的問題を抱えている。それはマイクロサテライトや、SINEs、LINEsといった繰り返し配列がゲノムには大量に含まれるた めである。とりわけ、ゲノムサイズの大きい動植物ではこれらのリピートは数千塩基におよんだり、大量に散在している。結果として得られるドラフト配列は、 コンティグごとにまとめられ、領域ごとの情報とリンクさせるための足場となる。

ゲノムアノテーション:ゲノムアノテーションとは、配列に 生物的な情報を注釈する過程である。

●中井謙太『新しいゲノムの教科書:DNAから探る最新・生命科学入門』講談社、2023年

【解 説】DNAという言葉は誰でも知っているし、日常会話のなかでもよく口にする言葉です。しかし、DNAが生命の設計図であることはなんとなくわかっていて も、それが具体的にどんな形で私たちの体の構造の「情報」になっているのか、想像するのは簡単ではありません。また、ニュースで毎日のように取り上げられ る、PCR検査やゲノム編集、遺伝子組換え、クローンといった話題が、DNAとどう結びついているのかを正確に理解している人も少ないでしょう。 本書では、中学や高校で習う原子や分子といった知識があれば理解可能なように、DNAに基づく生命科学の大枠を、DNAに書かれた生命情報という観点から 解説を試みました。少ない予備知識の読者でも最初から順を追って読めば基本を理解でき、少し知識がある読者なら、基本を確認しながら最新の解析技術まで深 めることができる1冊。 第1章 生命の情報~なぜDNAという分子が重要なのか 1生命の単位としての細胞 /2原核細胞と真核細胞 /3細胞の多様性と分化 /4クローン生物とはなにか /5ES細胞、iPS細胞と再生医療 /6すべての細胞に同じ「ゲノム情報」 /7DNAの構造 第2章 遺伝子とはなにか 1遺伝子という概念の変遷 /2RNAとセントラル・ドグマ /3転写――RNA合成/4mRNAを成熟させるRNAプロセシング /5タンパク質の基本構造 /6タンパク質の多様性 /7翻訳―ータンパク質の生合成/8翻訳後のタンパク質の成熟 /9非コードRNA遺伝子 /10 DNAの複製 第3章 ゲノムDNAの全体像 1ヒトゲノム計画 /2いろいろな生物のゲノム /3すべての生命に必要な代謝システム /4ヒトゲノムDNA の中身をのぞいてみると/5 トランスポゾン とはなにか/6 ウイルスとゲノム /7 遺伝情報システムとしてのゲノム /8ゲノムの不安定化とDNA修復/9ヒトゲノムの個人差と多様性 第4章 クロマチンとエピゲノム~ゲノムに追記される情報 1DNAのヌクレオソームとクロマチン構造 /2細胞記憶を担うエピジェネティクス /3エピゲノムの片腕――DNAメチル化/4もう一方の片腕――ヒストンコード /5遺伝子のスイッチ /6転写を増やす働きをするエンハンサー /7エンハンサーの謎 /8インスレーター の二つの構造/9核構造と相分離 第5章 生命科学を大きく発展させるDNA解析技術 1 DNAを扱う基本操作 /2遺伝子のクローニング /3すっかりおなじみになったPCR /4DNA塩基配列決定法の基本/5「次世代」のDNA塩基配列決定法 /6遺伝子の発現解析法 /7クロマチン構造の解析法/8DNA解析に変革をもたらすゲノム編集技術/9新次元のゲノム情報をもたらすメタゲノム解析

第1章 生命の情報~なぜDNAという分子が重要なのか

1生命の単位としての細胞
2原核細胞と真核細胞
3細胞の多様性と分化
4クローン生物とはなにか
5ES細胞、iPS細胞と再生医療
6すべての細胞に同じ「ゲノム情報」
7DNAの構造

第2章 遺伝子とはなにか

1遺伝子という概念の変遷
2RNAとセントラル・ドグマ
3転写――RNA合成
4mRNAを成熟させるRNAプロセシング
5タンパク質の基本構造
6タンパク質の多様性
7翻訳―ータンパク質の生合成
8翻訳後のタンパク質の成熟
9非コードRNA遺伝子
10 DNAの複製

第3章 ゲノムDNAの全体像

1ヒトゲノム計画
2いろいろな生物のゲノム
3すべての生命に必要な代謝システム
4ヒトゲノムDNA の中身をのぞいてみると
5 トランスポゾン とはなにか
6 ウイルスとゲノム
7 遺伝情報システムとしてのゲノム
8ゲノムの不安定化とDNA修復
9ヒトゲノムの個人差と多様性

第4章 クロマチンとエピゲノム~ゲノムに追記される情報

1DNAのヌクレオソーム構造とクロマチン構造
2細胞記憶を担うエピジェネティクス
3エピゲノムの片腕――DNAメチル化
4もう一方の片腕――ヒストンコード
5遺伝子のスイッチ
6転写を増やす働きをするエンハンサー
7エンハンサーの謎
8インスレーター の二つの構造
9核構造と相分離

第5章 生命科学を大きく発展させるDNA解析技術

1 DNAを扱う基本操作
2遺伝子のクローニング
3すっかりおなじみになったPCR
4DNA塩基配列決定法の基本
5「次世代」のDNA塩基配列決定法
6遺伝子の発現解析法
7クロマチン構造の解析法
8DNA解析に変革をもたらすゲノム編集技術
9新次元のゲノム情報をもたらすメタゲノム解析

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