Misleaded concpton "race"
Aさんの質問:「人種によって肌の色に違いがあるのはなぜなのしょうか?」
池田光穂からの答え:
Aさんご連絡ありがとうございました。
垂水源之介に代わりましてXがお返事します。
Aさんのいう「人種によって肌の色に違いがあるのはなぜか」という問題の立て方が間違っています。易しくいうと「肌の色の違い」にもとづいて、 人は違っていると生物学的に説明しようとしたのが「人種」という考え方なのです。だから、人の集団の違いがあるときに「ああ、これは『人種の違い』なんだ な」と誰もが思う習慣になっていますが、これは「神や仏」が存在すると信じている人同様に「人種」は存在するという考え方を、疑いのないように信じます。 西洋の科学が人種を生物学的に説明しようとしておよそ二百年ぐらいがたっていますが(目に見える)違うものを人種と呼んでいるだけにすぎません。違うとい う事実が、人種という信念——宗教学では信仰と呼びます——を強化しているからです。もちろん、目 に見える違いについての科学的根拠はあります。人の遺伝 子には個性がありますが、集団の間では共通しているからです。肌の色は虹のように見える色の限界からべつの色の見える限界まで連続しています。それが、す べての人間は「結婚して生まれた子供には、両親の心と体の両方の性質を受け継ぐことができる」遺伝現象だからです。したがって人種の違いは、これまで僕た ちが「肌色」と読んでいたクレヨンの色を、インドやアフリカでは僕たちの感じる色よりも暗い——それもものすごく様々な「肌色」の好みに分かれます——も のに変更しなければならないからです。
したがって、垂水さんがいうように、文化人類学を勉強する先生たちは「人種の区分は生物学者や医学者が決定的に決められると思っていたけど、そ れは、その時代や社会の価値観に影響されて勝手に決めていたのだ」と主張するようになりました。
肌の色や、髪の毛の色の変化の違いを決めるのは一つないしは複数の遺伝子の場所(ユニット)になっています。しかしながら、それがどのようにし て決まるのか、なぜ同じ遺伝子組成をもつ人たち——一卵性双生児——に微妙な違いがあるのかなど、まだまだわからない課題はあります。そのようなことは現 在研究さ れていますが、科学には解明すべき重要な優先課題があります。たとえば、生物学には生命現象の多様性の解明が、医学には治さなければならない治療という課 題があります。
Aさんは、もう中学生なので、お近くの公立の図書館などで『人類遺伝学』や『人類進化学』の入門書を探して読まれてみるのは、いかがで しょうか?専門家 の中にも古くなったり、このような基本的事実——「人種によって肌の色の違いがあるのではなく、その違いを人種とこれまで読んできたけど、その違いは連続 的である——を理解していない専門書も時々みかけますので、かならず司書の方と相談して本を探しましょう。
質問ありがとうございました。
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