On fusion between research and education in CSCD
私が現在関心があるのは、(1)デジタル・ヒューマニティーズの推進による学際的研究と教育の融合、(2)スマート・キャンパス化の推進による 学びの場のユビキタス化、および(3)コラボレーションを通した大学教員の研究と教育の循環化の促進です。
(1)デジタル・ヒューマニティーズの推進による学際的研究と教育の融合
関係者への聞き取りによると、人文学コンピューティング(humanities computing)の歴史的トレンドには、(a)人文学の伝統的研究をデジタルアーカイブ化や計算処理でその効率性を加速推進させる動きと、(b)コン ピューティングの導入を通して人文学・社会科学の統合化を加速させるうという動きを大きく分けて2つの流れがあると言います。私がこの分野の発展に期待す るのは、後者(b)の動きです。貴学の情報学環は、そのようなトレンドを推進させてきた教育研究機関のひとつであることを十分に認識した上で、日本学術振 興会や学術会議等の学・領域の分類の枠組みに挑戦し、非学際融合傾向を未だに留める日本の人文学社会学の危機化に歯止めを止めることが急務と考えます。そ れぞれの研究者が既存の枠組みに留まり続ける要因は、同一や隣接関連領域での研究者による共同研究の固着化と、新規学際領域への進出のリスクテイクを嫌う 傾向によります。情報学環は情報発信の共通プラットフォーム化に取り組まれてこられましたが、この取り組みを学内外にさらに強力に推進する必要がありま す。
(2)スマート・キャンパス化の推進による学びの場のユビキタス化
キャンパスのICTの促進は、海外で提供されているIoTに関連づけたスマート化(e.g. Stanford d-school)にくらべて、日本ではどの大学もとても遅れています。その理由は、国内大学では画一化傾向から脱しきれず、研究体制も教育体制も久しく 変わってこなかったことにあります。さらに教育を提供する側も受ける側も、大幅な変革の必要性を感じていないようです。他方、スマート化の洗礼をあびつつ ある新世代の若手教員や院生・ポスドクは、メンターの世代よりも研究・教育・社学連携のスマート化には明らかに適応的です。図書館および学内にさまざまな ラーニング・コモンズなどのスマート化が進んでいることも加速する要因になります。また、大学および大学院の入学者は留学生のみならず社会経験豊かな社会 人学生が加わり、さらにハンディキャップをもつ学生の参入などダイバーシティの拡大傾向がますます加速すると予想されます。ICTを通してそれらのさまざ まなコミュニケーションのハンディキャップを平準化し、キャンパス内でメンバーの包摂化を促進するためには、スマート・キャンパス化のさまざまな実証実験 と研究、そして実装が不可欠です。学生は、新しい学習環境のなかで、これまでの教育サービスのコンシューマーのみならず、自己の利用データをクラウドに フィードバックしスマート化に貢献するプロシューマとしての傾向をますます加速化してゆくことでしょう。さまざまな外部資金や技術力を導入することにより 情報学環を世界が注目するキャンパス・スマート化運動——とりわけ国立大学の境界を超えた連携の強化は不可避——の強力なハブの一つに育ててゆく必要があ ります。
(3)コラボレーションを通した大学教員の研究と教育の循環化の促進
これまでの私の経験からみると、大学の研究者はおしなべてキャンパスの中では学生と院生に君臨するとは言わないまでも学業と学位というゲー
トを管理する監督者であり、学生や院生あるいはポスドクを同僚(colleague)とみなす傾向は未だ低いように思われます。文科省が分割して競争させ
るという管理方針のせいもあり、国立大学間の協力協働関係も傾向も連合大学院におけるカリキュラムの共有や標準化というレベルに留まっています。国立大学
間の教員の流動制は低く、近年の研究教育状況の悪化は私学への流動化傾向に拍車がかかっています。私は(それぞれの国立大学法人のテリトリーの枠を超え
て、私学ならびに高等研究機関との)クロスアポイントのシェアをより拡大し、かつ教員の流動化を図り教育の「質の保証」のみならず「質の向上」に図ること
が必要だと考えます。先の(1)と(2)のプロジェクトの提案を通して、国内外の大学間のコミュニケーションの回路を広く拓く、というが第三番目の私の構
想です。
■クロスアポイントメントのモデル(事例):大学→企業
「パナソニックが人工知能(AI)の研究に外部人材を活用している。[2017年]4月に立命館大学情報理工学部教授の谷口忠大氏(39) を社員に迎え入れた。研究者が大学などに籍を置いたまま兼業できる「クロスアポイントメント制度」を同社で初めて採用。従来の組織のあり方を見直し、最先 端分野での製品開発を加速する」日経新聞「パナソニック、「教授社員」がAI研究 」2017/10/23
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22543530R21C17A0XVA000/
■大学当局が抱える問題(2017年11-12月期)
◎大学院教育が抱える課題
1.学生の大学院離れ=今大学院定員朱充足
2.大学院教育の質の低下=。教育負担の増加
3.大学院教育の質の低下=。教育負担の増加
◎今後の大学院教育の課題
1.研究型総合大学としての社会的責任を目覚し、社会のあらゆる領域で活躍する優秀な博士人材(イノベーシヨシ人材):のー育e成を図るb くemployability>
2.研究型総合大学の特質を活がし、研究の多様性を尊重した大学院教育の充実を図る。〈diversity>
3.学理の専門性を深く研鎖することを重視する。< expertise>
4.学問の社会的、倫理的責任を自覚し、1 社会との対話、共創を重視する人材の育成を図る。< social relevance>
◎実現のための方策
1.三つの戦略会議の活用:既存の研究科等の垣根を超えて、教育研究機能改革を推進
2.大学の枠を超えた諸機関との連携:社会との「共創J による実践力を備えた人材の育成を推進
3.人材育成の継続性を支えるリソースの確保:運営費交付金に加え外部資金等獲得を強化した財務構造改革を推進
■大学院教育改革において検討が必要な項目(例)
1.学位プログラムの設定
多様な社会ニーズへの対応の検討
定員の再配置、組織再編も視野に入れた分野横断型学位プログラムの検討
2.教育内容の改革
博士課程教育リーディングプログラムの成果の全学展開
QE(Quality Enhancement)導入などによる質の保証(→「大学改革支援・学位授与機構」)
高度汎用力教育の重視、PBLの全学展開
国際性の酒養
内外でのインターンシップの充実
産業界との「組織対組織」連携による人材育成(RA経費としての学生支援)
3.学生の獲得
入試のグローバル化対応
博士進学者の掘り起こし
社会人学びなおし対応、優秀な社会人学生・留学生の獲得
博士後期課程学生に対する経済的支援の充実
●情報処理学会が公募する論文への投稿依頼(54号「ITと教育」論文募集)
ITは、現代の教育において欠かせないツールとなっている。企業では、
eラーニングを使って、時間や人員を節約し、効率的に人材育成を行っている。学校では、教師が講義資料や課題を学習支援システムで提供し、学生はスマート
フォンを使って出席登録を行い、講義資料をダウンロードし、レポートを提出している。ITを活用することにより、教育がより効率的に、より効果的に実施さ
れている。 しかし、ITは、紙のテキスト、黒板やチョーク、ノートなどに代わる、単なる便利な道具ではない。オンライン教育を利用すれば、人々は、集合研修に時間を 取られることもなく、一度も通学することもなく教育を受けることができる。海外に行かずとも海外の大学の単位を取得することができる。SNSを使えば、従 来の教育では実現できなかった多様な背景を持つ学習者同志の繋がりが容易に形成される。ITの活用により、同じ年代、文化、社会的背景の人々が集まって、 学習者が教育の在り方を変革することさえ可能となる。すなわち、ITを活用することで、教育の在り方そのものを変え、教育の未来を変えることができる。 折しも世界は新型コロナウイルスパンデミックの最中にあり、企業では、多くの集合研修の中止が余儀なくされ、企業も学校も、対面からオンラインによる教育 へのシフトを余儀なくされた。その結果、今までオンライン教育に関心の無かった人々が否応なしにオンライン授業を体験することになり、オンライン教育の価 値が広く認知されるようになった。もはや、パンデミック以前の状態が通用しなくなりつつあり、時代は、教育のニューノーマル時代を迎えようとしている。 本特集では、ITを活用することで、教育・学習の過程・環境を変革し、来るべき教育のニューノーマルの時代を予見させる実践に基づく論文を募集する。本特集によって、ITがこれからの教育がどのように強化し、変革することになるのか、また教育はどう変わるべきなのかを見通すことができる、知見を広く共有し、教育におけるITのさらなる発展につなげるものとしたい。 以下のようなトピックを歓迎するが、必ずしもそれにとらわれない。 ITによる教育のエコシステムの構築 教育を変革するwebサービス 教育を支えるインターネット運用技術 教育と新しい情報通信ネットワーク 教育を守る情報セキュリティ オンライン教育の新しい取り組み ブロックチェーンを利用した教育に関するユースケース AIの教育への適用及び実践的AI技術 EdTech ラーニングアナリティクス (54号「ITと教育」論文募集) |
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