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マーシャル・サーリンズ『文化と実践理性』1976,の解説

On Marshall Sahlins', "Culture and Practical Reason," 1976.


池田光穂

サーリンズは本書の冒頭で明確に言う:「人間文化が実践活動からなりたち、その背後に功利的な利害が潜んでいるという考え方にたいする、人類学的な立場から批判」することが本書の目的である(p.1)。「人類学の文化概念は、もっとも有力な形態での、実践理性に対する挑戦」である(p.3)——人類学理論における文化概念の擁護。

そこで2つの考え方が区分される。

《プラクシス理論》:おもに経済活動の諸形態に着目するとき、焦点があてられる実践活動の考え方をそう呼ぶ

《効用理論》:生産を支配していると仮定(措定)されている物質的利益の論理にかかわる考え方をそうよぶ。

《プラクシス》:とりわけ生産活動(生産手段と生産関係)[マルクス主義の枠組みでの——]

《効用》:主観的次元と客観的次元に区分される。

《功利主義》:個人が最善の利益を追求する合理的行動が、文化をかたちづくる考え方で、手段と目的の関係の効用極大化

客観的効用理論:自然主義あるいは生態学、生存のための物理的叡知(natural nature)が、人間の文化的なるものに実体化される

象徴理性/意味理性:M・サーリンズのめざすもので、人間がもつ能力で、物質的制約を超えて機能(作動?)する。

マルクス主義と構造主義は、「それぞれ特定の文化的世界や歴史的時代にのみ適合的な、相対的な理論的価値をもつにすぎない」(p.2)。

《未開》社会に関する思想史のなかで、実践理性と文化理性は、深い関係[の歴史]をもつ(第2章)。史的唯物論の批判(第3章)。象徴的秩序としてのブルジョア社会(第4章)。文化理論のレベルにおける《効用》対《意味》が《西洋》対《未開》に対応し、本書が閉じられる。

"The main thrust of this book is to deliver a major critique of materialist and rationalist explanations of social and cultural forms, but the in the process Sahlins has given us a much stronger statement of the centrality of symbols in human affairs than have many of our 'practicing' symbolic anthropologists. He demonstrates that symbols enter all phases of social life: those which we tend to regard as strictly pragmatic, or based on concerns with material need or advantage, as well as those which we tend to view as purely symbolic, such as ideology, ritual, myth, moral codes, and the like. . . ."--Robert McKinley, Reviews in Anthropology.

章立て

1.マルクス主義と2つの構造主義

2.文化と実践理性:人類学理論の2のパラダイム

3.人類学と2つのマルクス主義:史的唯物論の諸問題

4.ブルジョア思考:文化としての西欧社会

5.結論:効用と文化的秩序

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1.マルクス主義と2つの構造主義

マルクス主義とイギリス構造人類学:P・ウェースレィ=M・フォーテス論争

マルクス主義とフランス構造主義

2つの社会タイプ、2つの理論のタイプなのか

2.文化と実践理性:人類学理論の2のパラダイム

モーガン

ボアズ

実践理性の人類学的変種

文化理性

3.人類学と2つのマルクス主義:史的唯物論の諸問題

唯物論における文化契機と自然契機

概念的思考の系譜学

唯物論的な歴史把握の自然化

史的唯物論と功利主義

4.ブルジョア思考:文化としての西欧社会

アメリカの食物としての家畜の選好とタブー

アメリカの衣装システムについてのノート

5.結論:効用と文化的秩序

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