かならずよんで ね!

告白サイトにみるコミュニティとは?
Turkle, Sherry. Alone Together, Basic Books (2011)

左:アウグスチヌス『告白』写本/右:Sherry Turkle, Alone Together, 2011.

池田光穂

このページは、一連のシェリー・タークル(Sherry Turkle, 1948- )の諸命題を 検討するページのうち「」『繋がっているのに孤独』Turkle, Sherry. Alone Together, Basic Books (2011)の第12章「真実の告白」の内容を検討するものある。後半に、インターネットの仮想空間は真のコミュニティであるかどうかについての考察があるので、このページのタイトルも「告白サイトにみるコミュニティとは?」とした。

渡会[わたらい]圭子さんによる日本語訳は、パラグラフ数が倍になり読みやすく工夫 しているが原文(後述)との対照がしにくい独自テキストになっている。

# of page
pragraph
読書ノート

398
1
1. 告白サイトに集う人びと




2
・告白サイトの書記法:1)匿名の投稿、 2)秘密と断り書きがある、3)反応が期待されている

398
3
・ポストシークレットの「ハガキ』?—— カード形式の投稿を実際に受け入れているようだ(→400-401)



4
・不適切な性関係や、薬物依存症の告白な ど



5
・コメントの相反する特徴:1)相手の立 場に立たず説教をする(→道徳起業家)、2)寄り添い共感する。



6
・書き込みは、ネットを利用する「生き 方」を反映している(タークル)→本当か?(池田)
・少なくとも「生活」と繋がる→想像することが繋がることなのか?(池田)、実際後半になり、フィクションと真実が分けられないので、すべて「小説=ナラ ティブ」にすぎないとの言及もあった。
21世紀のペンフレンド、 は言いえて妙(399)



7
2. 誰かが聞いてくれるという幻想
・ポストシークレットのつづき



8
・告白サイトの特徴は、経験は簡略され、誇張されている


400
9
・真贋は、書き込みした人しかわからない ので、フィクションであり、あるいは言い方を変えると「新しいジャンル」(400)



10
・年一回のオフ会の遠足とその写真



11
・ハガキというフィードバック(=再考す る)の時間的長さの意味



12
・非難を受けることの辛さと、その真意 (=相手の側に立つから親身になっている)※親身=パターナリズムの日本語の語彙についても再考必要だが。


401
13
3. 悪感情を吐き出すことの効果
・第三者の反応は、「悪くはない」「みんなさびしい、よりどころになる」「胸のつかえを下ろすことに役立つ」



14
・コミュニケーション・ロボットでも投稿 でも、悪感情の表出は治療効果があると人びとは考える。
・悪感情の共有はある。


402
15
・低くなった期待値(=低いQOL)を共 有している、とも言える
・だからこそ、ロボットやネットが、告白できる対象になる(とタークルは考える)



16
・年齢が高い(36歳以上)人は、欲しい けどもっていない腹蔵なく話せる友人とネットをとらえる。
・若い人は、めずらしいものとしてとらえる。
・興味本位で見る人もいる。
・同じような悩みをもつひとを知って「安心」するというものもある。
・自分が告白することに使う人(がいて)、話すことと同値に捉えている



17
・告白サイトはユーザーの訪問記録を取ら ないと公的に表明し、ユーザーもそれを信じている。ベトナム人ダレン君(16歳)


403
18
・ベトナム移民の家族の少年ダレン君とそ の家族、ダレン君の悩み



19
・でたらめなハンドルネームを使うのは、 赤の他人にみせるため



20
・ロボットは批判しないから信頼して話せ るというダレン君



21
4. 軽くなる謝罪の意味
・ダレン君のコミュニティ



22
・シェリル(32)の看護師のネット書き 込み



23
・同僚と不適切な恋愛をして、バーケー ションに出かけた。
・告白は、自分が書き込みをして、他の人も同じことをしていることを確認すること



24
・シェリルは告白しても、態度を改めた り、類似の人とコミュニケーションをとろうはしない。(→「自己肯定ツール」??)


404
25
・タークルはシェリルに聞く。告白したら (リアルに)謝罪しないことの心理的負債は減ると表現して、タークルは驚いている。



26
・シェリルは12ステップの話を使う。
・8「私が迷惑をかけた人々のリストを作り、彼ら全員に償いをすることをいとわなくなった」
・9「その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした」
・シェリルは「人を傷つけない限り」を強調する。つまり、ネットに告白はするが、直接本人には謝罪はしない——傷つける可能性があるから。



27
・告白と謝罪の違いは、ネットやSNSで コンセンサスがえられていて、多くはネットで告白のみをおこなう。



28
・金融アナリスト・マリア(33歳)
・メールでは謝罪できない。直接会うべきだと考える。



29
・他方、オードリー(16歳)は、ネット での謝罪は簡便だという。
・ラリー(18歳)も同様。
・ただし、法学生シドニー(23歳)は違う。書き込みは謝罪ではないという。



30
・タークル教授の講釈:謝罪の本質は、癒しの土台をつくることである、と。



31
・「テクノロジーによって告白と謝罪の区 別があいまいになり、謝罪とは何かがわからなくなってしま うのは、ネット空間が他者と向きあうことの安易な代用になるからだけでなく、すでにつながりの感 覚がない他者に謝罪することの難しさを反映している。そのような状況では、私たちは自分の行動が 相手の心を動かすことを忘れがちだ」(406)


406
32
・シルバーアカデミーの女子学生:ネット での謝罪が多すぎると不満。



33
・許そうという気持ちは、相手への共感か らくる。



34




35
5. ネット上の他人の残酷さ
・ハリエット(32歳):落ち込んだ時に告白する。瓶に入れる手紙と同じという。
・すでに両方亡くなってしまった(叔母の夫である)「叔父に誘惑された」ことを告白したが、批判され、さらに落ち込む。



36
・ハリエットは、最初は、赤の他人の批判 などどうでもいいと思ったが、(ネットに残るのか、記憶に残るのか)その批判が気になる。
・ネットで親身なコメントがくることはまれ。


408
37
・ロベルタ(38歳)。オンラインで書き 込む時の気持ちは一種の解離である。解離は「無意識的防衛機制のひと つで、心や行動の過程を、個人のそれ以外の精神活動から隔離してしまう」こと、つまり人格の統覚が失われた状態だというのだ(池田)。
・10歳から同居するような母親の恋人と14歳で性関係を持つようになると告白したら、励ましよりも、道徳的非難や(身勝手な)処方のほうが多く、自分自 身で解離状態になるという。



38
・テクノロジーは弱さ(ヴァルネラブルな もの)を探す
・「私たちがつくるテクノロジーは、私たちの中に新しい弱さをもたらす。ネットの告白サイトでは、 投稿者は自分の重荷を顔の見えない読者と分かち合うが、その読者が投稿を読むのはおそらく自分の 目的のためだ。コメントをつける人は味方なのだろうか?それとも審判で、告白を1つずつ「格付 け」しながら次を読むのだろうか」(408)
原著 p.235


39
(つづき)「例外はあるが、私たちが自ら を無防備にさらけだすのは、人からの助けを期待しているときだ。投 稿者が深く考えずに自分の「悲しい話」を知らない他人に告白するのはそのためである。打ち明けた お返しに、親身になってくれることを期待している。オンラインの環境では、思いやりの期待できる人の数が多い」(408)
・"We build technologies that leave us vulnerable in new ways. In this case, we share our burdens with unseen readers who may use us for their own purposes. Are those who respond standing with us, or are they our judges, "grading" each confession before moving on to the next? With some exceptions, when we make ourselves vulnerable, we expect to be nurtured. This is why people will some times, often prematurely, tell their "sad stories" to others they hardly know. They hope to be repaid in intimacy"(p.235)
・人はなぜ不本意に告白するのか?をタークル教授は説明する。それは「オンラインの 環境での思いやりの期待」形成である。
・オンラインのみならず、親密な関係の人の告白の意味の延長上にあると、池田は考える。



40
・だがオンラインでは、むしろ、狼がい る。
・炎上がおさまらないのは、物理的な制御要因がないからだというのが、タークルの説明。


409
41
・他人への非難はエスカレートする。
・エスカーレートして、炎上に油を注ぐ人自身も自失する。



42
6. 自己を投影して他人を攻撃する
・ティーンエージャーはそれを知りつつネットに参入する
・ブランディ(16歳):自分のシステムにプライバシーを吐き出し、不満を書き込む。


410
43
・ネットでの(攻撃対象になる可能性のあ る)プライバシーを書き込むと同時に他者には不満をぶつけるのは、ある種の感情の転 移である。感情の転移とは「直接の対象ではなく、別の代替対象に感情をぶつけて溜飲を下げる方法」
・怒鳴り合いになりがちなのは、論争的テーマである、中絶、児童虐待、安楽死など。
・典型的な転移とは、自分の嫌な部分を、他者に中に認めて攻撃をおこなうこと。



44
・ジョナス(42)は離婚後に自分の息子 との関係が少なくなり、そのことを気にかけている。



45
・ジョナスは、レスリーという女性が息子 と仲違いして、彼が軍に志願してやがてイラクに派遣されたことについて、彼女を責めたことを、タークルに告白する。



46
・タークルは、自分の悩みをレスリーに向 けることで八つ当たりしていると解説。
・このような感情の転移は、インターネットの風土病(endemic in the Internet)とも。
原著、p.237.

411
47
・ネットは、自分たちの匿名性を担保し て、他者に(悪)感情をぶつける用具になるとも。



48
・告白サイトにはセラピー効果があるとい う主張は、却下。なぜなら本来のセラピーは「ただ気持ちを吐き出すだけでなく、抱え込んだ葛藤を新たな方法で取り扱うと模索する」ことだという(411)



49
・告白するとストレスを感じるのか、ボー イフレンドと性関係をもったことを告白した高校生は、書き終えたあとに、部屋で一人タバコを吸ったという。胸のつかえがとれて「一人になりたかった」。 タークルは、消耗したかもしれないと書く。


412
50
・告白サイトが、一時的な安心なら、不安 の背景にあるものを(書き込む)ユーザーが理解しているとは言えない。
・感情というリソースを、人間関係の持続に利用しているわけでもない。
・お互いに落胆させあっているのは人間同士であり、テクノロジーはそれでかまわないという神話をつくる手助けしているだけである。



51
7. コミュニティの意味が変わる
・オンラインで見知らぬ人に告白する(書き込む?)ことはどのような意味をもつのか?
・ジョナスは、他人のトラブルを糾弾することで、自分のトラブルから目をそらす。
・現状の改善には何も役立っていない。——だが依存的な心理的効果をもつのはなぜだろう(池田の疑問)。


412
52
・告白サイトの代替:教会での牧師との出 会いや信頼、子どもでいられる時間と子ども時代。コミュニティが必要だ。



53
・元図書館司書モリー(58歳)は、自分 にはコミュニティがないという。




54
・子ども時代の買い出しの経験が、現在で もスーパーで買い物をする時に思い出す。
・告白サイトは、自分のコミュニティであると考える



55
・モリーの母のアルコール依存症の話を書 き込む。


56
・タークルは、モリーのコミュニティの概 念をテクノロジーより歪められていると批判。
・モリーはいい人に出会うというが、批判的な意見にはそれを見ることを避けている。


413
57
・タークルはモリーのコミュニティはコ ミュニティではないと批判
・コミュニティは良いことも悪いことも受け入れられる場所で、誰かが手を差し伸べてくれる。(コリン・タンブール『山の民』を読めといいたい気持ちに池田 はなる)



58
・告白サイトの運営者も、コミュニティに ヴァーチャル空間が組み込まれるように提言している。だがタークル教授は、それではコミュニティの本来の意味が失われるという。
・彼女のコミュニティは、クリフォード・ギアーツの「本源的紐帯 primordial ties」が生まれるまさにその場と想定されているようだ。



59
・コミュニティの本来の意味は、互いに与 え合うという意味。ネットの告白サイトはそれを満たしていない。
・"late 14c., "a number of people associated together by the fact of residence in the same locality," also "the common people" (not the rulers or the clergy), from Old French comunité "community, commonness, everybody" (Modern French communauté), from Latin communitatem (nominative communitas) "community, society, fellowship, friendly intercourse; courtesy, condescension, affability," from communis "common, public, general, shared by all or many" (see common (adj.))."-community (n.).



60
・タークルの主張は、コミュニティ概念を 狭めることである。
・他方、さまざまなSNSのなかでの仲間のつながりをコミュニティでないと言おうものなら、反論がでることも理解している。


414
61
・レイ・オルデンバーグのコミュニティの 定義=「とても居心地のよいところ」(コーヒーショップ、公園、理髪店)
・それに対して、より弱いつながりもコミュニティの特色としてあげる。



62
・「コミュニティを構成するのは、物理的 な近接性、関心事の共有、現実の結果、責任の共有などだ。そのメンバーはきわめて実際的なやり方で互いに助け合う」(414)



63
・彼女のマンハッタンの思い出。


64
・コミュニティの言葉を彼女は使わず、仮 想空間のなかでの人間関係とはなにかという問題を投げかけている。


415
65
8. 告白を読んだものが問われること
・サイトの関係者は、どのような情報でも書き込んだ人のIPを収集しないと明言している。
・にもかかわらず、読んでしまうことや、違法で異常なことに仮想空間で出会うことはある。
・その場合の責任性というのはどういうことか?



66
・告白サイトで、さまざまな身体や心の危 険性に苛まれるひとの記事を読んで、不安に陥るとともに、その責任性について感じる。
・自分は証人になってしまったから、だという。



67
・だがそれは杞憂かもしれない。
・20歳の男性は「それは新たな文学」という。書かれていることに、真実性が求められていないからである。
・40歳の大学教授は、オンラインの匿名サイトでは、どこにいる平凡な男を演じるという。世の中には暴力が横溢しているのだから、暴力について書くことは 問題ないだろうという立場である。



68
・タークル教授は、ECF気味に、9歳の 少女のレイプの声に耳を塞げるのか?と反論する。



69
・自分は精神分析を受けたので、書き込み を読む時は、真実か否かではなく、それがどのような意味をもつのかを考えるという。
・願望や妄想には、重大なメッセージが含まれている。
・そのため、インターネットで語られたことが(逆に)真実かどうかということが知りたいという欲望が浮上するという。



70
・よいセラピーを受けると、自分の世界を 突き放した目でみることができ、悪いパターンがでてくると、別の自分が「また、はじまった、そんなことをやめて、別のやり方をしよう」と囁くらしい。
・オンラインでの行動は、そのような内省は働かない。
・インターネットがなくても、内省せずにあくせく生きていくこともあったが、インターネットはさらに、その内省回避の構造をつくったと、タークル教授は批 判する。



71
・インターネットの告白サイトで「ガス抜 き」できたという人がいるが、タークル教授は自分がそれを読んでも助ける力がないということが気になる。——池田の感想だが、タークル教授にとって、ネッ トや仮想空間という《他者》の存在は、彼女をして実存的な状況に落とし入れるようだ。



72
・告白サイトを読み続けるには、それに慣 れる必要がある。他方で、慣れると今度は、それらがおなじみのジャンルのひとつにすぎないと思うようになる——暴力概念の馴化がおこるのだ。



73
・ジョエル——ノエルの自殺願望などフェ イクだろう——のことを思いだす。
・告白サイトでの語りはパフォーマンスなのか?
・この考えは粗雑なのか?など自問を通してこの章は終わる。


英文

# of page
pragraph
contents


229
1
0.(introduction)



2




3




4




5




6




7




8




9




10
1.VENTING



11




12




13




14




15




16




17




18




19




20



234
21
2. THE CRUELTY OF STRANGERS



22




23




24




25




26




27




28




29



237
30
3. SEEKING COMMUNITIES



31




32




33




34




35




36
4. AFTER CONFESSION, WHAT?



37




38




39




40




 『繋がっているのに孤独』Turkle, Sherry. Alone Together, Basic Books (2011):渡会圭子訳

"Consider Facebook- it's human contact, only easier to engage with and easier to avoid. Developing technology promises closeness. Sometimes it delivers, but much of our modern life leaves us less connected with people and more connected to simulations of them. In Alone Together , MIT technology and society professor Sherry Turkle explores the power of our new tools and toys to dramatically alter our social lives. It's a nuanced exploration of what we are looking for- and sacrificing- in a world of electronic companions and social networking tools, and an argument that, despite the hand-waving of today's self-described prophets of the future, it will be the next generation who will chart the path between isolation and connectivity."- Nielsen BookData.

はじめに:テクノロジーと人間の関係が変わる Author's Note: Turning Points

序章:つながっているのに孤独 Introduction: Alone Together

(パート:01)ロボット化の時代——孤独の中の新 たな親密さ PART ONE The Robotic Moment: In Solitude, New Intimacies

1.一番近くにいる隣人? 1. Nearest Neighbors

2.十分に生きている 2. Alive Enough

3.本当の同伴者? 3. True Companions

4.ロボットに魅入られる人間 4. Enchantment

5.人間とロボットの共謀 5. Complicities

6.ロボットによる高齢者ケア 6. Love's Labor Lost

7.ロボットと心を通わせる? 7. Communion

(パート:02)ネットワークの時代——親密さのな かの新たな孤独 PART TWO Networked: In Intimacy, New Solitudes

8.いつもつながっている人生  8. Always On

9.常時接続社会のアイデンティティ 9. Growing Up Tethered

10.電話をかけなくなった社会 10. No Need to Call

11.人間に期待しない社会 11. Reduction and Betrayal

12.秘密を告白する空間 12. True Confessions

13.脅かされるプライバシー 13. Anxiety

14.古き良き時代への郷愁  14. The Nostalgia of the Young

15.人間の会話を取り戻す Conclusion: Necessary Conversations

(エピローグ)娘への手紙 Epilogue: The Letter

++++++++++++++++++++++++++++++

リンク(シェリー・タークル関係)

リンク

文献(参照文献)

文献(Turkle, Sherry. Alone Together関係)

文献(タークル先生関連)

その他の情報

Maya_Abeja

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099

池田蛙  授業蛙 電脳蛙 医人蛙 子供蛙