かならずよんで ね!

高度汎用力教育における産学共創のあり方: URA&IRモデルカリキュラムの探究

Industry-Academia Co-Creation in Advanced General Competence Education: An Exploration of URA & IR Model Curriculum

池田光穂

こ れまで大阪大学で産学共創の取り扱う部署は、おもに産学共創本部であり、またそれを側面から支える経営企画オフィスURA部門であった。前者のHPには、 企業や行政との「共同研究」「共同研究講座」「協働研究所」「学術相談」「未来社会共創コンソーシアム」「地域連携」の6つのカテゴリーのポータルが存在 する。他方URAではURA(研究活動マネジメント)にくわえてIR(Institutional Research)すなわち大学組織の運営上の意思決定や計画立案のための情報収集分析の業務が加わり、そのサービスは「研究プロジェクト創成」「研究プ ロジェクト運営」「人材育成」となっている。機構はファンドレイジングのワンストップサービスと大学全体のマネジメント、後者は社学連携を含めて産学共創 を具体的実現させるためにきめ細かく具体的なサービスサポートのように機能は分業している。このように本学では産学共創や社学連携のサービス部門は極めて 充実している。
し かしながら、未来の大阪大学を担う学生・院生たちに、これらの支援業務に関する教育や研究の場が提供されているのかと自問すると、些かイエスと言うのは心 もとない。本学では社会問題解決に大学と社会がイニシアチブをとる組織SSIが生まれたが「シンクタンク」と名乗っているが、民間セクターからのスポン サーもなく、外部からの業務委託を受け入れる体制がこんごきちんと整備されるにはまだ数年はかかりそうである。教育組織を持たないSSIやELSIセン ターはCOデザインセンターを経由して具体的な科目提供を全学に提供する意義はあるが、それは企業との連携した授業ではなく、実際にURA&IRを教える 専門スタッフによる教育である。そのためには、現時点では、共創機構やURAの教員との協力のもとでカリキュラムが開発される必要がある。
本研究プロジェクトではURA&IR「入門・概論」「基礎演習」「特 論」の3つのレベルの教えるためのモデルカリキュラムを開発する。そのために、桜美林大学など先行する大学経営マネジメントやURAを専門に研究組織のヒ アリングや、実際の授業参観を通して、このカリキュラム作成をめざすことにある。
研究計画と方法
松浦博一(COデザインセンター)研究代表者、総括/池田光穂(COデ ザインセンター)研究分担者、情報収集/黒田聡(COデザインセンター招へい准教授)専門家アドバイス/ブレッドスミス美奈子(クロスメディア・コミュニ ケーションズ・代表取締役)専門家アドバイス
●用語法(インターネット拾遺)
●産学共創の共創(Co-Creation)とは?
 産学共創の共創(Co-Creation)とは、大阪大学西尾章治郎総長によ ると「社会と「共に新たな価値を創造する」ことを目指す理念」であ る。産学とは、産業界(自治体、各種団体、地域社会、他大学)と、当該の大学(この文脈の中では大阪大学)との共創のこと、すなわち《ともに新たな価値を 創造する》ことである。より具体的には「社 会における活動主体が多様化し、それぞれが担う役割が重層的になってきた今、産業界と大学が共に何を目指すか、何が課題になっているかを考え、新しい知を 創り出す」ことである。またJSTの「産学共創基礎研究プログラム」では、上掲の図(最初)のように、「産業界の視点や知見を大学等の基礎研 究へフィードバックするとともに、基礎研究の成果を産業界が活用できる、産学の意見交換」を産学共創のイメージにしているようである。
●URAとは?
 ウィキペディア(日本語)では、これは独自研究と は思われるがRA(Research Administrator)を(出典もなしに)次のように説明している:「リサーチ・アドミニストレーター(Research Administrator)とは、企業や大学、研究所などの高等教育研究機関において、研究面から経営・運営に直接的に関与する上級管理職、役員級職の ことである。トップダウンの支配命令型リーダーではなく、調整管理型リーダーであるサーバント・リーダーとしての役割を担う役職である。 株式会社などの企業で言えば執行役員級の管理職であり、上級(シニア)職は取締役級の職位(例えば、最高技術責任者)である。現在、リサーチ・アドミニス トレーターの一般的な日本語訳は存在せず、企業では、RA(Research Administrator)、大学や研究所などの高等教育研究機関では、URA(University Research Administrator)と呼ばれることが多い。本項においては、RA、URAとして記載する」。他方、 University of Texas at Austinの What is a Research Administrator? では以下のように説明している:What is a Research Administrator? - "We often reflect on the meaning and purpose of our job titles, but in our everyday interactions our work tasks serve as a reminder of the complicated symphony it takes to successfully perform research administration./ A research administrator is anyone – from administrative assistant to Vice President for Research – that performs administrative maintenance, compliance, review, or oversight for a sponsored program. In every aspect of a research administrator’s interactions with researchers/research staff, there serves a greater role of fully realizing the project to completion. Are you negotiating the contract? Are you processing a purchase for materials? Are you editing a research proposal for submission? Each of these functions serves the greater umbrella term research administrator and each is vitally important to meet the University’s research mission."
●より詳しくは「URA機能の維持と進展の新時代」を参照してくださ い
出典:産学共創モデル(JST)URAモデル(情報システム研究機構)
研究計画進捗表
1)モデル研究:上掲の、産学共創モデルとURAモデルを手本にしながら本学モデルを完成
2)関連する機関への訪問とインタビュー
3)報告書の取りまとめ(含む「URA&IR」学修コースモデルならびにカリキュラム編成)

1.これまでの組織の懸案であった、COデザインセンターとURA業務 の研究協力をとおした連携関係を模索することができる。
2.「URA&IR」学修コースモデルならびにカリキュラムの編成により、未来の大阪大学の学生・院生への専門家育成への検討材料を提供できる。
3.COデザインセンターは人文社会系の教育研究組織であるために、これまで理系・医歯薬系の分野のためだと思われがちだった産学共創やURA&IRを、 (この活動に興味をもつ)学内の人文社会系組織の教員に対して情報提供をし、高度汎用力学際教育への関心を誘うことができる。

●文部科学省におけるURAの取り組みとは?
「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」(リサーチ・アドミニストレーションシステムの整備)」の採択の実施が2011年度か らはじまった。
1)2011年度
東京大学、東京農工大学、金沢大学、名古屋大学、京都大学に、それぞれ、東京大学「リサーチ・アドミニストレーター推進室」、東京農工大学「先端産学連携 研究推進センター」、金沢大学「先端科学・イノベーション推進機構」、名古屋大学「学術研究・産学官連携推進本部」、京都大学「学術研究支援室」が設置さ れた。
2)2012年度
この年度では、「世界的研究拠点整備」「専門分野強化」「地域貢献・産学官連携強化」の分類にわけにおいて、9の国立大学と1つの私立大学が採択された。 すなわち、「世界的研究拠点整備」では、(1-1)北海道大学「創成研究機構URAステーション」(1-2)筑波大学「研究推進部研究企画課」(1-3) 大阪大学「大型教育研究プロジェクト支援室(現:大阪大学経営企画オフィス URA×IR)」(1-4)九州大 学「学術研究推進支援機構」、の4つの大学が採択された。次いで「専門分野強化」では、(2-1)新潟大学「研究推進機構」、(2-2)山口大学「大学研 究推進機構 研究戦略部 URA室」、(2-3)東京女子医科大学「TRC(Translational research consultant)センター」の3大学である。最後の「地域貢献・産学官連携強化」のカテゴリーでは(3-1)福井大学「URAオフィス」、(3- 2)信州大学「産学官連携推進本部 リサーチ・アドミニストレーション室」、(3-3)九州工業大学「イノベーション推進機構産学連携・URA領域」の3つの大学の拠点形成である。
●IR(Institutional Research)とは
IR(Institutional Research)とは、大学のアドミニストレーションのための用語であり、入学、財政援助、カリキュラム評価、登録管理、人員配置、学生生活、 財政、施設、陸上競技、および同窓生関係の情報収拾と分析ならびに、それにもとづくさまざまな実践活動のの総体のことを言う(→より詳しくは「URA機能維持と進展の新時代」を参照)。
以下のスライドは「産学共創におけるコミュニケーション能力の涵養:Xプロジェクトスライド」の説明 と同様です
ネクストリーダーのコミュニケーション能 力 の涵養(Fostering communication skills to undergraduate students in industry-academia co-creation social context), 池田光穂、大阪大学COデザインセンター・センター長・rosaldo@cscd.osaka-u.ac.jp 2020年11月26日OSTEC 8階大ホール
共創イノベーションの失敗の歴史から学ぶ

    •    日本におけるこれまでの、大学と企業のベンチャービジネスのほとんどは、それらのアクターの一方あるいは両方の知財侵犯により失敗してきた(=大学人と企 業人の創造観と倫理感覚の違い)。そのような失敗から、企業は、大学との連携を嫌がり、べつの知的創造力をもつ企業を探すという。そして、大学は、ベン チャーが大学の金で運営しているために、企業損失には痛みを感じることなく、また類似のパートナーを探すという。このような状況が今後もつづけば、優良な 私企業は(必ず実を結ぶという予測と確信がないかぎり)大学と絶対にパートナーになりたがらないだろう。大学が無反省な理由は、失敗しても痛くないという 無責任体質と、研究者の後半生をこれに賭けるという切迫感と情熱がそもそも欠けているからである。そのようなことでは、産学連携の文脈でも「破壊的イノ ベーター」は生まれない。

    •    情報の非対称性はしばしば疑心暗鬼をうむ→「イノベーションの現場における対人コミュニケーション能力の涵養はますます重要になる」
オープンイノベーションへの文化的理解

    •    オープンイノベーションとは、これまで会社(ファーム)が囲い込んでいたイノベーションの現場を、会社(ファーム)の外にまで広げて、イノベーションのス ピードを促進させようとすること。要は、イノベーションにまつわる開発の現場を、密室(クローズド)的な環境から、オープンな環境に置くことで、よりス ピードアップさせようとする方法である。これで一番喜ぶのは、(従来型の)会社のほうではなく、市場と消費者である。(従来型の)会社は、これに対して抵 抗する傾向がある。しかし、米国のP&G社(Connect + Development )や日本のユニクロなどは、この方式を採用して、次々とヒット商品を出して、市場も消費者も喜びだしたので、(従来型の)会社は、オープンイノベーション のトレンドを無視することができなくなった。ウィキノミクスを提唱するドン・タプスコットなども、このトレンドに大きな関心をもっている。
オープンイノベーションの絵解き

出典:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発 機構)『オープン・イノベーション白書(概略版)』初版、に赤字で加筆(池田)した。
COVID-19 流行でますます広がる日本の傷口

+ 小中高における論理的かつ批判的思考能力(critical thnking)の欠如:「大学に入学してからでは手遅れ」(友人のM教授)

出典:国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」
骨太のコミュニケーション教育はCOデザ インセンターから……

    •    社会への幅広い関心と課題発見のための多様なスキルを学ぶ横断型高度教養・高度汎用力基礎教育プログラム「コミュニケーションデザイン科目」、 Problem-Based Learning (PBL)も含む高度汎用力発展科目「COデザイン科目」からなりたつ科目を全学生に提供しています。また、兼任教員を通して「超域イノベーション博士課 程プログラム」のコースワークの立案ならびに運営も担当しております。また、一般の大学では教養部や一般教育部に相当する大阪大学全学教育推進機構におい て、各部局や研究所等から提供されている高度副プログラム、高度副専攻、科目等履修生高度副プログラムを取りまとめ認証するための横断型教育部門の管理運 営にも携わっています。
私の教育ポリシー
    社学共創プロジェクトのご紹介01

    •    (財)大阪科学技術センターでは、池田(本講師)がコーディネター&ファシリテータとして関わり在関西の企業の若手中堅社員を主に対象とした人たちに「幅 広い視点から考え・整理できる力」を身に付け、「技術と時代の変化に対応し、新しい価値づくりに挑戦する人材」を養成することを目的とした「ネクストリー ダー育成ワークショップ」という事業を2017年度より展開して多くの参加者に好評頂いてきた(2020年度も「IoT、AI、ロボット、ものづくりにお けるイノベーション」と「ビジネスイノベーション」にそれぞれ焦点を当てた2つのプログラムを実施中)。
社学共創プロジェクトのご紹介02
プレゼン風景(ファシリテータのビズ・ノ ウハウのご紹介)

講師の先生の笑顔に注意!わくわくするとは?→「[スティーブ・]ウォズニアックはいわゆる「オタク」で見知らぬ他人とうちとけるタイプではなかった。つ まり、会合ではみんなの興奮がわからなかったが、彼は家に 帰ってから時間的に遅れて(=タイムラグ)知的に興奮することになる」(池田のHP「わくわくする経験とは?」より)
みなさんが受講したいこと
1)最新技術の知識
2)他流試合による視野の拡大
3)欠けていた視点への気づき
4)他業種交流
5)情報収集力
6)有識者との繋がり
7)内容のより深い理解
8)意見の発信力を鍛える
9)プレゼン力
10)ファシリテーション力
まとめ——この3つは覚えておいて ねっ!!!

    •    大学と産業界の共創が失敗する第一の原因は、現場における信頼とコミュニケーションの不足である!→だからコミュニケーション教育

    •    オープンイノベーションは全部すっぽんぽんではない!! 市場と顧客に対して《秘密=魅力》と《オープンネス=親しみやすさ》が融合したことである!!→だからイノベーションの鍵はウチとソトの区別とそのメリハ リ

    •    職場の指導者(メンターやコーチ)が成功する最大の秘訣は、ともに遊び、リラックスできるかにかかっている!!!→クソ真面目と熱血暴言根性物語よ、さよ うなら ~(ハートマーク)

背景出典:神戸高速神戸ゲーセン「メトロ zoo」さん
「メトロこうべ 猛毒ポスター 全10枚画像(神戸)」
この3つは覚えておいてね

1)意味の会議と、

2)意味のない催し物ばっかりで、

3)大学ってつぶれないって、すごいよね!!!
クレジット

産学共創におけるコミュニケーション能力の涵養(Fostering communication skills to undergraduate students in industry-academia co-creation social context), 池田光穂、大阪大学COデザインセンター・センター長・rosaldo__cscd.osaka-u.ac.jp 2020年11月26日OSTEC 8階大ホール
積み過ぎたカリキュラムの問題をどうする?!(On Curriculum Overload)
Curriculum Overload, OECD, 2020.のサマリーから引いてみよう。「学校は、社会の変化のペースについていくことを常に求められている。それと並行して,学校が何を教えるべきかと いう社会的な要求も常に変化し ている。政治的な思惑やイデオロギー,あるいは親からのプレッシャーによって,グローバルコンピテンシー,デジタルリテラシー,データリテラシー,環境リ テラシー,メディアリテラシー,社会性と情動のスキルなどが追加されることが多い。このような「カリキュラムの拡大」は、すでに混雑しているカリキュラム に新たなコンテンツを追加するよう、政策立案者や学校に圧力をかけているのが現状だ。本レポートは、「『広くて深い1マイル』のカリキュラムを作らないた めにはどうすればよいか」「生徒の幸福を中心としたカリキュラムにパラダイムをシフトするにはどうすればよいか」などの問題について考察することを支援す ることを目的としている。また、デザインの選択に伴うトレードオフについても考察している」https://www.oecd- ilibrary.org/education/curriculum-overload_3081ceca-en ここからカリキュラムが先進国になればなるほど詰め込みすぎになる傾向がみてとれる。サマリーは的確なのでそれぞれ分析してみよう。

●旧クレジット「高度汎用力教育における産学共創の あり方: URA&IRモデルカリキュラムの探究」

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