Muchas Gracias! 感謝のコーナー Thanks a lot!
2007年版
西川勝さんからのご恵与
西川勝『ためらいの看護』岩波書店、2007年
難産?の末ようやくうまれましたね。ご恵与どうもありがとう。
前田泰樹さん、水川喜文さん、岡田光弘さん(たぶん?)からのご恵与
前田泰樹・水川喜文・岡田光弘編『エスノメソドロジー』新曜社、2007年
ありがとうございます。私はウェブでいい加減なエスメソの紹介をしているので、専門家の方か らしっかり勉強せいという、お叱りと励まし言葉だと思っております。本当にありがとうございました!!
国立民族学博物館研究部・鈴木紀先生からのご恵与
ノラン、リオノール『開発人類学』関根久雄ほか訳、古今書院、2007年
ご共訳になる原著はウェストヴュー社から有名な教科書です。ありがとうございます。日本版に よせた原著者による、Anthropology of Development / Development Anthropology の区分にみられる、批判的理論と応用科学のマニ教的二分法という偏執的観念にかつての研究者が捕らわれていたことは、我が医療人類学でも同じような事情が あります。開発系の人たちは、海外の翻訳に昔から熱心で、この傾向は次世代の実践家や学徒を育成するには、とてもよいハビトゥスであるといつもながら思い ます。ありがとうございました。これから勉強します!!
大阪市立大学大学院経済学研究科教授・佐藤光先生からのご恵与
佐藤光・編『生命の産業』ナカニシヤ書店、2007年
帯紙マニア(レコードではなく日本の書籍です)の私としては裏の帯の部分の文言「『生命のモ ノ化・商品化』は宿命ではない。人類は、過去を幾度もそうしてきたように、叡智と勇気をもって危機を切り抜けうる。……」(序論より)の部分で、“はは ん、光先生は、要するに生命のモノ化・商品化はいけない、とおっしゃるのだな”と感じた次第。それは、以前、研究会でバイオ産業の関西での成功したという ための指標が「雇用創出」であり、社会の幸せの向上のバロメーターとしての雇用創出という考え方がいかにも、ふつうの経済学者風に思えたことを思い出しま した。生命の経済学を名乗るのだから、もっとイディオシンクラティクな理論的イメージを期待していたのですが・・・。佐藤先生のポラニーや柳田国男を論じ る時のトンデモ的な想像力を彷彿させる破壊力がありません。ま、パイオニアの宿命、まずは正攻法によるバイオ産業=経済論ちゅうところでしょうか。でも、 ここから始まるということが重要なんですな。
名古屋工業大学大学院工学研究科教授・永渕康之先生からのご恵与
永渕康之『バリ・宗教・国家――ヒンドゥーの制度化をたどる』青土社、2007年
はじめにしか読んでいませんが、読ませますね。永渕さんのあのペダンチックな語りを彷彿させ ます。でその衒学が骨太の知識に支えられているところが同業者としてとても憎たらしいのです(つまり本物の秀才ぶりを発揮するから……)。はじめに部分で 出会った「自然化に抵抗する批判の実践」(p.22)と、正しく国民主義者とナショナリストの訳語を当てているところで、私のような浅薄な同業者は、永渕 凄い!とうなってしまうのですわ。でもあとがきにある「なぜバリだけがヒンドゥーなのか」という問いかけは(私が考える適切な)民族誌学的なものではない ような気がします。ウィトゲンシュタインがフレイザーの金枝篇にかぎ取ったような疑念。我々にとっての理解可能なものを、他者の振る舞いの中に見てしまう ようなものといったものでしょうか。もちろん、冒頭のところで、彼はしっかり「グローバルな状況において伝統――porque?:引用者――の相互審判に 求められる対話能力を高める」(p.29)と書いてますから、永渕さんは、私よりも1歩も2歩も先をいってらっしゃるとは思いますが――はいはい愚者の皮 肉ではないので誤解しないでね。書架の家宝がひとつ増えました。嬉し嬉し。
四天王寺国際仏教大学短期大学部の田原範子先生からのご恵与
田原範子『包摂と開放の知―アサンテ世界の生活実践から―』嵯峨野書院、2007年
写真がいっぱいで明るく楽しそうな民族誌です。時間をかけて何度も練り直してあり、また内容 が平易に書かれてあるので、好感がもてます。立派な文化/社会人類学の成果でございます。今度はホントに梅谷さんと一緒に呑みに行きましょうね。
兵頭晶子先生からのご恵与です
芹沢一也 編『時代がつくる「狂気」:精神医療と社会』朝日新聞社、2007年
冒頭の芹沢論文の小田晋批判は、よおくわかります。しかし、その後は、ん〜歴史から学ぶです かね。なんというか、1970年代にこの種の本がそこそこ出ましたね。私も一生懸命読んだ記憶がします。でも、いま必要があって読んでいるディビッド・ ヒーリー『プロザックを奴らに喰わせちゃおう』(Let them eat Prozac)[邦題は穏当に「抗うつ薬の功罪]のほうが、シンプルで、えぐい権力論は登場しないが、インパクトがありますねぇ。歴史的相対化・社会学的 相対化の神通力の限界にそろそろ気づくべきかな。でもでも、いろいろ勉強になりました。ありがとう!
うぉっひょひょっ!兵頭さんにちゃんと見られておりました!ジョン・コルトレーンの曲に「夜 は千の眼をもつ」ちゅうのがありましたねぇ。もちろん「ぢ」もちゃんと直して(治して)お きました。
大阪大学大学院人間科学研究科・山中浩司先生よりのご恵与
山中浩司編『臨床文化の行方――医療の標準化と臨床文化――』平成16年度-18年度科学研究費 補助金・基盤研究(C)研究成果報告書、研究代表者・山中浩司、平成19年3月
大阪大学大学院生命機能研究科教授の藤田一郎先生からのご恵与
藤田一郎『「見る」とはどういうことか”脳と心の関係をさぐる』化学同人、2007年
藤田さんのレクチャーや、院生への教育的コメントを聞くように、神経科学者のライブな感じが 満載で、とても読みやすかったです。あとがきを見るとやはり、先生の授業である「脳科学入門」から構成されたということが書いてあります。藤田さんは最後 の心と脳の関係の議論が煩瑣で読者が途中で本を投げ出されることを危惧されておられるが、読む側からみたら、いうまでもなく、この部分が一番緊張感があり (「そんなことはありえない!」と学会で白い眼を見られたところの記述は圧巻ですよ)面白かった。やはり、何でもおいしい料理は後にくるということでしょ うか。21世紀にアリストテレスが生きていたら『動物部分論』はこうなったので は?なかろうかという幻想を抱きました。
コミュニケーションデザイン・センターの特任教員の春日匠先生からのご恵与
コーポレート・ヨーロッパ・オブザーバトリー・トランスナショナル研究所編『世界の〈水道民営 化〉の実態』作品社、2007年
帯紙にスーザン・ジョージが推薦文を書いているので、もうこれはわかる人はわかる!なんとい うか〈オルタ系〉と申しましょうか。何とか還元水どころの問題ではなく、飲料水供給の民営化はとんでもない問題を世界中にまき散らしています。すなわち、 一方で公共事業の中に安全な水を安定供給させるというポリシーが脱中央集権化と民営化ならびにグローバリゼーションの嵐の中で、急速に衰退してきました。 公共水道の維持は今や風前の灯火。他方で、そのような状況の悪化とともに、有料飲料水を購入できる人とそうでない人の格差が広がりつつあります。水の安価 で安全な供給は、人間にとっての(アマルティア・セン流に言えば)権原のひとつなのに、それが侵害されているわけですから。1980年代中頃に、開発途上 地域で簡易水道を布設することは、水くみ女性の解放と謳われて社会開発の象徴のように脚光を浴びていましたが、四半世紀を経て、かつて想像もできないこと が現実になりつつあります。下訳でこの翻訳に参加され、ご自身も社会開発の専門家である春日さんにいただきました。
日本学術振興会特別研究員の福井栄二郎先生からのご恵与
椎野若菜編『やもめぐらし:寡婦の文化人類学』明石書店、2007年
まず驚きは装丁の洒脱さですね。赤にエッチングの植物と小さな天道虫が書いています。こんな 本に出会うと、よもや、あの、いまいちあか抜けない装丁しかできない明石書房の本当の仕業なのか?とほっぺたを抓りたくなります。椎野さんの出版の動機も すばらしい。本来、さまざまな価値尺度から人間の文化の可能性について考えることをトレーニングしている文化人類学者そのものが、寡婦を結婚という制度外 のアウトカーストとみなしてきたこと。また寡婦をめぐる分析やその用語は、寡婦の能動性や主体性に着目することなしに、当事者たちの圏外から寡婦を描くこ とに終始してきたというのです。本当にその通りだと思います。最近の文化人類学の良質な前進の成果。
熊本大学文学部・岡部勉先生よりのご恵与
岡部勉『合理的とはどういうことか』講談社、2007年
岡部先生には熊大在職中には大変お世話になりました。非常にリベラルな精神をもたれた高潔な 先生で、学生の人気も抜群で、いろいろ学ぶところ大でございました[あるいは先生がふつうの常識人だったのですが、周りの人たちが性悪だったので、先生が 高潔に見えたのかも?]。この2、3年前までは組織改革や新しい学科の創設にものすごく情熱を注がれておられたので、むしろこの近著の公刊が、先生が多少 ご本の執筆になられるだけの時間的余裕ができたのでは?と感じました。意志の弱さ(アクラシア)!いい言葉ですね。この本には20世紀以降の英米系の哲学 者の写真もあって、単に読むだけでなく、ちょっとした著名人リスト(アンスコムやオースティンという大先生の顔写真をはじめて見ました!)もあって、まあ 非合理的な哲学書の楽しみ方かもしれませんが、そういう意味でも楽しくなる本です。
京都大学大学院医学研究科・美馬達哉先生よりのご恵与
美馬達哉『〈病〉のスペクタクル:生権力の政治学』人文書院、2007年
『文化現象としての医療』を謹呈さしあげた時、過日物故された今村仁司先生がの美馬さんの生 権力の解説を読んで「短いけどちゃんと書けとるわい」とおっしゃっていたことを思い出します。もちろん私にとっても、いつも現代思想のバックナンバーを探 して――今日日定期購読するようなモンでもないし――コピーを読んで、どこかになくし、またコピーするという煩わしさから解放されます。我々のまわりでは 気狂い扱いされる美馬さんですが、それゆえにこそ、なかなか鋭い指摘もあり――我々のオリジナリティはどこにあるのかという議論はまあ棚にあげて――いつ も楽しませてもらっています。ただ、残念なのは内容が派手?なのに対して、装丁が安っぽいこと、いつもの人文書院とは思えない仕業。出版社の担当者には 「コラっ〜美馬の本はもっとおもろいし、エエ本なんやからもっとど派手な装丁にしてキャツの文壇デビューを飾ったらんかい!」と気合いを入れたい気分で す。あいうえお順とは言え、MAO[academic cult, Medical Anthropologists in Osaka]メンバーの謝辞の先頭に入れてくれたのは、正直言って嬉しいです。
大阪大学大学院人間科学研究科・山中浩司先生よりのご恵与
山中浩司・額賀淑郎編『遺伝子研究と社会:生命倫理の実証的アプローチ』昭和堂、2007年
新遺伝学以降への社会的アプローチを考える論集です。最先端でありながらこの分野で卒論や修 士論文を書こうという人にも、用語集や年表、そしてもちろん索引も充実しているためにゼミの教科書にも使えるというのは、やはり編者がすばらしい方ただか らでしょう。使うひとに十分配慮のゆきとどいたいい本です。
寄贈ではなく私がごく一部関与させられたプロジェクトからの送付品
「プロセスを共有する人文学のために(DVD作品)」[まだ中身を拝見していません]
大阪市立大学大学院経済学研究科教授の脇村孝平先生からのご恵与
2004度〜2006年度科学研究費補助金(基盤研究(B)(1))研究成果報告書『近現代アジ アにおける「健康」の社会経済史:疾病、開発、医療・公衆衛生』研究代者:脇村孝平、2007年3月
きら星のような研究者を擁立された報告書で、使用言語も英語と日本語で、最先端の研究が収載 されています。これから読むのが楽しみです。
熊本大学文学部教授の寺田光徳先生からのご恵与
平成16年度〜平成18年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書『医療化社会にお ける自然主義期の小説に関する歴史的研究』研究代者:寺田光徳、平成19年3月30日
仏文学者で梅毒の文学研究の第一人者である寺田先生からまたまたご恵与いただきました。 ん〜、私が謹呈できたのはたった1冊『実践の医療人類学』で、先生からは弘前大学の病気と社会に関する研究報告書、ケテル『梅毒の歴史』の御翻訳、御著書 『梅毒の文学史』、ゾラ『獣人』の御翻訳、ダルモン『人と細菌』の御翻訳などなど、以前の御礼にも書かせていただきましたが、もう完全な輸入超過で返すお 言葉がありません。先生のお書きになったものは、私の研究分野とほとんど合致するものばかりで、毎回感謝しております。今回の報告書もながめてみますと第 2部の資料編 Mots Medicaux dans les Sciences Humaines という人文科学系のための医療語彙集がついてます。さすが数々の名訳を送り出した先生です。コンパクトだけどいい語彙集ですね。寺田研究室で医療と文学に ついて卒論を書きたい人やまた将来弟子入りしたい人には、受験勉強にも役立つのでは?なんて思います。私、商業出版物よりも、こういう少ないサーキュレー ションの書物を読むのが大好きなので本当に嬉しいです。
JICA国際協力総合研修所・人材養成グループの三牧純子さんからのご恵与
JICA編著(絵所秀紀監修)『人間の安全保障:貧困削減の新しい視点』国際協力出版会、 2007
三牧さんとは、大学・職場の同僚の峯陽一先生や、また研究仲間というよりも20年来のお友達 である狐崎知巳先生もご執筆されておられるように大阪大学「人間の安全保障」研究会関係でお世話になっております。国際協力においては、明らかに量から質 への転換、物資から人間を含むソフトなどへの転換が急速に進んでいます。そのなかで人間の安全保障は、我が国がさまざまな意味でイニシアチブをとれ、国際 社会に貢献できる数少ない得意分野になりうる方途であると理解しております。時宜を得た出版であると思います。
この本の訳者である平川秀幸・阪大CDCD准教授からのご恵与
ブルーノ・ラトゥール『科学論の実在』川崎勝・平川秀幸訳、産業図書
平川さんは、私のオフィスの隣人です。壁越しに私のオーディオスピーカーから雑音を出しまし て[ちなみに私は声も大きいので電話の話などは丸聞こえでホンマに]ご迷惑をおかけしております。ラトゥールは、私のアイドルなので、もう涙が出るほど嬉 しいです。これから読ませていただきます!! 川崎さん、山口大での生活はどうですか? 最近お見限りねぇ。また呼んで頂戴ねっ![通好みの翻訳本が多い産業図書はこちらから]
大阪大学大学院文学研究科臨床哲学研究室からのご恵与
『臨床哲学』第8号、大阪大学大学院文学研究科臨床哲学研究室、2007年
『臨床哲学のメチエ』第16号、2006年秋号、大阪大学大学院文学研究科臨床哲学研究室、 2006年
両方とも研究室紀要あるいは同人誌に分類されるものであるが、その内容はと言えば、これがな かなかのものである。それぞれの寄稿者の着眼点がいいし、また縁の下の力持ち、たぶん実質的な編集長のH准教授の天性のセンスとまた同時に時間と根性をか けた丁寧な編集校正によるものだろう。特に後者の『メチエ』は、洒脱にトリミングされたスナップショットが入っており表紙のセンスとといい、1960年代 のモダンジャズの秀逸なレコードジャケットを思い出す気分ですよ。臨床哲学って、最初聞いたころは、大学や会社の経営者向けの精神哲学かとずっと思ってい たら、そういうパイオニアが切り開いた道をしっかりと哲学的トレーニングを積んだ若手の人たちがきちんとしたディシプリンに鍛え直しているということがよ くわかる。まあ、有り体に言えば」「畏るべし!臨床哲学の逆襲」という感じでしょうかね。こりゃ、人類学の強烈なライバルがあらわれたわいと、喜びつつ畏 れつつ……
浮ヶ谷幸代、間宮郁子、山崎吾郎先生からのご恵与
『病いと〈つながり〉の場の民族誌』明石書店、2007年
篤実な研究を集めたそれぞれに面白い論文集。〈つながり〉と言えば、これも同業者という繋が りで恵与され、論文のそれぞれの著者たちの関心も医療ということで繋がっていて、分析の視点も繋がりが強調されて、明石の本としての『現代医療の民族誌』 とも装丁ではなんとなく繋がっていて、繋がりネタなんですが……。装丁の表紙にある英語The ties that bind という当たり前な議論よりも、The un-tied that binds という撞着語法的な議論をもうひとひねりしてほしかったという感じもします。あとがきは不用だね。その代わりに各執筆者が出版前におこなっていたと思われ る討論か、初稿が集まった時点で座談会やって、その記録を掲げたほうが有意義だったのではないかと思います。みなさん、それぞれ力量をもった執筆者ですか ら、その内容はじゅうぶん保証できますな。すばらしい、そしてどうもありがとう!
北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助教授の伊藤泰信先生からのご恵与
『先住民の知識人類学:ニュージーランド=マオリの知と社会に関するエスノグラフィ』伊藤泰信 (1970-)、世界思想社、2007年
伊藤さんの学位論文の公刊。20世紀は情報・知識の時代だ。グローバル化したニュー・ ニュー・アトランティスの世界における先住民族が果たす役割は極めて大きい。マオリのエスノグラフィにとどまらず、これからの知識人類学の方向性を確認す るためにもこの著作は重要な試金石になるのではないだろうか?
コミュニケーションデザインセンター教授の小林傳司先生からのご恵与
『社会技術概論』小林信一(1956- 長野県)・小林傳司(1954- 京都市)・藤垣裕子 (1962- 東京) 共著[表紙には抜けているが小川正賢(1952- 山口県)も含まれる]、日本放送出版協会、2007年
現在では科学技術の状況を把握し、それをどのように分析(=勉強し理解すること)するかとい うやり方だけでは、この世の中のことは十分に把握しているとは言えないらしい。科学技術がどのような形で社会に埋め込まれ、社会生活に影響を与え、社会が 科学技術にさまざまなかたちで対話しようとし、時には介入するという、さらにもう一歩進んだ論点や方法が求められているという。この本の著者たちはこの領 域――社会技術というらしいが、私は社会工学 social engineeringとの違いがよく分からないが、社会と技術の相互のフィードバックをより意識するという点で工学とは違うのだろう――の専門家たち で、その内容は安心して読むことができる。パイオニアであると同時に、今後はこの領域の標準的な教科書になるのではないだろうか。そのへんに転がっている 訳知り顔の新書数冊を流し読みするよりも、この本を丁寧に読むほうがよっぽど為になるはずだ。紙幅の制限や教科書のために、執筆者によっては、多少性急に 議論しているところがあるが、それは読者の課題であり突っ込みを[読者がじぶんなりに]入れて、自分のより専門的な勉強に供することもできる。社会技術論 という、きわめてリフレクシヴ(反省的)学問分野による執筆者のためだろうか、とてもバランスのよい構成になっている。このおすすめの本は、書店でも購入 できる。
コミュニケーションデザインセンター助教授の西村ユミ先生からのご恵与
『交流する身体』西村ユミ(1968- 愛知県)、日本放送出版協会、2007年
日本における現象学的看護学、[現象学的]身体論で顕著な業績をあげておられる私のオフィス の隣の同僚の西村さんには、岩波書店の身体論関係のご共著もご恵与頂いています。西村さんの授業は、ひたすら自分たちの身体と対話することの意味や、 ちょっとしたワークなどから身体の動きやそこで生ずる意識などについて考えさせられるものが多く取り入れられています。文章も何度も何度も推敲されたゆえ の、達意のものです。日本のオリバー・サックスなんて言うと、西村さんに失礼かな?
関西学院大学COE特任助教授の亀井伸孝先生からのご恵与(2007.03.19)
『アフリカのろう者と手話の歴史』 亀井伸孝(1971- 神奈川県)、明石書店、本体2800円、2006年
著者も書くように「アフリカのろう者と手話言語を主題とした、日本で初めての書物」と言えよう。また、西アフリカにおいてろう教育を推進し たアラバマ生まれのアフリカ系アメリカ人であるアンドリュー・J・フォスター(1925-1987)と彼の後継者たちについての現代史に関する言及もおお く、西アフリカにおけるろう文化に関する広範な著者の研究によって教えられることが多い。イラストや写真も豊富で、読んでいて楽しくなる本である。
● 手話[医療人類学辞典]
● これまでにご恵与いただいた もの[2005年度]
● これまでにご恵与いただいた もの[2004年度以前]