憑依の解釈
Interpretation for spirit possesion
現代社会における憑依を考える時にバズ・ラーマン監督の映画『エルビス(Elvis)』の冒頭の黒人聖霊教会における主人公の憑 依とその後の音楽的成長について考えねばなりません- Eminem - The King and I ft. CeeLo Green (Elvis Presley Remix)にリンクします
解説:池田光穂
ル・ロア・ラデュリは『ラングドック地方の農民』(1966)*のなかの18世紀初期におけるセベェンヌ高地地方のプロテスタントの間に見 られたポゼッションについて(P・バークによると)次のような解釈をおこなう。
「18世紀初期の経済不振に関する部分でル・ロアは、カミザールと呼ばれるセヴェンヌ高 地地方のプロテスタントが、その頃彼らの宗旨を禁じたばかりの国王[ルイ十四世]に対して仕掛けたゲリラ戦争の歴史を語っていた。彼は、若い娘を含む一揆 の指導者たちが、しばしば身体痙攣に襲われたことを記していた。痙攣のさいちゅうに、彼らは天国と地獄の幻像を見、きたるべき事件を予言した、というので ある。ル・ロアは、突然の発作はヒステリーではなかったか、とほのめかし、ふたたび、この現象を当時の全般的状況(conjoncture)に結びつけた ——不景気が貧困化を招来し、晩婚から性的欲求不満へ、そしてヒステリー、最後には痙攣へいたった、というわけである。」(P・バーク『フランス歴史学革 命』1992:112**)
「‥‥彼の記述は、彼らの憑依妄想を、まぎれもない身体言語(body language)の一種として読むのではなくて、むしろそれらを病理学の症例として扱っている点で、批判されることになった***。」(P・バーク『フ ラン ス歴史学革命』1992:112)
* Le Roy Ladurie, E., 1966, Les paysans de Languedoc (abbrev. English trans. by John Day: The Peasants of Languedoc, Urbana: University of Illinois Press,1974.) ** Burke, Peter, 1990, The French Historical Revolution: The Annales School 1929-89. Oxford: Polity Press.(ピーター・バーク『フランス歴史学革命』大津真作訳、岩波書店、1992年) *** Garret, C., 1985, Sprit Possession, Oral Tradition, and the Camisard Revolt, in "Popular Traditions and Learned Culture in France", M.Bertrand ed., Saratoga: , pp.43-61.
【コメント】 上のことから分かることは、歴史的な社会状況においてある種の身体の変調を、個人に終着する外界(=社会)の変動の結果としてみるだけでなく、何らかの 身体が何らかの社会性の反映であることについて言及しなければ十分ではないということを物語っている。ラデュリは憑依を社会性が投影される個人の病気とし たことが批判されたが、個人の病理の中に社会性を映し出す徴候をよみとるということが要求されているのである。しかし、このような条件は決してアプリオリ に生まれるのではなく、むしろ(その当時の?)社会科学がそのようなことを要求している[た]のかもしれない。
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