はじめによんでください

伝播主義者の議論

Diffutionist arguments; A Graphic Guide 028

池田光穂

■  教科書(Cultural Anthropology Remix 協賛):今回の教科書は Merryl Wyn Davies が著者、Piero がイラストレーターによる、その名も『人類学を紹介する(Introducing Anthropology)』出版社は Icon Books, 2002 です。8年後に改定されて、Merryl Wyn Davies and PIERO, Introducing Anthropology: A Graphic Guide, Icon Books Ltd., 2010.となりました。いわゆる啓蒙のためのイラスト・ブックです。カルスタもとい、カ ルチュラル・スタディーズのものは日本語に翻訳されているのでな いだろうか。とってもおもしろい本です。文化人類学の現代の問題系 にまでしっかり踏み込んでい ますが、そのことを 明確するために、人類学の歴史的ルーツに遡り考察するという姿 勢が貫かれています。つまり、骨太の人類学史の教科書ともいえるべきものです。それが、な、なんと邦訳されました!!! メリル・ウィン・デイビス『人類学』池田光穂+額田有美訳、現代書館、2021年10月 ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4768401095

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【III】人類学史 Part 2:伝播主義の理論
28.    伝播主義理論
28. 伝播主義の理論

伝播とは、1つの文化、人びとないしは場所の、あるところから、別のところへの伝達のことである。伝播の本質は、接触(コンタクト)と相互作用(インタラ クション)である。これはとても古い考え方である。聖書の説明で、16世紀から17世紀にかけて、盛んに発達した説明の方法の多くは、伝播主義的である。

【台詞】学者(人類学者)「バベルの塔の崩壊と共に人類が分散したことが、すべての民族間の遺伝的(つまりは生物学的かつ社会的伝播)つながりを提供する のじゃ」

【台詞】学者(人類学者)「伝播は、言語研究の発展も下の方から支えておるな」

オリエンタリスト(東方学者)のウィリアム・ジョーンズ卿(1746-94)によるインド・ヨーロッパ語族についての研究と、イギリスに定住したドイツの マックス・ミュラー(1823-1900)の研究に特にこの伝播主義は顕著である。ミュラーは、歴史比較言語学を進めただけでなく、すべての人間性は同じ 精神構造(メンタリティ)を共有するという考えの支持者でもあった。言語学は、社会理論とりわけ人類学に重要な影響を及ぼしてきた。

伝播主義は、ミュラー以外のドイツの学者たちの最も重要な論題でもある。フリードリヒ・ラッツェル(1844-1904)は、世界を2つの文化圏に分けた 最初の人物である。彼の研究はタイラーに影響を与えた。レオ・フロベニウス(1873-1938)とフリッツ・グレーブナー(1877-1934)のクル トゥールカイゼ(Kulturkreise)あるいは〈文化圏〉という概念は、ボアズに重要な影響を及ぼした。
英国では、グラフトン=エリオット・スミス卿(1871-1937)とウィリアム・ペリー(1887-1949)の著書『太陽の子どもたち』(1923) のなかで、高度な伝播主義として定式化されている。彼らは、太陽崇拝の古代エジプト人がすべての文明の起源であるという理論を前面に出した。また、スミス とペリーは、独自性の信用の証として、聖書に書かれているヘブライの家父長制をエジプトのそれに置き換えた。そして、それまで優勢だった社会進化論に対抗 する後衛の活動としてより伝播主義をさらに推し進めたのだった。

リ ンク

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