メディカル・カルチュラル・スタディーズ
Cultural Studies of Modern Medicine
解説:池田光穂
メディカル・カルチュラル・スタディーズ(Cultural Studies of Modern Medicine, CSMM)とは、現代社会の医学・医療・保健・福祉に関わる文化的実践を、それに関わる権力と関係の分析を通して明らかにする学問であり、その学問の実践 でもあります。
文化的実践(culturral practice)という用語のうち、文化の概念については、文化人類学や文化社会学の領域で取り扱う文化、あるいは大衆文化(popular culture)として理解します。また実践の概念は、その多くをアルチュセール派の社会哲学やブルデュー社会学派の理論の影響を受けています。すなわ ち、所与の社会構造を生きる個々の人々(主体)が、その構造から拘束や制約を受けつつも、その実践に意識しながらあるいは意識することなしに、社会構造そ のものに影響を与えていると考えます(もちろんそのような考え方の可能性と限界についてもこの学問は検討材料にします)。
またその権力論は、ここまでの説明でおわかりのように、アルチュセール派の社会哲学や(それとは少なからず矛 盾したり対立する)フーコー派の影響を受けていることも確かです。(→そのような説明で十分納得できない方のほうが、この研究領域に誘う側としては大歓迎 なのですが)
メディカル・カルチュラル・スタディーズにおいて、重要なことは、このような理論的基礎をもとに、現実の社会 における現代社会の医学・医療・保健・福祉に関わる文化的実践を自己反省的に理解し、調査、研究することです。したがって、これまでの医療に関する民族誌 やドキュメンタリーなどは、【事後的に】メディカル・カルチュラル・スタディーズの重要な検討材料になります。
以上の説明で使った、概念や用語の理解のためのリンクを下記に紹介します。