アンドロイドは現場力を発揮することができるか?
Can android do best with Genba-ryoku ?source: 「実写版 鉄腕アトム秘蔵のお宝映像を提供していただきました」(まっくろクロスケ氏)Early example of the term androides used to describe human-like mechanical devices, London Times, 22 December 1795
アンドロイド(Android)は現場力を発揮することができるか? この疑問に私が答えるとす れば、それは「否」である。あるいは現場力を身につけたアンドロイドは、もはや、そうだ とは定義できず「新人類」なのである。こ の思考実験とそれに対する私の応答は「ロボットに演出をつける」という荒唐無稽なプロジェクトへの揶揄ではない。ロボット演劇チームの狙いは、この問いへ の技術的応答にあるのではなく、この試みを通した技術と演劇の予期せぬ創発的な展開を引き出すことであり、ここでの私の態度は偽悪漢ぶっているだけであ る。かくのごとく、現場力は人間の定義にまで及ぶ重要な属性であることを論証しようというのが私の狙いである。
私は現場力が発揮された場所において、(定義変更の前のアンドロイドを含む) 行為者たちとその周囲にみられる抽象的属性を次の5つに分けた。1)場所性・状況性、2)意識性、3)物理性・道具性、4)媒介性、5)身体性である。私 は現場力を、個人や集団が「所有」できる技能や能力ではなく、場所依存した行為者の能力の顕現であり、身体が深く関わるコミュニケーションの延長に位置づ けられるために「きわめて社会的な概念」であると述べた[池田 Online]。
私は過度の人間中心主義者ではないが、実験状況において高度に組織化された実験統制状況におかれた一部の高等霊長類を除けば、人間は、行為や意 識の中に未来の時間的要素を組み込める高度で複雑な情報処理をおこない、さらにそれを言語により外部表象化できる——つまり個体間で正確な情報伝達とその 蓄積が可能な——ほとんど唯一の動物であると考える。いやいや集団で狩りをするチンパンジーも臨機応変な現場力をもっているではないという反論があるかも しれない。だが、件の動物は上記の3)に属する狩猟道具を使うことができない点で失格である。近年の発掘成果によると北米最古の先史考古文化のクロービス 人(紀元前1万3千〜8千5百年前)は、効率的な狩猟道具の発明によって大型ほ乳類の大量虐殺と絶滅という人類の「はじめての原罪」という不名誉をほしい ままにしている。現場力をはじめて身に付けたアンドロイドは、その見事なしぐさによって人間の魂を打ち震わすだけではなく、アンドロイドに仕事を押し付け る人間に反感をもち、人間にとっては都合の悪い現場力をつける可能性がある。そのために も、この問いの答えは「否」であってほしいのだ。
アンドロイド(androido)の語義
OED 定義は、An automaton resembling a human beingだそうです。なんと初出は、1727–51 Chambers Cycl. s.v., Albertus Magnus is recorded as having made a famous androides. 従って、オーギュスト・ヴィリエ・ド・リラダン(Jean-Marie-Mathias-Philippe-Auguste, comte de Villiers de l'Isle-Adam, 1838-1889)が、『未来のイヴ』において、初めて「アンドロイド(Andréide)」という呼称を用いたというのも(Wiki日本語)信憑性に 信頼性がおけるわけではないようだ。英語では1795年の『ロ ンドンタイムス』Early example of the term androides used to describe human-like mechanical devices, London Times, 22 December 1795に登場している
"The Oxford English Dictionary traces the earliest use (as "Androides") to Ephraim Chambers' 1728 Cyclopaedia, in reference to an automaton that St. Albertus Magnus allegedly created.[3][8] By the late 1700s, "androides", elaborate mechanical devices resembling humans performing human activities, were displayed in exhibit halls.[9] The term "android" appears in US patents as early as 1863 in reference to miniature human-like toy automatons.[10] The term android was used in a more modern sense by the French author Auguste Villiers de l'Isle-Adam in his work Tomorrow's Eve (1886).[3] This story features an artificial humanlike robot named Hadaly. As said by the officer in the story, "In this age of Realien advancement, who knows what goes on in the mind of those responsible for these mechanical dolls." The term made an impact into English pulp science fiction starting from Jack Williamson's The Cometeers (1936) and the distinction between mechanical robots and fleshy androids was popularized by Edmond Hamilton's Captain Future stories (1940–1944).[3]"
オックスフォード・イングリッシュ・ディクショナリーでは、聖アルベルトゥス・マグナスが制作したとされるオートマトンを指して、エフライム・
チェンバースの1728年のCyclopaediaに "Androides
"として使われたのが最初とされている。1700年代後半には、人間の活動を模した精巧な機械装置である「アンドロイド」が展示場に展示されていた。アン
ドロイド」という言葉は、1863年にはアメリカの特許に登場しており、人間のようなミニチュアのおもちゃのオートマトンを指していた。アンドロイドとい
う言葉をより現代的な意味で使ったのは、フランスの作家オーギュスト・ヴィリエ・ド・リル・アダムの『明日のイヴ』(1886年)という作品である。この
作品には、ハダリーという人造人間のようなロボットが登場する。物語の中で将校が言ったように、"このリアリエンの進歩の時代に、この機械人形の責任者の
心の中がどうなっているのか、誰にもわからない "のである。この言葉は、ジャック・ウィリアムソンの『The
Cometeers』(1936年)から始まる英国のパルプSFに影響を与え、機械的なロボットと肉的なアンドロイドの区別は、エドモンド・ハミルトンの
『キャプテン・フューチャー』(1940-1944年)の物語で広まった( https://www.deepl.com/ja/translator で翻訳)。
●アンドロイド、またわ、人造人間
「假にひとつの單獨な語……《もうすでに!》といふ言葉が、——或る瞬間、——「人造人間」の言ふべき言葉だとしますよ」——ヴィリエ・ド・リラダン『未來のイヴ』齋藤磯雄譯、p272、東京創元社、1996年
リンク
文献
初出誌 141)「アンドロイドは現場力を発揮することができるか?」『Communication-Design 5』p.86、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター、2011年9月(→池田業績)
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099