ジェンダー化
Genderlizationジェンダー化(genderlization)と は、もともとジェンダー(社会的性別)の区別がなかったものに対して、社会的バイアス がかかるようになる 現象である。例えば、ジェンダー的に中立であるはずの客観科学の看護学は、現実の看護者が社会のなかで「女性の仕事」とみなされてきたために、その学問も ジェンダー化され、女性の専門職と長い間見なされてきた。しかし、実際の看護者(看護師)においては、男性の看護師も一定の割合で存在し、とりわけ伝統的 には精神病院中心の時代には、男性看護師の比率が高かった(その現場的理由は「精神病患者を制御するためには男性の力が必要」と見なされてきた)。また、 日本の看護師国家試験に、男女によってなんら「差別」あるいは「配慮」というものがなされているわけでない。つまり、日本の看護師国家試験は、現実の看護 学のジェンダ化に対して、脱ジェンダー化(de-genderlization)されていると言える。もっとも、客観科学を標榜している(べつに私は「し なくてもよい」と考えるのだが)看護学の「公的イデオロギー」もまた「ジェンダーの区別は、患者のジェンダーに対して配慮すべきであるが、看護技術はジェ ンダー化されていない」という立場をとっている。
日本国内での研究発表では、ジェンダーの視点がなく ても(中性的か男性的な叙述で)誰もそれを問題視しないでしょう。でもラス・アメリカス(南北両米大陸)ではジェンダーの視線がないと、発表者は、どのよ うな(ジェンダー的)視座からみているのだと質問されることが多いです。確かに別のジェンダーからの視点で見え方が変わるという自覚は、今後ますます重要 になってくるでしょう。
左:子供向けの絵本のイラスト(女性は掃除し、男性は本を読む)/右:楽園から放逐されたイ ブとアダム(13世紀)、イブはトップレスで糸を紡ぎ、アダムは斧で薪を割っている。
●男流文学論のジェンダー化批判の重要性
日本の女性への職業差別とジェンダー化の例としては「女流」という名称がある。それにカウン ターパンチを打ち込んだ事例が『男流文学論』である。しかし、ブリタニカの「男流文学」の解 説は、著者たちのジェンダー化に対する異議申し立てを、(男性中心あるいは中性化された)純文学論という虚構の観点からみごとに外しまくってい る。あまりにも面白いので、ここで引用してみよう。
1)上野千鶴子,小倉千加子,富岡多恵子の鼎
談による,フェミニズム批評『男流文学論』 (1992年1月)
より出た言葉。2)この鼎談は「不当に高く評価された男性作家の仕事を読み直し再検討する」もので,取上げられた作家は,吉行淳之介,島尾敏雄,谷崎潤一
郎,小島信夫,村上春樹,三島由紀夫の6人。3)女性の立場から,男流文学のキモチ悪さを楽しそうにあげつらっている趣もあり,この批評のあり方自体が既
存の文学というシステムに寄りかかっているとする指摘もある。4)しかし,その基底にある,文学に女流も男流もないはずだという主張は,最近の各種文学賞
の女性受賞者の増加とともに注目される。 |
1)事実関係 2)これも事実関係 3)上野・小倉・富岡の「やり方」を揶揄して、あえて、「男流」とジェンダー化を批判している鼎談であることをこの項目の人間は理解できない。仮にライ ターが女性やクイアであっても、マインドは完全におちょくられた男性のままである。 4)「文学に女流も男流もないはずだ」というのは、揶揄された男性がよく使う口実である。つまり犬の遠吠え。それに、その問題性が「各種文学賞の女性受賞 者の増加」で批判を中和化できるのか、文学はジェンダーフリーという嘯くことを粉飾できるか、できるわけない。 |
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「男流文学」https://x.gd/Wgxvu |
★ジェンダーロールとしての
ジェンダーロールとしての「女性の音楽教師」:19世紀には音楽教育における女性の役割に制限が課せられていたにもかかわらず、女性は幼稚園の先生として受け入れられてい た。女性はまた、女学校や日曜学校で個人的に音楽を教え、学校の音楽プログラムで音楽家を養成した。20世紀に入ると、女性は小学校の音楽監督、普通学校 の教師、大学の音楽教授として雇用されるようになった。また、音楽教育の専門家団体でも女性の活動が活発になり、女性が学会で論文を発表するようになっ た。女性のフランシス・クラーク(1860-1958)は、1907年に音楽監督者全国会議を設立した。20世紀初頭には、少数の女性が音楽監督者全国会 議(およびその後1世紀にわたって改称された組織)の会長を務めたが、1952年から1992年までの間に女性会長は2人しかおらず、これは「(おそら く)差別を反映している」(→「音楽教育」)。
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