はじめによんでください

安心して徘徊でき る社会は可能か?

 How does Japanese society problematize and decriminized a wondering dementia man in legal court?

池田光穂

2016年12月8日の「認知症コミュニケーション2016」 でのPBL授業において、授業の主宰者は「安心して徘徊できる社会は可能か?」ということを 考えることを提唱しました。

その中で、2016年12月8日朝日新聞において報道された、同年12月1日の民事訴訟の最高裁判決を報じる記事は、認知症の人を「安心して徘 徊させる社会」が未だ到来していないことを示唆する重要な指摘があると私は判断しました。なぜなら、JR東日本の車両に飛び込んでしまった当時91歳の老 人は事故でなくなり、その民事賠償責任を問う裁判が10年近くおこなわれたからです。今般のケースは、日ごろの介護努力があり、徘徊させてしまったがゆえ の鉄道事故に関して、賠償責任を問うことができないと最初に判例が決定したことになります。そのことについて詳しく解説してみましょう。

資料(左は全文:朝日新聞からの引用、で、分析のために項目や文章に番号をつける。右は、その簡潔な分析とパラフレイズ【簡便型グラウンデッド・アプローチ】)

1. 市川美亜子記者の署名記事

2. 【リード文】認知症JR事故、家族に監督義務なし 最高裁で逆転判決

【本文】改行は/で示しています
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3. 愛知県大府市で2007年、認知症で徘徊(はいかい)中の男性(当時91)が列車にはねられて死亡した事故をめぐり、JR東海が家族に約720万円の損害 賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、介護する家族に賠償責任があるかは生活状況などを総合的に考慮して決める べきだとする初めての判断を示した。/

4.そのうえで今回は、妻(93)と長男(65)は監督義務者にあたらず賠償責任はないと結論づけ、JR東海の敗訴が確 定した。

5. 高齢化が進む中で介護や賠償のあり方に一定の影響を与えそうだ。/

6. 民法714条は、重い認知症の人のように責任能力がない人の賠償責任を「監督義 務者」が負うと定めており、家族が義務者に当たるのかが争われた。

7. JR東海は、男性と同居して介護を担っていた妻と、当時横浜市に住みながら男性の介護に 関わってきた長男に賠償を求めた。/

8. 民法の別の規定は「夫婦には互いに協力する義務がある」とも定めるが、最高裁は「夫婦の扶助の義務は抽象的なものだ」 として妻の監督義務を否定。

9. 長男についても監督義務者に当たる法的根拠はないとした。/

10. 一方で、監督義務者に当たらなくても、日常生活での関わり方によっ ては、家族が「監督義務者に準じる立場」として責任を負う場合もあると指摘。

11. 生活状況や介護の実態などを総合的に考慮して判断すべきだ、との基準を初めて 示した。/

12. 今回のケースにあてはめると、妻は当時85歳で要介護1の認定を受けていたほか、長男は横浜在住で20年近く同居していなかったことなどから 「準じる立場」にも該当しないとした。/

13. 結論は5人の裁判官の全員一致。

14. ただ、うち2人は長男は「監督義務者に準じる立場」に当たるが、義務を怠らなかっ たため責任は免れるとの意見を述べた。/

15. 一審・名古屋地裁判決は妻と長男に請求全額の賠償を命じ、二審・名古屋高裁判決は妻に約360万円の賠償を命じて いた。/

16. JR東海は「最高裁の判断なので、真摯(しんし)に受け止める」とのコメントを出した。(市川美亜子)

1.市川美亜子記者の署名記事

2.認知症で公益を損する事案を引き起こした場合に家族に監督の義務がないことを、最高裁で判断されたが、それは過去の判決を逆転したものだった。


3.記事の要約。事故と裁判の経緯。最高裁の結審:「介護する家族に賠償責任があるかは生活状況などを総合的に考慮して決める べきだ」。これは日本の裁判の判例主義から今後も続く基準になることを示唆。

4.事故をおこした本人(死亡)の監督義務者としての妻と長男に賠償責任がないことを示す。訴えを起こしたJR東海は敗訴となる。

5.認知症を抱えている家族への影響を示唆。

6.民法上の「責任能力がない人の賠償責任を「監督義 務者」」の解説と、今回の争点を示唆。

7.損害賠償の経緯。訴えられたのは同居の妻と、別居の長男。

8.民法における妻の監督義務はないと裁判所の判断。

9.長男の監督義務の法的根拠もないとの裁判所の判断。

10.「家族が「監督義務者に準じる立場」として 責任を負う」可能性については、その判断もあることを示唆。

11.監督義務は「総合的に考慮して判断すべき」との基準は、はじめて行われた(→これまではなかったことを示唆)

12.今回のケースは「総合的に考慮して判断」して、監督義務がないと示された。

13.結論導出には異論はなかった。

14.裁判官に齟齬があったのは「うち2人は長男は「監督義務者に準じる立場」」だが、(妻の派遣など)「義務を怠らなかっ たため責任は免れる」と、長男の日々の努力と貢献を評価している(→弁護があったことを示唆)

15.これまでの裁判の経緯。とりわけ高裁は被告に賠償責任があると判断されていたことを報じる。

16.原告側のコメント。最高裁の結審=判断を了承していることを匂わすコメント。

【引用出典】2016年12月8日
本文:
http://www.asahi.com/articles/ASJ2X0VW5J2WUTIL028.html
図版:http://www.asahi.com/articles/photo/AS20160301004459.html
文章と図版の出典明示




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