ゾンビの美学
L'esthétique des zombies
Living dead Karen
Cooper, eating her father's corpse
☆ 「ゾンビ の人類学(anthropology of Zombies)」には、いろいろな定義が可能である。まず(α)「人類学はゾンビ的本性を もった存在である(Anthropology has entitity of the natur of Zombie)」ということを探求する研究上のジャンルをゾンビ の人類学かもしれない。しかし、その前 に、(Β)「ゾンビとは何か(what kind of nature of the Zombie?)」について、探究するのもゾンビ の人類学であろう。ゾンビを 理解するには、1968年を分水嶺にして、2つの意味の使い分けをしなればならない。まず、(1)古典的で保守的なゾンビ(classical Zombie per se)である。それはハイチのブードゥー信仰 の中にでてくる実態や伝承としてのゾンビである。そして、グローバリゼーションをとげた、現在我々が理解しているゾンビは1968年のホラー映画『生きる 屍の夜(Night of the Living Dead)』以降の大衆文化や映画あるいはゲームの(2)キャラクター[あるいは哲学的実体(philosophical entity)]としてのゾンビである。もちろ ん、現在ゾンビとして、理解されているものは、圧倒的に後者の意味——ないしは語用——が主である(→「人類学的ゾンビ」より)。
後 者の研究の嚆矢は、1970年以降に、心身二元論の哲学研究において、ゾンビはいかなるものとして理解できるのか、という思考実験からはじまった(→「哲学的ゾンビあるいはP-ゾンビ」)。
★ナイト・ オブ・ザ・リビングデッド(Night of the Living Dead)はこちら★ゾンビの美学 : 植民地主義・ジェンダー・ポストヒューマン / 福田安佐子著, 人文書院 , 2024
『恐 怖城(ホワイト・ゾンビ)』『私はゾンビと歩いた!』から、ジョージ・A・ロメロを経て『バイオハザード』『ワールド・ウォー・Z』まで、ヴードゥー呪 術、噛みつき、ウィルス感染など、多様な原因で人間ならざるものへと変化し、およそ100年にもわたり増殖し続けるゾンビと作品の数々。恐怖の対象として 類を見ないその存在に託されたものは何か。本書では、ゾンビの歴史を通覧し、おもに植民地主義、ジェンダー、ポストヒューマニズムの視点から重要作に映る ものを仔細に分析する。アガンベンの生権力論を援用し、ゾンビに現代および近未来の人間像をみる力作。博士論文「ゾンビの美学 : 植民地主義・「人に似たもの」・ポストヒューマニズム 」(京都大学, 2021年提出) を加筆・修正したもの。参考文献: p256-266
序 章
第 1章 『恐怖城(ホワイト・ゾンビ)』とゾンビの誕生
第 2章 『私はゾンビと歩いた!』と呪われた人形
第 3章 近代におけるゾンビ―グロテスクなものか「人に似たもの」か
第 4章 ゾンビ映画におけるヒロインと女ゾンビ
第 5章 『ワールド・ウォー・Z』における新しいゾンビ
終
章
序章 |
「ゾ
ンビは単純に外見や行動様式が人間と「似ている」ものとして生み出されたのではなく、また鏡となって「人間の条件」を教示するだけでなく、「似ているに過
ぎないもの」として、われわれが「人種」や「生」や「身体」の規範や定義といった人間の内側から見出し、切り捨てようとしてきたものを指し示している」
(福田 2024:24) |
第1章 『恐怖城(ホワイト・ゾンビ)』とゾンビの誕生 | 『ホワイトゾンビ』に登場する白人女性のゾンビ。例外としてのゾンビ。 |
第2章 『私はゾンビと歩いた!』と呪われた人形 | 『私はゾンビと歩いた!』までのクラシックゾンビの分析。ハイチに焦点をあてながら、西洋世界に投射する。 |
第3章 近代におけるゾンビ―グロテスクなものか「人に似たもの」か | ロメロの「デッド・シリーズ」の分析。ゾンビ映画の確立。 |
第4章 ゾンビ映画におけるヒロインと女ゾンビ | 感染としてのゾンビ化。女性の役割。 |
第5章 『ワールド・ウォー・Z』における新しいゾンビ | ポストヒューマニズム化の課題としてのゾンビの誕生。 |
終章 |
★ゾンビクロニクル
1929 ウィリアム・シーブルック『魔法の島:ハイチ』
1932 『ホワイト・ゾンビ(恐怖城)』
「ハ
イチ・ヴードゥー美術とは、ハイチ・ヴードゥー教に関連する美術である。この宗教は、奴隷によってハイチにもたらされた西アフリカの伝統宗教にその起源
を持つが、ヨーロッパやアメリカ大陸の要素も取り入れられ、進化を続けている。ヴードゥー教の芸術形態で最も特徴的なものは、スパンコールやビーズで装飾
されることが多い刺繍の旗であるドラポ・ヴードゥーであるが、この用語は絵画、刺繍の衣類、粘土や木製の像、楽器、組み立て品など、幅広い視覚芸術形態を
カバーしている。1950年代以降、観光客やコレクターの間でヴードゥー教の芸術に対する需要が高まっている。/大衆文化では、ハイチ・ヴードゥーやルイ
ジアナ・ヴードゥーなど、異なる形態のヴードゥーに関連する慣習がさまざまな形で描写されてきた。また、アフリカ
系ディアスポラの宗教に帰属するその他の要素も含まれており、その表現は実際のヴードゥーの慣習や信仰とは大幅に異なる場合が多い。ヴードゥーを題材にし
た作品は、超自然的なファンタジーやホラー映画に最も多く登場し、呪術師の活動、闇の精霊の召喚や支配、遠隔地にいる人間に苦痛を与えるためのブードゥー
人形の使用、ゾンビの創造などが共通のテーマとなっている」(→「ハイチのヴードゥー芸術とポピュラー化」)
リ ンク
文 献
そ の他の情報
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
Death
visits the Miser. Hieronymous Bosch 1494 or later.
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