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隠喩としてのゾンビ

On Zombie metaphor

池田光穂

ンビ(zombie)は、何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称である。多くはホラーやファンタジー作品などに登場し、「腐った死体が歩き 回る」という描写が多くなされる架空の存在である。「生ける死体」として知られており、ブードゥー教のルーツであるヴォドゥンを信仰するアフリカ人は霊魂 の存在を信じている。こちらについては「目に見えないもの」として捉えている。 「ゾンビ」は、元はコンゴで信仰されている神「ンザンビ(Nzambi)」に由来する。「不思議な力を持つもの」はンザンビと呼ばれており、その対象は人 や動物、物などにも及ぶ。これがコンゴ出身の奴隷たちによって西インド諸島のハイチに伝わる過程で「ゾンビ」へ変わった、と言われている。

1968年のジョージ・A・ロメロのアメリカ映画『ナイト・オブ・ザ・リ ビングデッド』で、ゾンビに「噛んだ相手もゾンビになる」という吸血鬼 の特徴が混ぜ込まれ、これが以後のゾンビ映画の基本構造となった。また、ゾンビ作品に触発され、噛まれると感染する蘇った死体としてのキョンシーが香港映 画で1980年代に確立したといわれている。

喩としてのゾンビ

1)実行終了中のプロセスを「ゾンビプロセス」と呼ぶことがある。

2)拒絶されても自身に都合のいい妄想をし続けるストーカーのことを「ポジティブゾンビ」と呼ぶことがある。

3)保守が終了しているにもかかわらず使い続けられるオープンソースソフトウェアを「ゾンビOSS」と呼ぶことがある。

4)超新星爆発が複数回起きた星を「ゾンビ星」と呼ぶことがある。

5)サバイバルゲームで被弾したことを申告せずにゲームを続ける者を「ゾンビ」と呼ぶことがある。

6)心の哲学では「物理的化学的電気的反応としては普通の人間と全く同じであるが、意識(クオリア)を全く持っていない人間」を「哲学的ゾン ビ」と定義している。

7)経営が破綻しているにもかかわらず、金融機関や政府機関の支援によって存続している企業のことを、「ゾンビ企業」と呼ぶことがある。

8)歩きスマホをする者は、下を向いてにふらつきながらゆっくりと歩くため、欧米において「スマートフォンゾンビ(Smartphone zombie)」と呼ばれるようになった。

9)日本の衆議院議員総選挙で導入されている重複立候補制度により、小選挙区選挙では落選したが、同時に行われる比例代表選挙で当選した議員の ことを「ゾンビ復活」または「ゾンビ議員」などと呼ぶことがある。

◎哲学的ゾンビ(→「哲学的ゾンビあるいはP-ゾンビ」)

学的ゾンビ(philosophical zombie、p-zombie argument)とは、通常の人間と物理的に同一で区別がつかないが、意識経験、クオリア、 感覚を持たない仮想の存在を想像する心の哲学における思考実 験である。 例えば、哲学的ゾンビが鋭いもので突かれた場合、内面では痛みを感じないが、外面では痛みを感じるように振る舞い、痛みを表現する言葉も発せられるとする ものである(→行動的ゾンビ Behavioral Zombie)。また、ゾンビの世界とは、私たちの世界と区別がつかないが、すべての生物が意識を持たない仮想的な世界のことである(→「ゾンビ・イン・フィロソフィー」も参考のこと)。

☆哲学的ゾンビ (Neurological Zombie)とは「脳の神経細胞の状態まで含む、すべての観測可能な物理的状態に関して、普通の人間と区別する事が出来ないゾンビ」で「心の哲学の分野 における純粋な理論的なアイデアであって、単なる議論の道具であり、「外面的には普通の人間と全く同じように振る舞うが、その際に内面的な経験(意識やク オリア)を持たない人間」という形で定義された仮想の存在である。哲学的ゾンビが実際にいる、と信じている人は哲学者の中にもほとんどおらず「哲学的ゾン ビは存在可能なのか」「なぜ我々は哲学的ゾンビではないのか」などが心の哲学の他の諸問題と絡めて議論される」そうである(→出典「哲学的ゾンビ」)。

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