大学授業・私語プロファイリング
"MALLEUS
MALEFICARUM, Maleficas et earum haeresim ut framea
or
"Please minimize your private talk in my classroom"
Saint Dominic
Presiding over an Auto-de-fe, c. 1495, Museo del Prado, Madrid.
本文を読む際の注意
この文章は真面目なスタイルをとった皮肉です。著者の真意である と、とらないでください。
undergraduate class of your campus, today
それでも読みたいの??知らんよ、マジで警告するけど?!
ここから先は、読み手の自己責任で!!!!
! 本文を読む際の注意 !この文章は真面目なスタイルをとった皮肉です。著者の真意ととらないでください。
「(ニュー ヨークのニュー スクール・フォ・ソーシャル・スタディ[リサーチ:引用者])での講義は夕方におこなわれ、聴講生の 大部分は成人で、職業人であり、自分の知識を新たなものにするため、あるいはなんからの専門知識を得るために来ていたのです。……ナンビクワラ・インディ アンについて語るために教室に入ったとき、私の恐怖感はパニックに変わりました、なぜなら、ほとんどの学生たちはノートをとるかわりに、編物をしはじめ、 まるで彼女たちに私が語ったこと、というより下手な英語で私が語ろうと試みたことに完全に無関心ででもあるかのように、講義の終わりまでそれをつづけたか らです。けれども学生たちは聞いておりました。といえるのは、講義の最後に、彼女たちのひとりがやってきて、私の話は全てきわめて興味深かったが、彼女の 意見としては、英語では、desert と deseert とは同じところにアクセントがないことを私は知るべきだと言ったからです」。—— レヴィ=ストロース(山崎カヲル訳、一部改変)、1972年出典は北沢方邦編『近 代知の反転』(1983:8-9)
繰り返します。以下の文章は真面目なスタイルをとった皮肉です。著者の真意ととらないでください。
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1. はじめに 冒頭に戻る
大学の 授業をおこなうものにとって頭の痛いことのひとつが、学生の私語である。
自分の 授業中に私語を経験したことのない教員はいないだろう。
「自分 は経験しない」と豪語して憚らない者は、同僚から信用されていない者か、私語撲滅に関して極めて全体主 義的な方針をとっている恐怖教授か、あるいは、自分の授業はすばらしいことを、そのような形でしか表明できない自惚れ者であろう。いずれにしても、そのよ うな同僚に対しては、我々は外交辞令的美辞を表明するか単に憧れるだけである。
では、 それ以外の常識的な教員に、私語にどのような対策を講じているか?と質問すると、いやはや、皆さん、各 々の個性によって多様な対処法がある。
曰く、 私語は授業の妨害だから徹底的に血祭りにあげる、つまりスケープゴートをつくれば、他は黙る(誰も害を 被りたくないので黙るのは当たり前である)。私語をほっておき、熱心に授業をやれば、かならず私語は止む(森田健作※タイプの熱血根性精神が私語を撲滅す るというほとんど根拠のない信仰がある)。私語をやるのは、学生がかまってほしいからで、無視しつづければ必ず止む(こちらも、ほとんど理解不能の自動調 整仮説を信じる者)。私語をする学生の側に行くと止む(看守型の徘徊による私語防止方法)等々。
※森田健作さんの主演した『俺は男だ』という古いテレビドラマから、」〈森田健作〉という類 型は、金八先生やごくせんなどの、ある意味で熱血タイプ(昔は男性一辺倒でしたが現在では女性を含めて)の教師という役割を指します。実在する森田健作さ んとは、何の関係もありません。
しかし、そのことが学生たちにどのような理由で黙らせることに成功させているかについて、説明を求めると、き わめて底の薄い、単純な学生の行動仮説に基づいていることがわかる。
14th-century image of a university lecture- Scholasticism
より, 14世紀にも(それも今と変わらぬ座席後列で)私語する奴はいたし、居眠りするやつもいました——教師よ落胆することはない。
2. 私語事象が生起する際にみられる経験則 冒頭に戻る
しかしながら、これらの蘊蓄話に耳を傾け、その前提を吟味してみると次のようなポイントにまとめられる。
3. 私語プロファイリングとはなにか 冒頭に戻る
ここで私が、私語対策として提案する手段は、市民社会における権利と義務概念をあらかじめ承認させておいてか ら、契約の概念をたてに、心理的的に学生を苦しめる、極めていやらしい方法である。
私は、この方法は、一見、民主的な形態をとりながら、人間の理性を心理的に生殺しにする嫌な方法であると考え ている。というのは上掲の3.のように、この実践的な方法が、特定の教育理念=イデオロギーの反映としての導きだされたものではなく、目標(=私語撲滅) を最優先するために、市民社会で良きものと承認されているさまざまな諸イデオロギーを折衷的に動員するからである。
※全体主義社会において多様な意見を抑圧する方法とは、この手法が大いに動員されているかと 思うが、私はこの方面について十分に明るくないので、詳しい解説は将来に残しておこう。
この方法を、私は私語犯人プロファイリングと呼ぶ。プロファイリングとは、『羊たちの沈黙』でお馴染みの FBI捜査官が、「変質者」を追いつめていく際に、行動科学的手法を動員して、犯人のさまざまな行動特性を類推する方法である(→プロフィールをあぶり出 すことが動名詞化されているようだ)。したがって、ここでは、個々の学生に対して論証されていない行動科学的前提をあらかじめ用意する。それは、私語をや る学生は、同じ授業でも、異なった授業でも私語を繰り返している可能性がある。それは、その本人の傾向性によるものであって、説諭や懲罰などの方法では改 善されない、という前提である。
私語[犯人]プロファイリングとは、したがって、私語をおこなう犯人像(正確には犯人の「性格」)を作り上げ て、心理作戦を行使して、それを徹底的に破壊するという、心理システムのことである。
【ご注意:池田光穂】
くどいようですが、私は米国で発達した行動科学的手法によ るプロファイリングの学問的パラダイムおよびそのイデオロギーに対しては、極度にかつ強烈な批判的態度をとっています。管見によると、今日における多くの <癒し>に関する大衆的認知も、プロファイリング理論の派生形態と考えることができます。
4. プロファイリングの実際 冒頭に戻る
このような前提にたつプロファイリング論にもとづく私語の具体的方法は次のようなものから構成される。1. 私語についての論理的前提の確立、2. 私語事象が生起した際の対応(心理的水路づけ)、3. 私語事象が生起した際の対応(行動科学的処方)、4. 学 生に対するプロファイリングの意識化、5. 最終解決、である。以下にその手順を説明する。
4.1. 私語についての論理的前提の確立 冒頭に戻る
次のようなことをシラバスに明記し、授業の第一回のはじめにも繰り返して口頭で宣言する。
4.2. 私語事象が生起した際の対応(心理的水路づけ) 冒頭に戻る
次に、私語事象が生起した際の対応方法の解説に入る。
当該学生を見据え、それが無理な場合は、会話を中断する。(ただし多数の私語には対応できない)
それでも止まない場合は、当該学生を口頭で注意する。その際には、怒りをなるべく抑え(これが結構難 しい)、なぜ話したかったら退席するなり、質問するなりしなかったのかについて聞く。大概の者は沈黙する。しかし仮に学生が返事をしても適当に相づちを 打って絶対に議論には応じない。
授業の始めに宣言したことを学生に確認させる。応じない場合は、1.で明示した契約の概念に違反して いることを再三にわたって確認させる。権利・義務・契約の概念について論争できるだけの知識をもっているはずなので、当該学生を徹底的に論破することは、 それほど難しくないはずだ。つまり、学生に権利を保障するために守らなければならない義務を放棄ないしは履行していない(=逸脱)ことを訴える。
→私語による授業妨害は法律的には「営業妨害」と いう違法行為を構成します。
この説諭をおこなうと、周囲の学生は嫌な気持ちになる。なぜなら、学生なら誰でも私語をする傾向をも つからである。他の学生が不快になるのは、自分が道徳的に非難されているのではないかと不安になるからである。しかし、私語のプロファイリングから完全に 除外される、つまり私語をもともと好まない学生もいる。この学生もまた不快になるが、それは「関係ない連中への説教をなぜ聞かされなくてはならないの?」 という不快さである。いずれにせよ、周囲の学生は極度に不安や倦怠感をもち、そのはけ口を求めることになる。
さて、ここでのポイントは、当該の学生は当然のこと、周囲の学生もまた不快になる程度(時間ではなく 強度である)説諭が進んだところで、「他の学生の皆さんもそう思うでしょう?」という全体への呼びかけモードに替えることである。
そこからは一気に、1人の学生によって、共犯者にさせられた学生は迷惑した」(私語は複数犯で構成さ れるが、発話をしたものを主犯、呼びかけに応じたものを共犯とするが、ここでは、絶対に主犯を特定せずに、説諭を続けることが重要である)。「共犯にさせ られた者も、それは結果的に全体に対する加害者になった」「一部の心ない者の仕業で授業が台無しになりましたね〜」と展開させる。
ここでのポイントは、不快の感情の意識化であり、同時にそれは一部の人(私語者)の自責の念の植え付 けと、それに対する全体の非難意識の共有である。
4.3. 私語事象が生起した際の対応(行動科学的処方) 冒頭に戻る
心理的水路づけが完了すれば、つぎに行動科学的処方を断行する。
ここでは心理学的水路づけとは完全に矛盾する処方を提示する。つまり、私語者(主犯・ならびに共犯 者)の席を前列方向へ移動させる。あるいは共犯者の間にスペースを持たせるように席次につかせる。
この移動を正当化する修辞は以下のようなものである。「私語をすることは、これまで述べたように悪い ことである。またそのことを本人たちもこの説諭で了承したはずだ。しかし、他方で誰もが私語を犯す危険性がある。だから、私語をおこなったものは、本当は 悪い奴ではないのだ。我々はみんな悪くなる潜在的可能性をもっている」。
ここでは、学生に水路づけた先の自責と非難の念を中和してやるのである。しかし、それだけではリロ ケーションを正当化させることができない。それを正当化させる修辞は次のようなものである。
「しかし、どうであろう? 私語はたまたま友達がそばにいたために、間違って起こったできごとだ。だ から、私が、座席を移動するように提案するのは、私語をした人に対する懲罰の気持ちからではなく、場所を移動することによって、お互いに私語をするという 悪いことを防ぐことなのだ。だから、私のこの提案に応じてはくれないだろうか? 私は最初は君たちにカッとなったが、それはあやまりだった。もし、君たち が道徳的に非難されたと感じるならば、それは私は反省し、謝罪する。その上で移動してくれないだろうか?」
契約における権利と義務についての修辞を弄するのは教師の最も得意とするところだ。ここでの留意点 は、あくまでも説得的に強制移動を完了させることである。
4.4. 学生に対するプロファイリングの意識化 冒頭に戻る
これで、再犯が防ぐことができても安心してはならない。犯罪者プロファイリング(Offender profiling)に基づく犯罪理論によると、行動修整をおこない限り、当該学生は、永遠に再犯する可能性をもっているからである。そのため次 のようなことを授業の最後に言って念を 押す。
「最初は私もカッとなったけど、君たち(私語者)の協力のおかげで、授業がうまくいった。君たちは、 この授業の功労者である」。
これは皮肉であるが、皮肉と悟られないことが重要であり、思いっきり演技をする。そこでもちあげてお いて、次のような殺し文句を発話する。
「しかし、私語というものは、繰り返しおこなうような病理的な傾向があるらしい。これは君たち自身が 悪いから犯すのではない。むしろ君たち自身はは悪癖の犠牲者なんだ。だから、どうだろう、今日、私が提案した席次のルールをこの学期守ってくれないだろう か? お願いする。これは、たぶん、私の願いではなく、授業を受けているみんなの願いだと思う」。
これで、納得を取らせる。最悪の場合でも表面的にでも了承させたような形式をとれば成功である。授業 の鐘がなる直前、あるいは鳴った後は効果的である。学生は終わりたいと焦っているか、他のアポイントメントがあるからだ。
5. 最終的な解決 冒頭に戻る
同一人物が次週にも再犯に及べば。有無をいわさず厳罰i当該学生を放逐する、単位を認定しない)を適 用する。これは周囲の学生に心理的動揺を与えたりや道義にもとづく不安を喚起させない。それは、仮に違法な行為をおこなうこともある権威的な上司の責任を かぶるという心理的な保障をすると、周囲のものはその行為に過剰適応(cf.アイヒマン実験)するという経験則があるからだ。また授業に参加した学生は、 それほど重い処分とは思わない傾向がある。
あとは念には念を入れて、放逐された学生が、当局に対してクレームメイキングすることを防ぐことであ る(これには法的知識による武装が必要)。くれぐれも、セクハラやアカハラを構成するような与件をギャラリーに与えないことである。
プロファイリング実践の成功である。
なお、これが成功し続けるためには、このプロファイリングの手法がもつ様々な欠陥に対して自覚的にな り、日々この手法を洗練させる努力を怠らないことである。どのような世界でも奢れるものは、予想以上に早く自壊するものだからである。
Thomas
Bond (1841–1901), one of the precursors of offender profiling.
●(続きは)シレンティアリウス
と免疫
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