はじめによんでください

文化的脱植民地化

Descolonización cultural

池 田光穂・額田有美

☆ 文 化の脱植民地化とは、文化における植民地の影響から解放されるプロセスであり、文化間の階層構造に疑問を投げかけ、特に先住民が政治、経済、文化のシステ ムにおいて自己決定権を求めることを意味する。これは、ヨーロッパ中心主義やその他の支配機構の影響を受けた制度、文化、認識論的な状況の逆転を目指す、 政治的な視点の転換である。

La descolonización cultural es un proceso de liberación de las influencias coloniales en la cultura, que implica cuestionar las jerarquías entre culturas y buscar la autodeterminación de los pueblos, especialmente los indígenas, en sus sistemas políticos, económicos y culturales. Se trata de un cambio de perspectiva política que busca revertir situaciones institucionales, culturales y epistemológicas afectadas por el eurocentrismo y otros mecanismos de dominación.
文化の脱植民地化とは、文化における植民地の影響から解放されるプロセ スであり、文化間の階層構造に疑問を投げかけ、特に先住民が政治、経済、文化のシステムにおいて自己決定権を求めることを意味する。これは、ヨーロッパ中 心主義やその他の支配機構の影響を受けた制度、文化、認識論的な状況の逆転を目指す、政治的な視点の転換である。
Más allá de la restitución de objetos, la descolonización cultural implica:
Reconocimiento de la diversidad:
Aceptar la pluralidad de culturas y conocimientos, rechazando la idea de una cultura superior.
事物の返還(restitución )を超えて、文化の脱植民地化には以下のことが含まれる。
多様性の認識:
文化や知識の多様性を受け入れ、ある文化が他の文化よりも優れているという考えを拒否すること。
Interculturalidad crítica:
Fomentar relaciones equitativas entre culturas, promoviendo el diálogo y el aprendizaje mutuo.
批判的異文化間交流:
文化間の公平な関係を促進し、対話と相互学習を推進する。
Descolonización del conocimiento:
Cuestionar la hegemonía de ciertas teorías y perspectivas, valorando los conocimientos y experiencias locales.
知識の脱植民地化:
特定の理論や視点の優位性に疑問を投げかけ、地域の知識や経験を評価すること。
Reconstrucción de identidades:
Recuperar historias, lenguas y culturas propias, especialmente en el caso de pueblos indígenas, para fortalecer su autonomía y autodeterminación, según el Community-Based Global Learning Collaborative.
アイデンティティの再構築:
コミュニティベースのグローバル学習共同体(Community-Based Global Learning Collaborative)によると、特に先住民族の場合、独自の歴史、言語、文化を取り戻し、その自治と自 己決定を強化すること。
Transformación social:
Buscar un mundo más justo e igualitario, donde se redistribuyan los recursos y se respeten los derechos de todos los pueblos, según Dialnet.
社会変革:
Dialnet(フリーの論文リポジトリー:スペ イン)によると、資源の再分配が行われ、すべての民族の権利が尊重される、より公正で平等な世界を目指すこと。
La descolonización cultural no es un proceso lineal, sino un camino complejo que requiere reflexión crítica, diálogo intercultural y acciones transformadoras en diferentes ámbitos de la sociedad, según Finestre sull'Arte.
文化の脱植民地化は、直線的なプロセスではなく、批判的な考察、異文化 間の対話、社会のさまざまな分野における変革的な行動を必要とする複雑な道程である、とフィネストレ・スル・アルテ誌に寄稿したGennaro Avallone は指摘している。
我々の研究計画:「先住民研究 の脱植民地化:スペイン語圏における知識の継承・流通・再創造に着目して」(基盤研究(C))研究代表者:額田有美.

本研究は、ニュージーランド・マオリの先住民思想家リンダ・トゥヒワイ・スミス(1999) の言う「《研究》という言葉は、先住民の言語の中で最も汚れた言葉の一つである」という 指摘への反省から出発する。先住民研究は誰がおこない誰のためにあるのだろうか?

本研究 では、グローバルノースにもその影響が波及しているラテンアメリカの先住民文化が国民文 化と混交融合をおこしてきた文化現象に着目し、メキシコ、コスタリカ、チリの先住民社会 がどのように「文化的脱植民地化(descolonización cultural)」を実践しているのかをインタビ ューと参与観察を通して民族誌的に明らかにする。

分析する文化現象は、(i)伝統的知識(TK) の習得と継承、(ii)外部からもたらされる資本主義との接続と介入過程、そして(iii)国内およ び国際的な先住民社会との情報流通である。(ii)と(iii)に関しては、言語・文化的な繋がりの 強い旧宗主国スペインを対位法的な調査地とし、資本・文化・知識の流通を追う。
・研究申請書「先住民研究 の脱植民地化:スペイン語圏における知識の継承・流通・再創造に着目して」より
知識の植民地性(la colonialidad del saber; Coloniality of knowledge)とは何か?

本研究は、脱植民地化研究において提唱されている「知識の植民地性 (la colonialidad del saber; Coloniality of knowledge)」に関する一連の研究を背景として着想された。「知識の植 民地性」とは、西洋の知識体系によって何が科学的知識と見なされるべきかが決定され続け ていること、その結果、異なる知識体系、専門知識、世界観をもつ人びとが排除され、周縁 化され続けていることを批判する概念である。この概念は、ペルーの社会学者アニバル・キ ハノ(Aníbal Quijano)が提唱し、現代の脱植民地化思想に適応させたものである。キハノによ ると、植民地主義は、被植民地における認識の仕方、知識の生産、視点、ビジョン、イメー ジ、シンボル、意味づけのシステムなど、形式化され客観化されたあらゆる表現方法に影響 を及ぼしてきた。そしてこの傾向は、植民地主義が、明白な政治的秩序としては隠ぺいされ た後も続いている(Quijano 2002)。キハノ以降の脱植民地論の研究者たち(たとえばアルゼン チン出身の記号論者ウォルター・ミニョーロ(Walter Mignolo)、メキシコの哲学者・歴史学者 エンリケ・ドゥッセル(Enrique Dussel)、コロンビアの哲学者サンティアゴ・カストロ=ゴメ ス(Santiago Castro-Gómez)など)は、このような植民地主義の名残を「コロニアリティ」と呼 び、知識の生成と相互に関連する多くの領域で続く抑圧と搾取を植民地主義の遺産であると 指摘し議論を展開している。
・研究申請書「先住民研究 の脱植民地化:スペイン語圏における知識の継承・流通・再創造に着目して」より
本研究に至るまでの研究者たちの反省

研究代表者と研究分担者はいずれも、ラテンアメリカの「先住民である」 と 自認する人びとの文化的実践に関する人類学的調査(参与観察や聞き取り調査)を実施してきた。その間、学術界をはじめとする知識の分野に植民地主義の遺産 (脱植民地主義思想家ら が呼ぶところの「ヨーロッパ中心主義的知識体系」)が残存していることを感じながらも、 その事実に焦点を当てた研究を十分には行ってこなかった。そこで本研究では、冒頭で示し たトゥヒワイ・スミスの問いかけに答えるべく、通常の研究倫理上の遵守に加えて、これま での当該調査地域への文化人類学(民族学)研究のレビューや翻訳を調査対象者とも広く共有 し、我々の研究に興味をもつ若手の先住民への情報提供と現地社会への公開を試みようと考 えるにいたった。またその民族誌過程(ethnographic process)を記録し、方法論と資料をアー カイブ化することで、これまでの民族誌情報を被調査社会に還元できるようにもする。 (1)-3 研究課題の核心をなす学術的「問い」 本研究の核心をなす学術的「問い」は、先住民社会はどのように植民地主義の遺産から脱 しようとしているのか?ということである。本研究では、先住民にとって「汚れた言葉」で ある研究を、先住民と非先住民の「共生」のための言葉へと翻訳する方法を探求する。

本研究は、先述した脱植民地化研究の流れを主としながら、関連分野である気候変動対策、 食料安全保障や食料主権、知的財産や文化遺産に関する研究、共生学といった研究へも、民 族誌的データの提供という点からの貢献が期待される。気候変動対策に関する研究(理系分 野の環境学や生態学)では、欧米諸国に支配的かつ「科学主義」的な人間対自然(環境)という 認識が今日の環境問題の根本にあるとの反省より、先住民の環境に関する「伝統的知識 (TK)」への注目がますます高まっている。食料安全保障や食料主権に関する研究(農学や栄 養学)では、世界の食糧危機の救世主として先住民の伝統的食物や調理法についての研究が 着手された。ラテンアメリカ三か国およびスペインにおけるTKをめぐる学術界内外の今日 の動きを描き出すエスノグラフィーでもある本研究は、分野の異なるこれらの研究へ人類学 的データを提供し、学際的な議論の展開を促すとともに、先住民の知識の「盗用」を引き起 こさないための批判的視点を提供することを目指す。
・研究申請書「先住民研究 の脱植民地化:スペイン語圏における知識の継承・流通・再創造に着目して」より
本研究の目的(当初目的)

本研究の目的は、先進国にもその影響が波及しているラテンアメリカの先 住民文化が国民 文化と混交融合をおこしてきた文化現象に着目し、メキシコ、コスタリカ、チリの先住民社 会がどのように「文化的脱植民地化」を実践しているのかについて、インタビューと参与観 察を通して民族誌的に明らかにすることである。分析対象となる文化現状は、(i)伝統的知識 (TK)の習得と継承、(ii)外部からもたらされる資本主義との接続と介入過程、そして(iii)国内 および国際的な先住民社会との文化ないし情報の流通の3つの諸相である。グローバルな資 本・文化・知識の流通を追いかけるため、言語・文化的な繋がりの強い旧宗主国スペインが この調査の対位法的なもうひとつの調査地になる。

本研究の独創性
本研究の創造性は、元植民地国であるラテンアメリカ地域に加え、旧宗主国であるスペイ ンを調査地に加える点である。そうすることで、歴史的立場の異なる支配者/被支配者双方 の視点から「植民地状況」の現状を立体的に描き出し、対位法的な読解が可能になる。
・研究申請書「先住民研究 の脱植民地化:スペイン語圏における知識の継承・流通・再創造に着目して」より
女性へのまなざし/女性からの視点(留意点)

本研究は、スペイン語圏の「女性」に着目することで、歴史的立場が異なる国々・人びと とのスペイン語を介した相互コミュニケーションを可能とする。他方、女性がおかれている 状況の多様性は、各国の社会的・文化的背景に即して個別に調べる必要がある。本研究は、 共通性と個別多様性の両方を視野に入れて展開されるという点において、国際的にも独自性 の高い研究である。また本研究は、日本生まれの学問・教育分野である共生学(「さまざま な違いを有する人々が、それぞれの文化やアイデンティティの多元性を互いに認め合い、対 等な関係を築きながら、ともに生きる」状態を社会で実現するための学際的研究)のスペイ ン語圏での普及、学術的交流、教育機会の提供といった点でも国際性を有する。
・研究申請書「先住民研究 の脱植民地化:スペイン語圏における知識の継承・流通・再創造に着目して」より

当初計画(現行のものと異なります)——当初案

リ ンク

文 献

そ の他の情報

CC

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099