Regional development or Community building?
地域振興とは、経済地理学や地域経済学の用語でRegional development と呼ばれてきたものでした。また日本語で「まちづくり」や「むらおこし」の名で呼ばれるCommunity building、より正確にはCommunity re-buildingという意味も地域振興に加える人たちもいます。日本語で、地域振興と呼ばれるものは、地域振興関連法——いわゆる地域振興5法—— の適用範囲に入る活動を中心に述べられていることが多いので、正確には、私的あるいは公共的な意味をもっていたRegional developmentやCommunity re-buildingというよりも、行政主導の地域開発や「地域づくり」(officially regional and community depevopment plans)という意味あいになります(→「まちおこし、むらおこし、地域おこし」)。
そのため、日本で地域振興を学ぶためには、地域振興関連法について知ることが出発点になります(→「地域振興関連法」)。
日本における地域振興は、「コミュニティビジネス」などを除
けば/あるいはそれらを含めて、上掲の地域振興法関連の法により規定されていること
が多い。
そのため、地域振興は、国土交通省「地 域振興 活力と魅力のある地域づくり」や、各地域の自治体、例えば京都府「地域振興」、鹿児島県 「鹿 児島地域振興局」、岐阜県「地域 振興課」や、日本商工会議所「地域振興情報」など で、その活動の実際を知ることができる。国土交通省を含めて、国ならびに自治体は「地域」
また、識者のオピニオンとしては、松下政経塾の塾生レポート「なんのための”地域振興”か?」(2000 年8月)がある。「中央省庁からの補助金による従来の地域振興政策が行き詰まりをみせ、地域が主体となった政策が求められるようになっている」という文章 から始まり、民俗学者宮本常一が引用され、最後は「発展の境目で、そこで働いている人たちの考え方にどういう影響を与えたのか、など個人に与えた影響も同 時にとらえていかなければ、”地域振興”や”産業振興”の本当の目的が達成されたかどうかの評価もできないのではないだろうか」と、学生のレポートレベル であるが、行政の施策が、地域の人々の心にいまだ届いていないのではないかと警鐘を鳴らしている。このようなレベルのエッセーは、日本の地方新聞の社説を 閲覧していれば、月に一度はおめにかかる、きわめて紋切り型のものだが、行政は計画をたてて地方の人を動員して、イベントをやれば地域おこしや地域づくり に貢献したと自己評価し、また、それを観察する識者は、人々の生活を変えるにいたっていないと批判する。日本に地域振興の必要性が言われ続けて国税が投入 され、それが実を結んでいないという、この不履行の連鎖をどのように断ち切ればいいのか、従来の地域振興が Ver. 1.0なら、ver. 2.0あるいは、大幅なヴァージョンアップが求められている所以である。
●ポール・クルーグマン先生から学ぶ
私の処方箋は、ポール・クルーグマン先生のアイディアから学ぶというものである。クルーグマンは、従来の国際貿易論を、経済地理学の枠組みを通 して見直すと、従来の国際貿易論の仮説的前提が炙り出せるというものである。クルーグマン先生が指摘する、国際貿易論の従来の5つの仮説は、現実から次の ように指摘できるからである(北村 1994:160-161)。
国際貿易論の前提 |
実際の国際貿易 |
1a)比較優位による貿易を可能にする一般均衡理論 |
1b)部分的均衡理論 |
2a)完全競争市場 |
2b)不完全競争原理 |
3a)規模の経済性の不在 |
3b)規模の経済性あるいは収益逓増 |
4a)生産要素は国内では移動可能だが国
家間では移動できない |
4b)生産要素の移動自由 |
5a)輸送費はかからない |
5b)輸送費がかかる |
1a)比較優位:自由貿易体制では他国より優位な 財の生産に集中することで、労働生産性が増え、高品位の財やサービスの提 供を受けれるという現象
1a)一般均衡理論:多くの財をふくむ市場全体における価格と需給量の同時決定をあつかう理論(←→部分均衡理論)で、合理的、利己的な個人が 価格をもとづいて市場で取引を行えば、社会的に効率的な状態すなわち均衡に自然に到達するという理論を導出する考え方である。均衡(equilibrium)とは、市場に参加するプレイヤーが、与えらた価 格で、財を合理的にかつ適切に売買している状態で、市場全体からみても、超過した需要も、供給の過剰も起こってない状態であり、その与えられた価格こそが 均衡と考える。(→レオン・ワルラスの一般均衡分析)
1b)部分的均衡理論(partial equilibrium theory):当該の財に対して取引量(生産量と消費量)と価格が、均衡している状態およびそれを導き出する理論(→アルフレッド・マーシャル)。
2a)完全競争市場:完全競争(perfect competition)とは、すべての経済主体(economic agent)=プレイヤーが価格を「所与のものとして」=当然視して行動している仮定のこと。これにより、価格が市場のメカニズムを作用する要因としてモ デルが構築される。完全競争では、経済主体は価格に影響を持たない(=価格に完全従属している?)ため、価格受容者(price taker)という(→セーフティ・ネットの政治経済)。
2b)不完全競争原理:「不完全競争(Imperfect competition)とは、企業が価格に対して独占力を持つことで、市場メカニズムがうまく働かなくなる状態」出典)
3b)規模の経済性あるいは収益逓増:「工場設備や企業の規模が拡大する ことによって生み出される利得。(なぜなら)固定設備を使用する工場や、工業製品を生産する企業では、生産の規模を拡大することにより費用 が節約され、収益が逓増する傾向がみられる(からである)」ニッポニカ)
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