アイヌの権利について知る
Learn about
the Ainu's indigenous rights
資料解説:池田光穂
テッサ・モーリス=スズキ (著), 市川 守弘 (著), 北大開示文書研究会 (編集)『アイヌの権利とは何か : 新法・象徴空間・東京五輪と先住民族』2020年
アイヌを初めて日本の先住民と認めた「アイヌ新法」 が昨2019年施行され、国立アイヌ民族博物館も今春(2020)完成するなど、東京五輪(2020年が延期され2021年に開催)を含め国はアイヌとの 共生を演出します。しかし、国連宣言が認める先住権は認められていません。本当の共生への道を探ります。
I アイヌ新法と日本政府
第1章 演出された民族共生
第2章 世界の先住民族とアイヌ
第3章 「共生の五輪」と先住権
II 先住権とアイヌ民族
第1章 アイヌの誇りを胸に
第2章 アイヌ先住権の本質
アイヌの権利とは何か :
新法・象徴空間・東京五輪と先住民族 / テッサ・モーリス=スズキ, 市川守弘 [著] ; 北大開示文書研究会編, かもがわ出版 ,
2020 |
||
先住民族の言語の権利 : 世界と日本 /
反差別国際運動(IMADR)編, 反差別国際運動(IMADR) , 2019 . - (IMADRブックレット, 18) |
||
原由利子「アイヌ・部落・在日コリアン・沖縄
の女性による調査提言活動 : 欠如する歴史性の考慮と政策」特集複合差別とジェンダー, 信山社 , 2016 . - (ジェ
ンダー法研究 / 浅倉むつ子責任編集, 第3号) |
||
アイヌの遺骨はコタンの土へ :
北大に対する遺骨返還請求と先住権 / 北大開示文書研究会編著, 緑風出版 , 2016 |
||
常本照樹「憲法はアイヌ民族について何を語っているか :
個人の尊重と先住民族」スターバックスでラテを飲みながら憲法を考える / 松井茂記編著、有斐閣 , 2016 |
||
アイヌ民族・先住民族教育の現在 /
日本社会教育学会年報編集委員会編、東洋館出版社 , 2014 . - (日本の社会教育 / 日本社会教育学会編, 第58集) |
||
津田仙好「先住民族アイヌの権利と政策の諸問題」東アジア
における市民社会の形成 : 人権・平和・共生 / 内藤光博編, 専修大学出版局 , 2013 . -
(専修大学社会科学研究所社会科学研究叢書, 15) |
||
アイヌモシリと平和 : 「北海道」を平和学する! /
越田清和編、法律文化社 , 2012 |
||
アイヌ民族の権利回復と持続可能な地域づくり :
オホーツク・紋別におけるESDの取組み2009-2011 / さっ
ぽろ自由学校「遊」編集, さっぽろ自由学校「遊」 , 2012 |
||
瀬川拓郎「アイヌの一万年 :
植民都市の景観に読む民族的世界の変容と断絶」;大塚和義「『夷酋列像』から読む道東アイヌの経済的ポテンシャル」;中村和之「骨嵬・苦兀・庫野 :
中国の文献に登場するアイヌの姿」;佐々木史郎「ヘジェ・フィヤカ・エゾ :
近世における日本と中国の北方民族に対する認識」;大西秀之「植民地支配とアイヌ民族のエスニシティ :
殖民都市に包摂される上川アイヌ社会の生活実践」『東
アジアの民族的世界 : 境界地域における多文化的状況と相互認識』 / 佐々木史郎, 加藤雄三編, 有志舎 , 2011 .
- (人間文化叢書, . ユーラシアと日本 : 交流と表象) |
||
アイヌ研究の現在と未来 / 北海道大学アイヌ・先住民研究センター編 ; 阿部ユポ [ほか著]、北海道大学出版会 , 2010 . - (北大アイヌ・先住民研究センター叢書, 1) |
||
先住民族アイヌの権利確立に向けて / 反差別国際運動日本委員会編、反差別国際運動日本委員会 , 2009 . - (現代世界と人権, 23) |
||
常本照樹「個人の尊重とアイヌ政策」第30号、平和文庫 / [札幌独立キリスト教会, 札幌福音的教育・平和研究会編]、札幌独立キリスト教会 , 2008 |
||
瀬川拓郎「アイヌ文化の成立と交易」;中村和之「アイヌの北方交易とアイヌ文化 : 銅雀台瓦硯の再発見をめぐって」;大西秀之「アイヌ社会における川筋集団の自律性」;『東アジア内海世界の交流史 : 周縁地域における社会制度の形成』 / 加藤雄三, 大西秀之, 佐々木史郎編、人文書院 , 2008 |
||
アイヌ民族の碑を訪ねて : 権利回復への道程をたどる / 杉山四郎著、[杉山四郎] , 2005 |
||
アイヌ民族の碑を訪ねて : 権利の回復をめざす / 杉山四郎著, [杉山四郎] , 2002 |
||
アイヌ民族とエスニシティの社会学 / 松本和良, 江川直子編, 学文社 , 2001 |
||
アイヌ民族の歴史と文化 : 教育指導の手引 / 田端宏, 桑原真人監修, 山川出版社 , 2000 |
||
中川裕「アイヌ語復興の現状について(述)」ことばへの権利 : 言語権とはなにか / 言語権研究会編, 三元社 , 1999 |
||
野村義一「アイヌ民族の歴史と未来」日本における差別と人権 / 部落解放研究所編、部落解放研究所 , 1995 |
||
中村睦男「アイヌと教育権」学校五日制と教育改革 / 日本教育法学会編、有斐閣 , 1994 . - (日本教育法学会年報, 第23号) |
||
明
神勲「《アイヌ=人間》の過去・現在・未来を考える意味」;高嶋幸男「狩猟・採集時代のアイヌ :
授業プラン」;畠山歌「アイヌ民族は何を着てきたか」;松本成美「アイヌ民族の言語と民族的権利 :
大学での授業実践」;先住少数民族と教育・文化 / 小山内洸 [ほか] 共著、三友社出版 , 1990 |
||
函館シンポジウム / 北海道・東北史研究会編、三省堂 , 1988 . - (北からの日本史 / 北海道・東北史研究会編, [第1集]) |
||
明日を創るアイヌ民族 / アイヌ民族の現在と未来を考える会編, 未来社 , 1988 |
●古いクレジット:「我が国(日本国政府)のアイヌならびに先住民に関する認識の現状」
国際的な状況(国連)
衆議院
資料解説(2007年11月):
【1】
以下のやりとりは、参議院員・紙智子が同院に提出した2007年11月9日づけの質問主意書(しつもんしゅいしょ:通常の日本語漢字表記で は同音語の「質問趣意書」と理解すべきものだが)と、同年11月20日の政府答弁書である。このやりとりから、現在の日本政府のアイヌならびに「先住民」(indigenous people)に対する公的見解をうかがい知ることができる。なお出典は、紙議員のウェブページ(http://www.kami- tomoko.jp/sitsumon/168/071109.htm 最終確認日 2009年5月29日)よりとった。このページの【原文】以前の文書 は、同議員の質問と政府の答弁を問答形式で理解するために、編集を行っている。
このやりとりで興味深いのは、日本政府は、2007年「先住民(先住民族)の権利に関する国連宣言」に賛成票を投じたが、同宣言には「先住 民(族)」の定義がないために、日本政府は「アイヌが先住民族であるかどうかは、権利宣言に後者の定義がないので、そのような判断はできない」という見解 をとっているからである。
権利宣言に先住民の定義がないための問題については、清水昭俊論文(『国立民族学博物館研究報告』32(3): 307-503, 2008)を参照のことと。1993年の草案には自称による決定権の条項があり、これが消失したのはなぜか?ということについて、清水論文はすばらしい謎 解きをしているからである。
【2】
その後2008(平成20)年6月6日には衆議院本会議において、その後参議院本会議においても、アイヌ民族を「先住民族」(→先住民)とすることを求める決議案が可決された。先住民がみずからの集団の独自性を これまで一環して主張してきており、[植民地主義者であろうが、なかろうが]アイヌ出身ではないアイヌ研究者も先住民としての独自性があることが常識であ り、戦前の日本においても「アイノ」を先住民であるという認識をおこなっているにもかかわらず、1945年の敗戦から60年以上にわたって、日本政府はア イヌ民族を先住民であるという見解を公式に容認してこなかった。
この決議が、同年7月にもともとアイヌ民族の土地であった北海道で開催されたG8サミット(環境サミット)に先立つものであったことも、そ のスピーチの内容とともに十分に銘記しておかねばならない。
***
【1】
【紙議員による質問:以下「質問」と表記】
<「先住民族の権利に関する国連宣言」採択を受けた政府対応に関する質問主意書>
「先住民族の権利に関する国連宣言」(以下「国連宣言」という。)は今年九月の国連総会において圧倒的多数で採択され、我が国も賛成した。先 住民族の権利問題は一九八〇年代から国連での議論が本格的に開始され、作業部会の設置、国連先住民の国際年など二十年以上の議論の積み重ねを経て宣言に結 実させたことは、世界七十数箇国にわたり三億七千万人といわれる先住民族の人権保障にとって、またそれを包摂する諸国民にとって極めて重要である。
我が国では、アイヌ民族への施策として「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」が一九九七年に制定 され、種々の文化振興策がとられているが、今回の国連宣言を受け、我が国でも国際水準に沿った対応が求められる。
そこで、以下質問する。
一 国連宣言採択と政府の対応について
1 国連宣言が採択された歴史的意義と我が国が賛成した理由及び国連宣言が各国政府、我が国政府に与える効果について、政府の見解を示された い。
【政府見解:書式における段下げと青色の文字表記で示す、以下同様】
「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「宣言」という。)について、我が国は、長 年にわたる議論を踏まえ、初めて国際連合(以下「国連」という。)が先住民族の権利に関して採択した宣言であるという点で重要な意義を有するものと考えて いる。我が国は、宣言は人権の保護に資するものと考え賛成票を投じたが、各国の政府に与える効果について一概にお答えすることは困難である。
【質問】
2 政府は賛成の態度を示すに当たり、先住民族をどのように認識して判断したのか明らかにされた い。
【政府見解】
「先住民族」については、現在のところ国際的に確立した定義がなく、宣言においても、「先住 民族」の定義についての記述はないことから、我が国として宣言にいう「先住民族」に該当する民族がどの民族を指すのかは明らかではないと認識している。
【質問】
二 アイヌ民族が先住民族であることについての政府の認識について
政府はアイヌ民族について、福田内閣総理大臣の衆議院本会議における答弁にみられるように、国連宣言に「先住民族」の定義に関する規定がない ことを理由として先住民族とは認めないとの態度をとり続けている。しかし、アイヌ民族の先住性については一九九六年の「ウタリ対策のあり方に関する有識者 懇談会報告書」が明確に言及し、かつ政府も認めていること、また一九九七年の二風谷ダム訴訟札幌地裁判決がアイヌ民族を先住民族と認定しているなど数々の 歴史的経過、あるいは国際機関の評価などに照らし、政府の姿勢は明らかに説得力を欠くものである。
1 日本が一九一一年に批准した「膃肭獸保護條約」では第四条で「印甸人、アイノ人、アリュート人 其ノ他ノ土人(other aborigines)」にオットセイ海上猟獲を認め、また第十三条では「土人(the natives)ノ生計ニ必要」な場合にオットセイ猟を認めていた。国立国会図書館「先住民族問題の現在」(調査と情報第二〇七号)が「先住民族 (Indigenous People)と呼ばれる人々は国や地域によってaboriginal people, native people, tribal peopleなどと呼ばれることがある」と示していることをみれば、この条約の規定は、当時の明治政府がアイヌ民族を他の例示された種族とともに aborigines, nativesなど今日の概念でいう「先住民族」と見なしていたことを示すものではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
【政府見解】
御指摘の条約に「アイノ人」、「土人」といった記載があることは承知しているが、明治政府 がアイヌの人々は「先住民族」であると考えていたのかに関する資料は確認されておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。
【質問】
2 日本が一九三八年に批准したILO五十号「土民労働者募集條約」(特殊ノ労働者募集制度ノ規律ニ関スル條約)では、「土民労働者」 (indigenous workers)として「本土ノ非自立土民ニ属シ又ハ之ニ類似スル労働者」(第二条ロ)も包含していた。当時「北海道旧土人保護法」の下にあったアイヌ民 族はこの規定に該当するのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
一方、政府がこの条約について一九五三年にILOに報告した文書では、「第二次世界大戦で日本は従属させた領土をすべて失ったため、その領土 の先住民に属すか、或いは同化した労働者も、国内で従属する先住民の労働者ももはや存在しない」とする趣旨の回答をしている。アイヌ民族はこの当時も「北 海道旧土人保護法」の対象であり、かつ「旧土人」の英訳は「Indigenous Persons」であったが、政府が「本土の非自立土民労働者」は存在しないと見なした根拠は何か、明らかにされたい。
【政府見解】
アイヌの人々が御指摘の条約の第二条(ロ)にいう「本土ノ非自立土民ニ属シ又ハ之ニ類似ス ル労働者」に該当すると判断されていたのかについては、同条約の締結当時の経緯が明らかではなく、お尋ねにお答えすることは困難である。また、御指摘の報 告書がいかなる経緯によって作成されたのかについては、当時の報告書作成過程に関する資料が確認されておらず、お答えすることは困難である。
【質問】
3 政府は一九五六年、ILOの「独立国における先住民(indigenous populations)」についての質問に対し、「アイヌ民族は完全に日本国民に同化しており、言語、習慣、文化、生活状態の特殊性は存在しなくなって いる。アイヌ民族は文書8(1)にいう先住民族ではない」等の理由を挙げ「アイヌ民族に関する限り先住民の保護や統合のための国際的文書は必要ない」と表 明している。具体的に何を根拠としてこうした回答となったのか明らかにされたい。
また、今日では、ILOも過去の同化政策を明確に否定し、他の国連機関とともに先住民族の人権伸長に注意を払っている。「アイヌ文化の振興並 びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」採決の際の全会一致の衆参委員会附帯決議、アイヌ民族の言語、習慣、文化、生活状態の歴史 的、社会的背景等からみて先住民族と認めるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
【政府見解】
御指摘の報告書がいかなる経緯によって作成されたのかについては、当時の報告書作成過程に 関する資料が確認されておらず、お答えすることは困難であるが、政府としてはアイヌの人々が、アイヌ語や独自の風俗習慣を始めとする固有の文化を発展させ てきた民族であり、いわゆる和人との関係において、日本列島北部周辺、取り分け北海道に先住していたことについては、歴史的事実として認識している。
なお、「先住民族」の定義をめぐる現状が一の2についてで述べたような状況にあることか ら、我が国としてアイヌの人々が「先住民族」に該当するかについて、お答えすることは困難である。
【質問】
4 北海道ウタリ協会の野村義一理事長(当時)が一九九二年の国連総会「世界の先住民の国際年」で記念演説を行っている事実は、国際社会がアイ ヌ民族を先住民として認めている証左と考えられるが、政府の認識を示されたい。
【政府見解】
国連においては千九百九十二年当時だけでなく現在においても「先住民族」の確立した定義は なく、国連においていかなる民族が「先住民族」であるかについて決定が行われたことがあるとは承知していない。
【質問】
5 我が国が批准している人種差別撤廃条約、市民的・政治的権利に関する条約他の実施状況に関する日本政府報告書に対し、関係する国連諸機関か ら、アイヌ民族の先住性若しくは先住民族であることを認め、対策を求める勧告が数度にわたり出されているが、この事実と勧告内容について、政府の認識を示 されたい。
【政府見解】
国連の国際人権条約に関連する委員会が我が国の政府報告に対して提示した最終見解におい て、アイヌの人々への言及があることは承知している。個人資格の専門家によるこうした委員会からの見解はいずれも法的拘束力を有するものではないが、その 内容等を十分に検討した上で、政府として適切に対処していきたいと考えている。
【質問】
6 前記の歴史的経緯を踏まえ、政府は先住民族をどのようにとらえているのか明らかにされたい。
【政府見解】
政府の「先住民族」に対する認識は一の2についてでお答えしたとおりである。
→[再掲]「先住民族」については、現在のところ国際的に確立した定義がなく、宣言において も、「先住民族」の定義についての記述はないことから、我が国として宣言にいう「先住民族」に該当する民族がどの民族を指すのかは明らかではないと認識し ている。
【質問】
三 国連宣言に反対した四箇国の国内法について
今回の宣言には米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの四箇国が反対したが、これらの国々では自国内に多くの先住民族を擁し、それ ぞれの国内で既に先住民族の財産権の保障、生活保障を含む立法措置がなされている。例を挙げるならば、カナダでは先住民の権利は憲法上の規定であり、米国 ではインディアン人権法により自治権限等が認められていること、ニュージーランドではマオリ語は公用語でありワイタンギ条約、土地法などにより土地政策が 積み上げられていること、オーストラリアではアボリジニ土地法があり、先住権保護の方向で検討が進んでいることなどである。政府はこうした他国の現状を承 知しているか明らかにされたい。また宣言採択を受け、今後、各国の先住民族に関する法制度を更に研究する必要があるのではないかと考えるが、政府の見解を 示されたい。
【政府見解=答弁】
御指摘の他国の現状については承知している。政府としては、宣言の採択を受けて、今後各国 の法制度を含め、宣言に関する諸外国の動向の把握に努めていく考えである。
【質問】
四 アイヌ民族の現状について
我が国のアイヌ民族に関する立法は「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」のみであり、一九九七年 当時、制定の意義は大きかったが、一方、国連での先住民族に関する議論の動向にかんがみアイヌ民族を明確に先住民族とは認めなかったこと、また「生活保 障」などの各点で限界があったことも事実であり、立法当初から不十分さが指摘されてきた。北海道が二〇〇六年に実施した「ウタリ生活実態調査」において、 アイヌ民族の生活保護率は三八・三パーミルと全国平均より高い全道(二四・六パーミル)と比較しても一・五倍の高率であること、大学進学率は全道三八・五 パーセントに対しアイヌ民族は一七・四パーセントと半分に満たないなど依然として厳しい状況が明らかにされている。また一九七二年の初めての全道調査で、 アイヌ民族の高校進学率は四一・六パーセントと全道七八・二パーセントに比べ著しく低位だったがこの人々は現在五十歳代を迎えている。政府はこうした現状 についてどのような認識を持っているか。また現在の施策で十分と考えるかそれぞれ明らかにされたい。
および
五 アイヌ民族の位置付け等を審議する機関の設置について
北海道ウタリ協会は、政府に対し国連宣言にも盛り込まれている「国内審議機関」設置を求めており、北海道議会も十月五日、全会一致で「『先住 民族の権利に関する国際連合宣言』に関する意見書」を採択し、アイヌ民族の位置付けや権利を審議する機関を設置するよう要望している。我が国における先住 民族の概念規定を始め、宣言に盛り込まれた数々の権利を我が国にどのようにいかし実現するのかを審議する審議会の設置は政府として最低限の責務である。早 急に政府内に機関を設置し、先住民族の問題を抜本的に議論し、新たな対策に向けた対応をとるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
【政府見解】
アイヌの人々の生活水準は、北海道が実施してきた「北海道ウタリ生活実態調査」によれば、 着実に向上しつつあるものの、なお一般道民との格差は是正されたとはいえない状況にあると認識しており、政府は、北海道が進めている「アイヌの人たちの生 活向上に関する推進方策」が円滑に推進されるために必要な協力を行うとともに、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する 法律(平成九年法律第五十二号)に基づき、国土交通省及び文部科学省においてアイヌ文化振興等に関する施策を推進しているところであり、政府としては、こ のような施策への協力又は施策の推進を着実に実施していくことが肝要と考えている。
また、政府の「先住民族」に対する認識は一の2についてでお答えしたとおりである。→[再 掲]「先住民族」については、現在のところ国際的に確立した定義がなく、宣言においても、「先住民族」の定義についての記述はないことから、我が国として 宣言にいう「先住民族」に該当する民族がどの民族を指すのかは明らかではないと認識している。
こうしたことから、お尋ねの「機関」を設置することは考えていない。
【2】
第169回国会・衆議院本会議・第37号 平成20年6月6日(金曜日) == アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案(笹川堯君外十二名提出)
国民読書年に関する決議案(笹川堯君外十二名提出)
○議長(河野洋平君) アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案、国民読書年に関する決議案、右両案を一括して議題といたします。
提出者の趣旨弁明を許します。笹川堯君。
—————————————
アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案
国民読書年に関する決議案
〔本号末尾に掲載〕
—————————————
〔笹川堯君登壇〕
○笹川堯君 私は、ただいま河野議長より御指名をいただき、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合、国 民新党・そうぞう・無所属の会を代表いたしまして、ただいま議題となりましたアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案及び国民読書年に関する決議案 につきまして、それぞれ御説明を申し上げます。
まず、アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案につき御説明申し上げます。
案文の朗読に先立ち、ここに在籍するすべての衆議院議員のお許しを得て、議政壇上より、長い歴史の中で、あらゆる困難と辛苦に耐えながら生活 されてまいりましたアイヌ民族の皆さんに対し、心から感謝と御同情を申し上げます。(拍手)
これまで、一国一民族一言語という誤った認識を多くの国民が持っておりましたが、この認識が、本日の決議により、歴史的英断をもって改められ ますことは大変意義深いことであります。
私は、本日、礼服を着用し、謹んで決議案を朗読させていただきます。案文は、議院の先例に倣い、である調でありますことを心から深くおわび申 し上げます。
それでは、案文を朗読いたします。
アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案
昨年九月、国連において「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が、我が国も賛成する中で採択された。これはアイヌ民族の長年の悲願を映し たものであり、同時に、その趣旨を体して具体的な行動をとることが、国連人権条約監視機関から我が国に求められている。
我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事 実を、たちは厳粛に受け止めなければならない。
全ての先住民族が、名誉と尊厳を保持し、その文化と誇りを次世代に継承していくことは、国際社会の潮流であり、また、こうした国際的な価値 観を共有することは、我が国が二十一世紀の国際社会をリードしていくためにも不可欠である。
特に、本年七月に、環境サミットとも言われるG8サミットが、自然との共生を根幹とするアイヌ民族先住の地、北海道で開催されることは、誠 に意義深い。
政府は、これを機に次の施策を早急に講じるべきである。
一 政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を踏まえ、アイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教 や文化の独自性を有する先住民族として認めること。
二 政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されたことを機に、同宣言における関連条項を参照しつつ、高いレベルで有識者の意 見を聞きながら、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取り組むこと。
右決議する。
(以下略) 出典:http: //www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000116920080606037.htm?OpenDocument
==== 鈴木宗男衆議院議員による平成二十(2008)年六月六日提出質問書と、それに対する政府見解
平成二十年六月六日提出 質問第四八六号
アイヌ民族を先住民族とすることを政府に求める国会決議を受けての政府の取り組み等に関する質問主意書
提出者 鈴木宗男
アイヌ民族を先住民族とすることを政府に求める国会決議を受けての政府の取り組み等に関する質問主意書
「政府答弁書」(内閣衆質一六九第三七三号)を踏まえ、以下質問する。
一 本年六月六日の衆参両議院の本会議において、アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議(以下、「国会決議」という。)が議決された が、「国会決議」の内容を政府は承知しているか。 二 「国会決議」に対する政府の評価如何。
三 これまでの答弁書(例えば内閣衆質一六三第七号、五七号、内閣衆質一六六第四〇号、内閣衆質一六八第二四号、五三号、一〇二号、内閣衆質一 六九第六三号、一〇六号、一三八号、一八二号、三七三号等)で政府は、「先住民族」の定義は国際的に確立しておらず、アイヌ民族が我が国の先住民族である かどうかについても判断を下せない旨の答弁をしてきている。しかしその一方で、本年六月六日の衆参両議院の本会議において町村信孝内閣官房長官は「政府と しては独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族との認識のもと、国連宣言を参照しつつ、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立 に取り組む」との発言をしているが、右は「国会決議」を受けて、アイヌ民族が我が国の先住民族であると政府が認めたものと受け止めて良いか。確認を求め る。
四 三で、政府として、アイヌ民族が我が国の先住民族であると認めたのならば、三で挙げたこれまでの答弁書を改めるべきではないか。
五 「国会決議」を受け、アイヌ民族を先住民族として認め、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の展開を図る上での福田康夫内閣 総理大臣の決意を披瀝されたい。
右質問する。
出典:http: //www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a169486.htm
===
それに対する政府答弁
平成二十年六月十七日受領 答弁第四八六号
内閣衆質一六九第四八六号 平成二十年六月十七日 内閣総理大臣 福田康夫
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員鈴木宗男君提出アイヌ民族を先住民族とすることを政府に求める国会決議を受けての政府の取り組み等に関する質問に対し、別紙答弁書を 送付する。
衆議院議員鈴木宗男君提出アイヌ民族を先住民族とすることを政府に求める国会決議を受けての政府の取り組み等に関する質問に対する答弁書
一、二及び五について
政府としては、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」の内容は承知しており、国会決議で述べられているように「我が国が近代化する 過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実」を厳粛に受け止めなければなら ないと考えており、また、アイヌの人々は「日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族」であるとの認識 の下に、これまでのアイヌ施策を更に推進し、総合的な施策の確立に取り組んでまいりたい。
三及び四について
御指摘のこれまでの答弁書で述べたように、現在のところ「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「宣言」という。)において「先住民 族」の定義についての記述がなく、また、「先住民族」に関する国際的に確立した定義がないこともあり、アイヌの人々が宣言にいう「先住民族」であるか結論 を下せる状況にはないが、一、二及び五についてで述べたように、アイヌの人々は「日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独 自性を有する先住民族」であると認識している。
出典:http: //www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b169486.htm?OpenDocument
__________________________
グローバル共生社会論2009 にもどる
__________________________
【原文】(※原文は縦書き)
質問主意書
質問第五三号
「先住民族の権利に関する国連宣言」採択を受けた政府対応に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十九年十一月九日
紙 智 子
参議院議長 江 田 五 月 殿
<「先住民族の権利に関する国連宣言」採択を受けた政府対応に関する質問主意書>
「先住民族の権利に関する国連宣言」(以下「国連宣言」という。)は今年九月の国連総会において圧倒的多数で採択され、我が国も賛成した。先 住民族の権利問題は一九八〇年代から国連での議論が本格的に開始され、作業部会の設置、国連先住民の国際年など二十年以上の議論の積み重ねを経て宣言に結 実させたことは、世界七十数箇国にわたり三億七千万人といわれる先住民族の人権保障にとって、またそれを包摂する諸国民にとって極めて重要である。
我が国では、アイヌ民族への施策として「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」が一九九七年に制定 され、種々の文化振興策がとられているが、今回の国連宣言を受け、我が国でも国際水準に沿った対応が求められる。
そこで、以下質問する。
一 国連宣言採択と政府の対応について
1 国連宣言が採択された歴史的意義と我が国が賛成した理由及び国連宣言が各国政府、我が国政府に与える効果について、政府の見解を示された い。
2 政府は賛成の態度を示すに当たり、先住民族をどのように認識して判断したのか明らかにされたい。
二 アイヌ民族が先住民族であることについての政府の認識について
政府はアイヌ民族について、福田内閣総理大臣の衆議院本会議における答弁にみられるように、国連宣言に「先住民族」の定義に関する規定がない ことを理由として先住民族とは認めないとの態度をとり続けている。しかし、アイヌ民族の先住性については一九九六年の「ウタリ対策のあり方に関する有識者 懇談会報告書」が明確に言及し、かつ政府も認めていること、また一九九七年の二風谷ダム訴訟札幌地裁判決がアイヌ民族を先住民族と認定しているなど数々の 歴史的経過、あるいは国際機関の評価などに照らし、政府の姿勢は明らかに説得力を欠くものである。
1 日本が一九一一年に批准した「膃肭獸保護條約」では第四条で「印甸人、アイノ人、アリュート人 其ノ他ノ土人(other aborigines)」にオットセイ海上猟獲を認め、また第十三条では「土人(the natives)ノ生計ニ必要」な場合にオットセイ猟を認めていた。国立国会図書館「先住民族問題の現在」(調査と情報第二〇七号)が「先住民族 (Indigenous People)と呼ばれる人々は国や地域によってaboriginal people, native people, tribal peopleなどと呼ばれることがある」と示していることをみれば、この条約の規定は、当時の明治政府がアイヌ民族を他の例示された種族とともに aborigines, nativesなど今日の概念でいう「先住民族」と見なしていたことを示すものではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 日本が一九三八年に批准したILO五十号「土民労働者募集條約」(特殊ノ労働者募集制度ノ規律ニ関スル條約)では、「土民労働者」 (indigenous workers)として「本土ノ非自立土民ニ属シ又ハ之ニ類似スル労働者」(第二条ロ)も包含していた。当時「北海道旧土人保護法」の下にあったアイヌ民 族はこの規定に該当するのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
一方、政府がこの条約について一九五三年にILOに報告した文書では、「第二次世界大戦で日本は従属させた領土をすべて失ったため、その領土 の先住民に属すか、或いは同化した労働者も、国内で従属する先住民の労働者ももはや存在しない」とする趣旨の回答をしている。アイヌ民族はこの当時も「北 海道旧土人保護法」の対象であり、かつ「旧土人」の英訳は「Indigenous Persons」であったが、政府が「本土の非自立土民労働者」は存在しないと見なした根拠は何か、明らかにされたい。
3 政府は一九五六年、ILOの「独立国における先住民(indigenous populations)」についての質問に対し、「アイヌ民族は完全に日本国民に同化しており、言語、習慣、文化、生活状態の特殊性は存在しなくなって いる。アイヌ民族は文書8(1)にいう先住民族ではない」等の理由を挙げ「アイヌ民族に関する限り先住民の保護や統合のための国際的文書は必要ない」と表 明している。具体的に何を根拠としてこうした回答となったのか明らかにされたい。
また、今日では、ILOも過去の同化政策を明確に否定し、他の国連機関とともに先住民族の人権伸長に注意を払っている。「アイヌ文化の振興並 びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」採決の際の全会一致の衆参委員会附帯決議、アイヌ民族の言語、習慣、文化、生活状態の歴史 的、社会的背景等からみて先住民族と認めるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
4 北海道ウタリ協会の野村義一理事長(当時)が一九九二年の国連総会「世界の先住民の国際年」で記念演説を行っている事実は、国際社会がアイ ヌ民族を先住民として認めている証左と考えられるが、政府の認識を示されたい。
5 我が国が批准している人種差別撤廃条約、市民的・政治的権利に関する条約他の実施状況に関する日本政府報告書に対し、関係する国連諸機関か ら、アイヌ民族の先住性若しくは先住民族であることを認め、対策を求める勧告が数度にわたり出されているが、この事実と勧告内容について、政府の認識を示 されたい。 6 前記の歴史的経緯を踏まえ、政府は先住民族をどのようにとらえているのか明らかにされたい。
三 国連宣言に反対した四箇国の国内法について
今回の宣言には米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの四箇国が反対したが、これらの国々では自国内に多くの先住民族を擁し、それ ぞれの国内で既に先住民族の財産権の保障、生活保障を含む立法措置がなされている。例を挙げるならば、カナダでは先住民の権利は憲法上の規定であり、米国 ではインディアン人権法により自治権限等が認められていること、ニュージーランドではマオリ語は公用語でありワイタンギ条約、土地法などにより土地政策が 積み上げられていること、オーストラリアではアボリジニ土地法があり、先住権保護の方向で検討が進んでいることなどである。政府はこうした他国の現状を承 知しているか明らかにされたい。また宣言採択を受け、今後、各国の先住民族に関する法制度を更に研究する必要があるのではないかと考えるが、政府の見解を 示されたい。
四 アイヌ民族の現状について
我が国のアイヌ民族に関する立法は「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」のみであり、一九九七年 当時、制定の意義は大きかったが、一方、国連での先住民族に関する議論の動向にかんがみアイヌ民族を明確に先住民族とは認めなかったこと、また「生活保 障」などの各点で限界があったことも事実であり、立法当初から不十分さが指摘されてきた。北海道が二〇〇六年に実施した「ウタリ生活実態調査」において、 アイヌ民族の生活保護率は三八・三パーミルと全国平均より高い全道(二四・六パーミル)と比較しても一・五倍の高率であること、大学進学率は全道三八・五 パーセントに対しアイヌ民族は一七・四パーセントと半分に満たないなど依然として厳しい状況が明らかにされている。また一九七二年の初めての全道調査で、 アイヌ民族の高校進学率は四一・六パーセントと全道七八・二パーセントに比べ著しく低位だったがこの人々は現在五十歳代を迎えている。政府はこうした現状 についてどのような認識を持っているか。また現在の施策で十分と考えるかそれぞれ明らかにされたい。
五 アイヌ民族の位置付け等を審議する機関の設置について
北海道ウタリ協会は、政府に対し国連宣言にも盛り込まれている「国内審議機関」設置を求めており、北海道議会も十月五日、全会一致で「『先住 民族の権利に関する国際連合宣言』に関する意見書」を採択し、アイヌ民族の位置付けや権利を審議する機関を設置するよう要望している。我が国における先住 民族の概念規定を始め、宣言に盛り込まれた数々の権利を我が国にどのようにいかし実現するのかを審議する審議会の設置は政府として最低限の責務である。早 急に政府内に機関を設置し、先住民族の問題を抜本的に議論し、新たな対策に向けた対応をとるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
__________________________
答弁書
答弁書第五三号
内閣参質一六八第五三号 平成十九年十一月二十日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 町 村 信 孝
参議院議長 江 田 五 月 殿
参議院議員紙智子君提出「先住民族の権利に関する国連宣言」採択を受けた政府対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
<参議院議員紙智子君提出「先住民族の権利に関する国連宣言」採択を受けた政府対応に関する質問に対する答弁書>
一の1について
「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「宣言」という。)について、我が国は、長年にわたる議論を踏まえ、初めて国際連合(以下「国 連」という。)が先住民族の権利に関して採択した宣言であるという点で重要な意義を有するものと考えている。我が国は、宣言は人権の保護に資するものと考 え賛成票を投じたが、各国の政府に与える効果について一概にお答えすることは困難である。
一の2について
「先住民族」については、現在のところ国際的に確立した定義がなく、宣言においても、「先住民族」の定義についての記述はないことから、我が 国として宣言にいう「先住民族」に該当する民族がどの民族を指すのかは明らかではないと認識している。
二の1について
御指摘の条約に「アイノ人」、「土人」といった記載があることは承知しているが、明治政府がアイヌの人々は「先住民族」であると考えていたの かに関する資料は確認されておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。
二の2について
アイヌの人々が御指摘の条約の第二条(ロ)にいう「本土ノ非自立土民ニ属シ又ハ之ニ類似スル労働者」に該当すると判断されていたのかについて は、同条約の締結当時の経緯が明らかではなく、お尋ねにお答えすることは困難である。また、御指摘の報告書がいかなる経緯によって作成されたのかについて は、当時の報告書作成過程に関する資料が確認されておらず、お答えすることは困難である。
二の3について
御指摘の報告書がいかなる経緯によって作成されたのかについては、当時の報告書作成過程に関する資料が確認されておらず、お答えすることは困 難であるが、政府としてはアイヌの人々が、アイヌ語や独自の風俗習慣を始めとする固有の文化を発展させてきた民族であり、いわゆる和人との関係において、 日本列島北部周辺、取り分け北海道に先住していたことについては、歴史的事実として認識している。
なお、「先住民族」の定義をめぐる現状が一の2についてで述べたような状況にあることから、我が国としてアイヌの人々が「先住民族」に該当す るかについて、お答えすることは困難である。
二の4について
国連においては千九百九十二年当時だけでなく現在においても「先住民族」の確立した定義はなく、国連においていかなる民族が「先住民族」であ るかについて決定が行われたことがあるとは承知していない。
二の5について
国連の国際人権条約に関連する委員会が我が国の政府報告に対して提示した最終見解において、アイヌの人々への言及があることは承知している。 個人資格の専門家によるこうした委員会からの見解はいずれも法的拘束力を有するものではないが、その内容等を十分に検討した上で、政府として適切に対処し ていきたいと考えている。
二の6について
政府の「先住民族」に対する認識は一の2についてでお答えしたとおりである。
三について
御指摘の他国の現状については承知している。政府としては、宣言の採択を受けて、今後各国の法制度を含め、宣言に関する諸外国の動向の把握に 努めていく考えである。
四及び五について
アイヌの人々の生活水準は、北海道が実施してきた「北海道ウタリ生活実態調査」によれば、着実に向上しつつあるものの、なお一般道民との格差 は是正されたとはいえない状況にあると認識しており、政府は、北海道が進めている「アイヌの人たちの生活向上に関する推進方策」が円滑に推進されるために 必要な協力を行うとともに、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(平成九年法律第五十二号)に基づき、国土交通 省及び文部科学省においてアイヌ文化振興等に関する施策を推進しているところであり、政府としては、このような施策への協力又は施策の推進を着実に実施し ていくことが肝要と考えている。
また、政府の「先住民族」に対する認識は一の2についてでお答えしたとおりである。
こうしたことから、お尋ねの「機関」を設置することは考えていない。
出典:http://www.kami-tomoko.jp/sitsumon/168/071109.htm
____________________________
◎アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案(第一六九回国会、決議第一号)——衆議院(2008年)
昨年[2007年——引用者]九月、国連において「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が、我が国も賛成する中で採択された。これはア
イヌ民族の長年の悲願を映したものであり、同時に、その趣旨を体して具体的な行動をとることが、国連人権条約監視機関から我が国に求められている。
我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たち
は厳粛に受け止めなければならない。
全ての先住民族が、名誉と尊厳を保持し、その文化と誇りを次世代に継承していくことは、国際社会の潮流であり、また、こうした国際的な価値観を共有する
ことは、我が国が二十一世紀の国際社会をリードしていくためにも不可欠である。
特に、本年七月に、環境サミットとも言われるG8サミットが、自然との共生を根幹とするアイヌ民族先住の地、北海道で開催されることは、誠に意義深い。
政府は、これを機に次の施策を早急に講じるべきである。一 政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を踏まえ、アイヌの人々を日本列島北部周
辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族として認めること。二 政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が
採択されたことを機に、同宣言における関連条項を参照しつつ、高いレベルで有識者の意見を聞きながら、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策
の確立に取り組むこと。
右決議する。
●アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(平成九年法律第五十二号)
ACT FOR THE PROMOTION OF AINO CULTURES AND OTHERWISE, promulgated
on May 14, 1997, enforced on June 1, 1997, (1997 act No.52)
(目的)
第一条 この法律は、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況にかんがみ、アイ
ヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)を図るための施策を推進することによ
り、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「アイヌ文化」とは、アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産及びこれらから発展した文
化的所産をいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国は、アイヌ文化を継承する者の育成、アイヌの伝統等に関する広報活動の充実、アイヌ文化の振興等に資する調査研究の推進その他アイヌ文化の振興
等を図るための施策を推進するよう努めるとともに、地方公共団体が実施するアイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するために必要な助言その他の措置を
講ずるよう努めなければならない。
2 地方公共団体は、当該区域の社会的条件に応じ、アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に努めなければならない。
(施策における配慮)
第四条 国及び地方公共団体は、アイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては、アイヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りを尊重するよ
う配慮するものとする。
(基本方針)
第五条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次の事項について定めるものとする。
一 アイヌ文化の振興等に関する基本的な事項
二 アイヌ文化の振興を図るための施策に関する事項
三 アイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する事項
四 アイヌ文化の振興等に資する調査研究に関する事項
五 アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項
3 国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、次条第一項
に規定する関係都道府県の意見を聴かなければならない。
4 国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、次条第一項に規定する関係都道府県
に送付しなければならない。
(基本計画)
第六条 その区域内の社会的条件に照らしてアイヌ文化の振興等を図るための施策を総合的に実施することが相当であると認められる政令で定める都道府県(以
下「関係都道府県」という。)は、基本方針に即して、関係都道府県におけるアイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本計画(以下「基本計画」とい
う。)を定めるものとする。
2 基本計画においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 アイヌ文化の振興等に関する基本的な方針
二 アイヌ文化の振興を図るための施策の実施内容に関する事項
三 アイヌの伝統等に関する住民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策の実施内容に関する事項
四 その他アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項
3 関係都道府県は、基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを国土交通大臣及び文部科学大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
4 国土交通大臣及び文部科学大臣は、基本計画の作成及び円滑な実施の促進のため、関係都道府県に対し必要な助言、勧告及び情報の提供を行うよう努めなけ
ればならない。
(指定等)
第七条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行
うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。
2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称、住所及び事務所の所在
地を公示しなければならない。
3 指定法人は、その名称、住所又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣及び文部科学大臣に届け出なければならな
い。
4 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。
(業務)
第八条 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 アイヌ文化を継承する者の育成その他のアイヌ文化の振興に関する業務を行うこと。
二 アイヌの伝統等に関する広報活動その他の普及啓発を行うこと。
三 アイヌ文化の振興等に資する調査研究を行うこと。
四 アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する普及啓発又はアイヌ文化の振興等に資する調査研究を行う者に対して、助言、助成その他の援助を行うこと。
五 前各号に掲げるもののほか、アイヌ文化の振興等を図るために必要な業務を行うこと。
(事業計画等)
第九条 指定法人は、毎事業年度、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、国土交通大臣及び文部科学大臣に
提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の事業計画書は、基本方針の内容に即して定めなければならない。
3 指定法人は、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書及び収支決算書を作成し、国土交通大臣及び文部科学大臣
に提出しなければならない。
(報告の徴収及び立入検査)
第十条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、指定法人の
事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(改善命令)
第十一条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人の第八条に規定する業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、指定法人に対し、その改善に必
要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
(指定の取消し等)
第十二条 国土交通大臣及び文部科学大臣は、指定法人が前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。
2 国土交通大臣及び文部科学大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
(罰則)
第十三条 第十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定に
よる質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して同
項の刑を科する。
附 則 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(北海道旧土人保護法等の廃止)
第二条 次に掲げる法律は、廃止する。
一 北海道旧土人保護法(明治三十二年法律第二十七号)
二 旭川市旧土人保護地処分法(昭和九年法律第九号)
(北海道旧土人保護法の廃止に伴う経過措置)
第三条 北海道知事は、この法律の施行の際現に前条の規定による廃止前の北海道旧土人保護法(次項において「旧保護法」という。)第十条第一項の規定によ
り管理する北海道旧土人共有財産(以下「共有財産」という。)が、次項から第四項までの規定の定めるところにより共有者に返還され、又は第五項の規定によ
り指定法人若しくは北海道に帰属するまでの間、これを管理するものとする。
2 北海道知事は、共有財産を共有者に返還するため、旧保護法第十条第三項の規定により指定された共有財産ごとに、厚生労働省令で定める事項を官報で公告
しなければならない。
3 共有財産の共有者は、前項の規定による公告の日から起算して一年以内に、北海道知事に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該共有財産の返還を
請求することができる。
4 北海道知事は、前項に規定する期間の満了後でなければ、共有財産をその共有者に対し、返還してはならない。ただし、当該期間の満了前であっても、当該
共有財産の共有者のすべてが同項の規定による請求をした場合には、この限りでない。
5 第三項に規定する期間内に共有財産の共有者が同項の規定による請求をしなかったときは、当該共有財産は、指定法人(同項に規定する期間が満了した時
に、第七条第一項の規定による指定がされていない場合にあっては、北海道)に帰属する。
6 前項の規定により共有財産が指定法人に帰属したときは、その法人は、当該帰属した財産をアイヌ文化の振興等のための業務に要する費用に充てるものとす
る。
附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第九百九十五条(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律附則の改正規定に係る部分に限る。)、第千三百五条、第千
三百六条、第千三百二十四条第二項、第千三百二十六条第二項及び第千三百四十四条の規定 公布の日
附 則 (平成一八年六月二日法律第五〇号) 抄
この法律は、一般社団・財団法人法の施行の日から施行する。
附 則 (平成二三年六月二四日法律第七四号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
++++
ACT FOR THE PROMOTION OF AINO
CULTURES AND OTHERWISE promulgated on May 14, 1997 enforced on June 1, 1997 (1997 act No.52) As of May 10, 2015 § 1.(Aim) This Act, taking into consideration the situation of Aino heritage which is a source of pride to the Ainu, is aimed at the realization of society where such folk pride is held in high regard as well as the development of our country’s manifold civilization through the advancement of policies for the diffusion of knowledge of the said heritage among the people and the promotion of their cultures that are a part thereof(in this Act, called “the promotion of Aino cultures and otherwise”). § 2.(Definition) In this Act, “Aino cultures” mean— (a) the Aino language; and (b) music, dances, handicrafts and other cultural products handed down from generation to generation among the Ainu(including such ones as derived from the above). § 3.(Responsibilities of the State and local public entities) (1) The State shall endeavor to— (a) advance policies for the promotion of Aino cultures and otherwise, such as— (i) the upbringing of successors to Aino cultures, (ii) the enrichment of publicity activities for Aino heritage, and (iii) the acceleration of inquiries useful for the said promotion; (b) give advice to local public entities and take other measures necessary for them to advance their policies for the said promotion. (2) Any interested local public entity shall work to implement policies for the promotion of Aino cultures and otherwise according to social conditions within its limits. § 4.(Care to policies) The State and any interested local public entity must be careful to think much of the Ainu’s free will and folk pride on the occasion of implementing policies for the promotion of Aino cultures and otherwise. § 5.(Keynotes) (1) The competent Ministers” must establish the keynotes of policies for the promotion of Aino cultures and otherwise(hereinafter simply called “keynotes”). (2) The keynotes must contain— (a) fundamental matters concerning the promotion of Aino cultures and otherwise; (b) an outline of policies for the diffusion of knowledge of Aino heritage among the people; (c) a summary of policies for the promotion of Aino cultures; (d) items concerning inquiries useful for the promotion of Aino cultures and otherwise; and (e) important matters to be considered on the occasion of implementing policies for the promotion of Aino cultures and otherwise. (3) The competent Ministers who will establish keynotes must in advance— (a) take counsel with the chief of any interested administrative organ; and (b) seek the opinion of any prefecture under section 6.(1). (4) The competent Ministers that have established keynotes must without delay— (a) publish the said keynotes; and (b) send the said keynotes to any prefecture under section 6.(1). (5) Subsections (3) and (4) shall apply correspondingly to the case where an alteration is or has been made in the keynotes. (6) In this Act, “the competent Ministers” mean— (a) the Minister of Land and Traffic; and (b) the Minister of Art and Science. § 6.(Master plan) (1) A master plan shall be mapped out by any such prefecture as will be laid down in a cabinet order(hereinafter called an “interested prefecture”) comprehensively to implement its policies for the promotion of Aino cultures and otherwise in accord with social conditions within its limits in pursuance of the keynotes. The Order to Laid down Prefectures on the ground of Section 6.(1) of the Act for the Promotion of Aino Cultures and Otherwise Any “prefecture” under subsection (1) of section 6. of the Act for the Promotion of Aino Cultures and Otherwise that is a delegated matter to this order on the strength of the said subsection shall be Hokkaidō. (2) Such a master plan as prescribed in subsection (1)(hereinafter called a “master plan”) shall contain— (a) basic lines of the promotion of Aino cultures and otherwise; (b) matters concerning the implementation of— (i) policies for the diffusion of knowledge of Aino heritage from the people, and (ii) policies for the promotion of Aino cultures; and (c) other important matters to be considered on the occasion of implementing policies for the promotion of Aino cultures and otherwise. (3) Any interested prefecture that has mapped out or revised its master plan must without delay submit to the competent Ministers and publish it. (4) The competent Ministers must make efforts to give any interested prefecture advice, recommendations and information necessary to facilitate the formation and smooth enforcement of a master plan. § 7.(Designation and others) (1) The competent Ministers may upon application make designation of only a general body corporate or foundation whose purpose is the promotion of Aino cultures and otherwise all over the country as what has the ability to conduct such affairs as specified in section 8.(a) to (e) properly and surely. (2) The competent Ministers who have made such designation as provided by subsection (1)(in section 12., simply called “designation”) must announce the following matters publicly— (a) the appellation of a body corporate or foundation that is the object of the said designation (hereinafter called “the designated legal person”); and (b) the address of the principal and any other office of such a body corporate or foundation. (3) The designated legal person that will alter its appellation or any address of its offices must in advance make a notification to that effect to the competent Ministers. (4) Where there has been such a notification as provided by subsection (3), the competent Ministers must make a public announcement of the altered matter. § 8.(Affairs) The designated legal person shall— (a) bring up successors to Aino cultures; (b) with respect to Aino heritage, do activities for publicity and enlightenment in any other way; (c) make inquiries useful for the promotion of Aino cultures and otherwise; (d) give advice, subsidies and other support to persons— (i) that promotes Aino cultures, (ii) that enlighten the public on Aino heritage, or (iii) make such inquiries as prescribed in paragraph (c); and (e) conduct other affairs necessary for the said promotion. § 9.(Business scheme and others) (1) The designated legal person must every financial year to draw up a business scheme and revenue and expenditure budget, as will be laid down in an ordinance of the Ministries of Land and Traffic, and Art and Science, to submit them to the competent Ministers. The same shall apply to the case where it will make an alteration in the said scheme or budget. (2) Any such business scheme as prescribed in subsection (1) must be drawn up in pursuance of the keynotes. (3) The designated legal person must after the termination of every financial year make out a business report and statement of final accounts for revenue and expenditure, as will be laid down in an ordinance under subsection (1), to lay them before the competent Ministers. § 10.(Collection of report and on-the-spot inspection) (1) The competent Ministers may within limits necessary to enforce this Act give an order that— (a) the designated legal person make a report on its affairs; and/or (b) officials in charge enter any office of the said person to— (i) make an inspection of the situation of its affairs or books, documents and other articles, and/or (ii) put questions to any interested person. (2) Any official who makes an on-the-spot inspection on the strength of subsection (1) must carry a certificate that proves his status to show the identification card when a demand has been made by an interested person. (3) It shall in no wise be understood that the power of the competent Ministers to make an on-the-spot inspection on the ground of subsection (1) is allowed for the purpose of criminal investigation. § 11.(Order for improvement) The competent Ministers may give an order that the designated legal person take measures necessary to improve the conduct of such affairs as specified in section 8.(a) to (e) when thinking it vital. § 12.(Revocation of designation and another) (1) The competent Ministers may revoke designation if the designated legal person disobeys such an order as provided by section 11. (2) The competent Ministers who have revoked designation on the ground of subsection (1) must make a public announcement to that effect. § 13.(Punitive provisions) (1) A person— (a) who has made no or a false report in contravention of subsection (1) of section 10.; (b) who has refused, clogged or shirked such an inspection as provided by the said subsection; or (c) who has given no or an untrue answer to any question addressed on the ground of the said subsection, shall be punishable with a fine not exceeding 20,000 yen. (2) Where a representative, or a procurator, employee or any other worker of a legal person has done any guilty act under subsection (1) in connection with its business, not only shall the actor be punished, but upon the person shall a fine under the same be imposed. Supplementary(Extracts) 1. Date of enforcement This Act shall come into force on such date as will be laid down in a cabinet order within limits not exceeding three months. 2. Repeal of laws The following laws shall be repealed— (a) the Act to Protect Aborigines in Hokkaidō(1899 act No.27): and (b) the Act to Dispose of Land in Asahikawa City to Protect Aborigines in Hokkaidō (1934 act No.9). NOTE The full text of the Act to Disposes of Land in Asahikawa City to Protect Aborigines in Hokkaidō: We hereby ratify and promulgate the Act to Dispose of Land in Asahikawa City to Protect Aborigines in Hokkaidō with the approval of the Imperial Parliament to order its publication in the Official Gazette. Hirohito March 23, 1934 Premier Viscount Saitō Makoto Chancellor of the Exchequer Takahashi Korekiyo Minister of Home Affairs Baron Yamamoto Tatsuo ACT NO.9 § 1. The Governor of Hokkaidō may with the approval of the Minister of Home Affairs and the Chancellor of the Exchequer grant any tract of land within the limits of Asahikawa City that has been leased thereto for the purpose of protecting aborigines in Hokkaidō without compensation to what have special connection as property they own solely or jointly. § 2. Section 2.(1) of the Act to Protect Aborigines in Hokkaidō shall apply correspondingly land granted by virtue of section 1. § 3. No registration and local taxes can be levied upon any person who has acquired the ownership of land on the ground of section 1. Supplementary This Act shall come into force on such date[November 1, 1934] as will be laid down in an Emperor’s ordinance. |
◎リンク