サービスラーニング
Service Learning, SL, 奉仕学習
解説:池田光穂
サービスとりわけ社会奉仕(social service)を学習の現場で学ぶのみならず、実習の過程などで実際に試みることを、ひろくサービスラーニングと呼ぶ。簡潔に定義すると「サービスラー ニングとは、サービス提供について学び、それを社会で実践するこ とを自己目的とする学習活動である」と言うことができる。
サービスラーニングは我々の語彙としては新しく感じられるが、大学学部高学年や大学院生などが、実際の社会の現場でおこなうインターンシップな どは、サービスラーニングのひとつだと考えられている。
サービスラーニング(SL)とは、言い換えると、社会 と連携する学びの実践を、その活動が学習が終わった後も引き続き呼び起こせるような社会的 枠組み(=学習空間)そのものであると理解することができる。
サービスラーニングという発想法が生まれてきた背景には、従来の学習の現場における受動的学習(→古典的学習)への批判や、それに対する実践共同体(実践コミュニティ)におけ る能動的学習の概念、ヴィゴツキーの最近接発達領域(ZPD)、問題にもとづく学習(PBL)やそれがもたらした保 健教育の現場における論争、コミュニティにもとづく参加型研究(CBPR)、ヘルスコミュニケーション領 域における当事者性[→当事者の英訳について]の扱い、サイエンスショップの誕生など、人を対象にする教育や研究が、どのように他者 を取り扱い、どのような介入研究をおこなうべきなのか、そしてそれに伴う倫理とは何かという、広範囲の問題系が、1960年代後半から北米を中心にして世 界の先進国において生まれてきたという事情があるように思われる。
「学習はけっして孤立した営みではなく、究極的には人々が暮らし、働いている実際のコミュニティで最高の効果ができる共有体験であり、協働型の
企画であるという前提だ。学生は普通、非営利団体でボランティア活動をおこない、自分が属するコミュニティの利益という、より大きな目的のために奉仕して
学習する。経験に基づくこの学習によって学生は広い視野を培う。学習とは、私利私欲を満たすためだけに知識をため込んで専有するのではなく、コミュニティ
を求めるためのものと理解するようになる」——リフキン,ジェレミー『限界費用ゼロ社会』柴田裕 之訳、p.172, NHK出版、2015年。
参考
文科省当局による定義は以下のとおりである——言っておくが上のリフキンの解説に比べると格段とレベルが下がる!。
「教育活動の一環として、一定の期間、地域のニー ズ等を踏まえた社会奉仕活動を体験することによって、それまで知識として学んできたことを 実際のサービス体験に活かし、また実際のサービス体験から自分の 学問的取組や進路について新たな視野を得る教育プログラム。サービス・ラーニングの導入 は、(1)専門教育を通して獲得した専門的な知識・技能の現実社会で実際に活用できる知識・技能への変化、(2)将来の職業について考える機会の付与、 (3)自らの社会的役割を意識することによる、市民として必要な資質・能力の向上、などの効果が期待できる」(用語集『新たな未来を築くための大学教育の 質的転換に向けて〜生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ〜(答申)』p.38, 平成24年8月28日中央教育審議会)
文科省の定義をほぼ踏襲していると思われる、筑波大学人間学群では、サービスラーニングを「教室で学ばれた学問的な知識・技能を,地域社会 の諸課題を解決するために組織された社会的活動に生かすことを通して,市民的責任や社会的役割を感じ取ってもらうことを目的とした教育方法」としている (http://www.human.tsukuba.ac.jp/gakugun/k-pro/aboutSL/aboutSL.html)。
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