はじめによんでください

普天間問題とわれわれ

Political Identities of Okinawan: Lecture on "Relocation of Marine Corps Air Station Futenma

19世紀の日本絵馬に表現された鳩/ ウィキペディア(英語版)「http: //en.wikipedia.org/wiki/File:Dugong.gif」の画像を利用しています。

池田光穂

沖縄県の米軍の普 天間(ふてんま)基地の辺野古沖海上ヘリポート場への移転 問題を、地元民(=紛争当事者)という観点から考察することを通して、いかにして、非地元民(=紛争当事者でない人)が、この問題に関わり、自分たちの主 張を地元民たちと〈共有された議論〉に展開することができるのか、ということに関する基礎的な認識論上の作業を試みます。

人民・民(people, civil)のなりたち

・国民>地方の人>県民>市民 (≠civil)>地元民

・市民権をもつ人=市民=政治的共同体の 構成員で主権 = sovereignty(例、参政権)を持つ/市民権の無い[一部剥奪されている]人

国民国家 Nation State[→リンク

・至高なる領域としての国土(=国家が空 間的に占有している領域)を政治的に統治している民(people)が国民(nation)として の統一性やまとまりをもつ国家を、国民国家と呼ぶ。

・国家と国民は主権 (sovereignty)をもつことを自ら任じているのみならず、他の国民や国家によって独立性を承認されている。

・国民としての統合性は、民族性 (ethnic entity:例、集合的な指標としての「国籍」)や文化性(cultural entity:例、公用語としての言語使用)により境界づけられることもあるが、国民としての統合性が担保されるかぎり、それらの内実の多様性は権利とし て認められている(なぜなら国民は市民としての主権=至高性を同時に合わせ持つので)。

民意(will of people)の表明の保証

・参政権・被参政権を通して政治に参画す る権利(=参政権)

・公務員を罷免する権利(日本国憲法第 15条)

・公職者への解職請求権(地方自治法)

・住民投票を通して(特定問題についての 住民投票は条例によって定められている)

普天間問題を〈住民〉と〈国家〉とのコンフリクトとして理解する:略史

・1972年5月15日 沖縄の「日本復 帰」(5.15メモ、秘密協定など)

・公用地暫定使用法(〜1977)により (日本政府を経由した)米軍の使用が正当化された

・1975年 沖縄海洋博開幕(= 1970年の大阪万博に倣った地域振興・地域開発モデルの適用)

・地籍確定法(1977〜1982)によ り(日本政府を経由した)米軍の使用が正当化された

・1982年 第二次沖縄振興開発計画決 定

・米軍用地特別措置法※(1982〜 1987)により市町村長・知事が地権者の代わりに「代理署名」することで(日本政府を経由した)米軍 の使用が正当化された

・米軍用地特別措置法・改正による10年 継続(1987〜1997)

・1992年 第二次沖縄振興開発計画決 定

・1995年9月米兵による少女暴行事件 により知事が代理署名を拒否し国との裁判。

・1996年4月:島内移設を条件に普天 間飛行場の全面返還に日米政府が合意(名護市・辺野古沖の海上案の原形ができる)日米行動委員会 (SACO)最終報告:北部振興策が開始。

・1996年8月大田知事(県)が敗訴

・1996年7月「県民投票」により県内 の基地の整理・縮小での「県民の意思表示」

・1997年4月改定米軍用地特別措置法 (改定特措法)により、強制使用期限切れ後も「暫定使用」を可能にする。

・1997年橋本龍太郎政権下の島田晴雄 (慶応大学経済学部教授)私的諮問委員会(通称「島田懇談会」)が提言した振興政策がはじまる

・1997年12月名護市民投票により移 設受け入れ反対が過半数に達する。これに伴い名護市長は受け入れを表明して辞職。大田知事は市民投 票を評価。

・1998年2月名護市長選挙で容認派の 岸本市長が当選[→配布資料の「逆格差論」コラム参照]。

・1998年12月沖縄県知事選挙で、当 時の現職(大田)を破り稲嶺知事が当選:稲嶺は、本島北部の陸上に15年限定で軍民共用空港建設を 公約に掲げた。

・1999年11月県と名護市は辺野古沿 岸域への受け入れを正式表明

・10年間で1千億円の北部振興費:実際 に投入された費用は2010年までに783億円、そのうち名護市分は約240億円 2010.5/15 朝日新聞

・北部振興費は全額国費ではなく、計画の 1割は自己負担しなければならないので、投入額に応じた自治体への財政的負担を強いることに

・1999年12月米軍用地特別措置法を 再改定可決により、知事による代理署名ではなく、国が直接「強制使用」の手続きが行えるようになる (=基地反対派は「基地の固定化」と批判)

・2000年沖縄サミット(名護市での開 催):北部振興策はじまる。

2000年 2月代替施設協議会が設置。 第1回会合が開催

・2002年7月埋め立て案について辺野 古沖案で国と県が合意(政府、県、関係市町村で構成される代替施設協議会において、代替施設基本計画案が決定)

・7 月政府は、閣議決定に基づき、普天間飛行場代替施設の基本計画を策定  ・滑走路は1本、2000メートルとし、代替施設の建設は、埋立工法で行う。  ・大浦湾側は埋立てを行わず、辺野古側のみを埋め立てる案 11月任期満了に伴う県知事選挙で、普天間飛行場の代替施設について、使用期限を15年とする公約を掲げた現職の稲嶺恵一氏が再選

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2003年

1 月代替施設協議会が設置。第1回会合が開催12月第2回代替施設協議会が開催

・2004年8月普天間基地の米軍ヘリが 沖縄国際大学(宜野湾市)に墜落事故

・2004年11月防衛施設庁の海底調査 は じまる。

8 月沖縄国際大学の構内に米海兵隊所属ヘリコプターの墜落事故が発生11月那覇防衛施設局は米軍普天間飛行場代替施設建設に向けた名護市辺野古沖のボーリン グ地質調査を開始

2005年

10 月日米安全保障協議員会(「2+2」)で、「キャンプ・シュワブの海岸線の区域とこれに隣接する大浦湾の水域を結ぶL字型に設置する」との新たな移設案が 合意された。 【日米同盟 未来のための変革と再編 2005年10月29日】  L字案:辺野古側だけでなく大浦湾側も埋め立てる案(滑走路は1本)10月稲嶺知事は、移設案について、容認できないとするコメントを発表(10月31 日)11月那覇防衛施設局は、ボーリング調査関連の業務等について、気象調査を除き一時停止11月名護市議会は、キャンプ・シュワブ沿岸案に反対する意見 書を賛成多数で可決(11月21日)12月沖縄県議会は、キャンプ・シュワブ沿岸案の受け入れは難しいとの意見書を全会一致で可決(「沖縄県の米軍基地に 関する意見書」12月16日)

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

・2006年2月名護市・島袋市長就任

・2006年5年キャンプシュワブ基地内 滑走路案の政府決定

2006年

1 月名護市長選挙で岸本市長の後継者である島袋吉和氏が初当選3月普天間基地の頭越し・沿岸案に反対する沖縄県民総決起大会(主催者発表で35,000人が 参加)3月那覇防衛施設局は、ボーリング調査関連の業務等について、気象調査を除き契約を解除4月防衛庁長官と名護市長、宜野座村長は、飛行ルートが住宅 地上空にかからないようにするため、滑走路を2本建設(V字案)することで基本合意書を取り交わした。 V字案:L字案と同様に辺野古側・大浦湾側を埋立て、かつ、滑走路を2本V字に建設するというもの。現行案と同様5月日米両政府は、米軍再編の最終報告に おいて、V字型滑走路の設置で合意5月県は、普天間飛行場移設にかかる新たな合意案は容認できないとするコメントを発表(5月4日)5月 政府と県との間で、「在沖米軍再編に係る基本確認書」を取り交わし、継続的に協議することを確認 (同日、防衛庁での稲嶺知事と額賀長官の共同記者会見において、記者からの「この確認書をもって、いわゆる辺野古崎にV字滑走路を作る計画について合意し たと受け止めてよろしいでしょうか」との問いに対し、額賀長官同席のもと、稲嶺知事から「いいえ、全く違います。」と応答している。) 5月政府は「在日米軍の兵力構成見直し等に関する政府の取組について」を閣議決定(5月30日) この閣議決定により、沖縄県・名護市が求めていた事項である、・軍民共用空港を念頭に整備を図ることや、・代替施設の使用期限について米国政府と協議する こと等を定めた1999年12月28日の閣議決定が廃止された。5月県は、十分な協議がなされないまま閣議決定がなされたことは極めて遺憾であるとの知事 コメントを発表(5月30日)11月任期満了に伴う沖縄県知事選挙で、現行のV字型案のままでは賛成できないとする公約を掲げた仲井眞弘多氏が初当選し た。

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2007年 米軍再編交付金制度(米軍再 編特措法:基地や訓練の受け入れ声明から移転移設の完了まで保証される自治体への交付金)

8 月那覇防衛施設局は環境影響評価方法書を県に送付10月沖縄防衛局は、普天間飛行場代替施設に、現在の普天間飛行場にはない「戦闘航空機弾薬搭載エリア (CALA)」を設置することを表明(10月25日)

2008年度から再編交付金対象の自治 体は、名護市と宜野座市

7 月県議会は、「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する決議」を賛成多数で可決

2009年

4 月沖縄防衛局は環境影響評価準備書を県に送付8月第45回衆議院議員総選挙が行われ、民主党が480議席中308議席を獲得(9月に鳩山内閣発足)9月民 主党、社民党、国民新党は、「米軍再編等のあり方について見直しの方向で臨む」とする三党連立政権合意に署名(政権交代)10月県は、環境影響評価準備書 について、知事意見を沖縄防衛局に提出

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2010年

1 月名護市長選挙で、辺野古移設に反対する稲嶺氏が当選。2月名護市・稲嶺市長就任 (基地移設反対の公約を掲げて現職を破り当選)。2月県議会は、「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書」 を全会一致で可決4月読谷運動広場で「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と県内移設に反対し、国外・県外移設を求める県民大会」が開催5月 日米安全保障協議委員会(「2+2」)において日米共同発表 日米両政府は、「護岸をのぞいて1,800mの長さの滑走路を持つ代替の施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地域及びこれに隣接する水域に設置する」ことで 合意 5月日米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政府の取組について閣議決定(5月28日)8月政府は、滑走路V字案・I字案を併記した 「普天間飛行場の代替の施設に関する専門家会合報告書」を公表9月名護市議会議員選挙が行われ、移設反対の市長を支持する与党議員が過半数を占めた。 (27議席中16議席)9月仲井眞知事は県議会において「政府に対し、日米共同発表を見直し、普天間飛行場を県外に移設することを求める」と表明(9月 28日)10月名護市議会は、普天間飛行場に係る「県内移設の日米合意」の撤回を求める意見書等を17対9の賛成多数で可決10月第1回基地負担軽減部会 が開催され、知事は、日米共同発表を見直し、普天間飛行場の県外移設に取り組むことを求めた(10月25日)11月沖縄県知事選挙で、「県外移設の実現」 を求めることを公約にした現職の仲井眞知事が再選。

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2010 年度 「北部活性化振興事業」 (70億円:鳩山政権・前原沖縄担当相)

2011

6 月日米安全保障協議委員会(「2+2」)において、「沖縄における再編」等を含む日米共同発表  その中で、埋立ての主要な工法、2本の滑走路をV字型に配置すること当の検証・確認が完了し、移設完了の目標時期について、2014年より後のできる限 り早い時期に完了させることが確認された。12月沖縄防衛局は環境影響評価書を県に送付

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2012

2 月日米両政府は、再編ロードマップでの海兵隊グアム移転及び嘉手納以南の返還と普天間飛行場代替施設の進展とを切り離すことを表明2月県は、環境影響評価 書の知事意見(飛行場等設置関係)を提出3月環境影響評価書の許認可権者意見(公有水面の埋立関係)を提出4月日米安全保障協議委員会(「2+2」)にお いて、普天間飛行場移設の現行計画は「これまでに特定された唯一の有効な解決策であるとの認識」が確認6月宜野湾海浜公園屋外劇場で「普天間飛行場へのオ スプレイ配備に反対し、固定化を許さず早期閉鎖・返還を求める宜野湾市民大会」が開催(主催者側発表では5,200人が参加)10月米ワシントンD.C. における県主催シンポジウムで、知事は普天間飛行場県外移設が早いと説明12月第46回衆議院議員総選挙が行われ、自民党が480議席中294議席を獲得 (第二次安倍内閣発足)

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2013

1 月県内全41市町村長、市町村議会議長らが、オスプレイの配備撤回と普天間飛行場の閉鎖・撤去、県内移設断念を求める「建白書」を安倍総理大臣に手交 【建白書の概要】 オスプレイの配備を直ちに撤回すること 普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること 【建白書の署名者】 <共同代表>  県議会議長、市長会会長(那覇市長)、商工連合会会長、連合沖縄会長、婦人連合会会長 <沖縄県議会>  議長、自民党代表者、社民・護憲ネット代表者、県民ネット代表者、公明党・県民会議無所属会派代表者、改革の会代表者、社大党代表者、無所属議員 <沖縄県町村会等>  沖縄県町村会会長(南風原町長)、沖縄県市議会議長会会長(那覇市議会議長)  沖縄県町村議会議長会(南風原町議会議長)、沖縄県の全市町村の首長及び議長 2月安倍総理が来県し、知事との会談の中で、普天間の固定化はあってはならず、日米合意に基づき移設を進める意向を示した。3月沖縄防衛局は、公有水面埋 立承認願書を北部土木事務所に提出 ※願書は、地盤改良が少しも必要なく、5年で埋立工事を完成させるとの内容。4月県は、願書について13項目33件の補正を要求(沖縄防衛局は翌月補正書 を県に提出)4月政府は、「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」(日米合意)を公表6月県は、沖縄防衛局が提出した願書の告示・縦覧を開始 (〜2013.7.18)8月県は、埋立承認出願に関し名護市に意見照会(8月1日。回答期限は11月29日。)8月仲井眞知事は、安倍総理と官邸で会談 し、普天間飛行場の県外移設を要請(8月30日)11月移設問題を巡り、県選出・出身の自民党国会議員5名が、自民党本部で幹事長と会談し、辺野古への移 設を容認する方針で一致(11月25日)11月名護市長は、県に対し、辺野古移設に反対し、知事に埋立不承認を求める市長意見書を提出(11月27日) 12月仲井眞知事は、沖縄政策協議会において、普天間飛行場の5年以内の運用停止と早期返還、オスプレイの県外配備等、4項目の負担軽減策を要請した (12月17日)12月仲井眞知事は、首相官邸で安倍総理大臣と会談し、県が要請した負担軽減策に関する政府回答を受けた。(12月25日)12月仲井眞 知事は、知事公舎で記者会見を行い、埋立てを承認することを表明、同日付で承認(12月27日) ※願書の内容は、5年で埋立工事を完成させるとの内容であった。

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2014

1 月県議会は、臨時議会を開き、仲井眞知事の辞任を求める抗議決議を可決(1月10日)1月知事の埋立て承認の取消しを求める訴訟が那覇地裁に提起(1月 15日)1月名護市長選挙が行われ、辺野古移設に反対する現職の稲嶺氏が再選(1月19日)2月第1回の普天間飛行場負担軽減推進会議が首相官邸で開かれ た。  安倍総理は冒頭、「昨年12月17日に知事から承った「普天間飛行場の5年以内の運用停止」をはじめとする基地負担軽減に関する4項目のご要望について は、沖縄県民全体の思いとして、しっかりと受け止め、「政府としてはできることは全て行う」という、安倍政権の基本姿勢を申し上げてきました。・・・政府 としては、この会議の場も通じて、沖縄県とこれまで以上に連携を深めていくとともに、普天間飛行場の負担軽減について、政府一丸となって取り組んでまいる 所存であります。」と述べた。 ※2019年2月末が「普天間飛行場の5年以内の運用停止」の目途となった。8月政府は、2014年版防衛白書を了承 【2014年防衛白書(抜粋)】  普天間飛行場代替施設建設事業については、公有水面埋立承認願書が2013(平成25)年12月27日、沖縄県知事によって承認された。  一方、2013(同25)年12月17日の沖縄政策協議会において、沖縄県知事から、普天間飛行場の5年以内の運用停止・早期返還、MV-22オスプレ イの12機程度の県外の拠点への配備および牧港補給地区の7年以内の全面返還などの要望がなされた。  政府としては、この要望を沖縄県民全体の思いとしてしっかりと受け止め、内閣官房長官、沖縄担当大臣、外務大臣、防衛大臣、沖縄県知事及び宜野湾市長で 構成される「普天間飛行場負担軽減推進会議」を設置するなど沖縄の負担軽減に一丸となって取り組んでいる。 8月沖縄防衛局は、辺野古代替施設建設事業にかかる海底ボーリング調査に着手(8月18日)11月沖縄県知事選挙において、辺野古への移設阻止を公約に掲 げる翁長雄志氏が当選(12月10日就任)

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2015

5 月辺野古新基地反対の県民大会がセルラースタジアム那覇で開催され、主催者発表で3万5千人が参加6月県は、辺野古新基地建設問題に関する事務を一元的に 管理するため、知事公室に辺野古新基地建設問題対策課を設置 8月 県と政府は、1か月間の集中協議を行うことを表明(8月10日)8月第1回集中協議(8月12日)8月第2回集中協議(8月18日)8月第3回集中協議 (8月24日)8月第4回集中協議(8月29日)9月第5回集中協議(9月7日)10月翁長知事は、仲井眞前知事が行った公有水面埋め立て承認を取り消し た。(10月13日)10月沖縄防衛局は、執行停止決定(10月27日)が防衛局に到達(10月28日)するまでの15日間、工事を停止

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2016

3 月和解が成立(3月4日) 和解条項に基づき沖縄防衛局は工事を停止12月沖縄防衛局は埋立工事を再開

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2017

2 月沖縄防衛局は、キャンプ・シュワブ沿岸での埋立本体工事に着手した。4月政府は、普天間飛行場の運用停止について、地元の協力が前提とする答弁書を閣議 決定4月沖縄防衛局は、辺野古埋立てのための護岸工事に着手6月 稲田防衛大臣は、国会において、他の条件が満たされなければ普天間飛行場の返還、5年以内の運用停止は実現しないと明言(6月16日) 7月県は、知事の許可を得ることなく岩礁破砕等行為を行ってはならないことを求め、那覇地方裁判所に差止訴訟を提起した(7月24日)11月県は、差止訴 訟について、知事の許可を得ることなく岩礁破砕等行為を行ってはならない義務があることを確認する請求の追加を申し立てた(11月2日)

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2018

2 月名護市長選挙が行われ、辺野古新基地建設を推進する政府の支援を受けた渡具知武豊氏が当選7月 県が沖縄防衛局に対して行った地質調査報告書にかかる公文書開示請求に対し、報告書の写しが交付された。  それによれば、「C−1〜C−3護岸計画箇所付近において、当初想定されていないような特徴的な地形・地質が確認された。」、「谷埋め堆積物について構 造物の安定、地盤の圧密沈下、地盤の液状化の詳細検討を行うことが必須」などと明記されていた。 ※この時点で、政府は軟弱地盤の存在を発表しておらず、県にも報告していない。 ※令和4年1月の報道によれば、辺野古の軟弱地盤の可能性については、地質調査業者が2015年4月時点で防衛局に報告したことが判明したとのこと。米軍 が当時、地盤の強度に懸念を示したことも記されていた。 7月翁長知事は、埋立承認の取消しに向けて沖縄防衛局への聴聞の手続に入るよう関係部局長に指示(7月27日)8月翁長知事が急逝(8月8日)8月県は、 沖縄防衛局に対し、埋立承認の取消しに係る聴聞を実施(8月9日)8月職務代理者の謝花副知事は、埋立承認の取消し(撤回)を行った(8月31日)9月翁 長知事の死去に伴う沖縄県知事選挙で、辺野古への移設阻止を公約に掲げる玉城デニー氏が初当選(10月4日就任)10月玉城知事は、安倍総理大臣及び菅官 房長官と面談し、対話による解決を求めた。(10月12日)10月沖縄防衛局は、国土交通大臣に対し、行政不服審査法に基づき、県が行った承認取消し(撤 回)処分を取り消す裁決を求める審査請求を行うとともに、裁決までの間、当該処分の効力の停止を求める執行停止申立てを行った(10月17日)11月玉城 知事が菅官房長官と面談し、工事を中断し協議の場を設けることを要望したところ、謝花副知事と杉田官房副長官との間で1か月程度協議を行うことで合意する も、菅官房長官は工事は進めると回答11月第1回協議(11月9日)11月第2回協議(11月14日)11月第3回協議(11月22日)11月第4回協議 (11月28日)11月玉城知事は、安倍総理と面談し、対話の継続を求めた(11月28日)。12月沖縄防衛局は、埋立区域2−1(K4、N3、N5護岸 で仕切られた部分)に土砂投入を開始 県は、沖縄防衛局に対し、土砂投入の即時中止等を求める行政指導文書及び埋立土砂の性状の重大な疑義に関する文書を発出(12月21日)

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2019

1 月県は、沖縄防衛局に対し、埋立土砂の性状に関する疑義への説明等を求める文書を発出(1月11日)1月県は、沖縄防衛局に対し、埋立土砂の性状の重大な 疑義に関する2件の行政指導文書を発出(1月25日)1月安倍総理大臣は、国会において、軟弱地盤の存在と地盤改良工事の必要性を初めて認めた(1月30 日)2月県は、岩礁破砕等行為差止訴訟に係る上告受理申立て理由書を提出2月 辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票(2月24日) 投票総数605,385票(投票率52.48%) 賛成114,933票(19%)、 反対434,273票(71.7%) どちらでもない52,682票(8.7%) 3月 玉城知事は、安倍総理大臣及びヤング臨時代理大使と面談し、県民投票条例に基づき、県民投票結果を通知 その際、日米両政府に沖縄県を加えた協議の場として、いわゆるSACWOの設置を提案した。 5月普天間飛行場の5年以内の運用停止の期限が2月末に経過したことから、県は、米国政府に対し普天間飛行場の早期運用停止を求める書簡を送付6月沖縄防 衛局は、K−8護岸を利用した土砂の陸揚げ作業を開始6月県は、沖縄防衛局に対し、工事の中止等についての行政指導文書を発出(6月11日)6月県は、 We love OKINAWA デニー知事トークキャラバンのキックオフシンポジウムを東京で開催7月県は、埋立承認取消しを取り消した国土交通大臣の裁決は違法な国の関与であるとし て、その取消しを求め、地方自治法に基づく関与取消訴訟を提起(7月17日)8月県は、国土交通大臣の行った裁決の取消しを求め、行政事件訴訟法に基づく 抗告訴訟を提起(8月7日)8月県は、トークキャラバンin名古屋を開催(8月19日)9月県は、トークキャラバンin大阪を開催(9月8日)11月県 は、トークキャラバンin札幌を開催(11月19日)12月県は、沖縄防衛局に対し、フロート等の撤去及び工事の中止について行政指導文書を発出(12月 5日)12月政府は、普天間飛行場代替施設建設事業に係る「第3回技術検討会」において、今後、設計変更承認を得てから事業完了(提供手続の完了)まで、 工期を約12年、総工費約9,300億円となることを示した。

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2020

2 月農林水産大臣は、サンゴ類の特別採捕許可申請を沖縄防衛局に許可するよう知事に是正の指示を行った(2月28日)3月県は、2月の是正の指示を不服とし て、国地方係争処理委員会に審査の申出を行った。(3月30日)4月県は、建設予定地付近でジュゴンの鳴音らしき音が確認されたことを受け、沖縄防衛局に 対し、事業を停止し、ジュゴンの来遊状況の確認やジュゴンへの影響を再評価することなどを求める行政指導文書を発出(4月17日)4月沖縄防衛局は、変更 承認申請を北部土木事務所に提出(4月21日)5月玉城知事は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためWEB方式で行われた国地方係争処理委員会(サン ゴの是正の指示に係るもの)で意見陳述を行った(5月22日)5月 県は、沖縄防衛局に対し、変更承認申請について56件の補正を求めた(5月25日) 6月県は、沖縄防衛局に対し、4月17日の行政指導に関連して改めて行政指導を行い報告を求めた(6月4日)6月沖縄防衛局は、県が発出した4月17日付 け文書に対して、ジュゴンに対する工事の影響は認められず、再評価の必要はない旨回答した(6月11日)6月国地方係争処理委員会は、農林水産大臣が行っ た是正の指示は違法ではないと認める決定(6月19日)6月県は、沖縄防衛局に対し、6月11日の沖縄防衛局の回答を受けて、改めてジュゴンへの影響を再 評価するよう行政指導を行った(6月25日)7月県は、沖縄防衛局に対し、変更承認申請について3件の再補正を求めた(7月1日)7月沖縄防衛局は、変更 承認申請の補正を行った(7月6日)7月県は、農林水産大臣の行った是正の指示の取消しを求め、地方自治法に基づく関与取消訴訟を提起(7月22日)9月 県は、変更承認申請について、告示・縦覧を開始(9月8日。9月28日まで。)10月玉城知事は、菅首相と首相就任後初めて面談し、辺野古新基地建設問題 について協議の場の設置を求めた(10月16日)11月県は、名護市長に対し、変更承認申請に関する意見を2021年3月26日までに提出することを求め た。12月名護市長は、変更承認申請に関して「異議なし」とする意見に係る議案を名護市議会に提出(12月16日)12月名護市議会は、名護市長が提出し た議案を否決(12月21日)12月県は、土砂陸揚げに関して、埋立願書に記載のないスパッド台船およびデッキパージの運用が確認されたことを受けて、沖 縄防衛局に対して、スパッド台船等の運用停止を求める行政指導文書を発出(12月24日)

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2021

1 月沖縄防衛局は、県が発出した12月24日付け文書に対して、スパッド台船等の運用を継続する旨回答2月福岡高裁那覇支部は、サンゴ特別採捕許可申請に関 する是正の指示の取消しを県が求めた関与取消訴訟について、県の請求を棄却する判決を言い渡した(2月3日)2月県は、2月3日の判決を不服として最高裁 判所に上告受理申立てを行った。(2月10日)2月県は、沖縄防衛局に対し、変更承認申請に関する13項目96件の二次質問を行った。(2月22日)2月 県は、動画「沖縄から伝えたい。米軍基地の話。」(全6回)を制作し、YouTubeに順次公開(2月21日〜3月31日) 4月県は、沖縄防衛局に対し、変更承認申請に関する8項目105件の三次質問を行った。(4月22日)6月県は、沖縄防衛局に対し、変更承認申請に関する 2項目9件の四次質問を行った(6月16日)7月最高裁判所は、サンゴ特別採捕許可申請に関する是正の指示の取消しを県が求めた関与取消訴訟について、県 の上告を棄却した(7月6日)。 【裁判官5名中、2名が反対意見】7月玉城知事は、沖縄防衛局に対し、高水温期や台風時期の移植を避けることなどの条件 を付して、サンゴ類の特別採捕の許可を行った(7月28日)7月沖縄防衛局は、サンゴ類の移植作業を開始(7月29日)7月県は、許可処分に付した留意事 項違反を理由として、沖縄防衛局に対するサンゴ類の特別採捕許可を取り消した。8月沖縄防衛局は、農林水産大臣に対し、サンゴ類の特別採捕許可の取消しに 関して審査請求及び執行停止の申立てを行った(8月2日)9月農林水産大臣は、執行停止を決定(8月5日)10月県は、「辺野古・大浦湾シンポジウム 2021」をオンライン開催し、玉城知事があいさつを行った。11月県は、沖縄防衛局から提出された変更承認申請に対し、不承認処分を行った。(11月 25日)12月不承認について、沖縄防衛局長が国土交通大臣に対し審査請求(12月7日)12月福岡高裁那覇支部は、抗告訴訟(控訴審)について、県の控 訴を棄却する判決を言い渡した。(12月15日)12月県は、12月15日の判決を不服として、最高裁判所に上告受理申立てを行った(12月28日)12 月農林水産大臣は、沖縄防衛局の審査請求に対し、知事の取消処分を取り消す裁決(12月28日)

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2022

2 月県は、審理員に対し、意見書を提出(2月7日)2月県は、「トークキャラバン in神戸」をオンライン開催(2月9日)2月県は、令和3年12月28日に上告受理申立てを行った抗告訴訟について、最高裁判所に上告受理申立て理由書を 提出(2月24日)3月県は、審理員に対し、意見書(2)および鑑定書に対する意見書を提出(3月10日)4月国土交通大臣は、(審査庁として)沖縄県の 不承認処分を取り消す旨の裁決(4月8日)4月国土交通大臣は、沖縄県知事に対し、4月20日までに本件変更承認申請に対する承認処分を行うことを勧告 (4月8日)4月国土交通大臣は、沖縄県知事に対し、本件変更承認申請に対する承認処分を行わないことが法令の規定に反する等として、5月16日までに承 認するよう是正の指示(4月28日)5月県は、裁決が無効であり違法な関与に該当するとして、国地方係争処理委員会に審査の申出を行った。5月県は、国土 交通大臣が行った是正の指示を不服として、国地方係争処理委員会に審査の申出を行った。(5月30日)6月県は、国地方係争処理委員会に対して行った審査 申出(令和4年5月9日)に関する国の意見書に対して、意見書を提出(6月16日)7月国地方係争処理委員会は、審査申出(令和4年5月9日)について、 却下決定(7月12日)7月沖縄県は、トークキャラバンin横浜を現地開催(7月13日)7月沖縄県は、国地方係争処理委員会において意見陳述(7月21 日)8月県は、国土交通大臣の行った違法な裁決の取消しを求め、地方自治法に基づく関与取消訴訟を提起(8月12日)

辺野古新基地建設問題の経緯(沖縄県)

2023

2024

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※「日本国アメリカ合衆国との間の相互 協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関す る協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(日本国外務省)

〈地元民〉は、普天間移設問題について、何をどこまで関与することができる か?

・国民>地方の人>県民>市民 (≠civil)>地元民

・地元民は、帰属する水準によりさまざま な意思表示の可能性をもつ:国民としては憲法と法律にもとづいて訴訟を、県民・市民としては条例に もとづいて住民投票を、地元民は、同胞としての市民、県民、国民に〈呼びかける〉ことを通して、この問題について意思表示することができる(=能力を有す る)。

・地元民がこのような一連の能力を行使す るためには、人びとは主権=至高性にもとづく政治的主体化する必要がある。なぜならこの〈権力〉の 行使は、ある局面では行政にかかわる正当性を問うことであり、立法者を選ぶことのなかに実践することができ、行政や立法が法にもとづいて正しく実行されて いるか反する司法当局に〈警鐘を鳴らす〉ことで、自分たちが望む現実を切り開くことができるからである。

■ 逆格差論

1970年、本土復帰前に1町4村(名護 町・羽地村・久志村・屋部村・屋我地村)の合併により名護市となる。1970年琉球政府首席・屋良 朝苗 が、復帰にあたって米軍基地撤廃の建議書を持参し上京するが、すでに国会では米軍の存続が、衆議院特別委員会で強行採決されていた。名護 市では、沖縄と本土の(経済)格差に関するリビジョニズムが登場する。名護は自然や暮らしの豊かさがあり、それは本土の都市生活とは真逆 である。これが当時の「逆・格差論」の主張であり、この精神は名護の人たちに現在まで受け継がれ、1998年2月に市長に当選する容認派の岸 本建男氏も、この逆・格差論者であった(宮城 2002, 2008)。

■ リンク

文献

  • 新城俊昭『ジュニア版・琉球・沖縄史』那覇市:東洋企画、2008年
  • 宮城康博、2002『ジュゴンの海と沖縄:基地の島が問い続けるもの』高文研。
  • 宮城康博、2008『沖縄ラプソディ:〈地方自治の本旨〉を求めて』御茶の水書房。
  • 新崎盛暉(あらさ き・ もりてる;1936-2018)私 の沖縄現代史:米軍支配時代を日本 (ヤマト) で生きて』岩波書店、2017年
  • ク レジット:「普天間問題とわれわれ:政治的アイデ ンティティとしての〈地元民〉」:グローバル共生社会論 2010年5月17日 池田光穂

    19世紀の日本絵馬に表現された鳩

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