はじめによんでください

デジタルテクノロジーは先住民表象をどう変えるのか?

How will digital technology change the representation of indigenous peoples?

あ るデザイナーによるアビヤ・ヤラ[南北アメリカ大陸の先住民語クナでの表現「成熟した生命の 土地」]のイメージ

池田光穂

☆ 【審問】デジタル・テクノロジーは先住民表象をどう変えるのか?(→「デジタル化する先住民の世界」を参照してください)

★「民族表象[ethnic representaton]とはしばしば、言語、衣装、遺跡モニュメント、生活 習慣のような眼に見えて顕示的な徴であるものから詩歌や文学作品さらには思想やアイデンティティという見えにくいものまで多種多様にわたる。」

A. 先住民のICT利用はそれまでの非先住民の利用形態と同じと予測される。そのため、先住民と非先住民の利用形態とその時系列的変化はシンクロナイズしてい る可能性がある。
A. It is predicted that ICT usage among indigenous peoples will be similar to that of non-indigenous peoples. Therefore, there is a possibility that the usage patterns of indigenous and non-indigenous peoples and their chronological changes will be synchronized.
B. 先住民自身のみずからの先住民像の発信は、商業メディアやSNSを通して発信されてきた。そこに先住民と非先住民の違いを見つけるのは困難である。なぜな ら、彼らは、同じICTメディアのプラットフォームを利用しているからである。
B. Indigenous peoples themselves have been disseminating their own images of indigenous peoples through commercial media and social media. It is difficult to find differences between indigenous and non-indigenous peoples in these images because they use the same ICT media platforms.
C. 先住民自身が他の先住民グループのインターネットでの情報発信を真似てゆくことは予測される。これを、先住民の情報発信の同調性と呼ぶことができる。
C. It is predictable that indigenous peoples themselves will imitate other indigenous groups in disseminating information on the Internet. This can be called the conformity of indigenous peoples' information dissemination.
D. ネットに存在している先住民に対するステレオタイプは、先住民自身が情報発信することで、今後どのような展開を遂げるだろうか?
D. How will stereotypes about indigenous peoples that exist on the internet evolve in the future as indigenous peoples themselves begin to disseminate information?
E. ユーザーの大多数が非先住民であるために、先住民の情報発信があるにもかかわらず、先住民に対するステレオタイプな表象が今後大きな変化を被ることはなか ろう(仮説 E.)
E. Given that the majority of users are non-indigenous, it is unlikely that stereotypical representations of indigenous peoples will undergo significant change in the future, despite the existence of information dissemination by indigenous peoples (Hypothesis E).
F. 先住民はICTを使ってネットに発信していくが、実態とはことなる先住民のステレオタイプに反発してゆく可能性がある(仮説 F.)
F. Indigenous peoples will use ICT to communicate online, but there is a possibility that they will react against stereotypes about indigenous peoples that do not reflect reality (Hypothesis F).
G. 他方で、自らのステレオタイプを引き受けながら、それをずらしていくオルターナティブな先住民性(alternative indigenity)を提示してゆく先住民が登場する可能性がある(仮説G.)
G. On the other hand, there is a possibility that indigenous peoples will emerge who present an alternative indigenity that accepts their own stereotypes while shifting them (Hypothesis G).
H. 非先住民側の先住民に対するネガティブキャンペーンの存在。ネットによる先住民へのステレオタイプを使った差別活動の増加がある。その場合には、なぜ、非 先住民がそのようなネガティブキャンペーンを行うのかという理由を明らかにする必要がある。
H. The existence of negative campaigns against indigenous peoples by non-indigenous peoples. There has been an increase in discriminatory activities against indigenous peoples using stereotypes on the internet. In such cases, it is necessary to clarify the reasons why non-indigenous peoples engage in such negative campaigns.
J. インターネット上での先住民に対するネガティブキャンペーンは、首謀者を特定しにくいために、市民にとって監視・モニタリング活動は、不可欠であり、また 行政府は、そのようなネガティブキャンペーンを発見した場合は、適切な抑止措置を講ずる必要がある。
J. Negative campaigns against indigenous peoples on the Internet are difficult to trace back to their originators, making monitoring and surveillance activities essential for citizens. Furthermore, when such negative campaigns are discovered, the government must take appropriate measures to deter them.
K. 先住民のデジタル利用は、インターネットにおける表現の自由の権利を満たすのみならず、自らの表象を先住民ならびに非先住民に提示することで、集団として エンパワーの可能性をもっている。
K. Digital use by indigenous peoples not only fulfills their right to freedom of expression on the Internet, but also has the potential to empower them as a group by presenting their own representations to both indigenous and non-indigenous peoples.

Indigenous Peoples and the Media by the UNESCO(繋がらない場合は下線部あるいは【こちら】をクリック)

★「先住民とデジタル化する世界」平野智佳子編、2025年


タイトル
ページ

デジタル用語集
4
→「IT用語集
序章 デジタル先住民研究の見取り図(平野智佳子) 9
デジタル・デバイド
デジタル・リテラシー
・digital indigenous studies
・リアル、デジタル、ヴァーチャルの区別をしない(12)
Network sovereignty(ネットワーク主権)
・先住民世界のダイナミズムへの着眼点:1)差別への抵抗、2)環境をめぐる取り組み、3)文化の継承、4)コミュニティ内でのやりとり(14-15)
データ主権(Data sovereignty)(17)
・言語復興、文化復興(17)——ただし、ヴァーチャルでできてリアルにできないこと、ヴァーチャルでもリアルでもできること、リアルでできてヴァーチャルではできないことを、今の時点できちんと区分しておくべき(→「言語復興運動」)。
・バナキュラーな文化継承(18)——顔のみえる関係と、そうでないもの
・携帯端末と、実際の生活世界の距離の近い・遠い(→メディア利用における距離の圧縮「地球村」)

・マクルーハンの地球村の発想は「再部族化」に関連するので、平野の「〜になる」先住民のテーマには符合するのでは?
・コロナの世界流行は、インターネットや携帯端末の利用利点により広範に受け入れられたという点を認識している(18)
・4. 各章の内容の紹介(19-)
・5.「先住民になる」概念の発展にむけて(23-)
・デジタルとともに先住民になる(becoming Indigenous peoples with digital)(24)——インターネットとのすり合わせで現実性がおびるのではないかと著者は主張(24)し、以下の4つの視点を提示する。
・4つのポイント:1)先住民のアイデンティティ(24-)、2)文化遺産のデジタルアーカイブ化(24-)、3)国家と先住民(25)、4)オンライン上のアルゴリズムが先住民社会に与える影響(25-26)
・1)先住民のアイデンティティ(24-):デジタル技術を駆使することでわかるのではないか?——(ノー)リアル調査でもわかりにくく議論が今日でもつづいているので。
・2)文化遺産のデジタルアーカイブ化(24-)——これはいけるが、あくまでも、さまざまな試みがあるのが現状
・3)国家と先住民——デジタル管理体制(下を参照)
・インターネットが「先住民になる」世界的傾向をおしすすめていることを示唆(25)——ただしネットを管理する国家との桎梏はある(→国家によるネット管理体制)。
・サフィア・ノーブル(2024)の所論を引用して、先住民にもネット検索のアルゴリズムは利用されて、差別が助長されているのかを警告(実際の本文は「研究が十分になされていない」と中立性を匂わすが)(25-26)
・《基本テーゼの確認》「デジタルとともに先住民になる」(26)
・奇妙な論理:デジタル化で複雑になる先住民の世界、では、デジタル化以前の先住民の世界が牧歌的でよいものかのか?——それこそが表象におけるオリエンタリズム的な視点じゃないのか?:先住民を表象の中に閉じ込めること
・ここでの主張はオフラインの調査の重要性を否定するものではない、そうだ(26)
第1部 差別への抵抗


1. 路上からインターネット空間へ:オアハカ先住民と「コモン」としてのストリートアート(山越英嗣)
33

2. 先住民運動におけるソーシャルメディアの活用と感情の動員:オーストラリア都市部のブラック・ライブズ・マター運動を事例に(栗田梨津子)
57

3. デジタル空間における文化・コミュニティとの再接続(北原モコットゥナシ)
83

第2部 環境をめぐる取り組み


4. 聖なる鳥の価値:インド北東部のダム建設反対運動におけるメディア・オブジェクトの生成と循環(長岡慶)
105

5. 先住民と市民社会のハイパーリンク・ネットワークを可視化する:アマゾニアにおける運河開発をめぐる論争へのデジタル・メソッドからのアプローチ(神崎隼人)
141

6. インターネットの外側で叫ぶ:西シベリア森林の石油開発と抵抗運動(大石侑香
169

第3部 文化継承


7. ソースコミュニティのプレゼンスを重視した民族誌資料デジタルアーカイブの構築(伊藤敦規)
189

8. オンライン空間に文化的規範を持ち込む:日本在住の移民マオリによるオンライン勉強会(土井冬樹)
215

9. 言葉の重要性を復興する:アメリカ先住民ナヴァホ保留地における言語学習とデジタルメディア(渡辺浩平)
237

第4部 コミュニティ内でのやりとり


10. 台湾原住民族の部落生活におけるSNSの活用:コミュニティの構築の視点から(尤驍)
257

11. 不確かな通信によるトラブル回避:中央オーストラリアにおける先住民のプリペイド型携帯電話の活用から(平野智佳子)
283

12. ソーシャルメディアで変化した住民関係:コスタリカの先住民居住区におけるゴシップに着目して(額田有美)
299

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784868160663



☆ それ以外のクリティカルな問題

先 住民運動に対して批判的な勢力(パラミリタリー、警察、地方政府、中央政府)は、先住民活動家のプライバシー情報や居場所を特定して、脅迫、誘拐、拉致、 殺害などの目的のためにデジタル・テクノロジーを活用する。

先住民を[ヘゲモニーを持った民が特定のある固定した]表象の中に閉じ込めること.これがネットワーク空間における先住民オリエンタリズムの表象的暴力なんじゃないの?!

リ ンク

文 献

そ の他の情報

CC

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