エホバのチューリングテスト
The Jehovah's Turing test,
מבחן טיורינג של יהוה
(ミラー・バックアップサイト)
担当:池田光穂
Lucas Cranach the Elder (1472–1553) , Adam and Eve, 1526 'Cupid Complaining to Venus', by Lucas Cranach the Elder
*「ヱホバ(えほば)」という呼称は「יהוה ヤハヴェ」というのが正しい。
日本語通称の「えほば」は、ヘブライ語の表記に母音がないために、この表記でよばれてきたので、誤りと言えば誤りであるが、通称名なので、ヤハヴェと呼ぶ
のが原語にちかいと理解してもらえれば、「えほば」と読んでもいっこうに差し支えない。このページは先行する「ヱホバ*のチューリングテスト」を改造したものです。
■チュー リング・テスト
アラン・チューリング(テューリングとも表記)
[1912-1954]がTuring, Alan,“Computing Machinery and Intelligence”, Mind
LIX (236):
433-460,1950.という論文のなかで、次のようなテストに耐えれば、機械に知性があると言えると主張できるためのテスト。具体的には、キーボー
ドとディスプレイのような装置をつかって、文字情報のみで情報を交わし、被験者に相手が機械か、人間かをというのを告げずに交信し、被験者が人間であると
答えた場合、それは知的なマシンであると言えると、チューリングは主張した。出典:「中国
語の部屋のページ」
■「ヱ ホバのチューリングテスト」課題について
旧約聖書の創世記には、人間の起源ならびに「男・ 女」の起源について記してある。このことについて思いを馳せて、次のようなことを私はSNSで呟いた:「人類の知的好奇心と自発的能力つまり《能動性》の起源はエヴァ(=イブ)に ある。それに比べてアダムは、受容と寛容、ナイーブなまでの信頼心を美徳とする《受動性》の人間の起源である」と。これは、これまで言われ てきたジェンダーの《性格》をめぐる、西洋世界の——ないしはユダヤキリスト教的な ——常識とは真逆のような主張である。私は蛇に唆されながらも、自分の 知的興味に従い、林檎を噛り、永遠の命をも投げ打ち、出産の苦しみを主体的に受け入れたエヴァに《人間本性の実存性》を見出す。このような鬼面人を驚かす ような《言説実践》を通して、私はいったい何をおこなおうとしているのか? 私はエホバの試練を、ここでは「ヱホバのチューリングテスト」と読んでみた い。アラン・チューリングとちがって、エホバの場合には、それに先行する人間のあり方はアダムにしかなかった。アダムは、エホバの教えを守る最初の人間で あった。蛇(やその背景にいる悪魔)に唆されながらも、自らの行為により切り拓いて、人間存在を新たに定義しなおしたのはエヴァそのものである。人間存在 のあり方を人間存在が決定することは、今日では《主体性》と呼ばれている人間の基本的な能力であり、権利であり、またその主体性を育んでやらなければなら ないのは人間の責務となっている。
また、エーリッヒ・フロムによると、アダムとイブが神に背き、知識の木から食べることは「権威主義
的な道徳観に固執するのではなく、人間が自主的に行動し、理性を 使って道徳的価値を確立すること」は美徳であり、アダムとイブが「知識の木」
を食べたとき、自分たちが自然の一部でありながら自
然から分離されていると認識したと主張している(→「能産的自然と所産的自然」)。
この課題は、その議論の出発点になればよいので、各 人が自分の関心におもむくままに、ジェンダー論、宇宙論、宗教論、道徳論、存在論、知恵の起源(= 林檎に由来する)、大学の授業論(=そもそもこんなものがなぜ大学の授業なのだ?!という反論を含めて)など自由に意見表明していただきたい。
議論の終着点はない。「ヒューマンコミュニケーション」が、ポリフォニー的(バフチン 2013)なアゴラにすることそれだけが、この授業の主宰者のテロスである。
■ヱ ホバ(エホバ)あるいはヤーウェという「主体としての神」につ いて
エホバ(Jevovah)とは、旧約聖書に登場する
イスラエルの神。あるいは、神についても適切=適格な呼び方をエホバ、あるいはヤーウェと呼ぶ。(→「エ
ホバ、あるいはヤーウェ」)
■資 料:アウエルバッハに引用された、12世紀末の(現)フランス 地方で演じられたクリスマス劇の創世記の脚本(Auerbach 1988[1946]: 139-140)
■資 料:文語訳、旧約聖書「創世記」(部分)
資料:文語訳・旧約聖書「創世記」(一部)
■資料:口語訳、旧約聖書「創世記」(部分)http://bible.salterrae.net/kougo/html/genesis.html
創世記
第2章
2:1こうして天と地と、その万象とが完成した。 2:2神は第七日にその作業を終えられた。すなわち、そのすべての作業を終って第七日に休まれた。
2:3神はその第七日を祝福して、これを聖別された。神がこの日に、そのすべての創造のわざを終って休まれたからである。
2:4これが天地創造の由来である。
主なる神が地と天とを造られた時、
2:5地にはまだ野の木もなく、また野の草もはえていなかった。主なる神が地に雨を降らせず、また土を耕す人もなかったからである。
2:6しかし地から泉がわきあがって土の全面を潤していた。
2:7主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者となった。
2:8主なる神は東のかた、エデンに一つの園を設けて、その造った人をそこに置かれた。
2:9また主なる神は、見て美しく、食べるに良いすべての木を土からはえさせ、更に園の中央に命の木と、善悪を知る木とをはえさせられた。
2:10また一つの川がエデンから流れ出て園を潤し、そこから分れて四つの川となった。
2:11その第一の名はピソンといい、金のあるハビラの全地をめぐるもので、
2:12その地の金は良く、またそこはブドラクと、しまめのうとを産した。 2:13第二の川の名はギホンといい、クシの全地をめぐるもの。
2:14第三の川の名はヒデケルといい、アッスリヤの東を流れるもの。第四の川はユフラテである。
2:15主なる神は人を連れて行ってエデンの園に置き、これを耕させ、これを守らせられた。
2:16主なる神はその人に命じて言われた、「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。
2:17しかし善悪を知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べると、きっと死ぬであろう」。
2:18また主なる神は言われた、「人がひとりでいるのは良くない。彼のために、ふさわしい助け手を造ろう」。
2:19そして主なる神は野のすべての獣と、空のすべての鳥とを土で造り、人のところへ連れてきて、彼がそれにどんな名をつけるかを見られた。人がすべて
生き物に与える名は、その名となるのであった。
2:20それで人は、すべての家畜と、空の鳥と、野のすべての獣とに名をつけたが、人にはふさわしい助け手が見つからなかった。
2:21そこで主なる神は人を深く眠らせ、眠った時に、そのあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。
2:22主なる神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。 2:23そのとき、人は言った。
「これこそ、ついにわたしの骨の骨、
わたしの肉の肉。
男から取ったものだから、
これを女と名づけよう」。
2:24それで人はその父と母を離れて、妻と結び合い、一体となるのである。
2:25人とその妻とは、ふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。
第3章
3:1さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った、「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神
が言われたのですか」。 3:2女はへびに言った、「わたしたちは園の木の実を食べることは許されていますが、
3:3ただ園の中央にある木の実については、これを取って食べるな、これに触れるな、死んではいけないからと、神は言われました」。
3:4へびは女に言った、「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。
3:5それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」。
3:6女がその木を見ると、それは食べるに良く、目には美しく、賢くなるには好ましいと思われたから、その実を取って食べ、また共にいた夫にも与えたの
で、彼も食べた。 3:7すると、ふたりの目が開け、自分たちの裸であることがわかったので、いちじくの葉をつづり合わせて、腰に巻いた。
3:8彼らは、日の涼しい風の吹くころ、園の中に主なる神の歩まれる音を聞いた。そこで、人とその妻とは主なる神の顔を避けて、園の木の間に身を隠した。
3:9主なる神は人に呼びかけて言われた、「あなたはどこにいるのか」。
3:10彼は答えた、「園の中であなたの歩まれる音を聞き、わたしは裸だったので、恐れて身を隠したのです」。
3:11神は言われた、「あなたが裸であるのを、だれが知らせたのか。食べるなと、命じておいた木から、あなたは取って食べたのか」。
3:12人は答えた、「わたしと一緒にしてくださったあの女が、木から取ってくれたので、わたしは食べたのです」。 3:13そこで主なる神は女に言われた、「あなたは、なんということをした
のです」。女は答えた、「へびがわたしをだましたのです。それでわたしは食べました」。 3:14主なる神はへびに言われた、
「おまえは、この事を、したので、
すべての家畜、野のすべての獣のうち、
最ものろわれる。
おまえは腹で、這いあるき、
一生、ちりを食べるであろう。
3:15わたしは恨みをおく、
おまえと女とのあいだに、
おまえのすえと女のすえとの間に。
彼はおまえのかしらを砕き、
おまえは彼のかかとを砕くであろう」。
3:16つぎに女に言われた、
「わたしはあなたの産みの苦しみを大いに増す。
あなたは苦しんで子を産む。
それでもなお、あなたは夫を慕い、
彼はあなたを治めるであろう」。
3:17更に人に言われた、「あなたが妻の言葉を聞いて、食べるなと、わたしが命じた木から取って食べたので、
地はあなたのためにのろわれ、
あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。
3:18地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、
あなたは野の草を食べるであろう。
3:19あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、
あなたは土から取られたのだから。
あなたは、ちりだから、ちりに帰る」。
3:20さて、人はその妻の名をエバと名づけた。彼女がすべて生きた者の母だからである。
3:21主なる神は人とその妻とのために皮の着物を造って、彼らに着せられた。
3:22主なる神は言われた、「見よ、人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るものとなった。彼は手を伸べ、命の木からも取って食べ、永久に生きる
かも知れない」。 3:23そこで主なる神は彼をエデンの園から追い出して、人が造られたその土を耕させられた。
3:24神は人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道を守らせられた。
■チューリング・マシン の形式的定義(→出典:「チューリングマシン」「Turing machine」) からの引用です
■余滴
真実か虚偽を問わず
「女性は与える存在」という命題の立て方が誤謬なのである。「与えることを通して人間は女性というものになる」というがより適切であるし、エージェンシー
化した肋骨と土からできたアダムとのジェンダー互酬性のはじまりなのだ。
■クレジット:2016年6月9日の授業:「ヒューマンコミュニ
ケーション」
エホバのチューリングテスト(授業資料)
■文献
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