学んだことを忘れ去ることの重要性
"You mut unlearn what you have
learned," my Master said...
人は自分自身が学びとってきた特権を、自分にとって の損失であると認識することが重要だ。ひとはしばしば、自分が学びとった特権を所与のものとして自然化 し、サバルタンに耳を傾け、それを第三者に代弁しようとする。この特権について自覚 するためには、そのような特権を、意図的に忘れ去って=学んだことを放 棄(unlearn)みる必要がある(=脱構築の実践)。
「『わたしたちが学び知って獲得してきた特権は、そ れらが 人種、階級、ナシヨナリティ、ジェンダー等々、どのような分野についてのものであれ、わたしたちが別の知 識を獲得するのをさまたげてきたのかもしれない』ことに注意をうながしたうえで、『人が自分で学んで得た 特権を自分にとっての損失であると見なすことによって忘れ去ってみることには二つの意義がある。……わた したちの特権を忘れ去ってみることは、一方では、わたしたちの宿題をはたすこと、わ たしたちの特権化され た眼差しにはもっとも問ざされた場所を占めている他者たちについてのなんらかの知識を獲得するために懸命 になって勉強することを意味している。また他方では、それはそれらの他者たちにかれらがわたしたちをまじ めに受けとることができるようなしかたで、そしてなによりも大切なことには、答えを返すことができるよう なしかたで、語りかけるよう試みるということを意味している』とするとともに、このようにして遂行される 〈学び知ったことを忘れ去ってみる〉ことの試みは、そのままにまた〈他者とのあいだに倫理的関係性をとり むすぶ〉ことの開始を告げるものであると指摘している。しかも、それは断じて他者に代わって語ることであ ったり、他者をして自分で語らせることではあってはならないのだと」(上村 1998:140)[『_』内がスピバックからの引用]
映画 『スターウォーズ』のなかで、ジェダイの騎士になるべくヨーダ師のもとに赴いたルーク・スカ イウォーカーは、師からこのように忠告される:You must unlearn what you have learned.
これは、フィールドワークを通して、なんでも記録し
なければならないと強迫的に仕事をする民族誌家(フィールドワーカー/エスノグラファー)にとっては、なかなか難しい課題だろう。なぜなら、フィールド
ワークのデータを忘れまい、忘れまいと思って、ノートをとり、また(スマホの)カメラやビデオを操作するからである。おまけに、フィールドワークを終え
て、時間がある時には、ひたすらノートを整理する。James Clifford and George Marcuseds, Writing
Culture, 1986, 2010の表紙の写真を思い出してほしい。
Writing culture : the
poetics and politics of ethnography / edited by James Clifford and
George E. Marcus, 25th anniversary ed. / with a foreword by Kim Fortun.
- Berkeley, Calif. : University of California Press , [2010], c1986. -
(School of American Research advanced seminar series)
リンク
文献
その他の情報(→ゲーテ「もっと光を!」)