未来のイノベーターになる人のために
for future innovator
これを読めばイノベーターになれるというマニュアルを読んでいる人は、イノベーターになる夢をあきらめたほうがいい。イノベーションとは、君 たちが起こす、発明と市場の混成物であり、時間という変数の尺度については、市場はまったく予測不可能であるというのが、これまでの結論だからである。
ノベーションの定義で、世界でもっとも簡潔なものは「びっく りするような新しい出来事」のことである。そ して、世界で一番定番のイノベーションの定義は、ジョセフ・シュンペーター1911年の著作にみられる定義、すなわち、1)新しい財貨の生産、2) 新しい生産方法の導入、3)新しい販路の開拓、4)原料や供給源の獲得が以前にはないもの、そして、5)それゆえに新しい組織が生まれること、という5つ の要素から成り立つ定義である。
世界の多くのイノベーションの定義は、このシュンペーターの5つの定 義の省略版(デジタルICT時代には、4)などは比重が下がったり陳腐化しているはずなで、1)、2)、5)の三要素など)がよくみられる。しかし、重要 なことは、単に「新しい」ではなく、「びっくりするような新しい」 が、破壊的イノベーションなどの議論の、破壊的あるいは刷新的ということとつながる。
経営学者の玉田俊平太——彼はイノベーションを「創新普及= そうしんふきゅう」と呼ぶ——は、日本初の破壊的イノベーションの 例として、ソニーのトランジスターラジオ、任天堂のファミコンなどをあげてい る。これらは、両方とも、前者では装置が大きく電力が必要のために家に置かざるを得ない真空管のラジオや、業務用のビデオゲームしかなかった時代に、家庭 で手軽にゲームできるように、それまでの消費や使用——玉田はそれを「サービスの利用」だとクリストン・クリステンセン『イノベーターのジレンマ』 (The Innovator's Dilemma)を引 用しながらそう表現する——を根本的に変えて、もとの「サービスの利用」形態を〈破壊〉したと表現する(2015:15-33)。——玉田俊平太 (2015)『日本のイノベーションのジレンマ』翔泳社。
イノベーションはしばしば技術刷新や技術革新と呼ばれることが多い が、これは間違いである。イノベーションは単に「刷新」や「革新」だけで よく、技術だけに限定しなくてもよい。現代用語としてのイノベーションとは「事前に 予想が不可能な、その時 代の社会の人たちに驚きをもたらす、実現可能な事態や概念のこと」である(→「イ ノベーション・デザイン」)。したがってイノベーションに適切な訳語をつけるとすると「びっくりするような新しい出来事」である。
このことを社会というものがもつ「制約」を踏まえた上で、イノベーションを考えることがよかろう。
さて、クリステンセンらは『イノベーターのジレンマ』について、一言でこう要約している:「利益を最大化させる資源配分メカニズムが、特定の状況下では優良企業を滅ぼすことを説明」したと(クリステンセンとレイナー 2003:32)。
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