哲学のなにが重要なのか?
What Philosophy matters in Post festum?
解説:池田光穂
哲学者は宴の後で(post festum)でやってくる ——カール・マルクス
「1840年代の若いへーゲル学徒たちをヘーゲル自 身から分つものは、歴史は〈創られる〉という確信であった。それは過去におけるように盲目にではなく、完全な意識においてである。——なぜなら、人は意識 していなくとも、つねに自分自身の歴史をある意味では〈創っている〉からである。マルクスは、この時期にこの問題でヘーゲルと縁を切った唯一の革命的人間 ではなかったが、彼(→ルカーチ、引用者)がなしとげたこの決裂は、世界史的な意味を 帯びている。なぜなら、それは、世界を変革するという目的をもつ理論を実践とかみ合せたからである。マルクスの思想は、彼の後継者たちによって稀薄にされ てしまい、1914年のヨーロッパ社会主義の進化論的見解のなかには殆ど認められないのであるが、この次元でのマルクスの思想を回復することによって、ル カーチは、1845年にすでに〈フォイエルバッハ・テーゼ〉とし て述べられている命題の論理に従っている」(リヒトハイム 1973:36)。-George Lichtheim, 1970. George Lukacs. New York : Viking Press.
■Hegel had synthesized Vico's approach with the creed of the Enlightenment, but while he abandoned the belief in a cyclical motion, he retained the conviction that Spirit comes to self-consciousness in philosophy only after an epoch has reached its term : Minerva's owl flies out at dusk, as he put it in the preface to his Philosophy of Right; or, to cite Marx's rather less flattering characterization of Hegel's procedure, "The philosopher comes post festum." What distinguished the Young Hegelians of the 1840s from Hegel was the conviction that history could be made: not blindly, as in the past-for of course men had in a certain sense always "made" their own history, though they had not been aware of it-but with full consciousness. Marx was not the only radical of his time who broke with Hegel on this issue, but the rupture he effected assumed world-historical significance because it meshed with the theory and practice of a movement that aimed to transform the world. In recovering this dimension of Marx's thought, which had been diluted by his followers and was barely recognizable in the evolutionist outlook of European socialism in 1914, Lukacs followed the logic of an argument already set out in the 1845 Theses on Feuerbach. - Lichtheim 1970:22-23.
「ヘーゲルはヴィーコの考え方を啓蒙主義の信条と統
合したが、循環的な動きという考え方は放棄したものの、ある時代がその期間に達した後にのみ、精神は哲学において自己意識に目覚めるという信念は保持し
た。ヘーゲルは『法哲学』の序文で次のように述べている。「ミネルヴァの梟は黄昏時に飛び立つ」と。あるいは、ヘーゲルの手法をあまり褒めていないマルク
スの表現を引用すると、「
「哲学者は事後的にやって来る」と述べている。1840年代の若いヘーゲル派がヘーゲルと異なっていたのは、歴史は作ることができるという信念を持ってい
たことである。もちろん、人々はそれと気づいていなかったとしても、ある意味では常に自分たちの歴史を「作ってきた」のだが、それは過去のように盲目的に
ではなく、完全に意識的にである。この問題に関してヘーゲルと決別した急進派はマルクスだけではないが、彼が引き起こした決裂は、世界を変革することを目
的とした運動の理論と実践とが一致したため、世界史的な意義を持つこととなった。マルクスの思想のこの側面を回復するにあたり、ルカーチは、1914年の
ヨーロッパ社会主義の進化論的見解ではほとんど認識できなくなっていた、マルクスの思想を薄めてしまった彼の信奉者たちの論理に従った。」
●君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか : 哲学的懐疑論の意義 / バリー・ストラウド著 ; 岩沢宏和 [ほか] 訳, 春秋社 , 2006 . - (現代哲学への招待 / 丹治信春監修, . Great works)
内容説明 デカルトの懐疑から近代哲学ははじまった。だが、その後の哲学は、本当にこの問題を解決したのだろうか?カント、ムーア、オースティン、カルナップ、クワ インら大哲学者の解答を吟味し、いまだ解決されていない懐疑論の問題性を暴露して、われわれの知の根拠を揺るがす意欲作。
目次
●哲学者は何を考えているのか / ジュリアン・バジーニ, ジェレミー・スタンルーム編 ; 松本俊吉訳, 春秋社 , 2006 . - (現代哲学への招待 / 丹治信春監修, Basics)
内容説明 科学者・神学者も含め、現代を代表する哲学思想家22人にインタビュー。彼らが著作に書けない赤裸々な本音も引きだしつつ、科学の成果がもたらす新たな倫 理的課題や、政治・社会との関わりによって多様化する“知”の状況と哲学の意味を明らかにする。
目次
第1部 ダーウィンの遺産 | |||
1.ダーウィンと倫理 |
ピーター・
シンガー |
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2.ダーウィン、自然、人間の思い上がり |
ジャネット・ラドクリフ・リチャーズ |
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3.進化心理学 |
ヘレナ・クローニン |
ヘレナ・クローニン(1942
年生まれ[1])はイギリスのダーウィン哲学者、合理主義者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの自然・社会科学哲学セ
ンターとダーウィン・センターの共同ディレクター。1991年の著書『アリとクジャク:
ダーウィンから今日までの利他主義と性淘汰』(1991年)で一躍注目を浴びる。 |
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4. 遺伝子と決定論 |
リチャード・ドーキンス |
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第2部 科学 |
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5.科学と相対主義 |
アラン・ソーカル |
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6.新たな哲学としての科学 |
エドワード・
O・ウィルソン |
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7.科学と宗教 |
ラッセル・スタナード |
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8.科学・倫理・社会 |
ジョン・ハリス |
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第3部 宗教 |
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9.非実在的な神 |
ドン・キューピット |
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10.自由と悪 |
リチャード・スウィンバーン |
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11.宗教哲学 |
ピーター・ヴァーディ |
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第4部 哲学と社会 |
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12. マードックと道徳性 |
メアリー・ミッジリー |
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13. 正義と対立 |
スチュアート・ハンプシャー |
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14.芸術の価値 |
ロジャー・スクールトン |
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15. 女性哲学者たち |
メアリー・ワーノック |
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16. 暗部 |
レイ・モンク |
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第5部 形而上学 |
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17. 自由意志 |
テッド・ホンデリック |
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18. 実在論 |
ジョン・サール |
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19. 実在論と反実在論を超えて |
ジョナサン・レー |
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第6部 言語 |
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20. 言語は重要な問題だ |
サイモン・ブラックバーン |
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21. 真理と意味 |
マイケル・ダメット |
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22. 頭のなかなら抜け出して |
ヒラリー・パットナム |
リンク
文献
その他の情報
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099
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