『白い巨塔』を人類学する!
Anthropologizing of "White Ivory Tower: A novel," by Toyoko YAMAZAKI, 1963-1965
白い巨塔:資料としての映像
『白い巨塔』(山崎豊子原作/山本薩夫監督)
山崎豊子『白い巨塔』(上・下)、新潮文庫、1988[1965](『サンデー毎日』連載1963-65)
【登場人物】
財前 五郎 国立浪速大学第一外科助教授
財前 又一 五郎の義父
財前の妻と子供
東 教授 外科教授 財前の上司
東佐枝子
今津教授 第二外科教授[連衡することによって利益誘導]
第一外科医長 佃[→五郎の教授就任後、講師]
第一外科講師 金井[五郎の教授就任後、助教授]
助手 安西[五郎の教授就任後、医局長]
第一内科・鵜飼教授
里見助教授
野坂教授(整形外科)(学内民主派)キャスティングボードを握る[両派より利得]
基礎・病理・大河内教授(厳正中立)基礎での法皇的存在
財前の愛人・ケイ子
東都大学・船尾教授
菊川教授 金沢大学の外科教授(教授選の当て馬)
【梗概】
某国立大学外科助教授財前五郎は気鋭の医師であるが、その権力欲による上昇志向から上司の東教授に嫌われている(1)。五郎は東の定年退官後 の教授のポストを狙っているが、東はそれが気に入らない。五郎は義父又一[ひいては大阪の医師会]の全面的なバックアップのもとで、教授選に向けての水面 下のキャンペーンを開始する。
弱点をもった五郎が参加する教授選は、大学病院内部の思惑がからみ混乱の相を呈する。義父又夫の工作は、曲折を経ながらも効を奏してゆく (2)。
二回にわたる選挙の末、財前五郎は、東教授の後がまに座ることができた。しかしながら、定年またず退官した東も市中の病院長のポストを得るこ とができた。[以上が、文庫版の上巻]
その矢先、五郎は初期癌の患者を誤診し、医療過誤訴訟にまで発展してしまう(3)。
医療過誤訴訟では、敗訴の形勢にあった五郎であったが、医療界の秩序と信用を守るという[隠された]政治的な意図をもつ東都大学教授—原作で は洛北大学の唐木名誉教授—の証言によって、五郎の命脈は辛うじて繋がる。
理想主義者の里見は、鵜飼から勧められた[実質的な追い出しである]山陰大学教授への赴任を断わり、傷心をかかえて浪速大学を去る。このよう にして�腐敗した�(4)大学病院の権力構造は維持されてゆくのである。
[註]
(1)五郎の権力上昇コンプレックスは、年老いた田舎の実母の存在によって増幅される。
(2)大河内・病理学教授の態度が際だっており、そこには臨床/基礎のエートスの違い、理想的な医学者/金欲・権力欲に溺れる臨床医という対比 が表現される。
(3)里見助教授のヒューマンな態度によって財前の強欲性がより強調される。
(4)�腐敗した�というのは読者が読みとることができる作者のメッセージである。
【分析の視角】
●山崎豊子のこの作品はどのような評価を受けてきたか?
・大学内部の権力闘争(内情暴露ものとして‥‥)
・勧善懲悪の反神話として‥‥
[その傍証]続編では、財前じしんが癌に倒れて人間性に目覚める
●人類学者の視角[※教授選までを範囲に入れる]
(1)権力論:権力の行使(実際の政治権力/象徴権力/金銭物品の権力)
権力構造が脅かされるとき
権力の移譲のとき(構造的脆弱性)
権力が別の権力によって脅かされる
[内部者からみた権力構図]
教授(大名)−助教授(足軽頭)−平医局員(足軽)
婦長(大奥の老女)−看護婦(腰元)
(2)交換論:登場人物が交換するもの
鵜飼教授に対する義父の絵画の贈り物 互酬性[互酬/再配分/市場交換]
(3)親族論:系譜を描くこと
財前又一→杏子 東貞雄→佐枝子
(成就) ‖ 成功 (画策) | 失敗
五郎 菊川
成長株への投資 リモコン化による退官後の政治的支配
※親族として取り込むことによる権力誘導
【編集:資料/シーン】
【リンク】
【文献】
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