行動する人類学:グアテマラ内戦
Anthropology in Action
講師:池田光穂
映像資料:『風の記録:先住民族の500年』Alter Cine Inc./ Alba Films 、1992年
●キーワード
●関連映像作品
『兵士たちの帰宅』 : グアテマラ[ビデオ(カセット)]. -- NHKソフトウェア, 1998. -- (NHKビデオ ; . NHKスペシャル ; 5)
『グアテマラ:二度と再び』NHKBS1(200.02.20)60min.
●文献
●リンク先
●歴史的コンテキスト
私のフィールドワークで明らかになったように、中米のグアテマラ共和国で は、24の言語集団(マヤ系21言語、非マヤ2言語、およびスペイン語)からなるマヤ民族などからなる先住民の全体の人口に対する割合は多数派であるが、 植民地時代から征服者である白人や混血の支配・権力者層——人口においては少数派に定義される——に経済的支配あるいは政治的に従属的な位置にあり、《多 数派であるにも関わらず権力的に少数派の位置取りをする》という事態が生じている。
●課題
ビデオ作品『風の記憶』(1992)には、「先住民への征服」を正当化する元外交 官や1990年の虐殺当時に軍の最高責任者であった元将軍が「虐殺などなかったのだ」と発言するシーンがみられる。このような発言は虐殺の犠牲者(死人に 口無し)や関係者にとっては、信じがたい詭弁に映る(ビデオでは、それらの対比がかなり強調されて描かれている)。ところが、現実は今もなお被害者/被抑 圧者に対して状況が改善されているとは言い難い。グアテマラでは1996年暮れの軍とゲリラの和平合意後にも内戦の歴史的記憶プロジェクト(REMHI) の中心的存在であったヘラルディ司教が98年4月に殺害され、99年5月16日の先住民族の権利保障を盛り込んだ憲法改正の国民投票は否決された。
だが、これは海の向こうのとんでもない話ではなく、我々にとってはデジャヴ(既視 体験)である。我が国では南京虐殺や従軍慰安婦をめぐる保守派政治家や歴史修正主義者(「自由主義史観」)の発話がある。移民社会の米国では、不法移民へ の公共サービスを禁じた「提案178」(1994)、アファーマティブ・アクションの停止を求めた「提案209」(1996)、バイリンガル教育の停止を 求めた「提案227」(1998)の住民投票にはすべてのケースで賛成を求める声があがった(提案で不利となる人びとの多くが「賛成」を投じた)。
配布した資料は、世界的な言語学者であり市民運動家による米国市民への反省を促し た内容の弾劾文——ラス・カサスを思い出させる——とも言えるものであるが、このような声はいよいよ我々には届きにくいような政治的状況が生まれつつあ る。
そこでの皆さんへの課題だが、みなさんが虐殺の当事者の強弁を弁護する立場であっ ても、虐殺される側に立っても構わないが——無関心である立場は容認しない——、(A)このような意見の齟齬がなぜ生じるのか?、について見解を述べなさ い。また、(B)そのような齟齬は埋め合わせることができるのか?、また(C)どのようにして、そのような齟齬を埋め合わせるのか?、について答えなさ い。
●自学自習教材
歴史的記憶の回復プロジェクト編、2000『グアテマラ 虐殺の記憶』飯島みどり他 訳、東京:岩波書店
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