ネオリベラリズムのやり方以外に、利潤圧縮に対応しうる方法で、歴史学者のＩ．ウオーラスティン（1999[1998]:83-4）が指摘した もの。

ここで言うマフィアの定義は次のようなものである。

「法的強制や税の回避によってあるいは保障費をゆすりとることによって実質的利益を獲得しよ うと努める人たちや、この資本蓄積様式の生存能力を保障するために、個人的暴力や広範なわいろを利用し、公的な国家的手順を堕落させる用意のある人たちの すべて」（ウオーラスティン（1999:84）。

彼によると、マフィアは近代世界システムに固有の要素であり、ネオリベラリズムと同様、国家機構の力（＝権力）を切り崩し、国家の正統性を失わ せる作用をもつ。つまり、マフィアは（そのオートノミーは別にして）資本制のなかでしか機能しない寄生的組織にすぎないことになる。 ただし、ウォーラスティンは国家と呼ばれる制度を維持したり、（必要悪としても）最低限必要な公的な論理に対する原則を彫琢しようとした点で、マフィア的 秩序が、その内部の構成員からはどのように構成されているのか、つまり「マフィア倫理」や「マフィア道徳」には、きわめて無理解な態度を維持している。オ メルタ（Omertà）＝血の掟とよばれるマフィアの慣習的ないしは不文律の倫理要項（silent code of ethics）を参照せよ。

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Omertà /oʊˈmɛərtə/ (Italian pronunciation: [omerˈta])[ is a code of honor that places importance on silence, non-cooperation with authorities, and non-interference in the illegal actions of others. It originated and remains common in Southern Italy, where banditry and the Mafia-type criminal organizations (like the Camorra, Cosa Nostra, 'Ndrangheta and Sacra Corona Unita) are strong. It is also deeply rooted in rural Crete (Greece), Sardinia and Corsica.　Omerta - Wikipedia

「オメルタ /oʊˈ (イタリア語発音: [omerɛərtə])[ は、沈黙、当局への非協力、他人の違法行為への不干渉を重視する名誉規範である。盗賊やマフィア系犯罪組織（カモッラ、コーザ・ノストラ、ンドランゲタ、 サクラ・コローナ・ウニタなど）が強い南イタリアで生まれ、現在も一般的である。また、クレタ島（ギリシャ）、サルデーニャ島、コルシカ島の農村にも深く 根付いている。」

- Michael Herzfeld, The Body Impolitic: Artisans and Artifice in the Global Hierarchy of Value, Chicago and London: The University of Chicago Press, 2004.

また、正確にはマフィアとコーサ・ノストラとは異なり、後者にはオメルタ的原則がないといわれるが、両者はしばしば「マフィア」と総称して 呼ばれることがある。

A mafia is a type of organized crime syndicate whose primary activities are protection racketeering, the arbitration of disputes between criminals, and the organizing and oversight of illegal agreements and transactions.[1] Secondary activities may be practiced such as gambling, loan sharking, drug-trafficking, and fraud. Mafia - Wipipedia

「マフィアは組織犯罪シンジケートの一種であり、その主な活動は、保護ゆすり、犯罪者間の争いの仲裁、違法な契約や取引の組織化と監督である[1]。ギャンブル、高利貸し、麻薬密売、詐欺などの副次的な活動を行うこともある」

The Sicilian Mafia, also known as Cosa Nostra ("our thing"), is a criminal syndicate in Sicily, Italy. It is a loose association of criminal groups that share a common organisational structure and code of conduct. The basic group is known as a "family", "clan", or "cosca" or "cosche" in Sicilian. - Sicilian Mafia

「シチリア・マフィアは、コーザ・ノスト ラ（「我々のもの」）としても知られるイタリアのシチリア島の犯罪組織である。共通の組織構造と行動規範を共有する犯罪集団の緩やかな連合体である。基本 的なグループは、シチリア語で「ファミリー」、「クラン」、または「コスカ」または「コスケ」として知られている。」

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もちろん、このマフィア的原則は、国家が準備する公的な領域、たとえば経済活動を通して国家の力を失わせるだけではなく、麻薬などの生産と販売 に関わることにより、アノミーや社会 的反乱——反体制活動の資金源になる——を引き起こし、国家の経済ならびに治安の統制的機能を失わせることに貢献している。

しかしながら、全体主義の恐怖政治と同様、ローカルな文脈では「秩序が保たれているような状況」が生起することがある。これは、恐怖によって人 間が社会的秩序を「人工的あるいは強制によって」維持されているのか、恐怖状況においても、人間は秩序ある社会性を構成しようとするのか、議論が分かれる ところである。マフィア的原則によって社会秩序が維持されることが、仮に「病理」であったとしても、このことは、「健全あるいは正常な」デモクラシー下に おける、秩序が維持されることを自明視することの正当化には使えない。

「健全あるいは正常な」デモクラシー下においても、秩序がなぜ維持されるかについての理論的説明を我々は十分に手にしているというわけではな い。

人間の社会的秩序は、いったいどのように構成されているのだろうか？

リンク

• ︎社会福祉とネオリベラリズム政策についての見取図▶︎新国際経済秩序あるいはネオリベラリズム経済▶︎︎競争的パーソナリティ▶麻薬カルテルによるニッチ構築について︎▶素朴な反逆者の系譜について︎︎▶︎マックス・ウェーバーの資本主義とは？▶Omerta - Wikipedia︎︎▶医療人類学辞典︎▶︎︎任侠からヤクザへ▶︎▶︎
  

文献

• ウォーラスティン、I. 1999[1998]『ユートピスティクス：21世紀の歴史的選択』松岡利通訳、東京：藤原書店
• 「Mafia」from Primitive rebels : studies in archaic forms of social movement in the 19th and 20th centuries / by E.J. Hobsbawm, [3rd ed.]. - Manchester : Manchester University Press , 1971, c1959, with password mafia-Hobsbawm-1959.pdf

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