忘れる人のための国際関係論10
新国際経済秩序あるいはネオリベラリズム経済
New International Economic Order or Neoliberal Economy
国際金融
1944年ブレトン・ウッズ体制により、金とドルの国際通貨化、固定為替相場制の採用。また IMFと国際復興開発銀行(IBRD)が設立される。
1971年8月ニクソンは金とドルの交換停止を宣言(=ニクソン・ショック)。通貨の安定の ために、1973年世界市場は、変動為替相場制に移行する。
プラザ合意。アメリカ合州国の「双子の赤字」(貿易と財政の2つの赤字のこと)による、アメ リカの経済不振を救済するために、先進国は協調して金融市場に介入することに決定。これをプラザ合意という。
国際貿易
GATT
1947年に締結。これまで8回のラウンド(多角的貿易交渉)をおこなってきた。 1995年にWTOに発展解消される。
ウルグアイラウンド
GATTの1986-93年のラウンドでの中心テーマは、関税、非関税障壁、サービス貿 易、知的所有権である。
WTO(世界貿易機関)
1995年に発足。ウルグアイラウンドの合意事項の遵守、貿易問題の紛争処理[→パネル =紛争処理小委員会]、ラウンドの促進、貿易政策の審査などを目的としている。
2002年からは、貿易と投資の新ルール、農業、サービス貿易、貿易と環境問題などを検 討する新ラウンド交渉を開始。
FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)
EPAとは……
「日本の財務省(Ministry of Finance Japan)によると「経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)とは、2以上の国(又は地域)の間で、自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の要素(物品及びサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野、例えば人の移動や投資、政府調達、二国間協力等を含めて締結される 包括的な協定」のことをいう。[出典:http: //www.mof.go.jp/jouhou/kanzei/fta_epa/fta_epa.htm]。
「物品貿易に係る自由貿易協定」が規定する具体的内容は、世界貿易機関(WTO)によるGATTの24条がその典拠となり「構成国間の 実質上全ての貿易について妥当な期間内に関税等を廃止すること」と「域外国に対する関税を引き上げないこと」の2つの要件を満たす場合は、最恵国待遇(さ いけいこくたいぐう)してもよいというふうにWTO原則の例外として容認されるという。最恵国待遇とは、すべての加盟国に対し無差別な待遇をおこなうこと である。」
経済機関
IMF(国際通貨基金)
ブレトン・ウッズ体制のもとで国連の専門機関として設立。国際収支赤字国に対して、短期 融資をおこない、経済不振の国家には経済政策にも介入。
SDR(IMF特別引出権)
世銀(=国際復興開発銀行、IBRD)
1946年発足
世銀グループ
国際開発協会(IDA)、国際金融公社(IFC)、多数国間投資保証機関(MIGA)、 投資紛争解決国際センター(ICSID)
以上が、前史あるいは新国際経済秩序およびネオリベラリズムを理解するための前提となる知識で す。
新国際経済秩序とは、1974年の国連の資源特別総会で、新国際経済秩序に関する宣言と、それに 関する行動計画などが決議された内容を指します。具体的には、途上国への資源のナショナリズム的な領有の権利を認め、国際的な取引において不平等や不正義 がおこならないようにするものです。
しかし、1970年代以降は、途上国も急進的な主張をおこなうことは少なくなり、この宣言は実質 的に形骸化します。
このトレンドに決定的な影響を与えたのが、冷戦の終結とそれに付随して登場してくるネオリベラリ ズムの隆盛です。
冷戦については、講義 06:戦争で説明しました。
ここでは、冷戦の終結が、国際経済に与えた影響の産物である、ネオリベラリズムについて詳しく説 明します。
★新自由主義は、ネオリベラリズム(neo- liberalism)とも言われる。新自由主義を奉じる者を、ネオリベラル(neo-liberal)と呼ぶ。その起源は、1930年代のフリードリ ヒ・ハイエク(Friedrich August von Hayek, 1899-1992)オーストリア学派の自由主義思想に淵源し、集産主義と計画主義は、市場の自由な活動を阻害し、市場を完全に理解のもとに把握すること の不可知論の立場をとり、自らの利益や選考を優先することにで、経済はうまくまわると考えた。国家による市民生活への介入を忌み、銃火器も知性と徳を備え た人には取引や所有は可能と考えた。フランス革命のような理性に至高の価値をあたえることを警戒し、自然発生的な秩序の維持のみを国家はマネージすべきだ と考えた。このようなハイエクの思想は、リバータリアン的な自由主義であり、ハイエクは自由主義の範囲にいると考える論者も多い。
☆ウィキペディア(英語)のかつての説明は次のとおり;「新自由主義(ネオリベラリズム)とは、
経済自由主
義や自由市場資本主義に関連する19世紀の思想が20世紀に復活したものである。一般的には、経済や社会における民間部門の役割を高めるために、民営化、
規制緩和、グローバリゼーション、自由貿易、緊縮財政、政府支出の削減などの経済自由化政策と結びついている。しかし、思想と実践の両面における新自由主
義の決定的な特徴は、学者間でかなりの議論の対象となってきた。政策立案において、新自由主義は、1970年代のスタグフレーションに対処するための経済
学におけるケインズ派のコンセンサスの失敗に続くパラダイム・シフトの一部であった。」
【失敗したワシントンコンセンサス・テーゼ】(→出典:「グアテマラ西部高地における先住民コミュニティの自治」)
「構造調整のスキームは、その導入前の理想とされたことよりも、実際に導入した後に起こった問題 から、その特徴をあぶり出すことができる。なぜ ならば、そこに理想と現実のギャップを我々が見ることができるからであり、何らかの形で失敗の経験を活用する可能性が広がるからである。初期の構造調整政 策への批判と解釈は以下の7点にまとめることができる。」
[ネオリベラリズムとはなにか?]
開発人類学(→リンク)