開発人類学・語彙集
Glossary of
Development Anthropology
解説:池田光穂
この語彙集は、菊池京子編(2001)の資料編にあったものを基礎にして、筆者(池田)が「開 発人類学」を学ぶための語彙をリストアップし独自に解説したものです。
国際的な開発現象の特徴として、エージェントが活躍する現場では英語のジャーゴン(略語、隠語、符丁)が飛び交い、外部者にはわからないサ ブカルチャーが存在することです。
このようなジャーゴンとそれが指し示す概念は、文化人類学の立場からみれば、きわめて自文化中心主義的な操作の対象になっています。このよ うなジャーゴンとその現場での使い方を学ぶだけでも、開発人類学の最初のレッスンになるはずです。
【学習手法についての覚書】
アクションリサーチ( Action reserch )
ア
クション・リサーチ(action resarch)あ るいは唱道的アプローチ(advocacy
approach)はプロジェクトを施行する側と住民(行政モデルではしばしばクライアントや受益者・ステイクホルダーと呼ばれた)を明確
に区別せず、住民の主体的な発展を促すため に人類学者がプロジェクトに参画しながら調査を行なうというスタイルのことをさす(→出典:「関 与=介入する」)
コミュニティにもとづく参加型研究:CBPR
コ ミュニティにもとづく参加型研究(別名:コミュニティに根拠をおく参加研究)とは、コミュニティのメンバーとコミュニティ外からやってきた専門・非専門の 参与者が、協 働(コラボレーション)を原則としておこなう実践的な研究のことである。つまり、コミュニティ(=共同体)への介入を前提とする社会調査技法 で、コミュニティのメンバー(成員)の自己決定を最優先し、外部から参与する専門家・非専門家の目的や意図をコミュニティとの話し合いにより民主的に決定 するような研究手法である(→「コミュニティにもとづく参加型研究:CBPR」)。
「迅速社会評価(Rapid Social Appraisal, RSA)」について……
「迅速社会評価(Rapid Social Appraisal, RSA)」とはロバート・チェンバースでの農村での開発ニーズ発見手法(RRA, Rapid Rural Appraisal) に倣い私(=池田光穂)が日頃の授業で提唱しているものである。すなわち、これから介入したい社会や対象集団の人たちの開発ニーズを発掘しその実現可能性 を現場の人々(=ステイクホルダー)とともに模索を開始する時点での、現在集団の《開発状況のベースライン》を把握する方法で、迅速におこなわれる量的お よび質的な調査にもとづく社会評価のことである。(1)社会調査法の学修、(2)対象集団とのコミュニケーションと対話、(3)ステイクホルダー全員を巻 き込んだ、問題に基づく学習と実践、という3つの柱からなる。
RRA, Rapid Rural Appraisal by FAO
「新しい統治(new governance)」について……
新しい統治とは、グローバルな同質的発展流通モデルと帰結的なダイヴァーシティ(ad hoc
diversity)の結果において、世界をどのようにリードしていけばいいのか? ポスト国民国家時代における統治の質(quality of
governance)について考える方途のことをいう。ICTと「現場の対話」という2つの異質なコミュニケーション技術を駆使した「マクロウィキノミクス」の考察は、それに寄与するひとつの可能性である。
BHN ( Basic Human Needs):人間の基本的欲求
GAD ( Gender and Development):ジェンダーと開発
WID ( Women in Development):開発における女性たち(開発の女性参画)
NGO (Non-Goverenmental Organization):非政府組織
PCM (Project Cycle Management):プロジェクト・サイクル管理
PDM (Project Design Matrix):プロジェクト・デザイン要約表
RAP (Raipid Assesment Procedure) :即席評価手続き
開発担当者が、広範囲の候補地のなかで選定するために、いくつかの開発に必要な評価項目を予め立てておいて、その手続き(プロトコル) に従って、データを収集する技法。Rapid Rural Reconnaissance, Farming System Research, などは、それに関連する類似の手法である[→医療人類学における実践的課題:実 践する]
RRA ( Rapid Rural Appraisal):即席農村調査法(→次のFAOのサイトを参照:Chapter 8: Rapid Rural Appraisal)
1970年代後半にロバート・チェンバースらによって考案された開発のための農村調査手法。
PRA ( Participatory Rural Appraisal):参加的農村調査法
RRA手法から約10年後に開発された、調査目的主眼のRRAから対象者の住民を巻き込むタイプの調査法。
PLA ( Participatory Learning and Action):参加的学習と行動実践
PRAの調査の側面を薄め、さらに開発実践に節合させるプログラムである。ただし、PRAとの理念的相違以上のものが新規に入っている とは必ずしも言えない。
アジア開発銀行
米国開発庁(USAID)
日本・国際開発事業団(JICA)
ドイツ技術協力公社(GTZ)
世界銀行
アジェンダ21
円借款
援助疲れ(aid weariness)
開発援助委員会(DAC)
開発独裁
カウンターパート・ファウンド(見返り資金)
気候変動枠組条約
グラント・エレメント(Grant element)
経済協力開発機構(OECD)
構造調整政策(Structural adjustment policy)
構造調整貸付(Structural adjustment lending)
国際開発協会(International Development Association)
累積債務問題
社会資本、社会関係資本(social capital)
小規模融資(micro finance, micro credit)
新開発戦略
世界社会開発サミット
土着知識(indigenous knowledge)
トリクルダウン効果(trickle down effect)
プロジェクト方式技術協力
輸出信用
よい統治(good governance)
1990年代になって世銀やOECDなどが、開発を良好に進めるために、当該地域——ここでは国家——の政治体制や政策実施体制を改善 するような考え方。開発が現地の政治システムと無関係ではない点では当たり前の考え方だが、開発のために、政治への介入という目的は本末転倒で、経済開発 と政治が切り離せない現象である点で、より詳細で批判的な研究が必要とされている。
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リンク(開発人類学)
リンク(デザイン思考)
文献
その他の情報