公共人類学
Public Anthropology
解説:池田光穂
【定義】
公共人類学(public anthropology)とは、人類学の公共性についての具体的な検討を通して、たんに人類学の社会的活動における貢献を試みるだけでなく、人 類学が社会 の公共的な場において活用できる社会的条件について考察する学問である。
公共人類学の誕生は、応用人類学(applied anthropology)を嚆矢として、人類学が現実の社会との関わりをもちはじめたり、あるいは、学問上の危害などに対する反省から生まれ た。
人類学の公共性について考える際に重要なことは次の諸点にある。
まず、人類学という学問の社会的有用性に関する可能性と限界に関する考察、人類学の誤用(misuse)や不当濫用行為 (misconduct)に関する事例検討とそこから得られる一般的教訓の検討、公共の場における人類学の役割に関する検討などである。
この分野の提唱のパイオニアであるロブ(=ロバート)・ブロノフスキーによると、公共人類学(public anthropology)は以下のようなことについて尽力するという。
"[To] make anthropology an intellectual engine for nuturing critical social transformations through providing the kind of thoughtful stories and analyses that make broad publics in democracies confront their own complicities in the status quo that oppresses othes".
"Fostering democracy, fostering public anthropology in this context means enlarging public discussions regarding how we engage -- and how we might engage better -- with the critical issues and dilenmmas of our time beyond our own zone of confort."(Paley 2002:488 より引用)
では、なぜ公共人類学という枠組みが必要になってきたのだろうか。それは、研究対象になる当事者とそれを観察研究する研究者の間の認識と ギャップがあるからである。
「家系図をつくる人類学者の「親族」に対する関係は、息子に適当な結婚相手を世話するという現実的で切迫した問題を解決しなければなら ないカビリア人の父親の「親族」に対する関係とは程遠いものです。同じように、たとえばアメリカの学校制度を研究している社会学者は、学校を「利用」して いるのですが、これは娘のためによい学校を探す父親が学校を利用するのとは無関係です」(ブルデュ 2007:103)。
パブリッ
ク・エンゲージメントとは、市民、地域の非営利団体、企業、政府を結びつけ、人々の生活に影響を与える問題を解決する方法である。それは、複雑な公
共問題に対処するための、非常に包括的な問題解決アプローチである。
地域社会の全員がある問題の影響を受けている場合、全員がその問題の解決策を見つけることに参加しなければならない。
このようにして、人々が共通の目標を達成するために協力し合うパートナーシップが形成されるのだ(→「人類学における公共的関与」)。
● テーマ・リンク(→国連の持続可能な開発目標とグローバル・イシューズ、を参照)
◆ 関連リンク
◆ 文献
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099