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エイジングの文化人類学

Anthropology of Aging

池田光穂

僕におけるフォーマルな意味で「エイジングの人類学」「老年人類学入門・加齢現象の文化人類学入門」を勉強したのは福井栄二郎さ んに、僕と奥野克巳さんとの編著『医療人類学のレッスン』で、執筆をお願いした頃からはじまる。もちろん、それまでに、以前の職場からのリクエストや大手 出版社の論説誌などに執筆してきたことはあるが、それは、自分がもっている医療人類学や文化人類学の知見を、身の回りの「加齢現象」にあわせて、自由に解 釈したものだった(→「老人虐待の起源」「高齢化社会のデザイン」)。それゆえ、僕の「エイジングの人類学」の師匠は、福井栄二郎さんである。

その前後から、僕は「老人問題・研究叢書」というリンク集をつくり、加齢(エイジング) や人口高齢化に関するこれまで書いてきたものにリンクをはりつづけてきた。しかし、それでもなお、僕にはまだ「グローバルエージング」がどのようなもので あり、僕がどのような見地からこの「グローバルエージング(世界的なスケールでの地球の人間集団の高齢化)」について、この問題に切り込めるのかについ て、明確な方針が持てずにいる。

にもかかわらず、WHO「アクティブ・エージング(元気で健やかな加齢:active aging)」への文化人類学者としての立場表明、さらに、僕の立場からの、この用語と概念についての解説を、社会の一般の多くの人たち——市井(しせ い)の人たちと言う——にする必要も、医療や保健の専門家の一人として解説する責任を感じている。

□ 古代ローマの哲学者で『老年について』というエッセーを残した人は誰でしょうか。
マルクス・トゥッリウス・キケロ(Marcus Tullius Cicero)英語では、シセローとも発音される。紀元前2世紀〜紀元前1世紀
□ 老人性痴呆症という用語が、疾病概念はそのままで、2005年に新しい用語に変更されま した。それをなんというでしょうか。
認知症です!(→「認知症、痴呆症、ぼけ」)
□ 人間の一生を、幼年、少年/少女、青年、中年、老年などと区分し一生を表現することばを なんというでしょうか(ヒント:「 〜 サイクル」とよびます)。
ライフサイクルです。
□ ある社会集団のなかで年齢と性を基準にして、その社会が階層化され、メンバーあるいは集 団に特定の呼び名がつくことがあります。このような制度を文化人類学ではなんというでしょうか。
年齢階梯組織(ねんれいかいていそしき)と言います。
□ ヘアー・インディアンの老人が、採取狩猟のための皆との移動生活をすること放棄すること を老人自身が決定することを、福井栄二郎さんは「老人遺棄」とは呼ばず、なんとよびましたか。
「老人による『自己決定』」あるいは、たんに「自己決定」(教科書 Pp.206-207)と記載しています。
□ 1850年から1世紀弱の間にヴァヌアツ共和国のアネイチュム社会では人口が20分の1 まで減少したが、その理由はなんであったと説明されていますか。
西洋人との接触で、西洋人からもたらされたと考えられる麻疹やインフルエンザ(p.211)
□ Gerontology という英語で表現される学問は、日本語でなんと翻訳できますか。
老年学といいます。Geronto- は加齢の、あるいは高齢者の意味で、-logy は学問のことをさします。
□ 人間のエイジングと呼ばれる現象を、医学用語では漢字2文字で表現します。なんといいま すか。
加齢(かれい)——年を取ること、年を重ねること——といいます。
□ 年齢による社会的差別や思想を、外来語でなんといいますか(ヒント:「年齢差別主義」な いしは「年齢中心主義」と訳されることがあります)。
エイジズムあるいは「年齢差別主義」といいます。
□ エイジングなどの人間の「自然の変化」が、克服すべき障害や病気となって近代医療の対象になっていくことをなんといいますか? 医療化(メディカリゼーション)」といいます。

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