B・マイヤーホフ論文「ちょうどいい時に死ぬ」論文ノート
On her paper entitled as "A Death in Due Time: Construction of
Self and Culture in Ritual Drama," by Barbara G.
Myerhoff (1935-1985)
ウィキペディアによる彼女の短いバイオグラフィーを紹介して おこう。
"Born in
Cleveland Ohio, Myerhoff's work with the Jewish community in Venice,
California was documented in the 1976 ethnographic film Number Our
Days, directed by Lynne Littman. Number Our Days was published in book
form in 1979, and performed as a play at the Mark Taper Forum in 1982.
Her next project, In Her Own Time, was taken over by Lynne Littman and
Vikram Jayanti when Myerhoff was diagnosed with cancer. She died in
1985"
この論文を友人の旧約聖書学の泰斗の先生に送ったら 次のような最初の感想が帰ってきました。
「感動的な話です。まるでユダヤ教のアガダーにあ
る、聖書のヤコブの最後のようです。聖書でも、用意周到に、ヤコブは、自分の靴もきっちり並べて、死んだ、息子たちに囲まれて。これが人類学の論文です
か?まるで映画を観てるよう、これが人類学の観察者の眼、でも心が温かくなりました。」(一部変更しています)
それに対する私のリプライはこうです。
「彼女は映像人類学者です。50歳を待たずに夭折し
ました。最初、メキシコのサボテンをつかうシャーマンの幻覚の民族誌調査から研究人生をはじめましたが、後年は、ユダヤ出自に回帰する映像作品を手がけま
した。この論文は、僕が大好きなものですが、日本人の研究者に紹介しても、食いついてくる人(わずか)なので、とても残念に思っていました。もっともふさ
わしい読者がみつかり、バーバラも(冥府で)喜んでいるとおもいます。」
Barbara G. Myerhoff (1935-1985)
そして、この論文の背景にある、死にゆく人の文化的 環境についての私の見解は次のようなものです:「緩和ケアというのは、死に行く本 人の問題というよりも、その当事者を管理し、見守る治療者のみならず治療者を包摂する社会全体の問題でもある」(→「がんサバイバーとのコミュニケーション」)。
●ヤコブの人生(シノプシス)——ウィキペディア
「『創世記』によると、父はイサク(イツハク)、母 はリベカ、祖父は太祖アブラハム。 ヤコブは双子の兄エサウを出し抜いて長子の祝福を得たため、兄から命を狙われることになって逃亡する。逃亡の途上、天国に上る階段の夢[4](ヤコブの梯 子)を見て、自分の子孫が偉大な民族になるという神の約束を受ける。ハランにすむ伯父ラバンのもとに身を寄せ、やがて財産を築いて独立する。 兄エサウとの和解を志し、会いに行く途中、ヤボク川の渡し(後に彼がペヌエルと名付けた場所)で神と格闘し、勝利したことから神の勝者を意味する「イスラ エル」(「イシャラー(勝つ者)」「エル(神)」の複合名詞)の名を与えられる[5]。これが後のイスラエルの国名の由来となった。 レア、ラケル、ビルハ、ジルパという4人の妻との間に娘と12人の息子をもうけた。その息子たちがイスラエル十二部族の祖となったとされている。晩年、寵 愛した息子のヨセフが行方不明になって悲嘆にくれるが、数奇な人生を送ってエジプトでファラオの宰相となっていたヨセフとの再会を遂げ、やがて一族をあげ てエジプトに移住した。エジプトで生涯を終えたヤコブは遺言によって故郷カナン地方のマクペラの畑の洞穴に葬られた。 」
●ヤコブの臨終『創世記』47:28-第48-49 章
「 47章28
ヤコブはエジプトの国で十七年生きながらえた。ヤコブのよわいの日は百四十七年であった。
29
イスラエルは死ぬ時が近づいたので、その子ヨセフを呼んで言った、「もしわたしがあなたの前に恵みを得るなら、どうか手をわたしのももの下に入れて誓い、
親切と誠実とをもってわたしを取り扱ってください。どうかわたしをエジプトには葬らないでください。
30
わたしが先祖たちと共に眠るときには、わたしをエジプトから運び出して先祖たちの墓に葬ってください」。ヨセフは言った、「あなたの言われたようにいたし
ます」。
31 ヤコブがまた、「わたしに誓ってください」と言ったので、彼は誓った。イスラエルは床のかしらで拝んだ。【48章】1
これらの事の後に、「あなたの父は、いま病気です」とヨセフに告げる者があったので、彼はふたりの子、マナセとエフライムとを連れて行った。
2 時に人がヤコブに告げて、「あなたの子ヨセフがあなたのもとにきました」と言ったので、イスラエルは努めて床の上にすわった。
3 そしてヤコブはヨセフに言った、「先に全能の神がカナンの地ルズでわたしに現れ、わたしを祝福して、
4
言われた、『わたしはおまえに多くの子を得させ、おまえをふやし、おまえを多くの国民としよう。また、この地をおまえの後の子孫に与えて永久の所有とさせ
る』。
5
エジプトにいるあなたの所にわたしが来る前に、エジプトの国で生れたあなたのふたりの子はいまわたしの子とします。すなわちエフライムとマナセとはルベン
とシメオンと同じようにわたしの子とします。
6 ただし彼らの後にあなたに生れた子らはあなたのものとなります。しかし、その嗣業はその兄弟の名で呼ばれるでしょう。
7
わたしがパダンから帰って来る途中ラケルはカナンの地で死に、わたしは悲しんだ。そこはエフラタに行くまでには、なお隔たりがあった。わたしはエフラタ、
すなわちベツレヘムへ行く道のかたわらに彼女を葬った」。
8 ところで、イスラエルはヨセフの子らを見て言った、「これはだれですか」。
9 ヨセフは父に言った、「神がここでわたしにくださった子どもです」。父は言った、「彼らをわたしの所に連れてきて、わたしに祝福させてください」。
10 イスラエルの目は老齢のゆえに、かすんで見えなかったが、ヨセフが彼らを父の所に近寄らせたので、父は彼らに口づけし、彼らを抱いた。
11 そしてイスラエルはヨセフに言った、「あなたの顔が見られようとは思わなかったのに、神はあなたの子らをもわたしに見させてくださった」。
12 そこでヨセフは彼らをヤコブのひざの間から取り出し、地に伏して拝した。
13 ヨセフはエフライムを右の手に取ってイスラエルの左の手に向かわせ、マナセを左の手に取ってイスラエルの右の手に向かわせ、ふたりを近寄らせた。
14
すると、イスラエルは右の手を伸べて弟エフライムの頭に置き、左の手をマナセの頭に置いた。マナセは長子であるが、ことさらそのように手を置いたのであ
る。
15 そしてヨセフを祝福して言った、「わが先祖アブラハムとイサクの仕えた神、生れてからきょうまでわたしを養われた神、
16
すべての災からわたしをあがなわれたみ使よ、この子供たちを祝福してください。またわが名と先祖アブラハムとイサクの名とが、彼らによって唱えられますよ
うに、また彼らが地の上にふえひろがりますように」。
17 ヨセフは父が右の手をエフライムの頭に置いているのを見て不満に思い、父の手を取ってエフライムの頭からマナセの頭へ移そうとした。
18 そしてヨセフは父に言った、「父よ、そうではありません。こちらが長子です。その頭に右の手を置いてください」。
19
父は拒んで言った、「わかっている。子よ、わたしにはわかっている。彼もまた一つの民となり、また大いなる者となるであろう。しかし弟は彼よりも大いなる
者となり、その子孫は多くの国民となるであろう」。
20
こうして彼はこの日、彼らを祝福して言った、「あなたを指して、イスラエルは、人を祝福して言うであろう、『神があなたをエフライムのごとく、またマナセ
のごとくにせられるように』」。このように、彼はエフライムをマナセの先に立てた。
21
イスラエルはまたヨセフに言った、「わたしはやがて死にます。しかし、神はあなたがたと共におられて、あなたがたを先祖の国に導き返されるであろう。
22 なおわたしは一つの分を兄弟よりも多くあなたに与える。これはわたしがつるぎと弓とを持ってアモリびとの手から取ったものである」。
【49章】1 ヤコブはその子らを呼んで言った、「集まりなさい。後の日に、あなたがたの上に起ることを、告げましょう、
2 ヤコブの子らよ、集まって聞け。父イスラエルのことばを聞け。
3 ルベンよ、あなたはわが長子、わが勢い、わが力のはじめ、威光のすぐれた者、権力のすぐれた者。
4 しかし、沸き立つ水のようだから、もはや、すぐれた者ではあり得ない。あなたは父の床に上って汚した。ああ、あなたはわが寝床に上った。
5 シメオンとレビとは兄弟。彼らのつるぎは暴虐の武器。
6 わが魂よ、彼らの会議に臨むな。わが栄えよ、彼らのつどいに連なるな。彼らは怒りに任せて人を殺し、ほしいままに雄牛の足の筋を切った。
7 彼らの怒りは、激しいゆえにのろわれ、彼らの憤りは、はなはだしいゆえにのろわれる。わたしは彼らをヤコブのうちに分け、イスラエルのうちに散らそう。
8 ユダよ、兄弟たちはあなたをほめる。あなたの手は敵のくびを押え、父の子らはあなたの前に身をかがめるであろう。
9 ユダは、ししの子。わが子よ、あなたは獲物をもって上って来る。彼は雄じしのようにうずくまり、雌じしのように身を伏せる。だれがこれを起すことができよう。
10 つえはユダを離れず、立法者のつえはその足の間を離れることなく、シロの来る時までに及ぶであろう。もろもろの民は彼に従う。
11 彼はそのろばの子をぶどうの木につなぎ、その雌ろばの子を良きぶどうの木につなぐ。彼はその衣服をぶどう酒で洗い、その着物をぶどうの汁で洗うであろう。
12 その目はぶどう酒によって赤く、その歯は乳によって白い。
13 ゼブルンは海べに住み、舟の泊まる港となって、その境はシドンに及ぶであろう。
14 イッサカルはたくましいろば、彼は羊のおりの間に伏している。
15 彼は定住の地を見て良しとし、その国を見て楽しとした。彼はその肩を下げてにない、奴隷となって追い使われる。
16 ダンはおのれの民をさばくであろう、イスラエルのほかの部族のように。
17 ダンは道のかたわらのへび、道のほとりのまむし。馬のかかとをかんで、乗る者をうしろに落すであろう。
18 主よ、わたしはあなたの救を待ち望む。
19 ガドには略奪者が迫る。しかし彼はかえって敵のかかとに迫るであろう。
20 アセルはその食物がゆたかで、王の美味をいだすであろう。
21 ナフタリは放たれた雌じか、彼は美しい子じかを生むであろう。
22 ヨセフは実を結ぶ若木、泉のほとりの実を結ぶ若木。その枝は、かきねを越えるであろう。
23 射る者は彼を激しく攻め、彼を射、彼をいたく悩ました。
24 しかし彼の弓はなお強く、彼の腕は素早い。これはヤコブの全能者の手により、イスラエルの岩なる牧者の名により、
25 あなたを助ける父の神により、また上なる天の祝福、下に横たわる淵の祝福、乳ぶさと胎の祝福をもって、あなたを恵まれる全能者による。
26 あなたの父の祝福は永遠の山の祝福にまさり、永久の丘の賜物にまさる。これらの祝福はヨセフのかしらに帰し、その兄弟たちの君たる者の頭の頂に帰する。
27 ベニヤミンはかき裂くおおかみ、朝にその獲物を食らい、夕にその分捕物を分けるであろう」。
28 すべてこれらはイスラエルの十二の部族である。そしてこれは彼らの父が彼らに語り、彼らを祝福したもので、彼は祝福すべきところに従って、彼らおのおのを祝福した。
29 彼はまた彼らに命じて言った、「わたしはわが民に加えられようとしている。あなたがたはヘテびとエフロンの畑にあるほら穴に、わたしの先祖たちと共にわたしを葬ってください。
30 そのほら穴はカナンの地のマムレの東にあるマクペラの畑にあり、アブラハムがヘテびとエフロンから畑と共に買い取り、所有の墓地としたもので、
31 そこにアブラハムと妻サラとが葬られ、イサクと妻リベカもそこに葬られたが、わたしはまたそこにレアを葬った。
32 あの畑とその中にあるほら穴とはヘテの人々から買ったものです」。
33 こうしてヤコブは子らに命じ終って、足を床におさめ、息絶えて、その民に加えられた。」
浜名恵美訳による章立ては次のとおりである。
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エピグラム 241
(タイトルのない「はじめに」) 241
文化劇としての死 242
儀礼の作用 244
民族誌学的な背景 247
存在の劇、出現するための場 251
祝典の創作 255
儀礼に先立つコンテクスト 260
儀礼の執行(パフォーマンス) 262
社会学的な結果 273
儀礼の効力 276
儀礼、時間、連続性 282
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死者とのコミュニケーション
リンク
文献
マイヤーホフ(著作)Barbara Myerhoff
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