多文化共生論と実践的医療人類学
On Thinking Communities, a medical
anthropologist's point of view
近年、グローバル化の進展においては人々の関係性や共同性が注目されています。コミュニティ(共同体)とは、同じ地域に居住して利害をともに し、政治・経済・風俗などにおいて深く結びついている社会のことをさします。
本講演では、医療人類学の視点より、「コミュニティ」をテーマに、その社会空間でおりなす主体と行為主体の関係性について考察します。コミュニ ティに参加することによって構築していく相互行為とはどのようなものであるか、これまでの構造やシステムでは収まりきれない、新たなコミュニティの可能性 と問題点を参加者の皆さんとともに、探りだしていきたいと思います。
●コミュニティについて考える:多文化共生論と実践的医療人類学 池田光穂(大阪大学COデザインセンター:現在の組織) コミュニケーションデザインセンター ・実践コミュニティ論 ・コミュニティ ・多文化共生社会 ・実践的医療人類学 |
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■この講演のアウトライン
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■コミュニティという語 社会および行動科学国際百科事典(IES&BS, 2001)で共同体(community)関連用語は夥しくある… コミュナリズム、コミューン(この間にコミュニケーションが入り)、コミュニズム、コミュニタリアニズム、実践コミュニティ、コ ミュニティ (以下C)美学、C経済発展、C環境心理学、Cの表現や代表、C遺伝学、Cヘルス、C組織と人生経路、C権力構造、Cの社会的文脈、C/社会の歴史的変 遷、C社会学、人類学におけるC研究、ざっとこのような具合…… これらのカタカナ外来語は、該当する翻訳語があるがわざわざ外来語のまま(例:「実践共同体」「実践コミュニティ」)とする論者も いる。 コミュニティは翻訳がしばしば難しくなる多義的(polysemic)な語であるというのが、この用語の現在の〈生態〉であるらし い…… |
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■コミュニティ communitat-em, communis というラテン語に由来。共同するもの、共通するもの、あるいは共通するものをもつ仲間(=人々の塊)の意味がある(OED) 日本語の「共同体(kyodo-tai)」には、このような仲間の集まりの抽象的実体の意味が優先されるようだが、「私たち仲間」 といった メンバー自体や、それが共有するものや特質をも示すためコミュニティの派生語を翻訳し混乱を招くよりもそのまま外来語表記する傾向が近年強まっているよう に思われる。 ただし日本語のコミュニティには、それ以上の(この国の人たち=community が西洋から入ってくるものに小躍りしそうな積極的)意味を持たせているものがある(例:コミュニティ・カフェ)。このコミュニティは共同体の語感よりも、 内部の成員に対する拘束力のようなものが軽減されているように感じるのは私だけだろうか? |
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■人類学が扱うコミュニティ 文化人類学や社会人類学は、コミュニティ研究をおこなうとされてきた。民族誌研究とコミュニティ研究の類似性 2つの対象コミュニティ(1.起源的な意味でのオリジナルな対象と、2.[その方法論に依存した]農村や近隣の小区画あるいは集団 として。 後者の農村社会学や都市人類学はコミュニティ研究という枠組みを通して相互浸透する) 社会学のコミュニティ研究のドミナント・モデル:シカゴ学派(ca.1930s-60s) 空間分布と成員の同質性あるいは階層化に焦点が置かれ、やがて成員のアイデンティティに関心が持たれる(例:民族境界論から想像の 共同体論 へ) |
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■コミュニティ研究文献(古典)
[シカゴ学派やその影響を受けたもの] |
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■コミュニティ研究文献(つづき:古典)
[コミュニティ概念の再考に関する1970-80年代論考] |
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■コミュニティ概念の人類学的転換 想像の共同体・遠隔地ナショナリズムなど(成員のアイデンティティや統治における地図=空間表象化の複雑な過程を描出: Anderson B 1983 Imagined Communities. Verso, London.『想像の共同体』) コミュニティ研究における、これまでの「場所と文化」の単線的な結びつきを脱構築する現象[自発的あるいは強制的移動(dis- location)、国際間〜トランスナショナル性、散種〜ダイアスポラ性、など](Appadurai A 1996 Modernity at Large: Cultural Dimensions of Glohalization. University of Minnesota Press, Minneapolis,MN.『さまよえる近代』) 経済労働移民の当事者に去来する「トランスナショナルな想像力」(Rouse R 1991 Mexican migration and the social space of postmodernism. Diaspora 1(1): 8-23.) |
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■コミュニティ再考
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■クレジット関係
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099