リスク社会と健康コミュニケーション
Risk and Society: A Lecture from
Anthropological perspective
解説:池田光穂
ウルリヒ・ベックは『危険社会』(Beck, Ulrich. Risikogesellshaft, 1986)の中で、公刊の直前に起こったチェルノブイリ事故以降の放射能汚染の中で、あ る種の社会的カテゴリーの境界が(汚染物質の蔓延という形で)超え られてしまったと表現している。そうであるなら25年後の福島第1原発の爆発まで日本社会はチェルノブイリのことから何も学ばなかったのかもしれない。そ の証左に、今般の事件後に、一方では原発推進派はこの事故を未曾有で想定外の規模の「天災」と自らの歴史観を変更することなく、また他方では脱原発派は少 なくとも爆発は防ぎ切れた「人災」だと前者を非難し、自分たちの歴史に関する同時代的責任を認識していないようだ。厳しい現実とは、かつてのリスクが現実 のものとなっただけである。この授業では、現代の健康問題は〈リスク〉を介在して政治の問題になるということを上掲の文献を手がかりにして、ポスト・フク シマの現在について議論する。(→「原発問題を多元化する3つのテキスト」「リスク社会における政治的知識論」)
リスクの定義は、研究者や団体に種々あるが、ここではリスクマネジメントの観点からISOのリスクの定義「不確実性が目的に与える効果」を参照しよう。
"The International Organization for Standardization publication ISO 31000 (2009) / ISO Guide 73:2002 definition of risk is the 'effect of uncertainty on objectives'. In this definition, uncertainties include events (which may or may not happen) and uncertainties caused by ambiguity or a lack of information. It also includes both negative and positive impacts on objectives. Many definitions of risk exist in common usage, however this definition was developed by an international committee representing over 30 countries and is based on the input of several thousand subject matter experts." - Risk by the definition of ISO, International Organization for Standardization.
したがって、この定義に準拠すると、ISO流の考え方を適用すると、リスクマネジメントとは「不確実性が目的に与える効果」を管理・制御することということになる。
第2章「危険社会における政治知識論」を下記のURLにリンクするページのpdfファイル (約1.5MB:ファイル名:Risikogesellschaft86_Ch2.pdf)としてダウンロードし受講前に読んでおくこと。文書には鍵がか けてあります。
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/110825Risiko.html (このページです) http://bit.ly/rtKYmv(このページの短縮URLです)
●クレジット:医科学修士の健康医療問題解決能力の涵養 環境健康リスク論(2011年10月8 日)
課題
リンク
文献
その他の情報
「本日の授業にもとづいて、福島第1原発事故と今日の健康問題について考察し、リスク論と市 民生活がどのように関わっているのか、諸事実(=あなたが得た資料で自分自身である程度の確証の持てるもの)とあなた自身の解釈を提示してください」(原 稿分量の上限は問いませんが図表を別にして2000字以上の分量を想定しています)
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 2011-2019