メシア的時間について
Messianic Time
池田光穂
■中世の人びとのメシア的時間(ベンヤミン)/同時 性
「メシアはたしかに解放者として来るのだが、それだ けではない、彼はアンティクリストの克服者としてやってくるのだ」——ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」IV
「歴史は構成の対象であって、この構成の場を成すの は均質で空虚な時間なのではなく、現在時(Jetztzeit)によって満たされた時間である」——ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」XIV
「歴史主義は歴史のさまざまな要素の因果関係を確立 することで満足する。しかし、いかなる事実も、それがなにかの原因だとしても、そのことだけですでに歴史的事実なのではない。それは、死後の生において、 何千年も隔てられているやもしれぬもろもろの出来事によって、歴史的事実となったのだ。このことから出発する歴史家は、数珠を爪繰(つまぐ)るようにもろ もろの出来事の連なりをたどることをやめる。自分自身の時代が以前のある特定の時代と出会っている状況布置(コンステラツィオーン)を、彼は把握する。そ のようにして彼は現在の概念を、メシア的な時間のかけらが混じりこんでいる〈現在時〉として根拠づけるのである」(ベンヤミンコレクション1:664)。
「周知のように、未来を探ることはユダヤ人には禁じ
られていた。律法と祈祷は、その代わりに、彼らに想起を教えている。占師に予言を求める人びとが囚われている未来の魔力から、想起はユダヤ人を解放した。
しかしそれだからといって、ユダヤ人にとって未来が、均質で空虚な時間になったわけではやはりなかった。というのも、未来のどの瞬間も、メシアがそれを潜
り抜けてやってくる可能性のある、小さな円だったのだ」(ベンヤミンコレクション1:665)。
■アウエルバッハ
「(アウエルバッハ『ミメーシス』上:84からの引
用)「たとえばイサクの生贄のような事件が
キリストの受難を予兆するものとして解釈さ
れ、したがって、前者において後者が告知され約束され、後者が前
者を充足するならば、時間的にも因果関係のうえからもつながりのない二つの出来事のあいだにひとつの関係が確立されることになる。この関係
は水平的次元では理性によって確立することができない」
(pp.42-43:アンダーソンの頁:1997年邦訳版、p.48)
■近代的時間概念=「均質で空虚な時間」 (p.44;p.55)
─社会的有機体が均質で空虚な時間の暦のなかを暦に従って移動してゆくという観念は、国民の観念
とまったくよくにている。国民もまた着々と歴史を下降し(あるいは上昇し)動いてゆく堅固な共同体と観念される(p.45)。
■ウルリッヒ・ベックらが共有する未来時間への「恐 怖」について
「それどころか正しく言えば、未来は、かつてほど過去との類似性をもたなくなり、いくつか基本的な点でわれわれを非常に脅か すものになりはじめている」(ベックら 1997:5)。この反応は、時間が脱臼するとか、未来は、希望に満 ち満ちている(予兆がなくても未来に希望を託すことも可能だが)という感覚がない。 ベックらが、理不尽な恐怖を抱くのは、それが《過去との形相的類似性の喪失》であり《現在が未来に侵食するという脅威》概念にほかならないからだ。ハイデ ガーの「不安」の概念(『存在と時間』第30節情状性の一つの様態としての恐れ)に酷似する。それは、得体のしれない時間的未来に直面する人間の恐怖だ。
"That in the face of
which we fear, the 'fearsome', is in every case something which we encounter within-the-world and which may
have either
readiness-to-hand, presence-at-hand, or Dasein-with as its kind of Being.
We are not going to make an ontical report on those entities which can
often and for the most part be 'fearsome': we are to define the
fearsome
phenomenally in its fearsomeness. What do we encounter in fearing that
belongs to the fearsome as such ? That in the face of which we fear can
be characterized as threatening. Here several points must be
considered." (英訳, p.179, 原著 S. 140)
●マヤの時間概念
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文献
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