■コスモポリタンになるには複数の経路がある

・ディアスポラ的意識は、コスモポリタンをつくるひとつの要因になる。Ｊ・クリフォードは、ディアスポラ意識が「悪い状況のなかでも何とか最善 の手をうつ」（クリフォード 2002:291）可能性をもつと指摘して次のように、それをまとめている。

「喪失や周縁化、亡命の経験（階級により痛みは異なる）は、しばしば組織的な搾取や地位の上昇が阻害されることで強化される。しかし、この構成 的な苦難は生存の技術と共存する。すなわち、順応的な差別のなかでのしたたかさ、相異なるコスモポリタニズム、再生への確固たるウィジョンと共存するので ある。ディアスポラの意識は、明確な緊張関係として喪失と希望を生きる」（クリフォード 2002:291）

●余滴

デラシネに保証などなきふるさともなくて口ずさむ朝鮮の詩（うた）——李正子（いちょんじゃ）

故郷を甘美に思うものは嘴の黄色い未熟者,いかなる土地でも故郷と思えるものはすでに権力者だ.だが全世界を異郷と思う人こそが完璧な人だ（Hugo de San Víctor）——アウエルバッハ『ミメーシス』からの引用

用語リンク

• 複線径路・等至性
  

関連リンク

• 法に従うひとがコスモポリタンである▶アレクサンドリアのフィロンによる徳の概念（ハ ンス・ヨナス）︎▶︎︎コスモポリタンの思想圏▶国民国家︎▶︎︎ルース・ベネディクト的問題▶︎ディアスポラ的批判について考える▶︎︎金夏日（きん・はいる）▶︎▶︎︎▶︎▶︎

文献

• アレキサンドリアのフィロン『世界の創造』（ユダヤ古典叢書）野町啓・田子多津子訳，教文社、2007年

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